個人年金の受け取りに税金はかかる?損をしない対策や確定申告が必要なケースも!


個人年金の受け取りに税金はかかる? 損をしない対策も!
個人年金保険を受け取る際「税金はかかる?」「確定申告は必要?」と不安に感じる人は多いでしょう。 個人年金にかかる税金は、契約者と受取人の関係や、年金形式か一括受け取りかといった受取方法によって大きく異なります。 また、雑所得や一時所得の対象となる場合でも、必要経費や所得から差し引ける控除を正しく計算すれば、税金がかからないケースも少なくありません。 この記事では、個人年金の受取時にかかる税金の仕組みや計算方法、確定申告が必要なケースや損をしないための対策を解説します。
- 目次
- 個人年金の受取時に税金はかかる?
- 【契約者=受取人】の場合は所得税の対象になる
- 【契約者≠受取人】の場合は贈与税の対象になる
- 受給開始後に被保険者が死亡した場合、未支給年金に税金はかかる?
- 【契約者=被保険者=受取人】の場合
- 【契約者=受取人・被保険者は別の人】の場合
- 【契約者=被保険者・受取人が別の人】の場合
- 【被保険者=受取人・契約者は別の人】の場合
- 個人年金の解約返戻金を受け取った場合に税金はかかる?
- 確定年金を5年以内に解約した場合は20%の源泉分離課税が適用される
- 【契約者≠受取人】の場合は解約返戻金全額が贈与税の対象になる
- 個人年金受給時にかかる税金の計算方法とは?
- 雑所得の計算方法は【総収入金額-必要経費】
- 一時所得の計算方法は【総収入金額-必要経費-50万円(特別控除)】
- 所得税の計算方法
- 贈与税の計算方法
- 個人年金の受取時に確定申告が必要なケースとは?
- 給与所得のある人
- 公的年金を受け取っている人
- 個人年金で損をしないための対策とは?
- 契約者と受取人を同じ人にする
- 年金形式で受け取る
- 個人年金の税金に関するQ&A
- 個人年金を据え置きにしている場合は税金はかかる?
- 年金受給開始前に被保険者が死亡した場合はどうなる?
- 生命保険料控除とはどんな制度?
- まとめ・個人年金の税金は契約形態や受取方法で異なる
個人年金の受取時に税金はかかる?

個人年金を受け取る際に税金がかかるかどうかは、「誰が保険料を負担したか=契約者」や「誰が受け取るか=受取人」、さらに、年金形式か一括かなどの受取方法によって、以下のように異なります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 対象になる |
|---|---|---|---|
夫 | 夫 | 夫 | 所得税 |
夫 | 妻 | 夫 | |
夫 | 夫 | 妻 | 贈与税 (2年目以降 所得税) |
夫 | 妻 | 妻 |
なお、この記事では「契約者=保険料を支払っている人」として解説しますが、契約者以外の人が保険料を負担していた場合には、税務上は「贈与」とみなされる可能性があるため注意しましょう。
個人年金保険とは?わかりやすく解説!入らない方がいいって本当!?
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【契約者=受取人】の場合は所得税の対象になる
契約者と受取人が同一人物の場合、個人年金の受給額は原則として所得税の課税対象になります。ただし、受取方法によって所得区分が異なります。
年金形式で受け取る場合は雑所得になる
毎年一定額を受け取る年金形式の場合、個人年金の受給額は雑所得に該当します。受取額から必要経費相当額を差し引いた金額が課税対象となり、他の所得と合算して所得税が計算されます。
一括で受け取る場合は一時所得になる
年金総額をまとめて受け取る一括受取の場合、個人年金の受給額は一時所得に該当します。
一時所得には最大50万円の特別控除があるため、同じ受取額でも年金形式より税負担が軽くなるケースもあります。
※1:国税庁|No.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金
【契約者≠受取人】の場合は贈与税の対象になる
契約者と受取人が異なる場合は、年金を受け取る権利そのものが贈与されたと判断され、初年度に「年金受給権」の評価額が贈与税の対象になります。
年金受給権の評価額(以下のうちもっとも大きな金額)
- 解約返戻金
- 一括受け取りした場合の金額
- 予定利率に基づき算出された金額
年金受給権の評価額は、上記のうちもっとも大きい金額になります。
2年目以降は1年目の評価額より増えた分が所得税の対象になる
2年目以降は、すでに贈与された受給権をもとに生じた運用益や増加分が、所得税の対象となります。
なお、すでに贈与税を支払った部分は二重課税にならないよう調整されるため、2年目以降の雑所得額は「契約者=受取人」の場合よりも少なくなることが一般的です。
受給開始後に被保険者が死亡した場合、未支給年金に税金はかかる?

個人年金の受給開始後に被保険者が亡くなった場合、未支給分の年金は一般的に遺族が受け取ります。
未支給年金を受け取る際にかかる税金も、契約形態や受取方法により以下のように異なります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 死亡後の | かかる税金 |
|---|---|---|---|---|
本人 | 本人 | 本人 | 配偶者 | 一括:相続税 |
本人 | 本人 | 配偶者 | 配偶者 | 一括:所得税(一時所得) |
本人 | 配偶者 | 本人 | 本人 | 一括:所得税(一時所得) |
本人 | 配偶者 | 配偶者 | 本人 | 【契約者が受け取る場合】 |
子など | 【契約者以外が受け取る場合】 |
詳細を確認してみましょう。
【契約者=被保険者=受取人】の場合
「契約者=被保険者=受取人」の場合で未払い分の年金を遺族が受け取る場合は、基本的に相続税の課税対象になります。
例
- 契約者:夫
- 被保険者:夫
- 受取人:夫
- 死亡後の受取人:妻
未支給年金を一括で受け取る場合は、年金受給額が相続税の対象になります。
年金形式で受け取る場合は、初年度は年金受給権の評価額が相続税の対象になり、2年目以降は相続税が課税されていない部分が雑所得になり、所得税の対象になります。
【契約者=受取人・被保険者は別の人】の場合
「契約者=受取人」で被保険者が別の人の場合、契約者本人が死亡後も受取人となるため、未払い分の年金は所得税の課税対象になります。
例
- 契約者:夫
- 被保険者:妻
- 受取人:夫
- 死亡後の受取人:夫
未支給年金を一括で受け取ると一時所得、年金形式で受け取ると雑所得となり、他の所得と合算され所得税が算出されます。
【契約者=被保険者・受取人が別の人】の場合
「契約者=被保険者」で受取人が別の人の場合、年金受給開始時点で年金受給権に対する贈与税が発生しているため、未支給年金は所得税の課税対象になります。
例
- 契約者:夫
- 被保険者:夫
- 受取人:妻
- 死亡後の受取人:妻
未支給年金を一括で受け取ると一時所得、年金形式で受け取ると雑所得となり、他の所得と合算され所得税が算出されます。なお、すでに贈与税の対象となっている部分については、二重課税にならないよう調整されます。
【被保険者=受取人・契約者は別の人】の場合
「被保険者=受取人」で契約者が別の人の場合、受取人が誰になるかで税金の種類が異なります。
例
- 契約者:夫
- 被保険者:妻
- 受取人:妻
- 死亡後の受取人:夫もしくは子
契約者が未支給年金を受け取る場合、一括で受け取ると一時所得、年金形式で受け取ると雑所得となり、他の所得と合算され所得税が算出されます。
子どもなどの契約者以外の人が未支給年金を受け取る場合、初年度は年金受給権の評価額が相続税の対象、2年目以降は相続税が課税されていない部分が雑所得になり、所得税の対象になります。
※2:国税庁|No.1615 遺族の方が支払を受ける個人年金
個人年金の解約返戻金を受け取った場合に税金はかかる?

個人年金保険を解約すると解約返戻金を受け取れることがありますが、解約返戻金に税金がかかるかどうかは解約返戻金の金額や払込済保険料の金額、契約形態によって決まります。
解約返戻金が払込済保険料を上回らなければ、原則として税金はかかりません。
一方、解約返戻金が払込済保険料よりも多い場合は、増えた部分が課税対象となります。
契約者=受取人
解約返戻金:320万円
払込済保険料:300万円
上記のケースの場合は、差額の20万円が一時所得として所得税の課税対象になります。
ただし、一時所得には50万円の特別控除があるため、実際には課税されないケースが多いのが実情です。
確定年金を5年以内に解約した場合は20%の源泉分離課税が適用される
確定年金を5年以内に解約した場合は、20%の源泉分離課税が適用されます。
この場合、保険会社があらかじめ税金を差し引き、源泉徴収のみで課税関係が終了するため、原則として確定申告は不要です。
【契約者≠受取人】の場合は解約返戻金全額が贈与税の対象になる
「契約者≠受取人」の場合は、解約返戻金全額が贈与税の対象になります。解約返戻金の金額によっては贈与税の負担が大きくなるため、契約形態には注意が必要です。
個人年金受給時にかかる税金の計算方法とは?

個人年金を受け取る際にかかる税金は、契約形態や受取方法により異なります。ここでは、所得税や贈与税、雑所得や一時所得の計算方法を解説します。
雑所得の計算方法は【総収入金額-必要経費】
雑所得は「総収入金額-必要経費」で計算します。
総収入金額とは、1年間で実際に受け取った個人年金の金額のこと。必要経費とは、払込済保険料のこと。年間の必要経費は「1年間の年金受取額 ×(払込保険料の総額 ÷ 年金の総支給見込額)」で計算します。
雑所得とは?収入から差し引ける控除や確定申告不要なケースを解説!
確定年金の場合のシミュレーション
実際に、確定年金を例に計算してみましょう。
前提条件
- 1年間の年金受給額:60万円(受取期間10年)
- 払込保険料:年間15万円(払込期間25年)
払込保険料の総額は、15万円 × 25年 = 375万円
年金の総支給見込額は、60万円 × 10年 = 600万円
必要経費は、60万円 × (375万円 ÷ 600万円 )= 37万5,000円
雑所得の金額は、60万円 - 37万5,000円 = 22万5,000円
上記のケースの場合、22万5,000円 が雑所得として課税対象になります。
終身年金の場合のシミュレーション
次に、終身年金の例を見てみましょう。
前提条件
- 1年間の年金受給額:48万円
- 払込保険料:年間20万円(払込期間30年)
- 受取時の平均余命:22年とする
払込保険料の総額は、20万円 × 30年 = 600万円
年金の総支給見込額は、48万円 × 22年 = 1,056万円
必要経費は、48万円 × (600万円 ÷ 1,056万円) = 約27万3,000円
雑所得の金額は、48万円 - 27万3,000円 =20万7,000円
上記のケースの場合、20万7,000円が雑所得として課税対象になります。
一時所得の計算方法は【総収入金額-必要経費-50万円(特別控除)】
一時所得は「総収入金額-必要経費-50万円(特別控除)」で計算します。さらに、この計算結果の1/2が、実際に課税対象となる所得金額になります。
一時所得のシミュレーション
例として、一時所得を計算してみましょう。
前提条件
- 一括で受け取った金額:520万円
- 払込保険料の総額:430万円
一時所得は、520万円 - 430万円 - 50万円 = 40万円
課税対象となる金額は、40万円 ÷ 2 = 20万円
上記のケースの場合、20万円 が他の所得と合算されて所得税・住民税の計算対象になります。
一時所得とは?計算方法や税率・確定申告不要なケースや雑所得との違いも!
所得税の計算方法
雑所得や一時所得を計算したら、実際に納めるべき所得税を計算してみましょう。
所得税の計算方法の流れ
- 総合課税の対象となる所得額を確認する
- 総合課税の対象となる所得を合算する
- 控除額を差し引き、課税所得額の計算をする
- 課税所得額に税率を掛けて所得税を計算する
雑所得・一時所得は総合課税として他の所得と合算する
個人年金で発生した雑所得や一時所得に対する所得税は、その所得単体で決まる訳ではありません。
実際に支払う税額は、総合課税の対象となる所得をすべて合算し、各種控除を差し引き、課税所得に応じた税率を掛けて計算します。
総合課税と申告分離課税
- 総合課税:総合課税対象の所得を合計し、その合計所得に対して税額を計算する方法
- 申告分離課税:他の所得と合算せずに該当所得を分離して税額を計算する方法
つまり、年金の受け取りによって税金がかかるかどうかは、他の収入や控除の状況によっても変わります。なお、雑所得・一時所得はいずれも総合課税の対象です。
総合課税対象の所得
- 利子所得(源泉分離される所得・特定公社債等の利子等を除く)
- 配当所得(源泉分離される所得を除く)
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 譲渡所得(土地・建物・株式等の譲渡による所得を除く)
- 一時所得(源泉分離される所得を除く)
- 雑所得(株式等の譲渡による所得・源泉分離される所得を除く)
基礎控除など所得から差し引ける控除額を差し引く
なお、所得から以下のような控除を差し引いた結果が0円以下の場合は、所得税は課税されません。
所得から差し引ける主な控除
- 基礎控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 社会保険料控除
- 医療費控除 など
年金受給者の場合は控除額が大きくなるケースが多いため、結果的に税金が発生しないケースが多いのが実情です。
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課税所得額に応じた税率を掛けて所得税を計算する
合計課税所得金額を計算したら、以下の表で税率を確認し、所得税を計算します。
■所得税の税率
総所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
1,000円以上 | 5% | 0円 |
1,950,000円以上 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円以上 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円以上 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円以上 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円以上 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
2013年から2037年までは、所得税の他に復興特別所得税として「基準所得税×2.1%」も課税されます。
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※5:国税庁|所得税のしくみ
※6:国税庁|No.2260 所得税の税率
贈与税の計算方法
個人年金で受け取った金額に贈与税がかかる場合の課税対象となる金額は「年金受給権の評価額 - 110万円(基礎控除)」で計算します。
年金受給権の評価額(以下のうちもっとも大きな金額)
- 解約返戻金
- 一括受け取りした場合の金額
- 予定利率に基づき算出された金額
課税金額を計算したら、贈与税の税率を掛けて納めるべき贈与税額を計算します。一般税率とは、「兄弟間・夫婦間・親から子への贈与で子が未成年者の場合」などのケースです。
■贈与税の税率(一般税率)
課税金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
200万円以下 | 10% | ー |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
以下の特例税率は、直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与の場合に適用されます。
■贈与税の税率(特例税率)
課税金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
200万円以下 | 10% | ー |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
※7:国税庁|No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
贈与税のシミュレーション
実際に、年金受給権が贈与されたケースを想定して計算してみましょう。
前提条件
- 親から子への贈与
- 年金受給権の評価額:620万円
課税金額は、620万円 - 110万円 = 510万円
贈与税額は、510万円×30%−65万円=88万円
上記のケースの場合、贈与税は88万円になります。
個人年金の受取時に確定申告が必要なケースとは?

個人年金を受け取ったからといって、必ず確定申告が必要になる訳ではありません。申告が必要かどうかは、個人年金の受給額や他の所得の有無、扶養や控除の状況によって変わります。
確定申告が必要なケースは、所得から各種所得控除を差し引いた結果、課税される金額が残る場合です。
主に必要なケースは以下で解説しますが、「他の所得と合算して20万円を超えるか」や「各種控除を差し引いても課税所得が残るか」を目安に判断しましょう。
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給与所得のある人
確定申告が必要な主なケース1つ目は、給与所得のある人です。
具体的には、給与所得があり、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合は確定申告が必要になります。
ただし、個人年金の雑所得や一時所得は、必要経費や各種控除を差し引いたあとの金額で判断します。
そのため、給与以外の所得が個人年金だけの場合、利率が極端に高い個人年金でない限りは確定申告が必要なケースは少ないでしょう。
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公的年金を受け取っている人
確定申告が必要な主なケース2つ目は、公的年金を受け取っている人です。
老齢基礎年金や老齢厚生年金を受給しており、以下のうち1つでも該当する場合は、確定申告が必要になります。
確定申告が必要なケース
- 老齢年金の収入金額が年間400万円を超える
- 源泉徴収されていない公的年金を受け取っている
- 公的年金以外の所得が20万円を超える
「公的年金以外の所得」には、個人年金による雑所得や一時所得も含まれるため、確認が必要です。
個人年金で損をしないための対策とは?

個人年金は老後資金を計画的に準備できる一方で、契約形態や受取方法次第では、税金面で思わぬ損をする可能性があります。
ここでは、個人年金で損をしないために特に意識しておきたい2つの対策を解説します。
契約者と受取人を同じ人にする
1つ目の対策は、契約者と受取人を同じ人にすることです。
契約者と受取人が別の人の場合、年金の受給開始時に「年金受給権の贈与」とみなされ、贈与税が課税されることがあります。
贈与税は、所得税と比べて税率が高く設定されています。さらに、個人年金のような長期契約では年金受給権の評価額が110万円の基礎控除を超えやすいため、一度に高額な贈与税が発生する可能性が高いのです。
一方、契約者と受取人が同じ人の場合は所得税の対象となり、贈与税より税負担が少なく済む傾向にあります。個人年金の契約時には、契約者と受取人を同じ人にすることが重要です。
すでに契約者と受取人が別の個人年金を契約をしている場合でも、途中で契約内容を変更し、契約者と受取人を同一人物にすることは可能です。
変更前に支払った保険料に対応する年金部分 → 贈与税の対象
変更後に支払った保険料に対応する年金部分 → 所得税の対象
ただし、上記のように変更前と後で課税対象の税金が異なることは把握しておきましょう。
年金形式で受け取る
2つ目の対策は、一括受け取りではなく、年金形式で受け取ることです。
個人年金の受取方法には「一括受け取り」と「年金形式」があり、税金面だけを見ると、一括受け取りのほうが有利に見えるケースもありますが、実際には年金受け取りの方が受給総額が高くなるケースがあります。
まずは、税額の比較イメージを見てみましょう。
前提条件
- 1年間の年金受給額:45万円(受取期間10年)
- 一時金で受け取る場合の年金受給額:430万円
- 払込済保険料:年間10万円(払込期間30年)
年金形式で受け取る場合、雑所得の課税対象額は1年あたり約12万円。一括で受け取る場合、一時所得の課税対象額は40万円になります。
所得税率を5%とすると、税額は以下のようになります。
年金形式の場合(10年間合計):12万円 × 5% × 10年 = 約6万円
一括受け取りの場合(1回のみ):40万円 × 5% = 約2万円
上記のように、税金だけを見ると一括受け取りのほうが少なくなります。ただし、一括で受け取る場合の金額は年金形式で受け取る総額より少なく設定されることが多いです。
上記のケースでも、年金形式の場合の総額は「45万円×10年間」=450万円ですが、一括受け取りの場合は430万円と20万円の差があります。
また、所得税を計算する際には他の所得の有無や所得から控除される金額により、所得税が軽減される可能性も多いのです。
これらのことを総合すると、まとまった資金が必要でない限り、個人年金は年金形式で受け取ったほうが損をする可能性が低いといえるでしょう。
個人年金の税金に関するQ&A

最後に、個人年金の税金に関するQ&Aをご紹介します。
個人年金を据え置きにしている場合は税金はかかる?
据え置きにしている場合でも税金はかかります。
個人年金は据え置くことも可能ですが、税務上では年金の支払日が属する年の所得として扱われます。
そのため、実際にはまだ年金を受け取っていなくても、年金を受け取った場合と同様に所得税の課税対象となり、確定申告や納税が必要になる場合があります。
また、据え置き期間中に発生する据え置き利息については、毎年の雑所得として課税されます。
なお、据え置いていた元本部分は据え置き開始時点ですでに課税関係が完了しているため、引き出した際に税金はかかりません。
年金受給開始前に被保険者が死亡した場合はどうなる?
年金受給開始前に被保険者が死亡した場合、遺族は「年金」ではなく、「死亡保険金」として受け取ることになります。
死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があるため、死亡保険金のうち、非課税枠を超えた分が相続税の対象になります。
さらに、相続税には「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」の基礎控除があるため、死亡保険金を含めて相続財産が基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。
詳しくは以下の記事をご参考ください。
死亡保険金に相続税がかかるケースは?重要なのは非課税枠と基礎控除
生命保険料控除とはどんな制度?
生命保険料控除とは、1年間に支払った生命保険料に応じて、所得から一定額を差し引ける制度のこと。年末調整や確定申告で申告することにより、所得税や住民税の負担を軽くする効果があります。
生命保険料控除には、以下の3つの区分があります。
生命保険料控除の区分
- 一般生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
一定の条件を満たした個人年金保険は、個人年金保険料控除を受けることが可能。一般生命保険料控除や介護医療保険料控除とは別枠で控除が受けられます。
ただし、個人年金保険料控除を受けるためには、以下の条件を満たす必要があるため、注意しましょう。
個人年金保険料控除を受けるための主な条件
- 受取人が保険料を支払う契約者本人、または、その配偶者である
- 受取人が被保険者本人である
- 保険料の払込期間が10年以上ある
- 年金の受給開始年齢が60歳以上で、支払期間が10年以上ある
上記の条件に当てはまらない個人年金保険の場合は、一般生命保険料控除が利用可能です。
詳しくは以下の記事をご参考ください。
個人年金保険とは?わかりやすく解説!入らない方がいいって本当!?
まとめ・個人年金の税金は契約形態や受取方法で異なる
個人年金保険の税金は、契約者と受取人の関係や年金形式か一括受け取りかによって、課税対象となる税金の種類が異なります。
雑所得や一時所得の課税対象となる場合でも、必要経費や各種控除を正しく計算すれば、実際には税金がかからないケースも少なくありません。
また、確定申告が必要かどうかは、個人年金だけで判断するのではなく、給与や公的年金など他の所得との合算や控除後の課税所得額で見極めることが重要です。
個人年金で損をしないためにも仕組みを正しく理解し、自分の状況に合った受取方法を選びましょう。
参考資料
国税庁|No.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金
国税庁|No.1615 遺族の方が支払を受ける個人年金
国税庁|No.1500 雑所得
国税庁|No.1490 一時所得
国税庁|所得税のしくみ
国税庁|No.2260 所得税の税率
国税庁|No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁|No.1140 生命保険料控除
この記事の監修者

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。






