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公務員定年後の再就職先は?元公務員のシニアが活躍する職種をご紹介

片桐吉晶 【キャリアアドバイザー】

公務員の定年は2031年に65歳へ延長されます。しかし多くの人は70歳まで働く時代。公務員も定年後にさまざまな職場で活躍しています。そこで公務員におすすめの再就職先を紹介します。

目次

2021年6月に改正された国家公務員法では、国家公務員の定年退職年齢が段階的に引き上げられ、2031年には65歳になります。
人事院が公開した「令和2年退職公務員生活状況調査の結果について」によると、2019(令和1)年に定年退職した国家公務員のうち、89.6%もの人が再就職して働いており、そのうち国の機関に再任用された人が81.0%、民間企業に再就職した人が10.3%を占めたそうです。

多くの公務員は、定年後どのように過ごしていくのが良いのでしょうか。今回は、公務員が定年した後の働き方を、シニア専門人材コーディネーターが解説します。

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公務員定年後の活動状況

公務員の多くは定年退職した引退後、どう過ごしているのでしょうか。

再雇用制度を利用して定年後も働く

公務員には、国の行政機関(行政執行法人を含む)に再雇用してもらう制度(再任用制度)があります。
60歳の定年退職後も「年金をもらうまでは働きたい」「年金額を見ると不安になる」と老後の安泰や日々の生計維持のために給料を得たいと考えている公務員の方は多いのです。

一般職の国家公務員の方が、再任用職員として国の機関で定年退職後も働くという姿は、もっともポピュラーだといえます。

働かずに引退する

健康上の不安や家族の介護などの理由により、働かないという選択をする公務員もいます。
しかし、60歳定年退職後に公的年金支給期間までは5年の空白期間があるため、退職手当を取り崩したり、節約したりして、家計の赤字を回避している公務員が多いようです。

退職後の健康保険の支払いなど、退職後に支出が増えるケースもあるため、情報収集を怠らないことが必要といえるでしょう。

民間企業に再就職する

先ほど紹介した人事院の調査によれば、民間企業に再就職する人も1割近くいます。再任用され、国の機関で働く定年後公務員の53.4%がフルタイム勤務であるのに対し、民間企業で働く定年後の公務員は、89.1%もの人がフルタイムで勤務しているそうです。

職種は、事務系業務(管理職を含む)で働く人が最も多く、ほかに役員(取締役・監査役 等)・顧問・相談役、技術系の仕事(管理職を含む)、専門職(医師、看護師、教師、税理士 等)などに就く人が多く見られます。

なお、定年退職後に再雇用された人は、一般の正社員に対し、「嘱託社員」などと呼ばれることがあります。

公務員定年後に民間企業で再就職する例


公務員定年後に民間企業で再就職する人の一例をご紹介します。

顧問・相談役

公務員時代に培ってきた知識や経験、豊富な人脈を活かし、経営者(社長など)の相談にのり、アドバイスを行うのが、顧問や相談役と呼ばれる役職です。顧問や相談役は、法律で設置が義務づけられているわけではないため、すべての会社に存在する役職ではありません。
給与や仕事内容は、企業によって異なりますので、顧問・相談役に転職する方法もさまざまです。給与額は一般的な嘱託社員よりもかなり高い傾向にあります。

施工管理技士

公務員時代に、土木、建築、電気、機械などの技術職に就いていたシニアの方が、よく引退後に活躍しているのが施工管理技士です。
土木施工管理、建築施工管理、電気工事施工管理など、資格や経験が細分化されており、公務員時代に培った資格や経験をダイレクトに生かすことができます。

人気の職種となっており、数多くの求人数が存在します。
建設業界では人材が不足しているため、高齢者も採用する企業も多く、定年後も長く働くことができる職種として知られています。

看護師

公務員時代に県立病院などの公的施設で働いていた看護師が、定年退職後も医療機関に就職するケースが多いようです。
現在、老人福祉施設や訪問看護ステーションなどが全国的に急増しており、定年退職後にそれらの施設で活躍する看護師が増えています。
看護師自体の人数は増えていますが、まだ供給が追いついていないそうで、今後も定年退職後の看護師の活躍が期待されています。

看護師が定年後も長く働ける理由については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

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税理士・税理士補助

公務員時代に国税や地方税に関わる業務に従事していたシニアの方は、民間企業でも活躍されています。勤務年数に応じて税理士試験が免除される「国税従事者の免除制度」を利用して取得した税理士資格を生かした国税局や税務署出身者の再就職先として人気の職種です。

近年は有資格者の場合でも年齢を考慮して税理士としてではなく、税理士補助という形で採用されるケースも増加しており、転職の窓口が広がっている仕事といえるでしょう。

下記はシニアジョブエージェントを活用して、実際に会計事務所へ再就職した、元国税庁の方のインタビュー記事です。
再就職の参考にしてください。

国税庁定年退職後、会計事務所に再就職した方へのインタビュー

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まとめ


現在の年金の受給開始年齢は原則65歳となっており、年金が支給されるまでの5年間は、老後のために働き続け、貯蓄で賄うなどの努力が必要となってきました。

60歳で定年退職した後に、それまでのご自身の経験や資格を活かし、国の機関に再任用したり民間企業に再就職したりする方が多くいらっしゃいます。

また、老後のためだけではなく、まだまだ元気で働きたいと考えている人も増えています。今までの経験を生かしながら長く働くことで、定年後の生活を充実させることができるでしょう。

今回の記事が定年後の転職活動にとって役に立てれば幸いです。

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この記事の監修者

片桐吉晶 【キャリアアドバイザー】

キャリアアドバイザーとして、転職相談5,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間800名の履歴書、職務経歴書を作成。建設業界や自動車業界、医療・介護業界の人材市場を熟知。「シニア人材の適切な採用・育成方法」などのテーマで、企業セミナーに講師として登壇中。

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