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50代から始める積立NISAのススメ|新制度との違いもご紹介!

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】

老後の生活が気になり始める50代。投資に興味をもつ人も多いでしょう。この記事では、50代からでも遅くないつみたてNISAの概要や2024年から始まる新制度の解説をしています。

目次

まずは基本から!NISAとはどんな制度?

NISAとは、少額投資非課税制度のこと。通常、投資で得た利益には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で得た利益には税金はかかりません

通常、投資で得た利益には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で得た利益には税金はかからない

預貯金の金利が期待できない現代、国は国民に自助努力を求めています。個人で努力してもらう代わりに「投資信託や株式で得た利益は非課税にします」という制度がNISAです。

NISA口座で非課税になる利益には以下のものが含まれます。

NISA口座で非課税になる利益
  • 譲渡益(購入した投資信託や株式を売却した際に発生する利益)
  • 配当金
  • 分配金など

2023年現在は「一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISA」の3種類の制度がありますが、今回はつみたてNISAと一般NISAを中心にご紹介していきます。

【つみたてNISA】【一般NISA】特徴と注意点

【つみたてNISA】【一般NISA】特徴と注意点

50代からでも始められるNISAには、つみたてNISAと一般NISAがあります。つみたてNISAは少額投資を長期的に、一般NISAは多額を短期的に行うイメージです。ここでは、両者の特徴を注意点をご紹介します。

つみたてNISAと一般NISAの主な違いは6点

つみたてNISAと一般NISAには、非課税投資枠や保有期間、対象商品や購入方法などに違いがあります。まずは両者の違いを確認しながら、NISAの仕組みを把握していきましょう。

つみたてNISA

一般NISA

年間非課税
投資枠

40万円

120万円

非課税保有
限度額

800万円

600万円

非課税
保有期間

最大20年

最大5年

対象商品

投資信託中心

株式・投資信託など

商品購入方法

積立投資のみ

スポット・積立

ロールオーバー
の可否

不可

制度実施期間

2042年度末まで

2023年度末まで

年間非課税投資枠

年間非課税投資枠とは、NISA口座で金融商品を購入できる年間限度額のこと。つみたてNISAは年間40万円まで購入可能で、保有限度額は800万円です。一方、一般NISAは年間120万円まで購入可能で、保有限度額は600万円です。なお、両者とも、使っていない非課税枠の繰り越しはできません。

非課税保有期間

非課税保有期間とは、NISA口座内で利益が非課税になる期間のこと。つみたてNISAの非課税保有期間は、商品を購入した年から数えて20年間です。期間終了後は、一般口座や特定口座などの課税口座に払い出されます。

一方、一般NISAの非課税保有期間は、商品を購入した年から数えて5年間です。期間終了後は、以下のいずれかの方法を選択します。

非課税保有期間終了後の選択
  • 一般口座や特定口座などの課税口座に払い出す
  • 売却する
  • ロールオーバーする

ロールオーバーについては、後ほど詳しく解説します。

対象商品

購入できる商品にも違いがあります。つみたてNISAで購入できる商品は、公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)のみです。つみたてNISAは長期投資を基本としているため、金融庁が長期投資に適していると認めた商品のみ購入できます。

また、投資信託を購入する際は一般的には3%前後の手数料がかかることが多いですが、つみたてNISAで扱っているすべての商品に購入手数料はかかりません。

一般NISAで購入できる商品は以下の通りです。

一般NISAで購入できる商品
  • 株式投資信託
  • 国内・海外上場株式
  • 国内・海外ETF
  • ETN(上場投資証券)
  • 国内・海外REIT
  • 新株予約権付社債(ワラント債)

NISA口座は証券会社や銀行などの金融機関で開設できますが、金融機関によりNISA口座で購入できる金融商品は異なります。銀行は主に投資信託が中心のため、株式・ETF・REITなどを購入したい人は証券会社でNISA口座を開設しましょう。

商品購入方法

つみたてNISAの商品購入方法は、積立投資のみです。積立投資とは、一定の期間ごとに一定の金額を使い、同じ商品を購入する方法です。

つみたてNISAでは毎月決まった金額を積み立てる人が多いですが、毎日積立をすることも可能。毎月3万円でも、毎日1,000円でも、自分の好きな方法が選べます。コツコツと貯金をするようなイメージを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。

また、ボーナス月に投資額を上乗せすることも可能です。

一般NISAの商品購入方法は、積立投資に加えてスポット購入も可能です。スポット購入とは、金融商品を自分の好きなタイミングで一括購入すること。金融商品が値下がりしているときや資金に余裕ができたときに、買い足せることが魅力です。

ロールオーバーの可否

ロールオーバーは、一般NISAのみ可能です。ロールオーバーとは、持っている金融商品を翌年の非課税投資枠に移動させることです。

例えば、非課税保有期間終了時に保有していた50万円の金融商品を、そのままNISA口座で持ち続けたいとしましょう。ロールオーバーが可能な一般NISAなら、50万円を翌年の非課税投資枠に移動させることで、保有し続けられます。

ただし、年間120万円のうち50万円はロールオーバーで使用してしまうため、新たに投資できる金額は70万円までになります。

金融商品を翌年の非課税枠に移動させること

また、ロールオーバーに金額の上限はありません。120万円以上ロールオーバーすることも可能ですが、ロールオーバーで翌年の非課税投資枠を使い切ってしまうと、新たな投資ができなくなってしまうため注意が必要です。

制度実施期間

つみたてNISAの実施期間は2042年まで一般NISAの実施期間は2023年までです。実施期間内に購入した金融商品は、購入した年から20年もしくは5年の非課税期間が適用されます。

例えば、つみたてNISAで2023年に購入した商品の利益は、20年後の2043年まで非課税です。

一般NISA終了後の2024年からは、新しいNISA制度が始まります。詳細は後ほどご紹介しますが、新しいNISAが始まっても現行のNISAは新しい制度の外枠で非課税になるため、今すぐに始めても損することはありません。

加入可能年齢の上限はない!

「NISAは若い人向けの制度」と思っている人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。実際に、NISAの加入可能年齢に上限はないのです。50代はもちろん、60代、70代の定年以降でも始められます。

ちなみに下限には制限があり、18歳から利用可能です。

年単位でつみたてNISAと一般NISA間の変更が可能

NISA口座を開設できるのは、1人1口座のみです。口座の開設をしたら、つみたてNISAか一般NISAかどちらか一方を選ばなくてはなりません。しかし、一旦選んだ後でも、年単位ならつみたてNISAと一般NISA間の変更は可能です。

投資は始めてみないとわからないことも多いため、NISA間の変更ができるのは大きなメリットでしょう。

損益通算や口座間移動はできない

NISA口座は、他の口座との損益通算や金融商品の移動はできません。NISAは投資初心者でも安心に始められるような工夫がされていますが、100%損失がでないとは言い切れません。投資のため、損失が生じる可能性もあります。

しかし損失が生じた場合には、他の口座で保有している金融商品との損益通算はできないので、注意が必要です。同様に、NISA口座と他の口座間で金融商品を移動させることもできません。

2024年開始!現行NISAと新制度NISAの違い

先ほども少し触れましたが、2024年からは新しいNISAが始まります。新しいNISAでは、現行のつみたてNISAと一般NISAが一本化され、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が設けられます。

つみたて投資枠は現行のつみたてNISAのイメージ、成長投資枠は現行の一般NISAをイメージするとわかりやすいでしょう。ここでは、現行NISAと新しいNISAの違いをご紹介していきます。

現行NISA

新NISA

名称

つみたて
NISA

一般
NISA

つみたて
投資枠

成長
投資枠

年間非課税
投資枠

40万円

120万円

120万円

240万円

枠併用の
可否

併用不可

併用可能

非課税保有
限度額

800万円

600万円

1,800万円
(内枠として
成長投資枠
1,200万円)

非課税
保有期間

20年

5年

無期限

年間非課税投資枠が最大360万円になる

1つ目の違いは、年間非課税投資枠が最大360万円になることです。現行のNISAの年間非課税枠は、つみたてNISAが40万円、一般NISAが120万円で、併用はできません。

一方、新しいNISAの年間非課税投資枠は、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円。さらに併用可能なため、最大で年間360万円まで投資可能になります。

現行のつみたてNISAでは毎月約3.3万円までしか積み立てできませんでしたが、新制度では毎月10万円まで積立可能です。もちろん、ボーナス月の追加投資も可能です。

非課税保有限度額が最大1,800万円になる

2つ目の違いは、非課税保有限度額が最大1,800万円になることです。現行のNISAの非課税保有限度額は、つみたてNISAが800万円、一般NISAが600万円ですが、新しいNISAでは1,800万円に拡大されます。

成長投資枠のみ1,200万円までの内数制限はありますが、つみたて投資枠には内数制限はありません。そのため、1,800万円をすべてつみたて投資枠で保有することも可能です。

また、新制度は取得価格で枠を管理するため、金融商品を売却した場合は買付金額分の枠が復活します。新制度の非課税保有限度額は、現行制度の倍以上に拡大され、売却すると枠も復活されることから、より資産形成がしやすい制度になっています。

非課税期間が無期限になる

3つ目の違いは、非課税期間が無期限になることです。現行のNISAの非課税期間は、つみたてNISAが20年間、一般NISAが5年間ですが、新しいNISAでは制限がなくなります。つまり、NISA口座で得た利益は無期限に非課税となります。

今まで期限が気になりNISAを始められなかった人にとっては大きなメリットになるでしょう。また、新しいNISA制度の期限も無期限になるため、タイミングを問わず投資が始められます。

対象商品が一部変わる

4つ目の違いは、対象商品が一部変わることです。新制度のつみたて投資枠は現行のつみたてNISAと同じ商品ですが、成長投資枠は一般NISAの商品から一部除外されます。

除外される商品
  • 整理・監理銘柄
  • 信託期間20年未満
  • 高レバレッジ型
  • 毎月分配型信託など

新制度の成長投資枠で購入できるのは、一般NISAの商品から上記の商品を除外した商品になります。

新NISAを徹底解説!いつから?デメリットは?つみたてNISAからの移行は?

つみたてNISAが投資初心者の50代でも安心な5つの理由

つみたてNISAが投資初心者の50代でも安心な5つの理由

現行のつみたてNISAや新制度のつみたて投資枠は、投資初心者の50代でも安心して始められます。なぜ安心なのか、5つの理由を確認していきましょう。

少額から投資が可能!無理なく積立投資ができる

1つ目の理由は、少額から投資できることです。「投資」と聞くと、お金に余裕のある人が行うイメージをもっている人もいるかもしれません。しかし、今はちょっとした余剰資金があれば投資は可能です。

実際にNISAは100円から投資が可能。NISA口座を開設する金融機関により最低投資額は異なりますが、月1万円で積立投資をしている人は大勢います。

もちろん、投資は余剰資金で行うことが大前提ではありますが、その金額は1,000円でも問題ありません。NISAの積立投資なら無理なく資産形成が進められます。

取引量を自動的にコントロールしてくれる

2つ目の理由は、取引量を自動的にコントロールしてくれることです。投資と聞くと、売買のタイミングが難しいイメージをもつ人も多いでしょう。

実際に、金融商品は安いときに買い、高いときに売ることで利益が大きくなります。特に、投資初心者や忙しくて投資に時間をかける余裕のない人は、売買のタイミングを判断することが難しいでしょう。

しかし、積立投資なら値動きに合わせて取引量を自動的にコントロールしてくれるため、自分で判断する必要がありません。定期的に投資をすることで、高いときに買ったり安いときに売ったりするリスクを最小限に抑えられます。

積立投資なら値動きに合わせて取引量を自動的にコントロールしてくれる

例えば上記のように、投資信託1万口の価格が2万円のときは5千口、5千円のときは2万口と、自動的に取引量をコントロールしてくれます。

積立投資は一度設定をすれば、自動で指定の金融商品が購入されるため、手間がかからないこともメリットの1つです。

長期投資のためリスクを最小限に抑えられる

3つ目の理由は、長期投資のためリスクを最小限に抑えられることです。つみたてNISAやつみたて投資枠で購入できる商品は、長期投資することで利益が得られやすい特徴があります。

長期投資はローリスクローリターン、短期投資はハイリスクハイリターンが基本です。金融商品を長期間保有していると、一時的に価格が下落しても数年かけて元の価格、もしくはそれ以上になるケースがよくあります。

つまり、長期投資を基本としているつみたてNISAは、購入できる商品自体がリスク回避につながっているのです。

金融庁が定めた基準をクリアした商品のみ購入可能

4つ目の理由は、金融庁が定めた基準をクリアした商品のみ購入可能なことです。つみたてNISAやつみたて投資枠では、たくさんある金融商品の中から長期投資にふさわしいと認めた一部の商品のみ購入できます

つまり、金融のプロお墨付きの商品のみ扱っているため、投資初心者でも比較的安全な投資が可能なのです。

つみたてNISAは50代からでも遅くない!納得の根拠とは

つみたてNISAは50代からでも遅くない!納得の根拠とは

つみたてNISAは50代から始めても決して遅くありません。ここでは、納得の根拠をご紹介します。

健康寿命は70歳代!今からでも長期投資が可能

1つ目の根拠は、50代からでも長期投資が可能なことです。例えば、現行のつみたてNISAは非課税保有期間が20年間あります。50歳から始めて20年後は70歳。70歳の自分はまだまだ元気で長生きできると思いませんか?

厚生労働省によると、2022年の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳です。(※1)また内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、2019年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳です。(※2)

健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のこと。つまり、70代でも十分人生を楽しめるということです。

しかし、人生を楽しむためには健康の他にお金も必要。そのためには、50代のうちからつみたてNISAを始め、賢く資産運用することがおすすめです。

※1:厚生労働省|令和4年簡易生命表の概要
※2:内閣府|令和5年版高齢社会白書(健康・福祉)

投資に使える余剰資金を保有している人が多い

2つ目の根拠は、投資に使える余剰資金を保有している人が多いことです。国税庁の年齢階層別の平均給与によると、最も高い金額は55歳〜59歳で男性702万円・女性329万円・全体546万円、次いで50歳〜54歳の男性684万円・女性340万円・全体537万円です。(※3)

その分出費も多いかもしれませんが、若い世代に比べると資産形成用に動かせる金額が増えてくる時期でしょう。

また、2021年に高年齢者雇用安定法の改正(※4)が行われたことにより、以前より高齢者が働ける環境が増えてきています。60代以降も働く人が増えることにより、投資に使える余剰資金を保有する人も増えるでしょう。

超低金利時代の現代、余剰資金を積極的に資産運用し増やしていくことが、余裕あるシニアライフを送れるカギです。

※3:国税庁|令和4年民間給与実態統計調査 
※4:厚生労働省|高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保

現行のNISA制度は新制度の外枠で非課税措置が適用される

3つ目の根拠は、現行のNISA制度は、新制度の外枠で非課税が適用されることです。新制度のNISAの非課税保有限度額は1,800万円。現行のつみたてNISAを利用している場合、この1,800万円とは別枠で年間40万円の非課税枠が適用されるため、最大1,840万円までの非課税投資が可能になります。

そのため、NISAを始めたいと思っている人は、2024年まで待つ必要はありません。ただし、現行のNISAから新しいNISAへロールオーバーすることはできないので、注意しましょう。

NISAの始め方5ステップ

NISAの始め方5ステップ

「早速、NISAを始めてみよう!」そう思った人のために、NISAの始め方をご紹介します。

NISAの始め方
  1. NISA口座を開設をする金融機関を選ぶ
  2. 金融機関にNISA口座開設を申請する
  3. NISA口座が仮開設される
  4. 税務署審査の結果を待つ
  5. NISA口座開設

まずは、NISA口座を開設をする金融機関を選びましょう。NISA口座は、銀行・郵便局・証券会社などで開設できますが、金融機関により扱っている商品が異なります。手数料やその他サービスなどもそれぞれ異なるため、複数の金融機関を比較してみましょう。

金融機関が決まったら、NISA口座の開設申し込みをします。店頭でも受付可能ですが、WEBや郵送で開設可能な金融機関がほとんどです。

申し込み手続きが完了すると、NISA口座が仮開設されます。この時点から取引は可能です。仮開設と同時に、税務署の審査が実施されます。審査の結果問題がなければ、NISA口座が本開設されます。

金融機関や状況により多少異なりますが、申し込みから本開設までにかかる日数は1週間〜2週間程度です。

まとめ:老後資金の形成に最適なつみたてNISAを活用しよう

つみたてNISAや2024年から始まる新しいNISAは、老後資金の形成に最適です。50代から始めても決して遅くありません。

50代になり、老後の生活に不安を抱えている人は大勢います。「NISAが気になっていたけれど行動できずにいた」そんな人は、この機会にNISAを検討してみましょう。

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参考資料

この記事の監修者

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】

2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。

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