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何歳まで働くのがベスト!?働く高齢者の現状や今から意識すべきこと

松澤裕介 【キャリアアドバイザー】

働く

あなたは何歳まで働く!?
長く働くために意識すべきこと

60歳を過ぎても働くことが一般的になった現在。何歳まで働くべきか悩む人も多いでしょう。この記事では、働く高齢者の現状や働き方のポイント、企業の取り組みや意識すべきことを解説します。

目次

何歳まで働くのがベスト?働く高齢者の現状とは

何歳まで働くのがベスト?働く高齢者の現状とは

何歳まで働きたいかは人それぞれ。まずは、世の中の人の考えと働く高齢者の現状を確認してみましょう。

多くの人が60歳を過ぎても働きたいと思っている

以下は、60歳以上の人を対象にした「何歳まで収入を伴う仕事をしたいか」を表したデータです。(※1)

65歳までが25.6%ともっとも多く、70歳までが21.7%、いつまでもが20.6%

※1:内閣府|令和元年度・高齢者の経済生活に関する調査を基に作成

65歳までが25.6%ともっとも多く、70歳までが21.7%いつまでもが20.6%と、多くの人が60歳を過ぎても精力的に働きたいと思っていることがわかります。

60歳以上の就労率は年々上昇している

では、実際に働いている高齢者はどのくらいいるのでしょうか?以下は、総務省統計局のデータによる年齢階級別の就業率の推移です。(※2)なお、この就業率とは、15歳以上人口に占める就業者の割合のことを意味します。

	60〜64歳	65〜69歳	70〜74歳	75歳〜 2012	57.7	37.1	23	8.4 2013	58.9	38.7	23.3	8.2 2014	60.7	40.1	24	8.1 2015	62.2	41.5	24.9	8.3 2016	63.6	42.8	25	8.7 2017	66.2	44.3	27.2	9 2018	68.8	46.6	30.2	9.8 2019	70.3	48.4	32.2	10.3 2020	71	49.6	32.5	10.4 2021	71.5	50.3	32.6	10.5 2022	73	50.8	33.5	11

※2:総務省統計局|令和5年版高齢社会白書を基に作成

60〜74歳の就業率は、2011年に比べ年々上昇していることがわかります。これは「何歳まで収入を伴う仕事をしたいか」の結果と比例しているため、今後も高齢者の就業率は伸び続けるでしょう。

65歳以上の雇用形態は非正規が75.9%

では、65歳以上の人はそれまでと同じ雇用形態で働いているのでしょうか?以下は、2022年の企業の役員を除く65歳以上の雇用形態の内訳です。(※3)

正社員	23.6 パート・アルバイト	52.5 契約社員	10 嘱託	6.6 派遣社員	3 その他	4.3

※3:総務省|統計からみた我が国の高齢者(令和5年)を基に作成

正社員が全体の23.6%いるものの、パートアルバイトが52.5%と半数以上を占めていることがわかります。

高齢者の就業率は年々上昇していますが雇用形態が変化してしまう人も多く、正社員を希望する人にとってはまだまだ課題が多いことがわかります。

退職年齢別|働き方のポイント

退職年齢別|働き方のポイント

働いていればいつか訪れる退職の時期。何歳まで働くかによって、働き方や注意ポイントは異なります。ここでは、退職年齢別の働き方や注意すべきポイントを解説します。

60歳で退職する人は資産運用や貯蓄でお金を増やしておくことがポイント

60歳で退職する人は、資産運用や貯蓄でお金を増やしておくことがポイントです。老後の収入の柱となる老齢年金の受給開始年齢は65歳のため、60歳で退職すると5年間は収入がない状態で生活しなければならないためです。

繰り上げ年金を申請する方法もありますが、受け取れる受給額は減ってしまいます。また、退職金を生活費に充ててしまうと、万一のことが起こった場合の資金が無くなってしまうでしょう。

60歳で退職しても生活が厳しくならないようにするためには、在職中に資産運用や貯蓄などを行い、使えるお金を貯めておくことが重要です。

iDeCoやNISA制度を使うこともおすすめです。

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65歳で退職する人は就業規定を確認しておくことがポイント

65歳で退職する人は、就業規定を確認しておくことがポイントです。特に、退職後も同じ会社で働きたいと考えている人は必ず確認しておきましょう。

確認するポイント
  • 定年の年齢
  • 再雇用規定
  • 嘱託規定 など

同じ会社で再雇用できたとしても給与が大幅に下がる場合は、転職することも1つの方法。退職前に、退職後の仕事をどのようにするのかある程度考えておくことが重要です。

定年後の再雇用で給与はどれくらい下がる?再就職や勤務延長制度との違いと給与減対策を解説

70歳以上になっても働きたい人は定年のない勤め先を探しておくことがポイント

70歳以上になっても働きたい人は、定年のない勤め先を調べておくことがポイントです。

国は企業に「70歳までの就業機会の確保」を努力義務としています。以前より70歳まで働ける環境が増えつつありますが、定年のない企業はまだ多くありません

70歳間際になってからの仕事探しは厳しく、勤め先が限られてしまう可能性が高いため、早めに転職を検討することがおすすめです。

思い切って、個人事業主として働くことも1つの方法でしょう。

70歳以上でも働ける仕事9選!働き方のかたちや仕事の探し方も解説

高齢者でも働ける仕事とは

高齢者でも働ける仕事とは

では、高齢者でも働ける仕事にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは、高齢者でも働きやすい代表的な職種をご紹介します。

マンション管理員

1つ目は、マンション管理員です。マンション管理員とは、管理会社とマンション住民のパイプのような存在で、以下のような仕事を行います。

マンション管理員の仕事内容
  • 訪問客の一次対応
  • マンション内設備の点検
  • 管理会社からのお知らせの掲示
  • 住民の声を管理会社へ報告
  • マンション内のトラブル対応
  • 敷地内の簡単な清掃 など

雇用形態はマンション管理会社のパートなどが一般的。短時間勤務などもあるため70歳以上の就労者も多く、高齢者に人気の仕事です。

介護職員

2つ目は、介護職員です。介護職員とは、介護や支援が必要な人のサポートをする仕事のこと。主な仕事内容は以下の通りです。

介護職員の仕事内容
  • 食事介助
  • 入浴介助
  • 排泄介助
  • 掃除・洗濯など

高齢化が進む日本では、要介護者の人数が年々増加しています。それに反し、介護職員の数は不足しているのが現状。そのため、求人件数は比較的多いです。

業務の内容によっては資格がなくても働ける上、フルタイムはもちろん、短時間のパート勤務も選べる職種です。

清掃

3つ目は、清掃の仕事です。主にオフィスビルやマンション、ホテルや商業施設などを清掃する仕事で、全国に求人があることが特徴です。

清掃の仕事は難しいスキルは必要ないため、未経験でも採用されやすいことがメリット。比較的高齢者が多い職種のため、同年代の仲間が作りやすい職種です。

警備員

4つ目は、警備の仕事です。警備の仕事は、主に施設の警備と交通誘導の仕事があります。施設の警備とは、施設内の安全を守る仕事。施設内を巡回したり出入口で不審者がいないか確認したりします。

交通誘導の仕事とは、駐車場や工事現場などで交通整理をする仕事。トラブルが起きないよう車や人の誘導をします。

警備の仕事も比較的シニア層が多く、特別なスキルがなくても採用されやすいことが特徴です。警備員の仕事を希望する若年層が少ないこともあり、高齢者向けの求人が多数ある職種です。

販売・接客

6つ目は、販売や接客の仕事です。販売や接客の仕事は飲食店や商業施設などで多く、自分の希望する条件で仕事探しがしやすいことが特徴。

近年は、ファーストフードやファミリーレストランでのシニア採用が増えているため、人と接することが好きな人におすすめです。

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調理補助・家事代行サービス

7つ目は、調理補助や家事代行サービスです。調理補助の仕事は飲食店だけでなく、学生食堂や社員食堂など意外とニーズは多め。調理関係の資格がなくても働けるため、未経験でも働きやすいことが特徴です。

家事代行サービスとは、利用者の自宅に訪問し、料理・掃除・洗濯など日常的な家事を行う仕事のこと。なにより家事が活かせることがメリットです。

コールセンター

8つ目は、コールセンターです。コールセンターとは、主に電話を使って顧客対応を行う窓口のこと。顧客からの電話を受ける他、こちらから発信をする業務もあります。

現在「お客様対応窓口」のようなコールセンターを設ける企業は多く、コールセンター業務を他社に依頼する企業も増えているため、求人数は比較的多め。顧客の要望を感じ取る力が必要な仕事のため、人生経験が役立つ仕事です。

通信販売の受付からトラブル対応まで仕事内容も幅広く、勤務時間も短時間からフルタイムまで選べる求人が多数あることが特徴。シニアには嬉しい座り仕事であることもメリットです。

講師

9つ目は、講師です。講師と聞くと一見敷居が高そうですが、少人数を対象にした講師の仕事は意外とあります。

学習塾や外国語・日本語講師などの勉強系から、楽器や絵画、陶芸などの趣味の分野まで求人はさまざま。他の職種に比べて求人件数は少なめですが、自分の好きなことや特技を仕事にできるため、やりがいが感じられるでしょう。

60歳以上も働くことのメリット・デメリット

60歳以上も働くことのメリット・デメリット

働くことはお金が得られること以外にもさまざまなメリットがあります。一方で、体力が衰え始める高齢者にとってはデメリットが発生することも。ここでは、60歳以上も働くことで得られるメリット・デメリットを解説します。

経済面・身体面・精神面のすべてにメリットがある

60歳以上も働くことで、「経済面・身体面・精神面」のすべてにメリットが生じます。

経済面

・働いた分の収入が増える
・厚生年金に加入すれば、
 老齢年金の受給額が増える
・年金の繰下げ受給を行えば
 受給額が増える

身体面

・体を動かすことで体力や
 筋力の低下を抑えられる
・脳が活性化され、認知機能
 の低下を抑えられる

精神面

・社会に参加している実感が
 沸き、生きがいを
 感じられる
・人との交流があるため、
 孤独感を感じづらい

経済面では、長く働くことにより老後の生活が豊かになります。給与だけでなく年金受給額も増え、年金の受け取り年齢を繰り下げれば年金受給額も上がります

また、60歳到達時の給与と比べて大幅に給与が下がった場合は、高年齢雇用継続給付金が受け取れる可能性もあります。

健康面では、自然と脳や体を動かす機会が増えるため、体力の低下や認知機能の低下を抑えられる効果が期待できるでしょう。

精神面では、人との交流が増えるため孤独感を感じづらく、仲間と共に働くことで生きがいを感じられる人が多いです。これら全てのメリットを感じられる行動は、働くこと以外になかなかないでしょう。

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収入面・身体面でのデメリットもある

メリットがある一方で、「収入面・身体面」ではデメリットも存在します。

収入面

・今までより給与が減る
・年金受給額が減る可能性が
 ある

身体面

・体力の低下により
 身体面への負担が大きい

収入面では、雇用形態の変化などにより収入が減る可能性が考えられます。また、「1ヶ月の給与+年金受給額」が48万円を超える場合、年金受給額が減らされたり止められたりすることがあります。

業務のデジタル化に追いつくことが困難な人もいるかもしれません。

身体面では、体力が低下することにより今までのように身体が動かせない可能性が考えられます。1日8時間・週5時間のような若い頃と同じ勤務形態を続けると、体への負担が大きくなるでしょう。

年金は働くと減る?定年後に年金が減らない働き方を徹底解説

何歳まででも働けるようになるために今から意識すべきこととは

何歳まででも働けるようになるために今から意識すべきこととは

年を重ねると身体が衰えるのは自然なこと。とはいえ、何も意識せずに過ごしていると、長く働くことは難しいかもしれません。

ここでは、自分が希望する年齢まで働けるようになるために今から意識すべきことをご紹介します。

健康に気を配る

1つ目は、健康に気を配ることです。「体が資本」というように、何をするにも元気な体があってこそできるもの。それは仕事も同じです。いつまでも元気に仕事をこなすためには、健康に気を配ることが重要です。

バランスの良い食生活を心がけたり、適度な運動を行ったり、自分にできる範囲のことから始めてみましょう。

健康に気を配れば病気になる可能性も低くなり、医療費や介護費の節約にもつながります。

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長く働けるスキルを身につける

2つ目は、長く働けるスキルを身につけることです。なにか1つでも得意なことや専門的なスキルを身につけておくと、企業から長期間必要とされる可能性が高くなります。

IT系のスキルはもちろん、語学や介護など今からでも身につけられるスキルはたくさんあります。経験がなくても資格を取得しているだけで、仕事に対する前向きな気持ちがアピールできるはずです。

ハローワークでは、受講費の全額もしくは一部負担してくれる教育訓練給付制度も実施しているので、うまく利用してみましょう。

今後訪れるライフイベントを把握する

3つ目は、今後訪れるライフイベントを把握することです。特に、お金が関係するライフイベントはいつ訪れるかある程度予測しておくことが重要です。

60歳以降に訪れるライフイベント
  • 定年退職
  • 年金受給開始
  • 介護 など

これらのライフイベントはお金が関係するイベントです。どのタイミングでどの程度のお金がかかるかあらかじめ把握しておくことで、仕事に対する影響を予測できます。

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何歳まででも働けるために|企業の取り組みの現状

何歳まででも働けるために|企業の取り組みの現状

最後に、企業の取り組みの現状を確認しておきましょう。

国は、2013年に「60歳未満の定年禁止」と「65歳までの雇用確保措置」を義務付けました。(※4)

65歳までの雇用確保措置の内容
  • 65歳までの定年引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

これにより、現在は60歳定年の企業でも希望すれば65歳まで働けるようになっています。

その後、2021年には「70歳までの就業機会の確保」を努力義務として掲げています。

70歳までの就業機会の確保の内容
  • 70歳までの定年引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 70歳まで継続的に「事業主が自ら実施する社会貢献事業」や「事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業」の事業に従事できる制度の導入

上記が実現すれば70歳まで働ける人が大幅に増えますが、70歳までの就業機会の確保はあくまでも努力義務。厚生労働省の発表によると、企業の現状は以下のようになっています。(※5)

企業の現状
  • 65歳までの雇用確保措置がある企業:99.7%
  • 66歳以上も働ける制度がある企業:38.3%
  • 70歳以上も働ける制度がある企業:36.6%
  • 65歳定年企業:21.1%

66歳以上も働ける制度がある企業は4割弱。66歳以上の人が長く働ける社会になるためには、まだ課題が大きいことがわかります。

※4:厚生労働省|高年齢者雇用安定法改正の概要
※5:厚生労働省|令和4年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します

まとめ・何歳まででも働けるような社会になる可能性は近い!

多様な働き方がある現在、「何歳まで」と決めずに働きたいという考えをもつ人が増えています。それに伴い、60歳以上の就業率も年々上昇しています。

一方で、65歳以上の75.9%は非正規で働いており、待遇面での課題はまだ残っていると言えるでしょう。

長く働くことは、「経済面・身体面・精神面」のすべてにメリットをもたらします。もちろん人により考え方は異なりますが、健康で働きたい気持ちがあるうちは「何歳まで」と決めずに働くことがベターなのかもしれません。

そろそろ定年がみえてきた人は、健康に気を配ったり長く働けるスキルを身につけることを意識しておきましょう。

きっと希望通りの働き方ができるはずです。

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参考資料
内閣府|令和元年度・高齢者の経済生活に関する調査
総務省統計局|令和5年版高齢社会白書
総務省|統計からみた我が国の高齢者(令和5年)
厚生労働省|高年齢者雇用安定法改正の概要
厚生労働省|令和4年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します

この記事の監修者

松澤裕介 【キャリアアドバイザー】

キャリアアドバイザーとして、転職相談3,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間1,000名以上の履歴書、職務経歴書を作成。主に医療・介護業界の人材紹介を担当。「シニア人材の転職市場・転職の注意点」などのテーマで記事やコラムを監修。

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