上場企業とは?上場企業で働くメリットから非上場との違いまで徹底解説!
上場企業とは? 株式会社の仕組みからメリット・デメリットまで!
転職活動をする際に「上場企業」という言葉を耳にする機会も多いでしょう。上場企業と聞くと「大手」「安定」などのイメージをもつ人が多いと思いますが、上場企業の意味を答えられる人は少ないかもしれません。 この記事では、上場企業の定義はもちろん、上場企業を把握するための株式会社の仕組みや上場企業で働くメリット・デメリットを解説します。 転職先の企業をどのような基準で選んだらいいのか迷っている人は、ぜひ参考にしてください。
- 目次
- 上場企業とは?
- 上場企業とは証券取引所で上場株式を公開している企業のこと
- 上場企業の数と割合
- 上場企業の調べ方
- 東京証券取引所の株式市場の種類
- プライム市場
- スタンダード市場
- グロース市場
- 上場企業と非上場企業の違いとは?
- 一般投資家への株式の公開
- 株式の主な保有者
- 企業情報の公開範囲
- 上場企業で働くメリットは?
- 社会的な信用度が高くなる
- 労働環境が福利厚生が整っている
- 規模の大きい仕事に関われる可能性が高い
- 評価制度が明確である企業が多い
- 上場企業で働くデメリットは?
- 【上場企業で働く】という責任が生じる
- コンプライアンスが厳しい
- 他の企業から買収される可能性がある
- 安定している大企業でも非上場なのはなぜ?
- まとめ・必ずしも【大企業=上場企業】とは限らない
上場企業とは?
まずは、上場企業の定義を確認しておきましょう。
上場企業とは証券取引所で上場株式を公開している企業のこと
上場企業とは、証券取引所で上場株式を公開している企業のことです。
証券取引所で株式を公開できるのは、株主数や流通株式数、事業継続年数や利益額など、一定の基準をクリアした企業のみです。定められた基準をクリアした企業が上場企業と呼ばれます。
上場企業を把握するための基礎知識①株式会社とは
上場企業の定義をより深く理解するために、株式会社の仕組みを確認しておきましょう。
企業が事業を拡大したいと考えたとき、まず必要になるのは資金です。事業拡大のための資金を自社で準備できる企業は問題ありませんが、事業規模によっては自社で資金調達が難しい場合もあるでしょう。
自社以外から資金を調達する方法はいくつかありますが、その中の1つに「証券を発行する」方法があります。この場合の証券に該当するのが「株式」。株式を発行する会社を「株式会社」といいます。
株式を購入した株主は、企業の経営に参加することが可能になります。また、企業の収益に応じた配当金や、株主優待の特典を得ることも可能です。
上場企業が発行する株式は、証券取引所を通じて公開されるため、企業・個人を問わず多くの人が購入可能になります。その結果、企業は資金調達が可能になるのです。株式は融資とは異なるため、返済の必要もありません。
ただし、上場していない「非上場企業」の株式は証券取引所に公開されていないため、一般の人が簡単に購入することは難しいのが現状。そのため、非上場企業より上場企業の方が資金調達がしやすい側面があります。
上場企業を把握するための基礎知識②証券取引所とは
証券取引所とは、上場した企業の株式を売買する場所のこと。上場企業と投資家をつなぐ窓口のようなところです。
現在、日本には東京・札幌・名古屋・福岡の4か所の証券取引所がありますが、上場企業のうち約8割が東京証券取引所に上場しています。
東京証券取引所で一般の投資家が参加できる市場は「プライム・スタンダード・グロース」の3つ。詳細は後ほど解説します。
シニアこそ株式投資を始めるべき!株式との向き合い方とは?
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上場企業の数と割合
日本取引所グループ(JPX)のデータによると、現在日本で上場している企業は3,958社。そのうち外国会社は6社あります。(2024年11月末日現在)
プライム | 1,641 |
---|---|
スタンダード | 1,592 |
グロース | 597 |
TOKYO PRO Market | 128 |
合計 | 3,958 |
なお、総務省の発表によると2021年6月1日時点の日本の企業数は3,684,049社のため、上場企業の割合は全体のわずか0.1%程度。日本の企業のほとんどが非上場業であることがわかります。
※1:日本取引所グループ
※2:総務省|令和3年経済センサス‐活動調査
上場企業の調べ方
上場企業は、日本取引所グループのWEBサイトや会社四季報、証券会社の上場会社情報などで調べることが可能です。
東京証券取引所の株式市場の種類
代表的な証券取引所である東京証券取引所では、3つの市場区分があります。
東京証券取引所の市場区分
- プライム市場
- スタンダード市場
- グロース市場
東京証券取引所にある「TOKYO PRO Market」はプロ投資家向けの市場のため、ここでは上記3つの市場の解説を行います。
なお、現在の市場区分になったのは2022年4月4日からです。それ以前は、以下のように「東証一部」「東証二部」「JASDAQ(スタンダード・グロース)」「マザーズ」の4つの市場がありました。
しかし、東証一部上場企業の数が増加し過ぎたことにより、最上位市場の質の低下が問題視され、現在の3つの市場区分に編成されることになり、現在に至ります。
プライム市場
プライム市場は、新規上場・上場維持基準がもっとも厳しい最上位の市場で、再編前の「東証一部」に相当します。
項目 | 新規上場基準 | 上場維持基準 |
---|---|---|
株主数 | 800人以上 | |
流通株式数 | 20,000単位以上 | |
流通株式 | 100億円以上 | |
売買代金 | 時価総額 | 平均売買代金 |
流通株式 | 35%以上 | |
収益基盤 |
| ー |
財政状態 | 純資産額50億円以上 | 純資産額が正 |
※3:日本取引所グループ|プライム市場の上場基準を基に作成
プライム市場は世界をリードする位置づけではありますが、編成前の東証一部に比べると、基準は大幅に緩和されました。
【一部上場企業】という呼び名は2022年4月に廃止された
「一部上場企業」という言葉に聞き馴染みがある人もいるでしょう。
一部上場企業とは、編成前の東証一部に上場している企業を意味する言葉でした。しかし、2022年4月に市場区分が編成されてからは「一部上場企業」という言葉は廃止されています。
スタンダード市場
スタンダード市場は主に国内向けの市場で、編成前の「東証二部」「JASDAQのスタンダード」「東証一部のうちプライム市場の基準に満たない企業」の基準が統一された市場になります。
項目 | 新規上場基準 | 上場維持基準 |
---|---|---|
株主数 | 400人以上 | |
流通株式数 | 2,000単位以上 | |
流通株式 | 10億円以上 | |
売買高 | ー | 月平均 |
流通株式 | 25%以上 | |
収益基盤 | 最近1年間の利益が | ー |
財政状態 | 純資産額が正であること |
※3:日本取引所グループ|プライム市場の上場基準を基に作成
スタンダード市場は日本経済の中核と位置づけられています。
グロース市場
グロース市場はスタートアップ企業など成長の可能性の高い企業向けの市場で、編成前の「マザーズ」「JASDAQのグロース」の基準が統一された市場になります。
項目 | 新規上場基準 | 上場維持基準 |
---|---|---|
時価総額 | ー | 上場10年経過後 |
株主数 | 150人以上 | |
流通株式数 | 1,000単位以上 | |
流通株式 | 5億円以上 | |
売買高 | ー | 月平均 |
流通株式 | 25%以上 |
※3:日本取引所グループ|プライム市場の上場基準を基に作成
グロース市場は、成長する可能性の高い企業や新規事業に参入するような新興企業、ベンチャー企業などが多く対象になっています。
上場企業と非上場企業の違いとは?
上場企業と非上場企業にはいくつかの明確な違いがあります。
上場企業と非上場企業の違い
- 一般投資家への株式の公開
- 株式の主な保有者
- 企業情報の公開範囲
詳細を確認していきましょう。
一般投資家への株式の公開
1つ目は、一般投資家へ株式を公開しているか否かです。
上場企業の株式は証券取引所を通して一般投資家へ公開しており、企業・個人を問わず多くの人が株式の売買が可能な状態になっています。
一方、非上場企業の場合は、一般投資家への株式公開は行っておりません。
株式の主な保有者
2つ目は、株式の主な保有者です。
上場企業の株式は、証券会社に口座を持っている人ならば誰でも売買可能です。企業はもちろん、多くの個人投資家も上場企業の株主になれます。
一方、非上場企業の株式は公開されていないため、売買取引は所有者間で直接行われることが一般的です。そのため、会社の役員や関連会社の従業員などが株主になることが多いです。
企業情報の公開範囲
3つ目は、企業情報の公開範囲です。
株価は企業情報により日々変化することから、上場企業には以下の情報の公開が義務付けられています。
上場企業が義務付けられている情報
- 財務内容・事業の概要を記載した有価証券報告書の提出
- 新株の発行・合併・新規事業の開始などの決定事実
- 大株主の異動や訴訟の提起などの発生事実
- 決算内容・業績・業績予想の修正などの決算情報
上場企業が四半期ごとにこれらの情報を公開することにより、株主は適正な株の売買が行えるようになっています。
一方、非上場企業にはこれらの情報公開義務がないため、年に一度の決算報告を公開するだけで問題ありません。
上場企業で働くメリットは?
では、上場企業で働く従業員にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
社会的な信用度が高くなる
1つ目のメリットは、社会的な信用度が高くなることです。
企業が上場するためには、一定の基準をクリアする必要があります。そのため、上場企業自体は社会的信用があるとされていますが、上場企業で働く社員も社会的信用度が高いと判断される傾向にあるのです。
上場企業で働く社員の年収は一般的に高いと言われています。上場企業の社員は安定した収入があると判断されるため、クレジットカードや住宅ローンの審査が通りやすい傾向にあります。
「上場企業で働いている」ということで、初対面の人にも信用されやすい側面もあるでしょう。
労働環境が福利厚生が整っている
2つ目のメリットは、労働環境が整っていることです。
企業が上場を維持するためには収益性はもちろん、労務管理体制も整えないとなりません。そのため、上場企業は賃金や労働時間、福利厚生などを充実させる企業が多い傾向にあります。
多様な働き方が求められる現在、転職する際に福利厚生を重視する人は多くなりました。優秀な人材を確保するためにも、資金力のある上場企業は福利厚生を充実させることができるのです。
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規模の大きい仕事に関われる可能性が高い
3つ目のメリットは、規模の大きい仕事に関われる可能性が高いことです。
上場企業は証券取引所を通して、多くの投資家から資金を調達することが可能です。そのため、大規模なプロジェクトを立ち上げる企業も多く、従業員の能力によっては規模の大きい仕事に関われる可能性があります。
「海外でビックプロジェクトに貢献したい」などの熱い想いを抱いている人にとっては、大きなメリットになるでしょう。
評価制度が明確である企業が多い
4つ目のメリットは、評価制度が明確である企業が多いことです。
上場基準をクリアした企業は、透明性の高い労務体制であることが認められています。そのため、社員の昇給や賞与などの評価制度が明確であることが多いです。
また、昇格に関する評価制度も明確な基準が設けられていることが多いため、人事制度への不満が生じにくく、キャリアアップしやすい体制が整っている企業が多いです。
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上場企業で働くデメリットは?
何事も良い面があれば悪い面もあるものです。ここでは、上場企業で働くデメリットをご紹介します。
【上場企業で働く】という責任が生じる
1つ目のデメリットは、「上場企業で働く」という責任が生じることです。
上場企業は、株主に対して企業を成長させる責任が生じます。上場した後も上場を維持するために、それまでと同様以上の業績が求められますが、それは上場企業で働く社員も同じです。
会社名を背負うことにやりがいを感じる人には問題ありませんが、逆にプレッシャーに感じてしまう人にはデメリットになるでしょう。
コンプライアンスが厳しい
2つ目のデメリットは、コンプライアンスが厳しいことです。
上場企業は経営方針や実績を公開する義務があるため、比較的コンプライアンスが厳しいことが多いです。日常業務の中でも、コンプライアンスが守られているかチェックされることも多く、それを窮屈に感じてしまう人もいるでしょう。
また、株主の意向を尊重しなくてはならない面もあるため、新しい事業を起こしたくても融通が利かない一面もあります。
「今までにやってこなかった画期的なプロジェクトを始めたい」という想いがある場合、さまざまな人に承認を得ないとならない上場企業では、スピードよく進めることは難しいでしょう。
他の企業から買収される可能性がある
3つ目のデメリットは、他の企業から買収される可能性があることです。
上場企業の株式は証券取引所で公開されているため、競合他社による買い占めや敵対的買収をされる可能性があります。
買収された結果、良い方向に進めば問題ありませんが、社員の給与や福利厚生、業務内容や役職などが悪い方向に変わってしまう可能性も考えられます。
安定している大企業でも非上場なのはなぜ?
「上場企業=大企業」というイメージを持つ人は多いでしょう。実際に上場している大企業はたくさんありますが、安定した経営を継続しているにも関わらず、あえて上場しない企業もあります。
■非上場の大企業の例
アサヒ飲料株式会社
カルピス株式会社
サントリーホールディングス株式会社
株式会社ロッテ
エースコック株式会社
株式会社日立ソリューションズ
株式会社バンダイ
ENEOS株式会社
株式会社朝日新聞社
株式会社小学館
株式会社日立システムズ
株式会社日本ヒューレット・パッカード
日本IBM株式会社
佐川急便株式会社
ENEOS株式会社
株式会社みずほ銀行
野村證券株式会社
株式会社大創産業(ダイソー)
大正製薬株式会社
大塚製薬株式会社
YKK株式会社
ヤンマーホールディングス株式会社
株式会社竹中工務店 など
これらの企業はなぜ、上場する基準を満たしているにも関わらず非上場のままでいるのでしょうか?
あえて上場しない主な理由
- 資金調達をする必要がない
- 株主の意見に左右されたくない
- すでにブランドイメージが確立されている
- 買収リスクを防ぎたい など
上記の会社名を見て分かる通り、大企業なのに上場しない会社はすでにブランドイメージが確立している会社がほとんどです。安定した経営を続けていることもあり、資金調達をする必要がない企業も多いようです。
他には、株主の意見に左右されず自社の方針を貫きたい、予想外の買収リスクを防ぎたい、などの上場企業のデメリットでお伝えした内容が理由になっています。
まとめ・必ずしも【大企業=上場企業】とは限らない
上場企業とは、証券取引所で上場株式を公開している企業のこと。証券取引所で株式を公開できるのは、株主数や流通株式数、事業継続年数や利益額など、一定の基準をクリアした企業のみです。
上場企業の割合は日本企業全体のわずか0.1%程度。日本企業のほとんどが非上場業ということになります。
上場企業で働く社員には「社会的な信用度が高くなる」「労働環境が整っている」などのメリットがありますが、「コンプライアンスが厳しい」「買収される可能性がある」などのデメリットもあります。
安定した経営を続ける大手企業でも上場しない企業もたくさんあります。そのため、必ずしも「大手企業=上場企業」ではありません。
転職する際「上場・非上場」を1つの目安にするのも良いですが、会社の業績や方針、給与や福利厚生など全体を把握して企業選びを行うことが重要です。
参考資料
日本取引所グループ
総務省|令和3年経済センサス‐活動調査
日本取引所グループ|プライム市場の上場基準
日本取引所グループ|上場会社の情報開示
この記事の監修者
岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。