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定年後のシニアのキャリアとして「保育士」が魅力的な理由

松澤裕介 【キャリアアドバイザー】

定年引退後の選択肢として、保育士として働くことを考えてみませんか?中高年やシニアにとって、なぜ保育士という選択が魅力的なのかをシニア人材専門のキャリアアドバイザーが解説します。

目次

高齢でも意欲的に仕事に取り組んでいる人が増え、選べる職種も徐々に増えてきました。
高齢者の労働力が求められている職場も増加しており、働けるチャンスは高まってきています。その中でも近年注目されているのが「保育士」です。
今まで保育に携わってきた人でなくても、セカンドキャリアの一つとして考えられる状況が生まれてきています。

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シニアの保育士が求められている理由

厚生労働省が2020(令和2)年に公表した「保育所等関連状況取りまとめ」(PDF資料)によると、保育所や幼稚園などの利用定員は297万人となり、前年より7万9,000人の増加が見られました。
保育園の利用者は年々増加傾向にあり、たくさんの保育園が新設されていますが、その一方で保育士の供給が間に合わず、人手不足に悩んでいる施設が増えています。
そこで、充実した保育サービスを提供するために注目されているのがシニア世代です。

シニアの保育士のニーズが高まっている時代背景とともに、これから保育士のニーズがどのように変化するのかを詳しく解説します。

共働き増加によるニーズの上昇

シニアの保育士のニーズが増えているのは、共働き世帯の増加が主な理由です。

昭和の時代(1989年くらい)までは、子供が生まれたら、妻が仕事を辞めて専業主婦になり、夫が一家の大黒柱として仕事をするのが一般的でした。

ところが、1991(平成3)年あたりから専業主婦世帯と共働き世帯の割合が拮抗し、2001(平成13)年からは、両者の割合は逆転しました(※1)。時代を追うごとに核家族世帯(祖父母がいない世帯)が増え、世帯収入が減少し、女性の社会進出が当たり前になったことから、夫婦の共働きが主流となったのです。
育児休業後は子供を保育園に預けてすぐにでも働きたいという人がほとんどかもしれません。

ただ、急増する保育のニーズに応えられるほど、十分な保育施設は少ないため、待機児童問題が生じ、2017年にピークを迎えます。その後、待機児童問題は年を追うごとに解消されつつあり(※2)ますが、今度は保育現場の人材不足が問題になっています。

※1:厚生労働省「専業主婦世帯と共働き世帯の推移」(PDF)より
※2:厚生労働省「2020年4月1日時点の待機児童数について」(PDF)によると、待機児童数は12,439人となり、前年より4,333人減っている。待機児童数がピークだった2017年からは13,642人減少したことになる。

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この先も保育のニーズは変わらない

共働き世帯の増加による保育士のニーズ増加は一時的なものではありません。高齢化の影響もあり、労働力は不足しているのです。
女性の社会進出にも期待が寄せられ、夫婦共働きが標準である流れは当分変わりそうにありません。今後も保育施設の需要は高い水準で維持されるでしょう。

また、保育施設に関わる労働力は不足していますので、シニアに協力を求める傾向も強まると考えられます。ですので、保育士免許があるシニアは、当分の間、保育の現場で活躍できるでしょう。

中高年が保育士を目指すためのポイント

保育士には将来的な需要もあることがわかりました。
中高年の人が、今から保育士を目指す場合は、これからご紹介するポイントを押さえておいてください。

保育士資格がなくても保育園で働ける

結論から言うと保育士の資格がなくても保育園では働くことができます。
国家資格でもある保育士は、保育施設で働くために必須ではなく、保育補助として保育士の指示を受けて働く立場になれば、資格なしでも問題はありません。

なお、保育の現場で保育補助の人が保育士から細かく指示を受けているとは限らず、現場で適切な運用をして人材不足を補いながら、効率的に仕事を進められるようにしています。
シニアでも資格を持たずに保育施設で働いているケースは、実は少なくありません。

とはいえ保育士の資格があれば採用には有利

求職活動を有利に運ぶためには、保育士の資格を持っているに越したことはありません。
特に人気がある保育施設ですと、保育士の資格がない場合、なかなか採用してもらえないかもしれません。
年齢的には60歳以上でも応募できる保育関係の求人は豊富にあります。
資格を要求されるかどうかはケースバイケースなので、職場の選択肢を増やせるようにするには、資格の取得を目指すのが無難です。

保育士の受験資格について

保育士の資格を取るには、保育士の国家試験を受験して合格しなければなりません。
保育士試験は一般的な国家資格に比べて厳しいわけではないので、前向きに検討してみましょう。

受験資格については、大卒以上なら受験可能です。高卒でも、平成3年3月31日以前に高校を卒業した人であれば、受験資格があります。中卒でも保育所などで5年以上かつ7200時間以上働いた経験があれば、受験可能です。
勉強する時間をやりくりして、保育士試験の合格に備えてください。

シニアの保育士になる方法

中高年で保育士になるためにはどのような方法があるのでしょうか。
今まで保育士として働いていたかどうかにかかわらず、どんな仕事の探し方があるのかを理解しておくと役に立ちます。
ここでは一般的な方法として知られているものを5つ紹介します。

保育園で再雇用をしてもらう

再雇用によって保育園で採用してもらうのは、もっとも確実性のある方法です。
多くの保育園では人材が不足しているため、現場で働いていたスタッフが定年退職後も働きたいと希望すると、快く受け入れてくれる場合が多くなっています。
直前に働いていた保育園で再雇用してもらう形が基本なので、老後に働きたい場所を選んであらかじめ転職しておくのも良い考え方でしょう。

同じ法人が複数の保育施設を持っている場合には、勤務先の変更を交渉できることもあるので、必要に応じて申し出てみましょう。

ハローワークで保育の仕事を探す

保育園の求人はハローワークでもよく見つけられます。
定年まで働いていた人は、失業保険の受給のためにハローワークに通うのが一般的ですが、その流れでハローワークで求人を探してみると、60歳以上も採用対象としている仕事がたくさん見つかるはずです。

ハローワークに求人案内を出す場合、一般的な求人サイトと違って、施設側の費用負担がありません。そのため、人材不足で大変な保育園は常に求人を出していることが多く、比較的簡単に求人候補を見つけられます。

保育園公式の採用情報を確認する

保育園では採用情報を直接発信していることもよくあります。保育園のホームページに掲載された採用情報や、保育園の前にある掲示板に求人募集のチラシが貼られていることもあります。
また、保育園に直接問い合わせてみると、採用を検討してくれることも少なくありません。
特に保育園として直近まで働いていた人の場合は、直接連絡すれば採用を前向きに考えてもらえる可能性がありますので、ぜひ試してみましょう。

地域の保育情報から求人を見つける

市区町村が、ホームページや無料の配布物などで地域の保育情報をまとめて発信している場合もあります。
この保育情報の中に、保育士の募集記事が載っていることもあるので確認してみましょう。

募集記事の中には、施設のメッセージや利用者の声なども合わせて掲載されていることもあります。どのような施設かを判断できますので、ぜひ活用しましょう。

シニア向けの人材エージェントを利用する

シニア向けに仕事の紹介をしている人材エージェントを利用するのも効率的な転職方法です。保育士の資格を持っている人には特に適しています。

エージェントは施設からの依頼を受けて人材紹介をしている会社で、資格必須のケースが多いからです。
シニア向けのサービスを提供している人材エージェントなら、シニアの保育士を募集する意思がある施設からの求人を紹介してくれます。
そのため、選考がスムーズに進みやすく、転職に成功しやすいでしょう。

シニアの保育士の活躍が求められています!

保育士人材の不足により、シニアの働き手が注目されています。
保育士になるには経験や資格があると有利ですが、経験や資格がない人でもチャンスがありますので、定年退職後のキャリアとして検討してみましょう。

ただし、資格があると採用率は高まりますので、老後の仕事として考えるなら、あらかじめ保育士資格を取得しておきましょう。
保育士は将来的にもニーズが確かなお仕事です。リタイア後のセカンドキャリアとして、ぜひ検討してみてください。

この記事の監修者

松澤裕介 【キャリアアドバイザー】

キャリアアドバイザーとして、転職相談3,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間1,000名以上の履歴書、職務経歴書を作成。主に医療・介護業界の人材紹介を担当。「シニア人材の転職市場・転職の注意点」などのテーマで記事やコラムを監修。

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