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健康寿命ランキングから考える!充実した老後を送るための対策とは?

高橋正美 【健康管理士一般指導員】

健康

日本の健康寿命は
堂々の世界第1位!

日本の健康寿命は長い?都道府県別で違いはある?近年、平均寿命と並んで注目されているのが「健康寿命」。この記事では日本の健康寿命ランキングや健康寿命を伸ばす取り組みをご紹介します。

目次

改めて確認!健康寿命とは

健康寿命とは

まずは、健康寿命とは何かを改めて確認していきましょう。健康寿命とは、「健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。

2000年に WHO(世界保険機関)が提唱した指標で、医療や介護が必要なく自立して生活できる期間を意味します。

 一方、平均寿命は、0歳児があと何年生きられるかという期待値(平均余命)のことです。日本は昔から長寿大国として知られていますが、平均寿命には介護が必要になってからの年数も含まれます。

健康寿命が伸びると生活の質が向上する!

健康寿命が注目され始めたのは、2000年に 厚生省(当時)が「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」の推進において、健康寿命の延伸を目的にしたあたりからです。

 健康寿命が延伸すれば個人の生活の質が上がり、働ける高齢者が増加する、ひいては、生産年齢人口の減少や社会保障費の増大などが解消されるとされています。(※1)

 ※1:厚生労働省|健康日本21

元気に働ける

健康であれば、働くことも可能です。2021年に高年齢者雇用安定法の改正が行われたことにより、以前より高齢者が働ける環境が増えてきました。

 働くと、毎日の生活にハリが生まれます。収入が増える分、趣味や旅行に使うことも可能です。元気に働けることは生活の質の向上につながるのです。

 医療費や介護費の負担が軽減される

健康寿命が伸びると、医療や介護にかかる費用が大幅に軽減されます。日本は「国民皆保険制度」があるため、病気や怪我をした際は安心して治療を受けられますが、治療費は無料ではありません。

 介護費用も同様で、介護認定されても一定の金額を超えた費用は全額自己負担です。そのため、平均寿命と健康寿命の差が大きい場合、医療費や介護費の負担が大きくなることが予想されます。

 しかし、健康寿命が伸びるとその分費用負担が軽減されます。軽減された分で美味しい食事や旅行を楽しむことも可能。つまり、医療費や介護費の負担が軽減されることは生活の質の向上につながるのです。

日本の健康寿命は

厚生労働省が発表した「健康寿命の令和元年値について」によると、2019年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳。ここ10年の間でも伸び続けていることがわかります。(※2)

	男性	女性 2010	70.42	73.62 2013	71.19	74.21 2016	72.14	74.79 2019	72.68	75.38

※2:厚生労働省|健康寿命の令和元年値についてを基に作成

一方、令和4年簡易生命表の概要によると、2022年の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳。こちらも伸び続けています。(※3)

しかし、平均寿命と健康寿命の差は男性8.37年、女性11.71年と、ここ数年でもあまり変化はないことがわかります。

■平均寿命(2022)と健康寿命(2019)の差

平均寿命と健康寿命の差は男性8.37年、女性11.71年

※3:厚生労働省|令和4年簡易生命表の概況

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日本の健康寿命ランキング

日本の健康寿命ランキング

では、日本の健康寿命は世界と比べてどのあたりなのでしょうか?自分の住んでいる都道府県がどのあたりにランキングしているのか気になる人もいるでしょう。ここでは、日本の健康寿命事情をご紹介します。

日本の健康寿命は世界1位!

WHOの「世界保健統計2022年版」によると、世界の健康寿命ランキングで日本は堂々の第1位です。男女別の統計でも第1位。シンガポールが全てのランキングで3位以内に入っているものの、全体・男女別と3冠を達成している国は他にありません。(※4)

順位

都道府県

健康寿命

1

日本

日本

2

シンガポール

韓国

3

スイス

シンガポール

4

イスラエル

フランス

5

キプロス

キプロス

6

アイスランド

スペイン

7

スウェーデン

スイス

8

オランダ

イスラエル

9

韓国

イタリア

10

スペイン

スロベニア

※4:WHO「世界保健統計2022年版」を基に作成

ちなみに、ワースト3は以下の通りでアフリカ諸国でした。

  • 181位:ソマリア 49.7歳
  • 182位:中央アフリカ共和国 46.4歳
  • 183位:レソト 44.2歳

 世界全体の健康寿命(統計データのない国を除く)は、平均63.7歳。男性62.5歳、女性64.9歳となっています。

都道府県別の健康寿命ランキングトップクラスは山梨県!

以下は、厚生労働省の「健康寿命の令和元年値について」による、都道府県別の健康寿命ランキングトップ10です。(※5)

順位

性別

都道府県

健康寿命

1

男性

大分県

73.72

女性

三重県

77.58

2

男性

山梨県

73.57

女性

山梨県

76.74

3

男性

埼玉県

73.48

女性

宮崎県

76.71

4

男性

滋賀県

73.46

女性

大分県

76.60

5

男性

静岡県

73.45

女性

静岡県

76.58

6

男性

群馬県

73.41

女性

島根県

76.42

7

男性

鹿児島県

73.40

女性

栃木県

76.36

8

男性

山口県

73.31

女性

高知県

76.32

9

男性

宮崎県

73.30

女性

鹿児島県

76.23

10

男性

福井県

73.20

女性

富山県

76.18

※5:厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」を基に作成

男女共にトップ3に入っているのは山梨県です。日本男性の健康寿命72.68歳に比べ山梨県は73.72歳、1.04歳長いことがわかります。日本女性の健康寿命75.38歳に比べ山梨県は76.74歳、1.36歳も長いです。 

山梨県が健康寿命ランキングでトップクラスの理由とは

山梨県が健康寿命ランキングでトップクラスの理由とは

同じ日本国内でも、なぜ山梨県は健康寿命がトップクラスなのでしょうか?ここでは、山梨県が健康寿命ランキングでトップクラスの理由を探っていきます。

働いている高齢者が多い

1つ目の理由は、働いている高齢者が多いことです。総務省統計局の2017年の調査によると、山梨県の65歳以上の有業割合は男性41.3%、女性22.2%と男女共に高いことがわかります。(※6) 

順位

男性

女性

1

山梨県

41.3%

福井県

23.3%

1

福井県

40.8%

長野県

22.6%

2

長野県

39.6%

山梨県

22.2%

男性の全国平均33.9%、女性の全国平均17.1%と比較すると、山梨県の有業割合が高いことがわかるでしょう。 

※6:総務省統計局|「統計からみた我が国の高齢者(令和5年)を基に作成

65歳以上でも働けるということは、基本的に健康ということ。働くことにより生活の質が向上し、さらに健康寿命が伸びると思われます。

<働いている高齢者が男女ともにTOP3に入る長野県の求人についての外部参考記事>

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健康診断の受診率が高い

2つ目の理由は、健康診断の受診率が高いことです。厚生労働省が発表した2020年の特定健康診断の都道府県別受診率によると、山梨県は47都道府県のうち7位。全体平均53.1%に比べ、山梨県は57.3%と平均を超えています。(※7)

山梨県内の自治体では、高齢者を中心に生活習慣病の発症予防や重症化予防に取り組んでいるため、県民の健康意識が高まっていることも要因の1つなのかもしれません。

 ※7:厚生労働省|特定健康診査・特定保健指導の実施状況に関するデータ

住民同士で定期的に集まる「無尽」が根付いている

3つ目の理由は、無尽が浸透していることです。山梨県民以外に聞き馴染みのない「無尽」という言葉。元々は地域の住民が毎月一定額を積み立てし、まとまったお金が必要になった人に貸し出すという相互扶助の民間金融制度でした。

現在は、積み立て制度だけが残り、月に1回などのペースで食事会やレジャーを楽しむ制度に変わってきています。山梨県には無尽の制度が今も根付いており、孤独になりがちな高齢者の楽しみの1つになっています。

無尽のような人と人とのつながりや信頼関係を表す概念を、ソーシャルキャピタルと呼びますが、ソーシャルキャピタルは健康寿命を伸ばすためにとても効果的です。

理由は主に2つ。1つ目は、無尽で集まった際に健康に関する情報交換ができたり、病気になったときに助け合ったりできるためです。2つ目は、同じメンバーと定期的に顔をあわせることで、お互いの体調の変化に気付きやすいことです。 

もちろん、人と会って話をすることや、無尽を楽しみにする気持ちも健康寿命を伸ばす要因の1つ。 

また、山梨名物のほうとうには、抗酸化作用のあるポリフェノールが含まれた、かぼちゃやにんじんがたくさん入っています。

ほうとうの味の要になる味噌にはサポニンという成分が入っており、抗酸化作用のほか、免疫力向上、肥満予防、血流改善などの効果も期待できるため、活習慣病の予防にもつながります。

山梨県民は、ほうとうを食べながら無尽を開催することで、健康寿命を伸ばす要因につながっているのかもしれません。

スマートライフプロジェクトにみる具体策とは

スマートライフプロジェクトにみる具体策とは

健康寿命に関する言葉に「スマートライフプロジェクト」があるのはご存じでしょうか?スマートライフプロジェクトとは、「健康寿命を伸ばしましょう」をスローガンに掲げる、厚生労働省の国民運動のこと。 

人生の最後まで楽しく健康的な生活ができることを目標にしています。スマートライフプロジェクトでは、「適度な運動・適切な食生活・禁煙」の3分野を中心に、健康寿命を伸ばすための情報を発信しています。

どのような具体策が推奨されているのか、一緒に確認していきましょう。

プラス10分が大切!適度な運動

1つ目は、適度な運動を心がけることです。スマートライフプロジェクトでは、日常生活に10分の運動をプラスすることを推奨しています。 

おすすめは、ウォーキング。日常生活+10分の早歩きを行うだけで、生活習慣病の予防に効果があるとされています。 

ウォーキングのポイント
  • 1駅分歩く
  • 近所の買い物は徒歩で行く
  • 好きな音楽を3曲聞きながら歩く

上記のような行動で10分のウォーキングは達成できるので、ぜひ習慣にしてみてください。

1日350gの野菜を目標に!適切な食生活

1日350gの野菜を目標に

2つ目は、適切な食生活を心がけることです。スマートライフプロジェクトでは、1日に「緑黄色野菜120g+淡色野菜230g」=350g食べることを推奨しています。

緑黄色野菜

淡色野菜

ほうれん草
かぼちゃ
小松菜
ピーマン
にんじん
ブロッコリー
オクラ
トマト など

キャベツ
レタス
きゅうり
なす
白菜
大根
玉ねぎ 
もやし など

350グラムといわれてもピンとこない人も多いかもしれません。緑黄色野菜と淡色野菜をバランス良く食べるためには、以下の量を目安にしてみましょう。

緑黄色野菜120g+淡色野菜230gの目安
  • ほうれん草:1株
  • ブロッコリー:2房
  • ピーマン:1/2個
  • トマト:1/4個
  • にんじん:1/3本
  • キャベツ:1/8個
  • 玉ねぎ:1/4個
  • 長ネギ:1/4本

こうして見てみると、そんなに多い量ではないと感じる人もいるのではないでしょうか?

現在の食事に野菜が足りないと感じている人は、1食につき、サラダや煮物を1〜2品プラスするだけで、摂取量がグンと上がるはずです。

身体を優先!|禁煙

3つ目は禁煙です。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、たばこによる身体への影響を以下のように説明しています。(※8)

たばこによる身体への影響
  • がん・脳卒中・循環器疾患・呼吸器疾患・2型糖尿病などのリスクが高まる
  • 免疫機能の低下により感染症のリスクが高まる
  • 骨密度の低下を進めることにより骨粗鬆症や骨折のリスクが高まる
  • 歯周病の原因・歯の喪失のリスクが高まる
  • 白内障のリスクが高まる

たばこを吸うことで気持ちがリラックスする人もいるでしょう。その場合は、本数を徐々に減らすなど、身体のこともケアしながら嗜むことをおすすめします。 

※8: 厚生労働省|e-ヘルスネット「喫煙者本人の健康影響 」

早期発見が健康寿命を伸ばすカギ!健康診断の受診

4つ目は、健康診断の受診です。厚生労働省の発表によると、2021年の日本人の死因は、がん・心疾患・脳血管疾患などの生活習慣病が上位を占めています。(※9)

2021年の日本人の死因は、がん・心疾患・脳血管疾患などの生活習慣病が上位を占めている

※9:厚生労働省|令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況を基に作成

早期には、自覚症状がないという病気が少なくありません。

そのため、定期的に健康診断を受診し、病気の早期発見に努め、対処していくことで康寿命を伸ばすことにつながります。 

年齢に適した健康診断を受診することはもちろん、がん検診や骨粗鬆症の検査など、心配な部位の検査も定期的に受診しましょう。

病は気から|ストレスフリーの生活

4つ目は、ストレスのない生活を送るよう心がけることです。ストレスのある生活が続くと、自分でも気がつかないうちにメンタル面へ悪影響を及ぼします。

メンタルが不安定になると生活習慣が乱れ、暴飲暴食や寝不足が続き、生活習慣病のリスクが高まる可能性があります。ストレスを溜めないためにも、以下のことを意識的に行ってみましょう。

ストレスを溜めないためのポイント
  • 物事を前向きに考える
  • バランスの良い食事をとる
  • ゆっくり風呂に入る
  • 簡単なストレッチやヨガ
  • 太陽を浴びる
  • 良質な睡眠
  • 人との交流
  • 趣味の時間を楽しむ

近年は、地域センターや福祉センターなどで趣味の教室などを開催している自治体も多いです。無料で参加できるイベントも多く、費用がかかっても比較的安いため、経済的な負担にはなりづらいでしょう。

同じ目的をもった仲間ができることで気持ちが明るくなり、健康寿命を伸ばす効果が期待できます

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まとめ:健康寿命を伸ばして楽しいシニアライフを!

国別の健康寿命ランキングで、日本は堂々の1位です。しかし、平均寿命と健康寿命の差が縮まらないため、健康寿命を伸ばすことも今の日本の課題です。

健康寿命を伸ばすためには、生活の質を向上させることが大切。人との交流を増やしたり、適度な運動や適切な食事を心がけたり、日常のちょっとした変化で生活の質は向上します。

人生100年時代と言われている今、せっかくなら元気で楽しいシニアライフを過ごしたいもの。この機会に、健康寿命を伸ばす取り組みを始めてみてはいかがでしょうか? 

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参考資料

この記事の監修者

高橋正美 【健康管理士一般指導員】

日本FP協会所属のファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)として相談業務にあたる中、お客様の急死や、若い仲間の大病による入院などを目の当たりにして、生活習慣病予防の大切さを痛感。医療費等の支出削減を図るためにも、健康管理が重要であることに気づき、健康管理士一般指導員の資格を取得。お客様相談の中で、必要に応じて健康寿命延伸のための情報も提供している。

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