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税理士の平均年収・給料とシニア税理士が給料UPする転職方法をキャリアアドバイザーが解説

片桐吉晶 【キャリアアドバイザー】

税理士・公認会計士の平均年収や給料はいくらか、勤務税理士と開業税理士の違い、男女の給与差、年収UPの秘訣、転職のベストシーズンをシニア専門人材キャリアアドバイザーが解説します。

目次

税理士の年収はいくらになるのでしょうか。年齢や性別によっても差があるのでしょうか。
また、税理士が年収や給料をアップしたい場合、どんな方法があるのでしょう。
今回はとくに税理士や公認会計士の年収について、シニア専門キャリアアドバイザーが詳しく解説します。

<税理士と公認会計士に関連する記事>
公認会計士と税理士の違いを徹底解説!年収や働き方はどう違う?

税理士・公認会計士の平均年収

世の中の税理士、公認会計士の平均年収を見てみましょう。
国家資格で年収が高そうなイメージのある税理士ですが、厚生労働省のデータなどから確認していきます。

税理士(+公認会計士)の平均年収は684万円

厚生労働省が公開している最新の「賃金構造基本統計調査」(令和元年調査・平成30年データ)によると、税理士と公認会計士の平均年収は、684万円(千円以下四捨五入)です。
このデータは、税理士と公認会計士を合わせたものであるため、高額な年収となりやすい公認会計士を抜いて税理士のみに絞った場合、若干低くなると考えられます。

勤務税理士(社員・所属税理士)の平均年収

高い収入を得ていそうなイメージの税理士ですが、700万円以下の年収と考えると、日本人サラリーマンの平均である420万円よりは十分に高いものの、思ったほどではないと感じる方も多いでしょう。
とはいえ、この平均年収は「勤務税理士」と呼ばれる、税理士事務所・会計事務所に所属する税理士の年収です。

税理士は免許を持っているだけでは税理士として働けず、「開業税理士」「社員税理士」「所属税理士」のいずれかとして税理士会に登録しなければなりません。

勤務税理士とは、開業税理士や税理士法人における代表社員の税理士を除く「社員税理士」や「所属税理士」のことを指します。

所属税理士は開業税理士の下で個人事業主として働く税理士で、以前は「補助税理士」と呼ばれていました。補助税理士は直接顧客を持つことができませんでしたが、法改正によって所属税理士と呼ばれるようになり、代表社員の税理士の許可を得れば、直接顧客を持つことができるようになりました。

なお、社員税理士や所属税理士以外にも、税理士免許を持たず、補助業務を行う職員が税理士法人や税理士事務所で働いていることがありますが、補助業務の職員の給料は上記のデータに含まれていません。

補助業務を行う人は、税理士よりも低い給料となりますが、税理士試験を受けていて、合格の項目が増えるごとに給料が増える場合もあります。

開業税理士の年収は1,000万円超えも珍しくない

開業税理士は、勤務税理士よりも圧倒的に高い年収を得られるのが一般的です。
自らがトップとして税理士事務所や会計事務所を開業し、登録した税理士が開業税理士と呼ばれます。
開業税理士の半数以上は年収1000万円以上になる人が多く、数千万円、1億円を超える年収の開業税理士もいます。

税理士法人の代表の場合、開業税理士の事務所ではできない都道府県を跨いだ多拠点展開ができるため、平均年収額はさらに大きなものとなるでしょう。

ただし、高収入を得るには、営業を積極的に行い、顧客を獲得し続けなければならず、さらに複数のチームを率いて管理業務をする必要もあります。

近頃では、新規開業をしても顧客の新規開拓が難しく、十分な収入を得られずに、年収が300万円を下回ってしまい、就職活動をしてほかの税理士事務所に所属する道を選ぶ開業税理士も多いようです。

年収1000万円を目指せる職業!手取り額や税金・年金受給額も紹介


公認会計士の平均年収は税理士よりも100〜200万円程度高い

最初にご紹介した厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」が出した平均年収684万円という金額には、税理士だけでなく公認会計士も含まれていますが、税理士と公認会計士では平均年収に違いはあるのでしょうか。

一般的には、税理士よりも公認会計士のほうが100〜200万円程度年収が高めになるのがスタンダードです。

公認会計士も、開業した場合と勤める場合では、開業したほうが高めの年収となり、1000万円を超えることも珍しくないようです。

勤務の公認会計士の場合、監査法人や一般企業に務めることになります。勤務先が大手監査法人や大手企業になると高めの年収が得られやすくなります。

<会計事務所の年収についての税理士が執筆した外部参考記事>
会計事務所に転職すると、年収はいくらになる?|アカウントエージェント

税理士の性別・年代の違いによる平均年収の差

性別や年代の違いは、税理士の年収にどのような影響や差を与えるのでしょうか?
性別、年代別に、税理士・公認会計士の平均給与を見ていきます。

男性税理士と女性税理士の平均年収の差は約250万円

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(令和元年調査・平成30年データ)で男女別の税理士の平均年収を見てみると、男性税理士の平均年収が767万円であるのに対して、女性税理士の平均年収は509万円となっており、250万円以上の差が生じています。

なお、シニアジョブエージェントが行った、50歳以上のシニアを対象にしたお仕事紹介の実績では、50歳以上の税理士に関しては、男女の年収差は少なくなる傾向にあります。

関連記事
50代女性の仕事探しのコツ「シニア歓迎」と「長く続けられるか」を重視しよう

20代税理士の平均年収は512万円

次に、年齢別の税理士の年収をご紹介していきます。

まず、20代の税理士の年収は、同じ厚生労働省のデータによると平均年収は512万円です。
実際には300万円から700万円までの間に収まることが多いようです。

20代の場合、税理士免許を持っている人材自体が少なく、経験や顧客の数から収入が増えにくい傾向にあります。しかし大手事務所に所属した場合ですと、同年代のほかの職種に比べて収入は大きくなるようです。

30代税理士の平均年収は773万円

税理士の年収は、30代から大幅にアップします。
同じ厚生労働省のデータによると、男性税理士の平均年収は773万円になります。
実際は、600万円から900万円程度までの間に収まるようです。

30代からは経験年数が増えるため、開業税理士の人数が増えていく傾向にあります。

40代税理士の平均年収は781万円

40代以降は、高い収入を得る税理士とそうでない税理士の格差が大きくなっていく傾向にあります。
同じ厚生労働省のデータによると、男性税理士の平均年収は781万円です。

50代税理士の平均年収は778万円

50代以上になると、高い年収の税理士とそうでない税理士の差が激しくなり、下は300万円から上は1000万円超えまで、大きな幅があります。

同じ厚生労働省のデータによると、50代の男性税理士の平均年収は778万円、60代の男性税理士では全年代の中でもっとも高い1,150万円、70代以上男性では296万円となります。

50代以上の税理士が転職した場合の平均年収

それでは、50代以上の税理士が転職・再就職した場合は、どのくらいの年収が望めるのでしょうか?

まず、勤務税理士の場合、経験者の場合ですと、年収650万円から800万円くらいが合意に至りやすい年収の相場です。
なお、税理士資格を保有しているものの税理士事務所での勤務経験を持たず、長年勤めた国税局・税務署を退職した人などの場合は、550万円程度が年収相場となります。

一方で国税局・税務署に一定期間勤めて退職した人の場合は、相続税や所得税など、特定の税制について高い専門知識を持っていることがあり、その場合は年収800万円程度の給料となることが多くなっています。

また、開業税理士として活躍してきた人が、自身の税理士事務所を閉所し、顧客を持ったまま、ほかの税理士の事務所に就職するケースもあります。その場合は、顧客の数に応じた収入を維持してもらえることが多く、1500万円程度の年収になることも珍しくありません。

シニア税理士の転職では、もっとも重視されるものが経験やスキルとなるため、男女の差や、50代・60代・70代といった年齢差が、年収・給料の額を左右することはあまりありません。

税理士の再就職成功の秘訣については、下記の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
シニア税理士はこんな会計事務所を選ぼう!失敗しない再就職先選び

また、国税庁を定年後に会計事務所へ再就職した元公務員の方のインタビューも参考になります。
国税庁定年退職後、会計事務所に再就職した方へのインタビュー

税理士・公認会計士が年収を増やすには

税理士・公認会計士の年収について、非常に高い年収の税理士もいれば、少ない金額しかもらえない税理士もいることがわかりました。

それでは、税理士や公認会計士が年収・給料を増やしたい場合、どうすればよいのでしょうか?

専門知識や合格科目が多いほど年収アップ

国税局・税務署に長年勤めていた人のケースの解説でもお伝えしたように、特定の税に関する専門的な知識を持った税理士は、年収・給与が高めとなります。

元税務署員は、税理士事務所での勤務経験こそありませんが、相続税や法人税などについて、調査・査察・徴収する側の知識が豊富ですし、制度の設計も含めた経験を持っている場合もあります。特定の税については、税理士事務所経験者でも知らない知識を有する方も多くいらっしゃいます。

また、グローバル企業の勤務経験があり、外国の税制に関する専門知識を持っていると、高待遇に結びつきやすくなります。

こうした専門知識は、後述するコンサルティング業務にもつながりやすく、一般的な税理士事務所業務よりも高収入を得られるチャンスが拡大します。

また、国税局・税務署に一定期間勤めると、税理士試験の全科目が合格扱いとなり、申請するだけで税理士資格が得られますが、資格を得ていない「科目合格者」でも、税理士補助業務で採用される可能性があります。

税理士資格は全11科目のうち、5科目の合格で得られますが、税理士補助業務では合格科目数が多いほど給料が高くなる傾向にあります。

コンサルタントになると年収アップ

特定の税金の専門知識を持った人は、コンサルティング業務をできる可能性があります。

近年、クラウド会計ソフトが一般的になり、従来の帳簿記入と計算がメインだった税理士業務の一部は既に不要になり、淘汰が始まっています。そのため、経営などのコンサルティング業務を行う税理士事務所が増えました。

税理士が税務や会計の知識を活かし、コンサルティングファームなどで経営コンサルタントとして活躍することは以前からありましたが、コンサルティング業務を行うことで、税理士だけでは得られない給料・年収を実現することもできます。

税理士がコンサルティング業務を行うには、独立開業するか、コンサルティングファームの社員となるか、コンサルティングを提供する税理士事務所に就職するかの3つの選択肢があります。

税理士がコンサルティング業務を行う場合に求められるスキルは、税理士のスキルだけでなく、MBAの学位や、法務、経営術を含めた会社経営に関する幅広い知識、会計ソフトやRPAなどのIT知識など、非常に多岐にわたるため、未経験からの転職ですと厳しいかもしれません。

税理士事務所のコンサルティング提供ですと、節税対策や相続対策など、税務に特化したアドバイスなどができれば問題なく、国税局の定年退職者など、シニアの税理士でも活躍しやすいでしょう。

パートタイム・アルバイト・業務委託契約で年収アップを狙う方法

今いる税理士事務所などの勤務先で年収を上げるためには、多数の顧客獲得などが必要なため、あまり現実的ではありません。

ただ、シニアの税理士や公認会計士の場合ですと、本業以外に、パートタイムやアルバイト、業務委託契約などの形態で副業を行い、収入を増やすケースが増えているようです。

また、複数のパートタイムやアルバイト、業務委託契約をかけもちして、生計を立てているシニア税理士やシニア会計士もいます。

パートタイムやアルバイトは当然時給制となりますが、専門職である税理士や公認会計士のパートやアルバイトは、能力に見合った十分な報酬が支払われます。

専門知識を活かしたコンサルティング業務を行うシニア税理士の中にも、雇用形態がパートタイムやアルバイトの方は大勢います。

シニアの方が仕事を探す場合、雇用形態がパートタイムやアルバイトでも、条件に合う求人を諦めずに探すことをおすすめします。

年収アップにつながる税理士の転職方法

現在はクラウド会計ソフトなどの普及や、既存の税理士事務所が法人顧客を開拓しきってしまったことなどによって、新たに税理士事務所を開業しても、新規顧客開拓で苦労し、十分な収入を得にくい状況となっています。

そのため、国税局の定年退職者や長年税理士事務所に勤めた税理士も、自分で開業するのではなく、既存の税理士事務所に転職することで収入・年収のアップを図ることが多くなっています。

税理士事務所や会計事務所の求人は、オープンになっていないものも多く、採用基準もわかりにくいことが多いため、人材エージェントや人材紹介会社などを活用することをお勧めします。

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税理士・公認会計士の転職成功の近道は「エージェントの活用」

特に、税理士や公認会計士の副業やパートタイム求人などはあまり世の中に出回っていないため、紹介会社のキャリアアドバイザーなどに相談し、探してもらうことが確実に見つけるためのポイントです。

また、税理士事務所は開業税理士の所長の権限が大きく、所長のカラーや、所長との相性が働きやすさに大きく影響します。このような内部情報を求職者が自分で収集することは難しいため、やはり信頼できる人材紹介会社などに相談することが、転職成功への近道でしょう。

転職活動のベストシーズンは秋

なお、税理士経験のある方ならよくご存知だと思いますが、税理士事務所・会計事務所は、毎年2〜3月ごろが確定申告、4〜6月ごろが企業の決算業務の時期となるため、2月から6月までが繁忙期です。
この期間中の採用はあまり活発ではなく、採用活動が活発になるのは9月から11月ごろです。

転職を考えるシニア税理士の方は、なるべく秋前から就職活動を行い、遅くとも1月くらいまでには内定獲得を目指すことが望ましいでしょう。

また、大手税理士事務所や大手企業以外で年中求人が出ている税理士事務所や、繁忙期に新しい求人が出る税理士事務所は、人材が定着していない可能性があるため、これも紹介会社のキャリアアドバイザーなどに確認するようにしましょう。

この記事の監修者

片桐吉晶 【キャリアアドバイザー】

キャリアアドバイザーとして、転職相談5,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間800名の履歴書、職務経歴書を作成。建設業界や自動車業界、医療・介護業界の人材市場を熟知。「シニア人材の適切な採用・育成方法」などのテーマで、企業セミナーに講師として登壇中。

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