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B型肝炎給付金は無症状も対象?もらえる人もらえない人の条件も!

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】

お金

B型肝炎給付金は無症状の人も対象?
いくらもらえる?金額や条件も!

「B型肝炎給付金」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。CMで流れる内容を見て、「自分も該当するのでは?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか? B型肝炎給付金とは、幼少期に受けた集団予防接種が原因でB型肝炎ウイルスに感染した人に対し、国から支払われる給付金のこと。一定要件を満たしていれば、無症状の人や二次感染(母子感染)した人でも受け取れます。 この記事では、B型肝炎給付金をもらえる人やもらえない人の条件、必要書類や申請方法を解説します。

目次

B型肝炎給付金とは?

B型肝炎給付金とは?

聞いたことがあっても詳細はあまり知られていない、B型肝炎給付金。まずは、B型肝炎給付金がどのようなものなのか詳細を確認してみましょう。

B型肝炎給付金とは集団予防接種が原因でB型肝炎に感染した人に支払われる給付金

B型肝炎給付金とは、幼少期に受けた集団予防接種が原因でB型肝炎ウイルスに感染した人に対し、国から支払われる給付金のことです。

日本では、1948年7月1日〜1988年1月27日までの期間、幼少期の子どもを対象とした集団予防接種やツベルクリン反応検査を行っていましたが、当時の予防接種では1つの注射器を複数人に使い回すことが常習化されていました。

後に集団予防接種を原因としたB型肝炎ウィルスの感染者が増加し、当時の責任を負うことになった国が支払うことになったのがB型肝炎給付金です。

そのため、B型肝炎給付金を受け取れるのは、集団予防接種とB型肝炎ウィルスの感染の因果関係が認められた人に限られます。

現在、日本国内のB型肝炎の持続感染者は110~140万人いると推計されており、そのうち集団予防接種を原因とした感染者は40万人以上といわれています。

※1:厚生労働省|B型肝炎訴訟について

いくらもらえる?支給される金額は50万~3600万円

B型肝炎給付金の金額は、病状区分により支払われる金額が定められています。

病状区分による給付金額

症状

時期

給付金額

死亡
肝がん
肝硬変(重度)

発症後20年を
経過していない

3,600万円

発症後20年以上
経過している

900万円

肝硬変(軽度)

発症後20年を
経過していない

2,500万円

発症後20年以上
経過しており、
治療を受けている

600万円

発症後20年を
経過しており、
治癒している

300万円

慢性B型肝炎

発症後20年を
経過していない

1,250万円

発症後20年以上
経過しており、
治療を受けている

300万円

発症後20年を
経過しており、
治癒している

150万円

無症候性キャリア

感染後20年を
経過していない

600万円

感染後20年以上
経過している

50万円
+検査費用等

※1:厚生労働省|B型肝炎訴訟について

症状は一定の基準により判断されます。なお、無症候性キャリアの感染日とは集団予防接種を受けた日になります。

B型肝炎給付金を受け取った後に症状が悪化した場合は追加の給付金が受け取れる

病状はいつ変化するかわからないものです。B型肝炎ウィルスによる症状も同様で、無症状キャリアの人が肝硬変になってしまったり、肝硬変から肝がんへ進行してしまう可能性も考えられます。

B型肝炎給付金を受け取った後に症状が悪化した場合は、新たな病状区分での追加給付金が受け取れます。支払われる金額は、すでに支給された給付金と新たな病状区分による給付金の差額です。

手続きも簡単で、初回のような訴訟の必要はなく、社会保険診療報酬支払基金に申請すれば終了します。

ただし、申請期限は病態の進行を把握した日から5年以内という期限があるため注意が必要です。

B型肝炎給付金をもらえる人とは?

チェックリストのイメージ

では、どのような人がB型肝炎給付金の対象になるのでしょうか?B型肝炎給付金をもらえるのは、以下の条件をすべて満たす人です。

B型肝炎給付金をもらえる人の条件
  1. B型肝炎ウイルスに持続感染している
  2. 満7歳になるまでに集団予防接種を受けた
  3. 輸血などの集団予防接種以外の感染原因がない

なお、B型肝炎給付金を受け取るためには国を相手とした訴訟を起こす必要がありますが、B型肝炎が原因で死亡した人の相続人は、本人の代わりに訴訟を起こすことが可能です。

条件①B型肝炎ウイルスに持続感染している

1つ目は、B型肝炎ウイルスに持続感染していることです。

持続感染とは、B型肝炎ウイルス感染後、病原体が身体から排泄されずに長期に渡り感染が継続すること。一般的には、6ヶ月以上の継続感染が確認された場合に持続感染と認定されます。

感染してから数ヶ月後に身体からウィルスが排泄されて免疫ができる状態の「一過性感染」とは異なるため、注意が必要です。

条件②満7歳になるまでに集団予防接種を受けたことがある

2つ目は、満7歳になるまでに集団予防接種を受けたことのある人です。

この記事を読んでいる人の中には「今日は予防接種の日」と言われ、小学校などで強制的に予防接種を受けたことのある人もいるのではないでしょうか?

具体的には、生年月日が1941年7月2日から1988年1月27日までの人が該当する可能性があります。

可能性のある人は過去を振り返り、1948年7月1日から1988年1月27日までの間に集団予防接種を受けたかどうか、確認してみましょう。

条件③輸血などの集団予防接種以外の感染原因がない

3つ目は、輸血などの集団予防接種以外の感染原因がない人です。

B型肝炎給付金を受け取れるのは集団予防接種が原因の場合のみです。幼少期に輸血の経験がありB型肝炎に感染している人は、感染原因が過去の輸血の可能性もあるため、B型肝炎給付金の対象から外れてしまう可能性があります。

二次感染者(母子感染者)も給付の対象になる

B型肝炎給付金は、二次感染者(母子感染者)も対象に含まれます。二次感染者とは、一次感染者である母親から母子感染した人のことです。

一次感染者である母親から母子感染した子が二次感染者

なお、父子感染の場合でも、父親から感染したことが立証できれば給付金の対象になります。

もらえない人の要件とは?

ここまでの復習の意味も含め、B型肝炎給付金をもらえない人も確認しておきましょう。

B型肝炎給付金をもらえない人
  • B型肝炎ウイルスに持続感染していない
  • 生年月日が1941年7月2日より前、もしくは、1988年1月27日より後の人
  • 必要書類を用意できない
  • B型肝炎ジェノタイプAeに感染している

条件を満たしている場合でも、集団予防接種が原因でB型肝炎に感染したことを証明できる必要書類が準備できない場合は、給付金は受け取れません。

では、どのような書類が必要なのでしょうか?

【一次感染者】B型肝炎給付金申請に必要な書類

B型肝炎給付金申請に必要な書類

B型肝炎給付金を受け取るためには、過去の集団予防接種とB型肝炎の感染との因果関係を証明する必要があります。

ここでは、一次感染者のB型肝炎給付金申請に必要な書類を解説します。

B型肝炎ウイルスに持続感染していることを証明できる書類

1つ目は、B型肝炎ウイルスに持続感染していることを証明できる書類です。具体的には、以下の①②いずれかの書類が必要になります。

■​​B型肝炎ウイルスに持続感染していることを証明できる書類

6ヶ月以上の間隔を
あけた連続した
2時点における
以下のいずれかの書類

HBc抗体陽性
(高力価)

HBs抗原陽性

HBV-DNA陽性

HBe抗原陽性

なお、B型肝炎給付金は持続感染している人が対象のため、一過性の感染の場合は対象になりません。

満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていることを証明できる書類

2つ目は、満7歳になるまでに集団予防接種や集団ツベルクリン反応検査を受けていることが証明できる書類です。

具体的には、以下のいずれかの書類が必要になります。

満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていることが証明できる書類
  1. 母子健康手帳
  2. 予防接種台帳

母子健康手帳が用意できない場合は、市町村が保存している予防接種台帳も代用可能です。ただしすべての市町村で保存している訳ではないため、必要な場合は厚生労働省のホームページで確認してください。

母子健康手帳・予防接種台帳のいずれも用意できない場合は、以下の書類のいずれかが必要になります。

母子健康手帳・予防接種台帳のいずれも用意できない場合の必要書類

必要書類

作成者

母子健康手帳・
予防接種台帳を
用意できない事情を
説明した陳述書

本人・親

接種痕が確認できる
旨の医師の意見書

医療機関

住民票
または
戸籍の附票

各市区町村

集団予防接種時に注射器の連続使用があったことを証明する必要がある

満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていることを証明できる書類では、集団予防接種時に注射器の連続使用があったことを証明しなければなりません。

証明するためには、以下の事実の確認が必要になります。

書類による必要な記載内容

提出書類

必要な事実

母子健康手帳
予防接種台帳

1948年7月1日から
1988年1月27日までの間に
集団予防接種を受けたこと

陳述書
医師の意見書

1941年7月2日から
1988年1月27日までに
生まれていること

書類を準備する際には、必要な内容が記載されているか必ず確認しましょう。

母子感染でないことを証明できる書類

3つ目は、母子感染ではないことを証明できる書類です。以下の書類、もしくは証明が必要になります。

母子感染でないことを証明できる書類・証明

書類(証明)

備考

母親のHBs抗原が陰性
かつ
HBc抗体が陰性
(または低力価陽性)
の検査結果

母親が死亡している場合は
母親が80歳未満の時点の
HBs抗原陰性の
検査結果のみ

年長の兄弟のうち
1人でも持続感染者でない
者がいる

母親が死亡している場合に
限る

その他の医学的知見を
踏まえた個別判断により、
母子感染によるものではない
ことが認められる場合

【例】原告が双子の兄で、
母親は死亡しているが、
双子の弟が未感染である

原則的には①の母親の血液検査結果が必要ですが、母親が死亡している場合など証明書類を提出することが難しい場合のために、②や③が設けられています。

集団予防接種以外の感染原因がないことを証明できる書類

4つ目は、集団予防接種以外の感染原因がないことを証明できる書類です。

感染原因につながるような行為が行われていないことを確認するため、原則的には、集団予防接種を実施していた時期の医療機関のカルテが必要になります。

【二次感染者】B型肝炎給付金申請に必要な書類

【二次感染者】B型肝炎給付金申請に必要な書類

二次感染者(母子感染者)の場合は、以下の書類が必要になります。

原告の母親が一次感染者であることを証明できる書類

1つ目は、原告の母親が一次感染者であることを証明できる書類です。

基本的には、前項でお伝えした書類が必要になるため、「【一次感染者】B型肝炎給付金申請に必要な書類」を参考にしてください。

原告本人がB型肝炎ウイルスに持続感染していることを証明できる書類

2つ目は、原告本人がB型肝炎ウイルスに持続感染していることを証明できる書類です。具体的には、以下の①②いずれかの書類が必要になります。

■​​B型肝炎ウイルスに持続感染していることを証明できる書類

6ヶ月以上の間隔を
あけた連続した
2時点における
以下のいずれかの書類

HBc抗体陽性
(高力価)

HBs抗原陽性

HBV-DNA陽性

HBe抗原陽性

母子感染であることが証明できる書類

3つ目は、母子感染であることが証明できる書類です。以下のいずれかの書類が必要になります。

母子感染であることが証明できる書類
  1. 原告が出生直後にB型肝炎ウイルスに持続感染していたことを証明する書類
  2. 原告と母親のB型肝炎ウイルスの塩基配列を比較した血液検査(HBV分子系統解析検査)の結果

B型肝炎給付金の申請方法

B型肝炎給付金の申請方法

B型肝炎給付金を受け取るためには、裁判所に国家賠償請求訴訟を提起し、国との和解が成立した後に社会保険診療報酬支払基金へ請求申請を行う必要があります。

他の給付金とは異なり、裁判所に国家賠償請求訴訟を提起しなければならないため、弁護士に依頼することが一般的です。

B型肝炎給付金に関する訴訟を弁護士に依頼する場合には、給付金の4%が訴訟手当金として別途支払われるため、手続きが不安な人は弁護士に相談しましょう。

ここでは、B型肝炎給付金の申請方法をご紹介します。

B型肝炎給付金の申請方法
  1. 必要資料を準備する
  2. 裁判所に提出する書類を作成する
  3. 裁判所に国家賠償請求訴訟を提起する
  4. 裁判所に出廷し和解協議を行う
  5. 和解成立後に社会保険診療報酬支払基金へ請求申請を行う

※2:厚生労働省|B型肝炎訴訟の手引き

必要書類を準備する

まずは、必要書類を準備します。

基本的には、「【一次感染者】B型肝炎給付金申請に必要な書類」「【二次感染者】B型肝炎給付金申請に必要な書類」でお伝えした書類を準備しなければなりません。

過去の医療機関の書類など、個人で準備することが難しい書類に関しては弁護士に相談することをおすすめします。

裁判所に提出する書類を作成する

必要書類が整ったら、裁判所に提出する訴状や証拠資料の一覧を作成します。

訴状には、請求内容や請求が認められるための法的な根拠、具体的な事実などを記載する必要があります。証拠資料の一覧も作成しなければならないため、法的知識のない個人には少しハードルが高い作業かもしれません。

裁判所に国家賠償請求訴訟を提起する

すべての書類が整ったら、以下のいずれかの裁判所に国家賠償請求訴訟を提起します。

B型肝炎訴訟の提起ができる裁判所
  • 現住所の管轄の地方裁判所
  • 集団予防接種を受けた地域の地方裁判所
  • 東京地方裁判所

基本的には地方裁判所に提起しますが、請求金額が140万円以下の場合は簡易裁判所でも提起可能です。

裁判所に出廷し和解協議を行う

訴訟を提起すると、裁判所から出廷する日時の連絡がくるので、原告は指定された日時に出廷し、国との間で和解協議を行います。

状況に応じて追加の証拠を求められる可能性もあります。

和解成立後に社会保険診療報酬支払基金へ請求申請を行う

国との和解が成立したら、社会保険診療報酬支払基金に請求申請を行います。

裁判所が作成する「和解調書」や住民票、支払請求書などの必要書類を社会保険診療報酬支払基金に提出し、書類に問題がなければ、B型肝炎給付金が支払われます

B型肝炎給付金は自分で申請できる?

B型肝炎給付金は自分で申請できる?

B型肝炎給付金の手続きをしたくても、弁護士に依頼することに抵抗のある人も多いでしょう。自分で手続きをしたいと考えている人も多いのではないでしょうか?

B型肝炎給付金の訴訟は自分で行うことも可能です。厚生労働省では自分で手続きをする人のために情報を提供しています。

※3:厚生労働省|B型肝炎訴訟の手引き ご自身での提訴を考えている方へ(説明編)
※4:厚生労働省|B型肝炎訴訟の手引き ご自身での提訴を考えている方へ(提出編)

まずは、これらの内容を確認してみて、自分で手続きが可能か検討してみましょう。

手続きを自分で行うメリットは、費用を抑えられること。弁護士事務所により費用は異なりますが、弁護士に依頼する場合、給付された金額の15%を成功報酬として支払うことが一般的です。

しかし、自分で手続きを行う場合は手続きに関わる費用だけで済みます。

ただし、書類の準備や作成には多くの時間と労力が必要になります。過去の医療機関のカルテは5年間の保存期間を経過していると廃棄されていることも多く、その場合はカルテに代わる書類を見つけなければなりません。

そのようなイレギュラー対応は、ある程度の法的知識がないと難しいことは理解しておきましょう。

B型肝炎給付金に関する訴訟を弁護士に依頼し国との和解が成立した場合は、給付金の4%が訴訟手当金として別途支払われます。手続きが不安な人は、まず初回無料相談などがある弁護士事務所に相談するのがいいかもしれません。

B型肝炎給付金の申請に関するQ&A

B型肝炎給付金の申請に関するQ&A

最後に、B型肝炎給付金の申請に関するQ&Aをご紹介します。

Q:無症状の人でも給付金はもらえる?

A:条件を満たしていれば、無症状の人でも給付金はもらえます

無症候性キャリアの人の給付金額
  • 感染後20年を経過していない場合:600万円
  • 感染後20年以上経過している場合:50万円+検査費用等

なお、無症状の状態で給付金を受け取った後に病状が進行した場合は、すでに支給された給付金と新たな病状区分による給付金の差額が支払われます。

追加給付金の手続きは、社会保険診療報酬支払基金に請求申請するだけで済み、裁判所への訴訟の提起は必要ありません。

Q:B型肝炎給付金の申請に期限はある?

A:2027年3月31日までが申請の期限になります。

Q:B型肝炎給付金の検査をしたい場合はどうすればいい?

A:各自治体、もしくは、医療機関で検査が可能です。

B型肝炎ウィルス検査を行っている自治体は多いため、まずは、住んでいる地域の自治体に問い合わせをしてみましょう。自治体により無料、もしくは低額で検査が可能です。

ただし、自治体の検査でB型肝炎ウィルス感染が判明した場合でも、給付金を申請するために必要な書類と認められない場合もあり、その場合は医療機関での検査が必要になります。

まとめ・B型肝炎給付金を受け取るためには国との和解が必要

B型肝炎給付金とは、幼少期に受けた集団予防接種が原因でB型肝炎ウィルスに感染した人に対し、国から支払われる給付金のことです。

「B型肝炎ウィルスに持続感染している」「満7歳になるまでに集団予防接種を受けたことがある」など一定の条件を満たしている人が対象者になりますが、給付金を受け取るためには裁判所に国家賠償請求訴訟を提起し、国と和解する必要があります。

訴訟の提起や必要書類の準備にはある程度の法的知識が必要になるため、「自分もB型肝炎給付金の対象者かもしれない」と思う人は、まず無料相談のある法律事務所に相談してみることをおすすめします。

参考資料

厚生労働省|B型肝炎訴訟について
厚生労働省|B型肝炎訴訟の手引き ご自身での提訴を考えている方へ(説明編)
厚生労働省|B型肝炎訴訟の手引き ご自身での提訴を考えている方へ(提出編)

この記事の監修者

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】

2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。

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