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退職時に有給消化は可能?拒否されたらどうすればいい?

新名範久 【税理士・社会保険労務士】

働く

退職時に40日の有給消化は可能?
拒否された場合はどうすればいい?

日本は、比較的有給休暇の取得率が低い国です。退職時に有給が残っている人も多いでしょう。この記事では、退職時にトラブルなく有給消化する方法や拒否された場合の対処法を解説します。

目次

まずはここから確認!有給休暇とは?

有給休暇とは?

まずは、有給休暇に関して確認しておきましょう。

有給休暇とは取得しても賃金が減額されない休暇のこと

有給休暇とは、取得しても賃金が減額されない休暇のことです。労働者の心身の疲労の回復を目的とした休暇で、以下の2点を満たした労働者に与えられます。

有給休暇の付与条件
  1. 入社してから6ヶ月間同じ会社等で継続して働いている
  2. 雇用契約で定められた労働日のうち8割以上出勤している

正式名称は「年次有給休暇」といい、労働基準法では以下のように定められています。

第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

※出典:e-Gov 労働基準法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

※1:厚生労働省|年次有給休暇とはどのような制度ですか。

有給休暇の付与日数は勤続期間により異なる

有給休暇の付与日数は勤続期間により異なります

有給休暇の付与日数

勤続期間

有給休暇付与日数

6ヶ月

10日

1年6ヶ月

11日

2年6ヶ月

12日

3年6ヶ月

14日

4年6ヶ月

16日

5年6ヶ月

18日

6年6ヶ月以上

20日

勤続期間が長いほど1年間で付与される有給休暇の日数は増え、6年6ヶ月以上ある人には年間20日の有給休暇が付与されます。

使える時期は原則として労働者の希望する日

有給休暇は、原則として労働者の希望する日に使えます。ただし、会社等が業務に支障をきたすと判断した場合のみ会社等には時季変更権が認められます。

時季変更権とは、会社等が労働者に有給休暇の取得時期の変更や調整を求める権利のこと。繁忙期などに認められることが多いですが、退職が決まっている労働者には時季変更権の行使はできないことになっています。

なお、有給休暇を申請する際に会社等に理由を伝える義務はないため、「使用のため」で問題ありません。

有効期限は2年間・繰り越し可能・最大保有日数は40日

1年間で消化しきれなかった有給休暇は翌年以降へ繰り越せますが、付与日から2年経過すると時効となり消滅してしまいます。

また、最大保有日数は40日です。40日を超えた分は古い有給休暇から消滅するため、注意しましょう。

有給消化してから退職しても問題ない?

有給消化してから退職しても問題ない?

賃金が発生する休暇なら「残っている有給休暇を消化してから退職したい」と考える人は多いでしょう。

会社等は労働者の有給休暇申請を拒否できないため、残っている有給休暇を消化してから退職することは可能です。

「退職前に長期間休むのは気が引ける…」と思う人もいるかもしれませんが、有給休暇は労働者の権利です。必要以上に引け目を感じる必要はありません。

ただし迷惑をかけないために、退職までのスケジュールを上司と相談し、合意を得たうえで有給休暇の申請を行うよう心がけましょう。

退職時の有給消化パターン

退職時の有給消化パターンは「退職日=最終出勤日」「退職日≠最終出勤日」のどちらかになります。

なお、退職日とは雇用契約が終了する日最終出勤日とは労働者が最後に出勤する日。混同しないように気をつけてください。

①最終出勤日より前に有給消化する

「退職日=最終出勤日」になるのは、最終出勤日より前に有給消化するパターンです。

このパターンの場合最終出勤日が退職日になるため、退職日に退職の挨拶が行えます。社会保険関係の手続きもこの日に行えるため、後から健康保険証を郵送する手間も省けます。

②最終出勤日後に有給消化する

「退職日≠最終出勤日」になるのは、最終出勤日後に有給消化するパターンです。

このパターンの場合、退職の挨拶を行ってから有給消化期間に入ります。退職挨拶をしたものの雇用契約は続いているため、有給消化後に社会保険関係の手続きを行う必要があります。

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最大保有日数の40日消化することも可能?

有給休暇の最大保有日数は40日。勤続期間が長い人の中には、退職時に有給休暇が40日残っている人もいるでしょう。

有給休暇の使用日数に制限はないため、退職時に40日有給消化することは可能です。ただし、この場合も退職時までのスケジュールを上司と相談し、合意を得てから申請することが大切になります。

最後に悪い印象を残さないよう、引き継ぎの時間が十分にとれない場合は退職日を後ろ倒しにするなど、業務に支障がでないような対応を心がけてください。

退職時にトラブルなく有給消化するためのポイント

退職時にトラブルなく有給消化するためのポイント

お世話になった会社等を退職するときは、トラブルなく円満に退職したいもの。ここでは、退職時にトラブルなく有給消化するためのポイントをご紹介します。

できるだけ早く直属の上司に退職と有給消化希望の意向を伝える

1つ目は、できるだけ早く直属の上司に退職と有給消化希望の意向を伝えることです。

業務の引き継ぎや有給消化を考慮すると、退職までのスケジュールは意外とタイトです。有給休暇の残日数が多い場合は尚更でしょう。

そのため、退職の意思が固まったらできるだけ早く上司に報告し、引き継ぎと有給消化スケジュールの相談を行いましょう。

有給休暇の残日数が多い場合は、退職希望日の1ヶ月以上前に伝えるのが理想的です。民法上では申し出から2週間で退職は認められますが、最低限、就業規則で定められている期間を守るよう心がけましょう。

事前に有給休暇の残日数を把握する

2つ目は、事前に有給休暇の残日数を把握することです。

会社等によっては、給与明細等に有給休暇の残日数が記載されている場合もあります。記載されていない場合は自分で確認するのも1つの方法ですが、正しく把握するためには会社等へ確認することをおすすめします。

有給休暇の残日数がわかったら、退職までのスケジュールをたてましょう。注意したいのは、就業規則で定められている休日です。退職までに有給休暇をすべて消化したい場合は、就業規則で定められている休日を除く必要があります。

例えば、土日休みの完全週休2日制の会社等で働いているとしましょう。有給休暇の残日数が20日あり、ある月の11日〜30日を有給消化に充てたい場合、この期間のうち土日祝日は就業規則で定められた休日になります。

この期間の就業規則で定められた休日が6日ある場合、有給消化できるのは14日。20日分の有給休暇をすべて消化したい場合は、土日を除いた20日分の期間を確保しなければなりません。

また、リフレッシュ休暇やバースデー休暇などの独自の休暇を設けている会社等の場合は、退職時に利用できるかどうか確認が必要です。

余裕をもって業務の引き継ぎや退職準備を行う

3つ目は、余裕をもって業務の引き継ぎや退職準備を行うことです。

退職する際には、同じ部署の人や取引先に迷惑をかけないように引き継ぎをしっかり行うのが社会人としてのマナーです。

退職に向けて必要なこと
  • 後任者に引き継ぎを行う
  • 業務マニュアルを作成する
  • 取引先に退職の挨拶や後任者の紹介を行う
  • デスクの整理を行う など

「有給消化を優先して引き継ぎの時間が十分にとれない」ということがないように、余裕のあるスケジュールをくみましょう。

有給休暇申請したことを証拠に残るようにしておく

4つ目は、有給休暇申請したことを証拠に残るようにしておくことです。

有給休暇の申請方法は、申請用紙を提出したりメールで申請したりと、会社等によりさまざまです。中には口頭で伝えるだけの会社等もあるかもしれませんが、退職時の有給休暇申請を行う際は証拠に残るようにしておきましょう。

「有給消化していた期間が欠勤扱いになっていた」というトラブルは、実際に存在します。

「申請用紙のコピーを保管しておく」「申請したメールを個人のパソコンに保存しておく」など、なにかしらの形で証拠を残しておくと万一のときに証拠として提出できるため、退職してからも交渉が可能になります。

有休消化を拒否されたらどうすればいい?違法ではない?

有休消化を拒否されたらどうすればいい?

「退職時に有給消化した社員は今までにいない」「会社等規定で、退職時の有給消化はできない」など、有給消化を拒否された場合はどう対応すればいいのでしょうか?

ここでは、有給消化を拒否された場合の対処法をご紹介します。

拒否された理由を確認する

まずは、拒否された理由を確認してください。

申し出た日と退職日が近い場合は引き継ぎの時間がなくなることを心配して、有給消化ができないと言っているのかもしれません。連続して休暇を取ることが難しい業界もあるでしょう。

拒否された理由がわかれば、退職日を後ろ倒しにすることや数日おきに有給休暇を取得することで、上司の理解を得られるかもしれません

有給休暇取得の拒否は労働基準法第39条に違反する

特別な理由なく「うちの会社では退職時に有給消化はできない」などと言われ続けた場合、会社等は労働基準法第39条に違反することになります。

第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

※出典:e-Gov 労働基準法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

人事部や労働基準監督署へ相談する

上司に有給消化を拒否された場合は、直接人事部へ相談してみましょう。

人事部は労務関係に詳しい人がいることが多いため、上司が有給休暇を拒否していることを違法だと理解してくれる可能性があります。

実際に、直属の上司が自分の一存で拒否しているだけで、人事部に相談してみたら有給消化が認められるケースはよくあります。

人事部に相談しても同じように拒否された場合は、労働基準監督署に相談してみましょう。

労働基準監督署とは、事業所が労働関係の法令を守っているか監督する機関のこと。労働基準法に違反する行為を行う会社等に対して、指導や勧告を行う機関です。

労働基準監督署指導や勧告には強制力がないため、指導を受けても会社等がすぐに有給休暇を受け入れるとは限りません。しかし、会社等に対して「労働基準監督署に相談します」と伝えるだけで状況が変わる可能性も考えられます。

退職日までに有休消化できない場合はどうなる?

退職日までに有休消化できない場合はどうなる?

では、退職日までのスケジュールに余裕がなく、有給休暇をすべて消化できない場合はどうなってしまうのでしょうか?

有給休暇は退職すると消滅してしまう

有給休暇は退職すると消滅してしまいます。

この場合、「休んでも賃金が発生する日が余ってしまったのなら、余った分を買い取ってほしい」と思う人も多いでしょう。

労働基準法では、有給休暇は要件を満たしたすべての労働者に対して会社等が付与する義務があるとされているため、その買取は原則禁止されています。しかし、退職時に取得できなかった有給休暇等に関しては、例外として認められる場合もあります

ただし、買取に関する明確な決まりはありません。会社等が買取してくれても金額は会社等によって異なるため、賃金日額で買い取ってくれるとは限りません。

就業規則に記載されていなくても会社等が買い取ってくれる場合もあるため、有給休暇を消化しきれない場合は一度会社等へ相談してみることをおすすめします。

有給休暇の買取が認められるケースとは?

では、有給休暇の買取が認められるケースとはどのような場合なのでしょうか?

基本的には、厚生労働省が定める有給休暇の目的である「心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するため」に反しない場合、認められる可能性があります。

ただし、以降でご紹介するすべてのケースで買取してもらえる訳ではありません。あくまでも目安としてご参考ください。

退職時に有給休暇が残っている場合

1つ目は、退職時に有給休暇が残っている場合です。

有給休暇の請求権は、退職すると消滅するため、その時点で消化しきれていない有給休暇を会社等が買い取ったとしても、労働基準法違反にはなりません

会社等が独自に定めた有給休暇が残っている場合

2つ目は、会社等が独自に定めた有給休暇が残っている場合です。

会社等が独自に定めた有給休暇とは、主に以下のような休暇です。

会社等が独自に定めた有給休暇
  • リフレッシュ休暇
  • バースデー休暇
  • アニバーサリー休暇
  • 夏季休暇 など

上記のような休暇は、会社等が労働基準法で定められた有給休暇の日数を超えて付与した有給休暇であるため、買取をしても労働基準法に違反することはありません

もちろん、これらの休暇を買い取ってもらえるかどうかは会社等により異なるため、該当する場合は確認してみましょう。

有給休暇を使い切れずに失効してしまった場合

3つ目は、有給休暇を使いきれずに2年の消滅時効により失効してしまった場合です。

このケースも、単に会社等が失効した有給休暇を買取るだけのことなので、労働者に何の不利益も及ぼさないことから認められます

年5日の有給休暇を労働者に取得させることが会社等の義務

2019年4月以降、会社等には、年間10日以上の有給休暇が付与されている労働者に対して、年間5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられています。

なお、5日の有給休暇の取得時期は会社等が指定する日ではなく、労働者が取得日を希望することが前提です。

もちろん退職時にもこの義務は適用されるため、退職する年に有給休暇の取得が5日以内の労働者に対して、会社等は最低でも5日に達するまで有給休暇を取得させる義務があります。

※2:厚生労働省|年5日の年次有給休暇の確実な取得

退職時の有給消化に関するQ&A

退職時の有給消化に関するQ&A

最後に、退職時の有給消化に関するQ&Aをご紹介します。

Q:有給消化中に転職先で働いても大丈夫?

A:退職する会社等と副業先の会社等の双方に、二重就労の了解を得ていれば大丈夫です。

有給消化中は会社等との雇用契約が継続しているため、他の会社等で働くと二重就労になってしまいます。

退職する会社等と副業先の会社等の双方が二重就労の許可をしていれば問題ありませんが、許可していない場合は退職するまで待った方がいいでしょう。

なお、雇用保険は二重加入できないため注意してください。

Q:アルバイト・パート・派遣社員でも退職前の有休消化は可能?

A:もちろん可能です。

ただし、有給休暇が使えるのは在籍している期間のみです。雇用期間が定められている場合は有給休暇の残日数を確認し、雇用期間が終了する時期から逆算して使い切れるように検討しましょう。

パートの社会保険加入条件を徹底解説!月68,000円はいつから!?

Q:退職前に有給消化すると給料が減るって本当?

A:有給消化しても基本的には給料は減りません

給料が月給制の場合、有給休暇1日につき「月給÷該当月の所定労働日数」が支払われます。有給休暇の日額には役職手当なども含まれるため、大幅に給料が減ることは少ないでしょう。

ただし、通勤手当のような実際にかかったものに対する費用は支払われません

Q:有給消化中でもボーナス(賞与)はもらえる?

A:ボーナスの算定期間に勤務していればもらえます

ボーナス(賞与)は算定期間中の実績に応じて支給されるものです。算定期間中に通常勤務していれば、有給消化で休んでいてもボーナスは支給されます

ただし有給休暇の期間が長い場合、休んでいる期間の勤務実績は現実には発生しないため、それまでより実績が少ないと判断されることはあるでしょう。その場合は、これまでより支給額が少なくなる可能性はあります。

まとめ・退職時に有給消化する場合は余裕のあるスケジュールを

有給休暇とは取得しても賃金が減額されない休暇のこと。会社等は労働者からの有給休暇申請を拒否できないため、残っている有給を消化してから退職することは可能です。

ただし最後にマイナスイメージを残さないためにも、退職の意思が固まった時点で上司に報告し、引き継ぎと有給消化のスケジュールを相談しましょう。

有給休暇は労働者に与えられた権利のため、会社等が拒否することは労働基準法に違反する行為に該当します。上司に拒否された場合は人事部に相談し、それでも受け入れてもらえない場合は労働基準監督署に相談してみましょう。

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参考記事

厚生労働省|年次有給休暇とはどのような制度ですか。
厚生労働省|年5日の年次有給休暇の確実な取得

この記事の監修者

新名範久 【税理士・社会保険労務士】

「新名範久税理士・社会保険労務士事務所」所長。 建設、不動産、理美容、小売、飲食店、塾経営といった幅広い業種の法人や個人の税務・会計業務を行う。社会保険労務士として、法人の社会保険業務も担当。1人でも多くの人に、税金に対する理解を深めてもらいたいと考え、業務を行っている。 税理士、社会保険労務士、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、測量士補、CFP、FP技能検定1級、年金アドバイザー2級、証券外務員1種などの資格を保有。

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