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60代女性は必見!定年退職後の女性の過ごし方

谷口芳子 【社会保険労務士】

60歳で定年退職する、あるいは65歳まで働くといったように、リタイアする年齢を選べる時代になりました。定年退職の前後にやるべきことを解説し、充実した日々の過ごし方を提案します。

目次

定年退職前後にやるべきこと

会社などを定年退職するにあたって、まずやらなければならないことは健康保険の切替です。
退職日の翌日から、勤務先の健康保険証は使えなくなりますので、市町村の国民健康保険に加入する、あるいは家族の被扶養者になるなど、退職前にいずれかを選択しておく必要があります。

退職後は、健康保険証を勤務先に返却するほかにも、再就職を考えている人はハローワークに行って求職の申込みをする手続きなどがあります。

詳しくは下記の記事を参考にしてください。
60歳の定年退職前後にするべき保険・年金・失業保険・退職金の手続きを解説

定年後のセカンドキャリアに関連した記事

退職金などの手続き

年度の途中で退職したまま再就職しなかったときは、年末調整を受けることができませんので、確定申告をして、納め過ぎた所得税を還付する手続きが必要です。

また、退職金が支給される場合は、多くの会社で「退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)」の提出を求められますが、この申告書を出さないときも確定申告が必要になりますので、あらかじめ勤務先に確認する必要があります。

会社によっては退職金を一時金ではなく、年金で受け取る方法を選ぶこともできます。
退職金が一時金の場合の課税には退職所得控除が受けられますが、年金の場合は雑所得として所得控除が受けられます。
一時金か年金か、退職金をどちらで受け取ったほうが得か迷ったときは、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのもよいでしょう。

詳しくは下記の「定年退職前に退職金の手続きをしよう」の項目を参考にしてください。
定年退職の前後にやっておくべきこと特集 - 退職金・年金・健康保険・失業保険の手続き

家族を扶養していた人や、家族の扶養に入る人の諸手続き

扶養家族がいる人の場合は、退職後に健康保険を切り替える際に、扶養していた家族の手続きも合わせて必要となります。

また、退職後に失業手当を受給する人は注意してください。
失業手当は非課税のため、税法上では収入には含まれませんが、社会保険上では収入に含まれます。

扶養家族となるためには、失業手当も含めて年収の見込みが130万円(60歳以上の場合は180万円)未満であるなどの要件がいくつかあります。
失業手当を受給し終わってから手続きをするなど、扶養家族となるタイミングに注意しましょう。

60代以上男女の4割強は、自分を高齢者だと思っていない

内閣府 令和3(2021)年度高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果内の設問「あなたは、自分を高齢者だと感じていますか」の回答率グラフ

内閣府が公表している高齢者の意識調査(※)を見ると、大変興味深い内容がわかりました。
この調査は、全国に住む60歳以上の男女にアンケートを取ったものです。

意識調査の中には「あなたは、自分を高齢者だと感じていますか」という設問があり、4割強(44.8%)の人が「いいえ」と答えました。
とくに60歳から64歳の60代前半の場合ですと、男性でいいえと答えたのは80.4%、女性でいいえと答えたのは84.6%と大多数でした。

「自分を高齢者だと感じていない人」の割合が高いのは、未婚の人、子供がいない人、親と同居している人、収入を伴う仕事をしている人、などでした。
また、持家に住んでいる人や、経済的に苦しくない人、健康状態がよい人も、自分を高齢者だと感じていない割合が高いそうです。

現在60代となっている人が生まれ育った昭和の時代では、60歳の人を「老人」と言うこともありました。
しかし、医療技術が進歩し、定年退職の年齢が延び、アクティブシニアと呼ばれる健康で活動的な高齢者が多くなった現代では、「高齢者」の定義や認識が大きく変りつつあるようです。

※内閣府の意識調査資料


60代以降の女性に人気の趣味にはどんなのものがあるのか?

<シニア世代の男女に人気の習い事ランキング>

  1. テニスやゴルフなどの各種スポーツ
  2. 楽器やカラオケなどの音楽関係
  3. 社交ダンス等のダンス全般
  4. 書道
  5. ヨガ(ホットヨガ含む)


上記は「50代からの人生がグッと楽しくなる10個の方法・生き方」という記事に掲載した、シニア世代の男女に人気の習い事ランキングです。

このランキングのうち、4位の書道以外は、体を動かす・声を出すなどアクティブな趣味となっています。
このような趣味や習い事のランキングからも、元気で活動的なシニアが増えていることが伺えます。

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60代以降も働く女性はどれくらいいるのか

定年退職の年齢がどんどん伸びている昨今、60代以降も働く女性はどれくらいいるのでしょうか? 
最新の厚生労働省白書を参考にしてみましょう。

令和2(2020)年年版厚生労働省白書より女性の年齢階級別就業率の変化グラフ

令和2年(2020年)版厚生労働白書には「女性の年齢階級別就業率の変化」のグラフがあります。
このグラフは年齢を5歳刻みにして、10年ごとの就業率の推移を表したものです。

60~64歳の年代に注目すると、1989年の就業率は38.3%、1999年には38.5%となっています。
それに対して、2009年から2019年の10年間では、42.9%から58.6%へと大幅に増加しました。
30年前と比較すると、60代前半で働いている女性は4割弱から6割弱に増えていることがわかるでしょう。

日本はもともと諸外国に比べて、出産や育児の時期に仕事から離れる女性が多い傾向にあります。
30~34歳と35~39歳の年代の就業率が下がっているのはそのためです。

参考資料
令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える
 本文掲載図表(一覧/バックデータ) > 図表1-3-8 女性の年齢階級別就業率の変化より

女性の就業率は「M字カーブ」と呼ばれているが、M字の底は浅くなっている

1989年時点の女性の就業率を表す紫色の折れ線グラフに注目すると、30代前半の部分が少しくぼんでいることがわかると思います。
このように、女性の就業率を表すグラフは、アルファベッドの「M」に近い曲線であることから、「M字カーブ」と呼ばれています。

ところがこの30年で、M字の底となる就業率が49.6%から75.4%へと上昇し、M字の底が浅くなってきました。

令和2(2020)年年版厚生労働省白書より、女性の年齢階級別就業率の変化グラフ(1989年と2019年の比較)

この30年で、20代や30代の女性だけでなく、すべての年代の女性の就業率が上昇しています。
シニア世代の働く女性が増えていることも、多くの人が実感していることでしょう。

60代以降も働く女性が増えただけでなく、働き方も多様になってきています。
職種によっては、定年という考え方にとらわれず働くことも可能ですので、下記の記事を参考にしてみてください。
「定年のない仕事」には何がある?働き方や職種について徹底解説

まとめ

定年後も再雇用で引き続き働き続ける、あるいはパートタイムやアルバイトをするといったように、60代ではより幅広く働き方を選べます。
あるいは定年退職後、趣味や好きなことに時間もお金もかけて、悠々自適の人もいるでしょう。

よく言われることですが、「健康と時間とお金」がバランスよく充足している年代はなく、多くの人は、常に3つのうち何かが不足しているそうです。
60代の人が20代・30代の頃と今の自分を比べると、「お金」に切羽つまった不足を感じることはなくても、「健康」と「時間」は若い頃より貴重に感じることが多いのではないでしょうか。

「時間」を増やすことはできませんが、「健康」は生活習慣や日々の運動などで増進することが可能です。やりたいことを思ったとおりに実行できる身体を保ちながら、意識的に社会と関わりをもって、貴重な「時間」を充実させていきたいものです。

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この記事の監修者

谷口芳子 【社会保険労務士】

NPO法人や税理士法人を経て現職。社会保険労務士として、社会保険・雇用保険の各種届出、年末調整、労務相談、公正証書作成などの業務を担当。行政書士資格保有。

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