年間休日の平均日数はどれくらい?大手と中小企業で違いはある?
年間休日の平均日数はどれくらい? 最低ラインや大手と中小企業の違いも!
働き方改革が行われて以降、ワークライフバランスを意識して働く人が増えてきています。転職する際に、年間休日の日数や福利厚生を重視する人も多いのではないでしょうか? しかし、「年間休日120日」と記載されていても、「それが他社と比べて多いのか少ないのかわからない」「夏季休暇や年末年始休暇は年間休日に含まれているの?」と疑問に思うこともあるでしょう。 この記事では、年間休日の平均日数や年間休日日数による働き方の違いなどをご紹介します。転職先選びの基準としてぜひご参考ください。
- 目次
- 年間休日とは?
- 年間休日とは会社が定めている1年間の休日日数のこと
- 年間休日に含まれるのは就業規則で休日と定められている日
- 年間休日に含まれないのは取得する日数や月日が一律ではない日
- 年間休日の平均日数はどれくらい?
- 1企業当たりの平均年間休日日数は110.7日
- 企業規模別の平均年間休日日数とは?大手・中小企業で違いはある?
- 業種別の平均年間休日日数ランキング
- 労働基準法が定める年間休日日数の最低ラインとは?
- 105日の最低ラインを下回っても違法にならないケースとは?
- 1日の労働時間が短い場合
- 36協定を締結している会社で働く場合
- 変形労働時間制を導入している会社で働く場合
- 年間休日125日・120日・110日・105日って実際にはどのくらい?
- 年間休日125日の場合
- 年間休日120日の場合
- 年間休日110日の場合
- 年間休日105日の場合
- まとめ・ワークライフバランスを保つためには適度な年間休日が必要!
年間休日とは?
まずは、年間休日がどのような日を意味するのか改めて確認しておきましょう。
年間休日とは会社が定めている1年間の休日日数のこと
年間休日とは、会社が定めている1年間の休日日数のことです。年間休日は、法定休日と法定外休日の合計日数になります。
法定休日と法定外休日
- 法定休日:「週に1日もしくは4週間を通して4日」の労働基準法で定められた休日
- 法定外休日:会社が独自に定めた休日。夏季休暇・年末年始休暇・会社創立記念日などが該当する
法定休日は労働基準法で定められているため、従業員を雇用しているすべての会社は「週に1日もしくは4週間を通して4日」の休日を従業員に取得させる必要があります。法定休日に従業員を働かせた場合、会社は35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
一方、法定外休日は企業が独自に定めた休日のため、法定外休日に働いても労働基準法の割増賃金は発生しません。ただし、法定労働時間である「1日8時間・週40時間」を超えた場合は25%以上の割増賃金が発生します。
なお、労働基準法が遵守されていれば年間休日の日数は会社が独自に決められるため、会社ごとに年間休日の日数は異なります。
法定外休日や時間外労働については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
基本給を基にした残業代の計算方法|時給制の計算式やツールの紹介も!
【2024年】残業時間に上限はある?超えたらどうなる?36協定との関係も
休日と休暇の違いとは?
「休み」を表現する言葉には「休日」や「休暇」があります。両者の違いは、労働義務の有無です。
「休日」は労働者に働く義務がない公休日であるのに対し、「休暇」は労働者に働く義務はないけれど会社が義務を免除する日になります。
年間休日に含まれるのは就業規則で休日と定められている日
会社の就業規則で夏季休暇や年末年始休暇が休日と定められている場合、これらの休暇は年間休日に含まれます。
年間休日に含まれないのは取得する日数や月日が一律ではない日
年間休日に含まれないのは、以下のような取得する日数や月日が一律ではない日です。
年間休日に含まれない休日・休暇
- 有給休暇
- バースデー休暇
- 慶弔休暇
- 育児休暇
- 介護休暇
- 看護休暇
- 生理休暇 など
これらの休日は取得する日が労働者の都合により異なるため、年間休日には含まれません。
忌引き休暇はいつから何日とれる?範囲や日数・給料の有無なども解説!
年間休日の平均日数はどれくらい?
では、年間休日の平均日数はどれくらいなのでしょうか?厚生労働省による「就労条件総合調査の概況」を基に確認してみましょう。
1企業当たりの平均年間休日日数は110.7日
2022年の1企業当たりの平均年間休日日数は110. 7日です。
■1企業当たりの平均年間休日日数の年次推移
(以下の内容を基に作成)
※1:令和5年就労条件総合調査の概況
※2:令和4年就労条件総合調査の概況
※3:令和3年就労条件総合調査の概況
※4:令和2年就労条件総合調査の概況
※5:平成31年就労条件総合調査の概況
※6:平成30年就労条件総合調査の概況
1企業当たりの平均年間休日日数は、2021年に107日と一旦減少したものの、基本的には年々増加していることがわかります。
ワークライフバランスを意識する企業が増えていることから、今後も増加することが予想されています。
企業規模別の平均年間休日日数とは?大手・中小企業で違いはある?
では、企業規模による日数の違いはあるのでしょうか?
■企業規模別の1企業当たりの年間休日日数(2022年)
※1:令和5年就労条件総合調査の概況を基に作成
企業規模が大きくなるほど年間休日も増えています。このことから、中小企業より大手企業の方が年間休日が多いことがわかります。
業種別の平均年間休日日数ランキング
業種別でも年間休日は異なります。以下は、2017年の業種別の平均年間休日日数ランキングです。
■業種別の平均年間休日日数ランキング
※6:平成30年就労条件総合調査の概況を基に作成
「学術研究、専門・技術サービス業」「情報通信業」が118.8日ともっとも多く、もっとも少ない「宿泊業、飲食サービス業」の97.1日とは21.7日の差があることがわかります。
労働基準法が定める年間休日日数の最低ラインとは?
労働基準法で定められている年間休日の最低ラインは105日です。では、この105日はどこから出された日数なのでしょうか?
105日の最低ラインは、「週に1日もしくは4週間を通して4日」の法定休日と、「1日8時間・週40時間」の法定労働時間から計算されています。
年間休日の最低ラインの計算方法は以下の通りです。
■年間休日の最低ラインの計算方法
- 1年間の週数を確認する(365日÷7日)
- 年間労働時間を計算する(週数×40時間)
- 最大年間労働日数を計算する(年間労働時間÷8時間)
- 年間休日を計算する(暦日数−年間労働日数)
1年間の週数は「365÷7日」=約52週
年間労働時間は「52週×40時間」=2,080時間
最大年間労働日数は「2,080時間÷8時間」=260日
年間休日は「365日−260日」=105日
この考え方から、年間休日の最低ラインは105日とされています。
105日の最低ラインを下回っても違法にならないケースとは?
年間休日の最低ラインは105日とお伝えしましたが、働き方によっては105日を下回っても違法にならないケースもあります。
1日の労働時間が短い場合
1つ目は、1日の労働時間が短い場合です。
先ほど解説した105日の計算は、「1日の労働時間が8時間・週に40時間」労働することを前提とした結果です。そのため、1日の労働時間が短い場合は、年間休日の日数も異なってくるのです。
わかりやすいように、1日の所定労働時間が7時間と定められている会社の年間休日の最低ラインを確認してみましょう。
1年間の週数は「365÷7日」=約52週
年間労働時間は「52週×40時間」=2,080時間
最大年間労働日数は「2,080時間÷7時間」=297日(1日未満切捨)
年間休日は「365日−297日」=63日
1日の所定労働時間が7時間と定められている会社の場合、年間休日の最低ラインは63日になります。
年間休日が少ないと感じますが、「週に1日もしくは4週間を通して4日」の法定休日と「1日8時間・週40時間」の法定労働時間のルールは守られているため、労働基準法違反には該当しません。
36協定を締結している会社で働く場合
2つ目は、36協定を締結している会社で働く場合です。
36協定とは、企業が労働者に法定労働時間を超えて労働させる場合に必要な協定のことです。
従業員に「1日8時間・1週間で40時間」を超える労働、または休日に労働をさせる場合、企業は事前に36協定を締結する必要があります。
逆に言えば、36協定を締結している企業で働く場合は、105日の年間休日を下回っても違法にはなりません。
36協定に関しては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご参考ください。
36(サブロク)協定とは|年間の残業時間の上限は?特別条項の届出でどう変わる?
変形労働時間制を導入している会社で働く場合
3つ目は、変形労働時間制を導入している会社で働く場合です。
変形労働時間制度とは、一定期間の平均労働時間が法定労働時間の範囲内ならば、法定労働時間を超える日があっても時間外労働にならない制度のこと。繁忙期と閑散期で業務量に差のある企業で多く導入されています。
労働基準法では「1日8時間・1週間40時間」と、労働時間の上限を「日」や「週」単位で設定していますが、変形労働時間制では労働時間の上限を「週」「月」「年」単位で定められます。
例えば、1週間で40時間以内の労働時間に収まらない場合でも、1ヶ月の合計労働時間を1日単位で平均した場合、8時間以内に収まっていれば時間外労働になりません。
変形労働時間制の場合は、変形労働制を設定している期間により年間休日の最低ラインが異なります。
■変形労働制を設定している期間による年間休日の最低ライン
期間 | 最大年間労働時間 | 年間休日 |
---|---|---|
3ヶ月以内 | 制限なし | 制限なし |
3ヶ月超 | 280× | 365−(左項の日数) |
1年以上 | 280日 | 85日 |
「対象期間が3ヶ月を超える場合、年間の最大労働日数は280日まで」とする内容は、労働基準法施行規則第12条の4第3項で定められています。
■労働基準法施行規則第12条の4第3項
③法第三十二条の四第三項の厚生労働省令で定める労働日数の限度は、同条第一項第二号の対象期間(以下この条において「対象期間」という。)が三箇月を超える場合は対象期間について一年当たり二百八十日とする。
※:E−gov|労働基準法施行規則 https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023#Mp-At_12_4
一方で、対象期間が3ヶ月以内の場合は、労働日数の限度の定めがありません。
これらのことから、変形労働時間制を導入している会社で働く場合は、105日の年間休日を下回っても違法にはならないことになります。
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年間休日125日・120日・110日・105日って実際にはどのくらい?
募集要項に掲載されている「年間休日〇〇日」という内容。年間休日数を聞いても、実際にどんな間隔で休日があるのかのイメージが沸かない人も多いのではないでしょうか?
ここでは、年間休日数による休日スケジュールのイメージをご紹介します。
年間休日125日の場合
年間休日125日の場合は、「1週間に2回+国民の祝日+ 5日程度の夏季休暇・年末年始休暇」を取得できるケースが多いです。
年間休日125日の主な内訳
- 52週×週休2日=104日
- 国民の祝日=16日
- 夏季休暇・年末年始休暇=5日
- 合計125日
カレンダー通りの休日の他に、夏季や年末年始などに連休を取得できることが多いため、ワークライフバランスを重視したい人におすすめです。
「年間休日の平均日数はどれくらい?」でご紹介した年間休日の平均日数と比較しても、125日という日数は多い方であることがわかるでしょう。
年間休日120日の場合
年間休日125日の場合は、「1週間に2回+国民の祝日」が確保できるイメージです。
年間休日120日の主な内訳
- 52週×週休2日=104日
- 国民の祝日=16日
- 合計120日
年間の土日祝日を合計すると約120日になるため、毎週土日の完全週休2日制の場合は、ほぼカレンダー通りの休日になります。
夏季休暇や年末年始休暇を取得する場合は、一部の土曜日を出勤して夏季休暇・年末年始休暇に振替、もしくは、有給を充てることになるでしょう。
年間休日110日の場合
年間休日110日の場合は、さまざまなパターンが予想されます。
年間休日110日の主な内訳①祝日休みで週休1日の週が月に1回ある場合
- 40週×週休2日=80日
- 12週×週休1日=12日
- 国民の祝日=16日
- 合計108日
上記の場合、残りの2日は夏季休暇・年末年始休暇などに充てられます。
年間休日110日の主な内訳①祝日出勤で週休2日の場合
- 52週×週休2日=104日
- 合計104日
上記の場合、残りの6日は祝日や夏季休暇・年末年始休暇などに充てられます。
年間休日110日の場合はカレンダー通りの休日が取得できないため、希望の休日を取得するために土日や祝日などで調整する必要があるかもしれません。
年間休日105日の場合
年間休日105日は、労働基準法で定められている法定休日と法定労働時間を遵守するための最低ラインの日数です。
週休2日で考えた場合、「52週×週休2日=104日」とすでに残りは1日しかないため、有給休暇などを利用しないと長期休暇は難しいかもしれません。
まとめ・ワークライフバランスを保つためには適度な年間休日が必要!
ワークライフバランスをうまく保つためには、適度な休日を取得することが大切です。
完全週休2日制で働く場合、単純計算で年間休日は104日。そこに国民の祝日を加えると120日です。年間休日120日がほぼカレンダー通りの休日であることを考えると、年間休日日数の重要さに気づく人も多いでしょう。
もちろん年間休日日数が全てではありません。しかし、心身ともに元気に働くためにも、この機会に年間休日の重要さについて考えてみてはいかがでしょうか?
参考資料
令和5年就労条件総合調査の概況
令和4年就労条件総合調査の概況
令和3年就労条件総合調査の概況
令和2年就労条件総合調査の概況
平成31年就労条件総合調査の概況
平成30年就労条件総合調査の概況
この記事の監修者
新名範久 【税理士・社会保険労務士】
「新名範久税理士・社会保険労務士事務所」所長。 建設、不動産、理美容、小売、飲食店、塾経営といった幅広い業種の法人や個人の税務・会計業務を行う。社会保険労務士として、法人の社会保険業務も担当。1人でも多くの人に、税金に対する理解を深めてもらいたいと考え、業務を行っている。 税理士、社会保険労務士、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、測量士補、CFP、FP技能検定1級、年金アドバイザー2級、証券外務員1種などの資格を保有。