定年後のセカンドキャリアへの行動開始は50代ですべき理由
50代〜70代のシニア就業者の意識調査や、セカンドキャリア実践者のアドバイスをもとに、セカンドキャリアをうまく形成する方法や、具体的な行動を起こすタイミングなどについて解説します。
- 目次
- 定年退職後のセカンドキャリアについて考えよう
- インディードの意識調査でわかった、50代以降のシニアのセカンドキャリア観
- シニア期も「働きたい」「働く必要がある」と感じている人は58.3%
- 働くことの不安や課題を抱えている人は(働く意欲・必要性がある人のうち)92.7%
- シニア期の働き方を具体的に検討・行動を始めている人は55.9%
- セカンドキャリア実践者のアドバイスは「スキルの整理」「老後のお金問題の認識」「早い段階からの行動開始」など
- インディード上の仕事探しで「70代」の検索数は5年で53.7倍、「60代」は7.9倍に増加
- セカンドキャリアを模索する上で取り組みたい「リカレント教育」と「リスキリング」とは
- リカレント教育とは
- リスキリングとは
- 50代以降のシニアがリカレント教育で利用できる支援制度
- 高等職業訓練促進給付金
- キャリアコンサルティング
- ハロートレーニング
- まとめ:セカンドキャリアの検討・行動は50代から始めよう
定年退職後のセカンドキャリアについて考えよう
「セカンドキャリア」とは、その名のとおり「第二の人生で歩むキャリア」のことです。主に下記の3つの種類に分けられます。
- 主に女性が、育児や子育てが一段落したあとに復職すること
- プロスポーツ選手やオリンピック選手などのアスリートが、引退後に歩むキャリア
- 中高年・シニアが、早期リタイアや定年退職をしたあとに選択するキャリア
この記事で取り上げるセカンドキャリアとは、3.の、多くの人が経験するであろう、早期リタイア後や定年退職後に歩むキャリアのことです。
今回は、セカンドキャリアの見つけ方などを模索するとともに、セカンドキャリアに関連の深い支援制度や、関連用語についても解説していきます。
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インディードの意識調査でわかった、50代以降のシニアのセカンドキャリア観
50代以降のシニア世代の人々は、セカンドキャリアについてどのように考え、実際にどのように動いているのでしょうか?
求人検索エンジンのIndeed(インディード)が実施した、シニアの就業に関する意識調査の結果を覗いてみることにしましょう。
- 調査主体:Indeed Japan株式会社
- 調査対象:50代~70代、各世代の男女各300名(計1,800名)※世代、男女で均等割付
- 調査方法:インターネット調査
- 調査期間:2022年9月7日~9月8日
- 引用資料:Indeedが「シニア世代の就業」に関する意識調査を実施 50代~70代の約6割がシニア期も働く意欲・必要性を持つ一方で、9割以上が不安や課題あり|Indeed Japan株式会社のプレスリリース
シニア期も「働きたい」「働く必要がある」と感じている人は58.3%
出典:Indeedによる「シニア世代の就業」に関する意識調査
50代から70代の人(1,800名)に、シニア期に働きたいかどうかを尋ねたところ、全体の58.3%が「働きたい」もしくは「働く必要がある」と回答しました。
年代別で見ると、50代は75.5%、60代は58.3%、70代は41.0%となり、年代が上がるにつれて働く意思は下がっていきます。
つまり、現役世代ともいえる50代は「人生100年時代」を強力に意識しており、「前の世代とは違う、老後の生き方と働き方が必要だ」と認識している様子が見て取れます。
働くことの不安や課題を抱えている人は(働く意欲・必要性がある人のうち)92.7%
働く意欲や必要性がある人の中で、シニア期に働くことに対し、何らかの不安や課題がある人の割合は92.7%にのぼりました。
出典:Indeedによる「シニア世代の就業」に関する意識調査
不安や課題の内容を尋ねたところ、上位に挙がったのは「健康状態が維持できるか」が59.6%、「働くための気力を維持できるか」が38.5%、「肉体労働に耐えられるか」が28.1%でした。
労働意欲が高いシニアでも、健康維持の不安を感じる人は多いようです。
出典:Indeedによる「シニア世代の就業」に関する意識調査
シニアの健康に関連した記事
シニア期の働き方を具体的に検討・行動を始めている人は55.9%
すでにシニア期に働くことを見据えて、検討や行動を開始している人は、全体の55.9%にのぼりました。
出典:Indeedによる「シニア世代の就業」に関する意識調査
シニア期の労働にかんして、何らかの行動を始めたタイミングは、39歳以下が1.5%、40代が10.6%、50代が54.9%、定年前後の60代が30.7%、70代が2.3%でした。
出典:Indeedによる「シニア世代の就業」に関する意識調査
つまり、定年後のセカンドキャリアについて考え、具体的に行動を始める人がもっとも多いのは50代であることがわかります。
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セカンドキャリア実践者のアドバイスは「スキルの整理」「老後のお金問題の認識」「早い段階からの行動開始」など
セカンドキャリア実践者に、これからシニア期の働き方を考える人へのアドバイスを聞きました。
上位3位に挙がったのは「自分のスキル・能力を整理しておいた方が良い」(32.7%)、「60歳以降のお金の問題について詳しく知っておいた方が良い」(31.5%)、「早いうちから考え始めた方が良い」(28.9%)でした。
この結果から、シニア期の働き方を考える上では、まず早いうちから考え始めること、そして自分のスキル・能力を整理することが大切であるとわかりました。
出典:Indeedによる「シニア世代の就業」に関する意識調査
インディード上の仕事探しで「70代」の検索数は5年で53.7倍、「60代」は7.9倍に増加
Indeedによると、Indeed上の仕事探しで「70代」をキーワードに仕事を検索した件数は、5年間で53.7倍に増え、「60代」の検索件数は5年間で7.9倍に増えたそうです。
参考資料
高年齢層の仕事探しの状況を調査 - Indeed プレスルーム | 日本
この5年間で社会の高齢化とともに、高齢者をめぐる労働環境が様変わりしていることがわかります。
これからますますセカンドキャリアを探す人は増えることでしょう。
セカンドキャリア実践者のアドバイスにもあったように、スキルの整理は50代のうちに着手し、学び直しやスキルアップなどへの取り組みも早い段階で積極的に行うほうが良いでしょう。
同時に、老後のお金についての知識を深め、資産運用に関する勉強なども始めると、よりよい老後生活が送れると考えられます。
老後のお金については、お金カテゴリの記事一覧を参考にしてください。
「お金」カテゴリの記事一覧|シニアタイムズ
投資に関連した記事
シニアこそ株式投資を始めるべき!株式との向き合い方とは?
セカンドキャリアを模索する上で取り組みたい「リカレント教育」と「リスキリング」とは
100歳まで生きることが珍しくなくなってきた「人生100年時代」を迎えた今、ライフプランニングの見直しが迫られています。
そんな中、「リカレント教育」や「リスキリング」といった概念が注目されるようになりました。
リカレント教育とは
リカレント(Recurrent)教育とは、社会人が「働くこと」と「学ぶこと」を交互に繰り返して、働く上でのスキルアップやキャリアアップを目指す、学習の仕組みのことです。
厚生労働省や経済産業省、文部科学省などでは、社会人のキャリア相談や学習にかかる費用を支援する取り組みを行っています。
社会人向けの教育訓練給付制度や、無料で受けられるキャリアコンサルティングなどがその支援にあたります。
参考資料
リカレント教育(厚生労働省)
リスキリングとは
一方のリスキリング(Re-skilling)は、スキルの再習得やスキルの向上を表しており、新しいことを学び、身につけた新しいスキルを実施し、新しい業務や職業に就くことを指します。
リスキリングには、企業が従業員に対して、今後必要になってくるであろう仕事上のスキルや技術を身につけてもらう、といった意味合いが含まれています。
参考資料
リスキリングとは(経済産業省)
リスキリングについては、岸田文雄首相が先日行った所信表明で初めて耳にした人が多いかもしれません。
岸田政権では、企業間や産業間での労働移動円滑化に向けた指針を来年6月までに取りまとめるとし、リスキリングの支援に5年間で1兆円を投じることを予定しています。
現時点で国内のリスキリング支援の事例は、大企業の数例に限られますが、今後は支援制度が増えていくのではないかと考えられます。
50代以降のシニアがリカレント教育で利用できる支援制度
50代以降の個人が、現時点で利用できる教育支援制度をご紹介します。
セカンドキャリアについて行動を移す際に、ぜひ参考にしてください。
高等職業訓練促進給付金
資格取得を目指すひとり親に対して生活費を支援する制度に「高等職業訓練促進給付金」があります。
扶養する児童の年齢制限は設けられていますが、本人の年齢に制限はありません。
対象資格の例として、看護師、介護福祉士、保育士、歯科衛生士、理学療法士、保健師、助産師、シスコシステムズ認定資格、LPI認定資格などが挙げられています。
母子家庭の母や父子家庭の父にあたる人は、自分が要件にあてはまるかどうか、下記のページを確認してみてください。
母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について |厚生労働省
なお、一般教育訓練給付金や特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金などの教育訓練給付制度は、いずれも受講開始年齢を45歳未満に制限しています。
ひとり親に関連する記事
ひとり親控除と寡婦控除の違いとは?【税理士監修】
キャリアコンサルティング
キャリアコンサルティングは、在職中の人が今後のキャリアについて無料で相談ができるサービスです。
キャリアアップに向けた支援やキャリアプランの作成支援なども受けられます。
オンライン相談だけでなく、全国の拠点で対面のコンサルティングを受けることも可能です。
参考資料
キャリア形成サポートセンター - キャリア形成サポートセンター(厚生労働省)
ハロートレーニング
ハロートレーニング(公的職業訓練)とは、雇用保険(失業保険)を受給している求職者を主な対象とする「公共職業訓練」と、雇用保険を受給できない求職者を主な対象とする「求職者支援訓練」の総称です。
キャリアアップや、希望する就職を実現するために、必要な職業スキルや知識を習得することができる公的な制度です。
雇用保険の対象となっていない人でも、一定の条件のもとで、月額10万円の支給を受けながら訓練を受けることができます。
受講料は基本的に無料ですが、在職者や学卒者(四年制大学、短期大学、専修学校などを卒業した人)が対象のハロートレーニングは有料です。
参考資料
ハロートレーニング(厚生労働省)
ハロートレーニング・ハローワークに関連した記事
シニアの転職にハローワークは使える?メリットやデメリットをご紹介!
まとめ:セカンドキャリアの検討・行動は50代から始めよう
セカンドキャリアを模索し始めるのは、定年退職をした60代からでは遅いかもしれません。
50代のうちにスキルやキャリアの棚卸しをして、セカンドキャリアのプランを立ててください。
足りないスキルがあれば、職業訓練などの支援制度を頼るのもおすすめです。
自分1人でセカンドキャリアのプランを立てる自信がない場合は、キャリアコンサルティングなどのサービスを利用することをおすすめします。
また、老後の資金についても理解を深めておき、セカンドキャリアにおいてどれくらいのお給料を稼ぐ必要があるのかを見極めることも重要です。
資金の目処がつくと、どのようなキャリアを選ぶべきかの参考にもなるでしょう。
定年退職後に関連した記事
シニア人材の採用に関連した記事
この記事の監修者
松澤裕介 【キャリアアドバイザー】
キャリアアドバイザーとして、転職相談3,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間1,000名以上の履歴書、職務経歴書を作成。主に医療・介護業界の人材紹介を担当。「シニア人材の転職市場・転職の注意点」などのテーマで記事やコラムを監修。