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介護旅行はトラベルヘルパーに頼んで安心!サービス内容や料金目安も

多田眞理子 【介護福祉士】

この記事では、トラベルヘルパーに介護旅行を頼むメリットや料金、確認すべきポイントなどをご紹介しています。「身体的に不安があって旅行に行けない…」そんな人はぜひ参考にしてください。

目次

介護旅行とはどんなもの?

介護旅行とは
介護旅行はこれ!という定義はありません。ただ、一般的には介護が必要な人と一緒に楽しめる旅行のことをいいます。

介護が必要な状態になると旅行をする機会が減ってしまう人は多いでしょう。
「旅行したいけれど、同行者に迷惑をかけたくない」  「旅行中にケガをするのではないかと不安」
要介護者はこんな思いを抱いてしまう人が多いのではないでしょうか?
「普段と違う環境で食事やお風呂、トイレの介助ができるか不安」  「介護が気になって旅行を楽しめないのではないか」  「外出先で変化が起きた場合に対応できるか不安」
介護する人もこんな考えから、旅行に連れて行ってあげたいけれど諦めている人もいるかもしれません。

そこで、重宝する存在がトラベルヘルパーです。トラベルヘルパーとは介護と旅程管理主任者、両方の資格をもつ介護旅行のプロで、旅行介護士と呼ばれることもあります。

介護が必要な人や家族の要望に応じて、介護旅行の企画から同行までを行ってくれる頼もしい存在です。諦めていた介護旅行もトラベルヘルパーに頼めば可能になります。要介護者も同行者も不安の種が少なくなるため、旅行が楽しめます。

厚生労働省の発表によると、2021年の要支援・要介護認定者数は約690万人。(※1)65歳以上の人口(約3,627万人)(※2)の約2割がなんらかの介護や支援が必要であることがわかります。

しかし、人生100年時代の今、介護が必要だからといって旅行を諦めることはありません。
身体が不自由なため、旅行を諦めていた人  家族だけで要介護者と旅行することに不安のある人  旅行するからにはみんなが楽しめる旅行にしたい人  父の日・母の日・喜寿や傘寿などの長寿のお祝いを旅先で行いたい人  1人で旅行を楽しみたいが介護が必要な人
上記のような人は、介護旅行の計画を立ててみてはいかがでしょうか?

※1:厚生労働省|令和3年度介護保険事業状況報告(年報)
※2:総務省統計局|統計トピックスNo.132 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで・高齢者の人口

介護旅行2つのパターン

介護旅行2つのパターン
では、介護旅行にはどのようなパターンがあるのでしょうか?ここでは主な2つのパターンをご紹介します。

介護旅行を提供している会社やサービスにより多少の違いはありますが、2つに共通しているのはトラベルヘルパーのような介護の資格を取得している人が同行してくれることです。

介護サービス付きオーダーメイド旅行

1つ目は、介護サービス付きオーダーメイド旅行です。要介護者や同行者、家族の希望をヒアリングし、希望に沿った内容でトラベルヘルパーが旅程を作成します。もちろん、旅行にも同行し、介護サービスの提供も行います。

メリットは、希望に合ったオリジナルの旅行ができることや同行者の負担が最小限に抑えられること。遠方の旅行だけでなく、結婚式やお葬式などの冠婚葬祭や日帰り旅行の付き添いにも対応可能です。

行きたい場所が決まっている人や、宿泊施設にこだわりがある人などにおすすめです。

介護サービス付きパッケージ旅行

2つ目は、介護サービス付きパッケージ旅行です。旅行会社やトラベルヘルパー会社などが主催する介護サービス付きの旅行に申し込みをします。

オーダーメイド型との違いは、旅程があらかじめ決まっていることです。しかし、パッケージツアーといっても一般的なパッケージツアーのように大型バスで団体で旅行する訳ではありません。

介護サービス付きパッケージ旅行は団体でなく個人旅行として申し込むシステム。そのため、他のグループと一緒に行動することはありません。移動もミニバンのような車を利用するケースが一般的です。

オーダーメイドでプランを作るのが面倒な人におすすめです。

介護旅行をトラベルヘルパーに依頼するメリットとは?

介護旅行をトラベルヘルパーに依頼するメリット
せっかくの旅行、家族水入らずで楽しみたいと思う人も多いでしょう。もちろん、家族だけで旅行が楽しめれば言うことありません。

しかし、たくさんある宿泊施設の中から要介護者の受け入れ体制が整っているホテルを探したり、バリアフリー設備の整っている観光地を探したりするのは、時間と労力が必要です。

トラベルヘルパーに依頼すれば、参加する人全員の精神的身体的負担が軽減されます。旅行するからには、介護する人も楽しめることが理想でしょう。

ここでは、介護旅行をトラベルヘルパーに依頼するメリットをご紹介します。

要望に対応した旅行プランを提供してくれる

メリット1つ目は、要望に対応した旅行プランを提供してくれることです。要介護者と一緒に旅行する場合、もっとも気になることは、負担の少ない移動手段や快適に過ごせる宿泊施設が見つかるかどうか、ということではないでしょうか?

トラベルヘルパーや介護旅行を扱っている会社に依頼すれば、要望をじっくりヒアリングしたうえで旅行プランを作成してくれます。

彼らは介護旅行のプロのため、私たちが知らないバリアフリー施設の情報や宿泊施設の介護者対応などを把握済み。特に観光地のバリアフリー情報は調べづらいため、無理のないプランを提供してくれることは大きなメリットになるでしょう。

バリアフリー対応宿泊施設や観光地の手配

旅行の楽しみの1つでもある宿泊施設。美味しいご馳走を食べたり温泉に入ったりすることを楽しみに旅行する人も多いでしょう。

トラベルヘルパーに依頼すれば、バリアフリー対応の宿泊施設や観光地の手配が可能。トラベルヘルパーは旅行に同行するため、今までの経験を基に宿泊地や観光地を選びます。実際に見たり体験した人の声は信憑性が高いはず。

トラベルヘルパーがインターネットやパンフレットに載っていない情報を持っていることは、大きなメリットです。

車椅子のまま移動できる交通機関の手配

トラベルヘルパーは以下のような交通機関の手配も行ってくれます。
車椅子リフト付きの車の手配  電車の車椅子対応席や個室の手配  車椅子で飛行機に乗る手配  介護タクシーの手配 など
上記のような交通手段はあらかじめ手配しておくことで当日スムーズな移動が可能です。要介護者や同行者の負担も最小限で抑えられます。

要介護者に合った福祉用具のレンタル手配

旅行する際はできるだけ荷物を少なくしたいもの。トラベルヘルパーに頼めば、要介護者に合った福祉用具のレンタル手配も可能です。
車椅子  歩行器  杖  体位変換器  歩行補助用具  排泄補助用具  入浴補助用具 など
ただし、レンタル可能な福祉用具はトラベルヘルパーが所属する会社や宿泊施設によって異なるため、事前に確認が必要です。

要介護者も同行者も安心して旅行を楽しめる

メリット2つ目は、要介護者も同行者も安心して旅行を楽しめることです。日常生活の中で介護を経験している人は、常に要介護者を気にかけていることも多いでしょう。

慣れた環境の自宅でも常にどこか心配な気持ちを抱いている人は、旅行先ではさらに心配になり自分が楽しむ気持ちになれない可能性もあります。

しかし、トラベルヘルパーに依頼すれば心配する気持ちは軽減されます。さらに、トラベルヘルパーは旅行中に以下のサービスを行ってくれるため、身体的な負担も少なくなるでしょう。
食事介助 :朝・昼・夕食をとる際のお手伝い  排泄介助 :排泄の介助やおむつ交換  更衣介助 :着替えを行う際のお手伝い  身支度介助:洗顔・歯磨き・ひげ剃り・整髪・化粧などのお手伝い  体位変換 :就寝時の床ずれ予防のための体位変換のお手伝い  移動介助 :移動する際のお手伝い  服薬介助 :薬の管理  見守り :同行者が少ない時間帯や夜間の見守り  毎朝や入浴前などのバイタルチェック  金銭管理が困難な要介護者の場合の金銭の管理 など
つまりトラベルヘルパーは、旅行中の介護者の身の回りのお手伝いを一通り担当してくれるのです。

要介護者は同行者への負担が軽くなることで自分の気持ちも軽くなるはず。また、同行者も要介護者への心配や身体的負担が軽くなるため、楽しく過ごせるでしょう。

旅行中のトラブル回避やスケジュール管理をしてくれる

メリット3つ目は、旅行中のトラブル回避やスケジュール管理をしてくれることです。トラベルヘルパーは過去の経験から、要介護者にとって危険につながる現地の情報を把握しています。

健康な人にとっては安全な場所でも要介護者にとっては危険な場所は意外にあります。初めて行く旅行先の場合は尚更です。

しかし、あらかじめ情報を得ていれば、旅行中のトラブル回避につながります。もちろん。万一トラブルが起きた場合でも迅速な対応をしてくれます。

また、旅行中は楽しさのため、つい時間を忘れてしまいがち。「時間が遅くなって、寄りたい観光地に行けなかった」なんてことも起こり兼ねませんが、トラベルヘルパーがいればスケジュール管理も行ってくれるため安心です。

介護旅行料金の目安

介護旅行料金の目安
気になる費用も確認してみましょう。介護旅行の費用は主に「利用料+オプション費+トラベルヘルパーの旅費」で構成されます。

利用料には基本的な介護費用が含まれます。ただし、入浴介助に関しては利用料に含まれる会社と別料金になる会社があるため注意が必要です。

さらに、同室宿泊や夜間介護を希望する場合はオプションで追加するケースが一般的。また、旅行に同行するトラベルヘルパーの旅費には、宿泊費・交通費・食事代などが含まれます。

トラベルヘルパーに依頼した場合の主な料金の目安は以下の通りです。ただし、以下の費用はあくまでも目安のため、介護旅行やトラベルヘルパー取り扱い会社により異なることをご了承ください。
	自立〜要介護2	要介護3〜5 "日帰り (8時間まで)"	25,000〜33,000円	33,000〜45,000円 "1泊2日 (会社により 所定時間の定め有)"	50,000〜66,000円	60,000〜90,000円 "延長料金 (30分ごと)"	2,000円	 入浴介助のみ	8,000〜10,000円	10,000〜14,000円
上記の費用にトラベルヘルパーの旅費、参加者の旅費も追加されると、決して安い費用とはいえないでしょう。しかし、この費用を高いととらえるか妥当ととらえるかは人それぞれ。

日常的に介護を行い、要介護者と旅行することの大変さを理解している人にとっては値段以上の価値があるものかもしれません。

要チェック!トラベルヘルパーに依頼しない場合の確認ポイント

トラベルヘルパーに依頼しない場合の確認ポイント
軽度の要介護者との旅行や介護する人手が多い場合、トラベルヘルパーに依頼せずに旅行計画を立てる人も多いでしょう。ここでは、旅先でも普段通りの介護を行えるための確認ポイントをご紹介します。

ゆとりをもった旅行計画が組めているか確認する

1つ目は、ゆとりをもった旅行計画が組めているか確認することです。要介護者との旅行は、通常より時間がかかることが一般的。ゆとりをもった計画を立てないと、急ぐあまりケガやトラブルの原因になってしまうこともあります。
トイレ休憩がとれる場所を多めに組み込む  渋滞した場合の想定をしておく  立ち寄り施設は長めに時間をとる  タイトなスケジュールにしない など
せっかくの旅行、いろいろな場所に行きたい気持ちはわかりますが、介護旅行の場合は要介護者のことを最優先に考えたプランを立てるよう心がけてください。

宿泊施設や立ち寄り施設に事前に伝えるべきことをまとめる

2つ目は、宿泊施設や立ち寄り施設に事前に伝えるべきことをまとめることです。まずは、宿泊施設や立ち寄り施設に要介護者が訪問することを伝え、以下のことを再確認します。
施設内は車椅子で移動可能か  エレベーターの有無  エレベーターから部屋までの距離  食事場所や食事スタイルの確認  希望の食事に対応可能か など
確認した際にこちらの希望や訪問時間を伝えておくと、当日スムーズな対応をしてくれる可能性が高くなります。

立ち寄り施設のトイレの機能性を確認する

3つ目は、立ち寄り施設のトイレの機能性を確認することです。近年、バリアフリー対応のトイレは増えていますが、全ての観光地に設置してある訳ではありません。特に、寺や神社などに立ち寄る予定の場合は、あらかじめトイレの機能性を確認しておくことが重要です。

トイレの機能性が十分でない場合は、立ち寄り場所を変更したり近くのバリアフリー対応のトイレを見つけておいたり、対策を考えておきましょう。

宿泊施設にレンタル可能な福祉用具があるか確認する

4つ目は、宿泊施設にレンタル可能な福祉用具があるか確認することです。介護に必要な物を全て持っていくとかなり大きな荷物になるため、レンタル可能な物は借りた方が同行者の負担が軽減されます。

特に、入浴介助に必要なシャワー椅子や滑り止めマットなどはかさばるため、レンタル可能かどうか事前に確認しておきましょう。

保険証やお薬手帳を持参する

保険証やお薬手帳を持参する
5つ目は、保険証やお薬手帳を持参することです。旅行中にケガや体調不良を起こした場合は、すぐにかかりつけの病院には行けません。しかし、お薬手帳があれば普段服用している薬の種類がわかるため、症状が伝わりやすくなります。

また、旅先の近くの病院に行く際に保険証があれば、保険適用料金で診察可能なため、費用の心配が軽減されます。

旅行の準備をする際には、同行者が必ず持参することを忘れないようにしましょう。

まとめ・介護旅行で素敵な思い出作りを!

要介護認定者が年々増加する今、介護旅行のニーズは高まっています。しかし、同行者に迷惑をかけたくない思いや、旅先でいつものように介護ができるか不安な思いから、旅行を諦めている人も多いでしょう。

トラベルヘルパーや介護旅行業者はそんな人たちのために存在します。介護が必要になったからといって、旅行を諦める必要はありません。

介護旅行はトラベルヘルパーに依頼すれば大幅に同行者の負担が軽減されます。この機会に、素敵な思い出作りの計画を立ててみませんか?

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参考資料

この記事の監修者

多田眞理子 【介護福祉士】

15年以上介護職に携わる介護福祉士。 特別養護老人ホーム・デイサービス・訪問介護などさまざまな介護施設に従事してきた経験から、介護の現状や問題点を痛感している。現在は子育てをしながら介護職を継続中。

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