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シニアのデジタル対応は転職活動にどう影響する?シニア専門人材コーディネーターが解説

片桐吉晶 【キャリアアドバイザー】

「シニアはデジタルが苦手」というイメージは過去のものとなり、現代ではデジタルネイティブ世代がシニアになりつつあります。今回は老後生活にITやデジタル機器がどれだけ重要かを解説します

目次

新しい生活様式とそれにあわせた働き方に関心が高まる中、あらためてデジタルの重要性が見直されています。
リモートワークの普及や非接触の推進などが後押しとなり、デジタルの導入に積極的な企業が増えています。
仕事のデジタル化が進むにつれて、労働者にもデジタルへの対応能力が求められるようになっており、もちろんシニア人材も例外ではありません。
デジタルの活用は特技やスキルではなく、もはや必須の技能と言ってもいいでしょう。
今回は、老後の生活におけるデジタルの重要性や、普段の生活でデジタルへの対応力がどのように役立つのかを紹介します。

50代・60代でもデジタルは必要?

年齢を重ねてから新しい知識や技術を身につけるのは大変なことです。若い頃は簡単にできたことでも、年をとると何かと苦労します。新しいことを覚えるのにも記憶力は衰えていますし、興味や好奇心も若い人には及びません。50代や60代にとって、デジタル対応はどれだけ必要なのでしょうか。

転職等で好条件を狙うならデジタル対応力は必須

現代の多くの職場ではデジタル化が進んでいるため、50代や60代が転職で好条件の求人を狙うなら、デジタルへの対応は必須です。
程度の差こそありますが、デジタルやITが全く導入されていない職場はほとんどなく、好条件の職場ほど高いデジタル能力を求められるのが現実です。
転職に求める条件は人それぞれですが、できるだけ好条件や高待遇を希望するなら、それなりのデジタル対応は必須です。

例えばアルバイトの定番といってもいいコンビニエンスストアの仕事は、ITなしには成り立ちません。
機能豊富なデジタルのレジ操作から始まり、発注や在庫管理もデジタル機器で行います。
スマホ決済など、最新サービスはデジタル機器が使えることが前提です。
好条件を求めればさらにデジタルの要求水準は高くなります。

デジタル抜きで選べる仕事は限られる

デジタル抜きで選べる仕事は非常に限られます。
完全にデジタル機器に対応せずにすむ仕事は肉体労働などごく一部に限られ、ほとんどの仕事は何らかの形でデジタルが関わっています。
警備員や駐車場管理などの仕事にもデジタルは欠かせないものとなっているのが現実です。

仕事探しもデジタル化が進む

肝心の仕事探しにもデジタルは大きな役割を果たしています。
転職を成功させるにはまず求人情報のチェックから始まりますが、現在の求人市場はデジタルが大きな存在感を示しています。
転職サイトや転職サポートサービスなどデジタル抜きに転職活動は成立しないと言っても過言ではありません。
ハローワークでも基本的な情報検索はデジタル化されているのでデジタル抜きに転職を成功させるのは極めて困難です。
逆に考えればデジタルのおかげで転職の可能性は大きく広がっているとも言えます。
かつては一部の限られた人しか知り得なかった転職情報に簡単にアクセスできるのはデジタルのおかげです。
デジタルを使いこなすことは人材としての能力アップだけでなく仕事探しそのものの効率化にもつながります。

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高齢になってからでもデジタルは対応できる?

シニア・中高年になってもデジタル対応できるのか。転職を希望するシニアの方に共通する悩みですが安心してください。
やる気さえあればデジタルを使いこなせるようになれます。
若い人に比べれば時間と労力がかかるのは事実ですが、高齢だからといってデジタルが無理ということはありません。

仕事で求められるデジタルは基礎力がメイン

デジタル能力を求められる仕事は多いですがその中で専門的な知識が要求されるのはごく一部の専門職のみです。
多くの仕事で求められるデジタル力とはスマホやタブレットの操作やネット経由のコミュニケーションなど基本的なことのみで特別な力は必要ありません。
基礎的なデジタル力であれば年齡や適性とは無関係にだれでも習得可能です。
基本さえ身につけておけば職場ごとに異なるデジタルを使った仕事にも対応できるようになるので新しい職場に移っても問題なく職場になじめます。

教室に通ったり独学で学んだり方法はいろいろ

転職に向けてデジタルを習得する方法はいろいろです。
街のパソコン教室に通う、オンライン講座に参加する、参考書やテキストで学ぶ、子や孫に教わるなど選択肢は豊富です。
どんな方法で身に付けるのがいいのかは人によります。
自分にとって無理なく学べる方法はどれなのかを考え着実に実力が身につく方法でデジタルに挑戦してください。

転職をデジタルで有利に進める


履歴書をパソコンで作成

手書きの履歴書には人柄が表れる、などと言われますがシニアの転職に限って言えばパソコンで履歴書を作成したほうが圧倒的に有利です。
何故ならばパソコンで作成した履歴書はそのままデジタル能力のアピールにつながるからです。
雇用する側にとって高齢の応募者というのはデジタル対応に不安を抱える存在です。
履歴書をパソコンで作成することで面接の前段階でデジタルに対応していることを相手にアピールできます。履歴書の出来が良ければさらに高評価にもつながります。

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連絡はスマホが基本

面接や試験などの連絡はスマホが基本です。電話やメールはもちろん最近はSNS経由でやりとりする企業が増えています。
連絡手段としてデジタルなツールを活用するのは転職活動の効率化につながると同時に仕事に必要な最低限のデジタル力を身に着けていることの証明にもなります。

パソコンスキルが大きな武器になる可能性

スマホが普及した弊害として問題視されているのが若者のパソコン離れです。
かつてはパソコンといえば若者の得意分野でしたがITツールの中心がパソコンからスマホに移るつれて若者のパソコン離れが進みました。
家にパソコンがないという家庭は意外と多く、新卒社員でも学校の授業以外でパソコンに触ったことがないという人が少なくありません。
若者世代のパソコン力が落ちているのはシニア世代にとって大きなチャンスです。
仕事でパソコンを使いこなせることをアピールすれば年齡のハンデを跳ね返し転職活動での大きなアドバンテージを作れます。

デジタルを普段の生活に役立てる

シニアにとってデジタルが役立つのはビジネスや転職だけではありません。
普段の日常生活にデジタルを取り入れると大いに役立ちます。
現在、アナログ中心の生活スタイルで困っていることはない、という人は少なくありませんがそうであるからといってデジタルを拒む理由にはなりません。デジタルの導入には現在表面化していないリスクや問題点を解決してくれるという大きなメリットがあります。
無理の無い形でデジタルを取り入れることが生活の質的向上につながります。

老眼には文字拡大

老眼が進むと細かい文字を読むのが辛くなります。
大好きな読書を老眼を理由に離れてしまう人も多いですが、デジタルを活用すれば老眼のデメリットは解消できます。
パソコンやスマホは文字の大きさを自由に変えられます。無理なく読めるサイズまで拡大すれば老眼でも全く問題なく文字が読めます。
電子書籍を利用すれば遠ざかっていた読書の楽しみを取り戻せます。

デジタルを使って健康管理

高齢者の大きな課題のひとつが健康管理です。
年齢を重ねれば体のあちこちに不具合が出るのはしかたのないことですが、正しく健康管理することで症状の改善や緩和が望めます。
デジタルツールを利用すれば面倒な健康管理が簡単に行えます。
スマホと連動した体組成計を使えば血圧や脈拍などの基礎データを毎日自動的に記録できるので体調の変化にいち早く気づけます。
ネット対応の体重計やスマートメーター付きのエアロバイクなど、面倒な健康管理の手間をデジタルに任せれば煩わしさを感じることなく体調に配慮できます。

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コミュニケーション範囲を広げる

高齢者の抱える社会的課題のひとつが孤立化です。
友達も知り合いもおらず孤独に陥ってしまう高齢者は少なくありません。
今は現役で仕事上の付き合いも多い50代・60代の方も、仕事以外での付き合いを続けられる人はどれだけいるでしょうか。

デジタルが普及した初期の頃は人間関係が希薄になる等と言われていましたが実際には逆の未来がやってきています。
SNSやビデオチャットを始めデジタルツールを使ったコミュニケーションは急速に広がりを見せています。
趣味の仲間を探すのもデジタルなら場所を選ばず、繋がれる人が見つかります。
コミュニケーションをよく取る人ほど健康寿命も長いという研究結果もでています。
デジタルによりコミュニケーションの輪が広がるのはシニアにとっていいことづくめです。

デジタルを使いこなすコツ

デジタルというだけで拒否感を示すシニアは少なくありません。
「操作が難しそう」「覚えるのがめんどくさい」など理由をつけてデジタルに手を出さない人も少なくありませんが、これからのことを考えればそうとばかりも言っていられません。
一昔前に比べれば現在のデジタル機器は格段に操作しやすくなっています。
専門知識が必要ないだけでなく操作も直感的に理解できるよう設計されています。
苦手という先入観を抱かずまずは人並みに使いこなせるようチャレンジしてみましょう。
デジタル弱者に向け多機能も充実しているので自分にとって使いやすいスタイルを探してください。

音声入力なら練習の必要なし

シニアがデジタルを敬遠する理由のひとつが文字入力です。
パソコンのキーボードやスマホのフリック入力はなれるまである程度の時間と練習が必要です。
年齡を重ねて気が短くなっている高齢者にとって思うように入力できないというだけでイライラが募ってしまいデジタルを敬遠する理由になっています。

そんな文字入力の問題を解決してくれるのが音声入力です。
スマホでは標準機能となっている音声入力なら練習は不要で簡単に文字を入力できます。
音声入力の精度は日々向上しており現在では長文でもほぼミスなく入力できるレベルです。
実際に音声入力のおかげでデジタルに抵抗がなくなったという高齢者の話はよく聞かれます。
まずは音声入力でデジタル製品に触れることから初めましょう。

気軽に質問できる人を探す

デジタルでわからないことや操作方法を気軽に質問できる人を探しましょう。
ちょっとしたつまづきをすぐに解消できれば、デジタルに対して抵抗感は少なく向き合えます。
家族はもちろんサポートセンターやパソコン教室なども候補と、なります。

多少使いこなせるようになったデジタルの疑問や悩みを自己解決できるように取り組みましょう。
ネット上にはデジタル関係の知識や事例が豊富です。
知りたい情報を入力し検索して答えを見つけ出す、ということができるようになればデジタルをほぼつかいこなせたも同然です。

身近において毎日触れる

デジタルはできるだけ身近において毎日触れるようにしましょう。
パソコンにさわるのは教室の授業時間だけというのではなかなか上達しません。
生活の中に自然にデジタルが溶け込んでいると習熟速度は飛躍的に向上します。
デジタル初心者はまず一番手元におきやすいスマートフォンからスタートしましょう。
スマホを使うのが当たり前になってきたらデジタルに対する抵抗感もなくなります。

まとめ:デジタルはシニアにとってメリットが多い!

デジタルは若者のもの、というのは大きな間違いです。

デジタルは不便を解消するための技術です。
年齡を重ねて不便や不満が増えてくる高齢者にとって多彩な機能で悩みを解決してくれるデジタルは頼もしい存在です。
デジタルを使いこなせば生活の質は向上しますし仕事の選択肢も増え転職の可能性も高まります。

デジタル力を高めるために重要なのは普段の取り組みが大事
日常で当たり前にデジタルを使えるようになれば仕事で困ることはありません。
システマチックな技術を身につけるのはとても大切ですがそれだけでなくデジタルを使いこなして目標を達成できる基礎的なデジタル力が重要です。
年齢を理由にデジタルを避けるべきではありません。
積極的にデジタルと向き合い使いこなすことが明るい将来につながります。

この記事の監修者

片桐吉晶 【キャリアアドバイザー】

キャリアアドバイザーとして、転職相談5,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間800名の履歴書、職務経歴書を作成。建設業界や自動車業界、医療・介護業界の人材市場を熟知。「シニア人材の適切な採用・育成方法」などのテーマで、企業セミナーに講師として登壇中。

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