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100歳まで生きる人の特徴に学ぶ、健康長寿の秘訣

高橋正美 【健康管理士一般指導員】

人生100年時代を元気に楽しく生きるためには、健康の維持が欠かせません。そこで100歳を超えても元気に生きる人の特徴に迫り、長寿の秘訣を探ります。

目次

100歳以上の人口は153人から8万6,510人に増加

日本の100歳以上の人口は、2021年時点で8万6,510人にものぼります(住民基本台帳に基づくデータより)。
老人福祉法が制定された1963(昭和38)年当時の100歳以上の人口は、わずか153人でしたので、この50〜60年ほどで565倍も増加しているということです。
現時点で65歳の人が100歳まで生きる割合は、男性では1%、女性では6%程度だと考えられています。

参考資料
「100歳まで生きる」が 当たり前の時代に? - 厚生労働省

これからの時代、100歳まで生きることは珍しくなくなっていくでしょう。
その一方で、平均寿命と健康寿命には、男性で9歳弱、女性で12歳もの差があり、不健康な状態で過ごす期間が長いこともわかっています。
日本の男女別の平均寿命と健康寿命の差グラフ(令和元年版)
出典:健康寿命の令和元年値について - 厚生労働省(P2「健康寿命の推移」より)

人生100年時代を生き生きと過ごすには、フレイル(健康と要介護の間にある、老衰で虚弱した状態)を予防し、健康な状態を維持する努力が欠かせません。

【フレイルの概念図】
フレイルの概念図
そこで、100歳以上の元気に過ごす人たちの特徴を取り上げ、そこから健康長寿のヒントをもらうことにしましょう。

参考資料
百歳高齢者表彰の対象者は43,633人(2021年9月14日発表の厚生労働省プレスリリース)

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元気な100歳は「睡眠満足度」が高い

まずは「100歳まで楽しく歩こうプロジェクト」に取り組むキューサイ株式会社の「100歳100人 実態調査 2021」という調査資料を参考に、100歳の人の睡眠に関する実態を探っていきましょう。

参考資料
「100歳100人 実態調査 2021」コロナ禍でも変わらない元気な100歳の長寿の秘訣 元気な100歳以上の85%以上は9時間以上睡眠!|キューサイ株式会社のプレスリリース

この調査で、元気な100歳以上の100人に対して睡眠時間について聞いたところ、9時間以上の睡眠をとっている人は85人にのぼり、そのうち11時間以上寝ている人は46人もいることがわかりました。

【グラフ1】100歳の睡眠時間(キューサイ調べ)
【グラフ1】100歳の睡眠時間(キューサイ調べ)

就寝時間は21時台と回答した人の割合がもっとも多く(40人)、起床時間は6時台がもっとも多い(38人)結果となりました。
また、約8割の人がお昼寝もしており、お昼寝の時間は「31分以上60分未満」との回答が一番多かったそうです。

睡眠の満足度については、100人中73人が満足している(「満足している」「やや満足している」を合算)と回答しています。

【グラフ2】100歳の睡眠満足度(キューサイ調べ)
【グラフ2】100歳の睡眠満足度(キューサイ調べ)
この調査結果から、健康長寿を保つ100歳以上の人のうち、大多数が睡眠に満足し、熟睡しているということがわかりました。

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体を動かしている人は約6割、動かしている時間は1日平均70.4分

同じく「100歳100人 実態調査 2021」によると、1日30分を超えて体を動かしていると回答した人は59人おり、1時間以上は35人、2時間以上は14人、長い人ですと6時間以上も体を動かすと回答しています。
体を動かしている平均時間は1日70.4分となりました。

【グラフ3】100歳の1日の中で体を動かす行動や作業時間の合計(キューサイ調べ)
【グラフ3】100歳の1日の中で体を動かす行動や作業時間の合計(キューサイ調べ)
自宅内での食事の支度や、調理、片付け、庭仕事などの家事をしている人は73人にものぼっています。

また、積極的に体を動かす運動として、もっとも多く取り組まれているのは、ウォーキングが39人、ストレッチやマッサージが37人、ラジオ体操などが9人となりました。

【グラフ4】100歳の1日の中で体を動かす行動や作業の種類(キューサイ調べ)
【グラフ4】100歳の1日の中で体を動かす行動や作業の種類(キューサイ調べ)

<スポーツに関係した仕事の情報がわかる外部参考サイト>
スポーツに関する仕事情報を発信「WLEXPO仕事ナビ」

100歳超えの3割がデジタル機器の使用経験あり

続いて、通信機器やパソコンなどの使用状況を尋ねたところ、過去の使用も含めて、3割の人が使用経験ありと回答しました。

デジタル機器を使用中の人は、5人に1人の割合で、その多くは電話(スマホ、フィーチャーフォンなど)でした。テレビ電話やビデオ通話を利用する人や、中には自分で動画を撮影して、それを視聴している人もいるそうです。

コロナ禍によって家族間の直接の交流は途絶えがちになってしまいましたが、デジタル機器を取り入れて、積極的に交流を図っている100歳以上の人が増えているようです。

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栄養バランスのよい食事と、たんぱく質の摂取が重要

続いては、100歳の人の食生活を覗いてみましょう。

参考資料
【100歳100人 実態調査 2019】約9割の食事で卵・豆腐などの「たんぱく質」をしっかりと摂取 ~100人の3日間の食事900食を分析~|キューサイ株式会社のプレスリリース

上記のキューサイの調査によると、3日間の食事900食(3日×3回×100人)のうち、約9割の食事(809食)で卵・豆腐などのたんぱく質がしっかり摂取されていることがわかりました。

特によく食べられていた食材は、「鶏・うずらなどの鳥の卵」が31.9%、「豆腐(厚揚げ等も含む)」 22.7%、「牛乳」22.6%、「ハム、ソーセージ、ベーコンなど肉の加工品」15.6%、「豚肉」と「タイ・タラ・カレイ・鮭/サーモン等の白身魚」がともに13.9%で、動物性たんぱく質を含む食材が上位に入っていることがわかります。
さらに、たんぱく質を多く含む食材が1食で2品以上食べられていることも明らかになりました。

また、誰かと一緒に食事を摂っている人は8割を超えており、食卓を囲む環境も、長寿にとっては重要だということがわかりました。

健康長寿には「噛める歯」の存在が欠かせない

健康長寿と歯の関係にも注目してみましょう。

参考資料
「100歳100人調査 実態調査2021」コロナ禍でも変わらない長寿の秘訣元気な100歳の実態 徹底分析!?|キューサイ株式会社のプレスリリース

上記のキューサイの調査によると、自分自身の歯が1/4くらい残っている人は22%、半分くらい残っている人は9%、3/4くらい残っている人は4%、そして、ほぼすべての歯が残っている人は3%もいることがわかりました。

【グラフ5】自身の歯が残っている程度(キューサイ調べ)
【グラフ5】自身の歯が残っている程度(キューサイ調べ)
なお、総入れ歯の人は55%いましたが、「前歯でお肉を噛み切ることができるか」という問いには、59%もの人が「できる」と回答。
しっかりと噛めて、咀嚼で唾液を分泌することが、栄養の摂取には良い影響を与えます。

上記の調査結果から、噛める歯を持つことが、健康長寿には欠かせないということがわかりました。

趣味の活動や社会参加をしている確率が高い

次に、厚生労働省の百歳高齢者表彰に関するプレスリリースに記載された、「地域で話題の高齢者」の一言紹介を深掘りしてみましょう。

参考資料
百歳高齢者表彰の対象者は43,633人

まず、奈良県奈良市在住の111歳・男性(男性では国内最高齢)については、「身の回りのことはゆっくりながらも自分のペースでしておられます」「リハビリにも前向きに取り組んでおられます」「孫様やひ孫様とのオンライン面会を励みに日々元気にお過ごしです」との記載があります。
体を動かすことや、家族との交流、そしてデジタル機器利用への積極性なども垣間見られます。

そのほかの方々の一言紹介を追っていくと、下記のような趣味に励みつつ、それぞれが積極的に社会参加をしていることがわかります。

<「地域で話題の高齢者」100歳以上の人の趣味一覧>

  • 音楽:カラオケ、ハーモニカ演奏、三味線
  • 文章:俳句、日記、読経、写経、携帯電話使用、絵文字メール
  • 手芸:刺し子、裁縫
  • 図画工作:絵画、仏画、美術観賞、しめ縄づくり、あめ細工
  • スポーツ:ゲートボール、踊り、散歩
  • 庭仕事;花の手入れ、野菜づくり、盆栽、草むしり
  • 社会交流:デイサービス通い、ひ孫の送り出し、戦争体験の語り、踊りの先生、ゲートボールチームの監督
  • その他:豆より(豆の選別)、ナンプレ、新聞スクラップ、自分で髪を切る


フレイルの予防には、適切な栄養摂取と身体活動(運動)、そして就労や余暇活動などに勤しむ「社会参加」が欠かせないとされています(※)。
元気な100歳以上の皆さんの様子を見ると、社会参加がいかに重要なのかがわかります。

広報誌「厚生労働」2021年11月号 特集1より

ゲートボールについては、下記の記事でより詳しく解説していますので、参考にしてください。
ユニバーサルスポーツ として注目されている「ゲートボール」とは?

こちらの記事では、日本の健康寿命について解説しています。
健康寿命ランキングから考える!充実した老後を送るための対策とは?

まとめ:元気な100歳は社会交流を楽しんでいる

100歳以上で元気に過ごしている人には、下記のような特徴があることがわかりました。

  • 睡眠満足度が高く、熟睡できている人がほとんど
  • 身の回りのことなど、自分でできることは積極的に行っている
  • デジタル機器に抵抗がなく、新しい分野へのチャレンジに前向き
  • たんぱく質の摂取を欠かさない
  • 100歳でも噛める歯を持つ
  • 手先を動かす裁縫、絵画、三味線、体を動かす庭仕事、スポーツ、散歩などの趣味に打ち込んでいる
  • 家族や地域社会との交流を楽しんでいる


今回の記事を参考に、皆さんも健康長寿を目指しましょう!
 
参考資料


この記事の監修者

高橋正美 【健康管理士一般指導員】

日本FP協会所属のファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)として相談業務にあたる中、お客様の急死や、若い仲間の大病による入院などを目の当たりにして、生活習慣病予防の大切さを痛感。医療費等の支出削減を図るためにも、健康管理が重要であることに気づき、健康管理士一般指導員の資格を取得。お客様相談の中で、必要に応じて健康寿命延伸のための情報も提供している。

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