つみたてNISAとiDeCoの違いとは?2022年のiDeCo制度改正も解説します
老後のお金に不安な方のために、つみたてNISAとiDeCoについてしくみや注意点をわかりやすく解説!自分にあった方法がきっと見つかります。
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将来、生活する上でお金に関して不安を感じている人は多いでしょう。
お金を増やす手段として「投資」という言葉を聞くけれども、よくわからないし、本当に投資っていいものなのか?と思うのではないでしょうか。
そこで老後に使うお金を増やす方法としておすすめしたいのが、つみたてNISA(ニーサ)とiDeCo(イデコ)です。
40代以降の働き盛りの中高年の人はもちろん、投資がはじめてのシニアでも、運用益(※)の非課税制度や掛け金の節税効果を使って、低リスクで資産運用を行うことができます。
※投資信託の運用によって得られる、株や債券の値上がり益、配当、利息などの利益のこと。
「つみたてNISA」と「iDeCo」とは?
つみたてNISA(ニーサ)は、専用口座を設けて運用する投資信託で、少額からはじめられる長期の積立・分散投資を支援する非課税制度です。イギリスの制度ISA(Individual Saving Accountの略)の日本版として、2018(平成30)年に導入されました。
年間40万円の掛け金を上限とし、最長20年間は運用益が非課税となるため、長期にわたって資産形成を行うことができます。
運用商品は金融庁が認めた長期・積立投資に向くものに限られているため、投資初心者をはじめとした幅広い年代の方に利用しやすくなっています。
iDeCo(イデコ)は、自分で掛金を拠出して運用する私的年金で、実施機関は国民年金基金連合会です。毎月の掛金を積み立てながら運用することで、60歳以降に年金や一時金として受け取ることができます。基本的に20歳から65歳までの人が加入できます。
運用商品は厚生労働省が認めた元本保証型の定期預金や保険のほか、リスクに応じたリターンを期待できる株式や投資信託も選ぶことも可能です。運用益が非課税になるほか、掛け金が全額所得控除の対象となります。
つみたてNISAの「I」と、iDeCoの「i」は、同じ「individual」(インディビジュアル)の頭文字で、「個人」や「別個の」という意味があります。つみたてNISAは投資信託、iDeCoは年金ですが、単独で運用するという点で共通しています。
<NISAとiDeCoの言葉の意味>
- NISAは「Nippon Individual Savings Account」の略。日本版個人貯蓄口座
- iDeCoは「individual Defined Contribution Plan」の略。個人型確定拠出年金
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つみたてNISAとiDeCoのメリット・デメリット・費用を比較
それでは、つみたてNISAとiDeCoはどのような違いがあるのか、ご説明します。
つみたてNISAのメリットは運用益や分配金が非課税になること
つみたてNISAのメリットは、運用益や分配金が最長20年間にわたって非課税となる点です。
通常の場合、投資で得た利益には20%程度の税金が課され、その額を差し引いた利益が手元に残るわけですが、つみたてNISAの場合は運用益をそのまま手に入れることができます。
つみたてNISAの積立方法は、金融機関によって異なります。年間40万円の上限内で毎月一定額を積み立てますが、営業日に合わせて毎日積み立てができる金融機関もあります。
そのほかに、年2回のボーナス月に積立額を増やすことも可能です。
積立のタイミングや積立金額を設定したあとは、買付が自動的に決定されるので、自分で判断する手間がかかりません。
自動的に買付を行うため、「価格が高いときには少なく、安いときには多く買う」というドル・コスト法によって平均の買付単価を抑えることができます。
つみたてNISAのデメリットは商品の種類が少ないこと
つみたてNISAのデメリットは、運用商品の種類が少ないという点です。2022年4月26日時点で金融機関が扱っているのは、183銘柄あります(※)。
長期の積立・分散投資を目的としているため、購入できるのは金融庁の厳しい条件をクリアした低リスクの投資信託・ETFのみになります。短期で高いリターンを狙える国内外の個別株や、リート(不動産投信)、債権は購入できません。
また、運用商品は低リスクと言えども元本保証はないため、どの商品を選んでも元本割れの可能性があります。
※参考資料:つみたてNISAの対象商品 : 金融庁
iDeCoのメリットは税制優遇と節税効果
iDeCoのメリットは、節税ができるということです。
掛金の全額が所得控除となるため、確定申告や年末調整で申告をすれば、税負担の支出を減らすことができます。さらに、運用益が非課税で再投資が可能です。
年金として受け取る時は公的年金等控除、一時金として一括で受け取る時は、退職所得控除が受けられます。
年収が高い人ほど節税効果が大きくなるため、ほとんど金利のつかない預金口座に眠らせておくよりも、iDeCoに加入したほうがお得です。
また、高齢化する社会に合わせて、2022年からiDeCoの制度が改正されます(※1)。
iDeCoに加入できる年齢が60歳から65歳までに拡大され、受給開始の年齢も上限が70歳から75歳に延長され、60歳から75歳の間で選べるようになりました(※2)。
※1:2020年6月5日に公布された「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」によるもの
※2:2022年の制度改正について|ライブラリ|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
iDeCoのデメリットは60歳以降にならないと運用益を受け取れないこと
iDeCoのデメリットは、原則60歳以降にならないと運用益を受け取れないという点です。加入年齢によっては、最大65歳まで順延する可能性があります。
どうしても経済的に厳しくなった場合は積立の停止や、脱退して一時金を受け取ることが可能です。なお、脱退一時金には要件がありますのでご注意ください。
つみたてNISAの費用は100円から
つみたてNISAの毎月の積立額はiDeCoよりも小額ではじめることができます。
最低金額は金融機関によって異なり、大手ネット証券会社では100円から、大手銀行では1000円から、などさまざまです。
つみたてNISAにかかるコストは以下の3つです。
- 購入時手数料
- 運用管理費用(運用している間かかる費用)
- 信託財産留保額(解約時にかかる費用)
これらの手数料も0%~3%など、金融機関によって異なっているようです。
iDeCoの費用は5,000円から
iDeCoの最低掛け金は月額5,000円です。私的年金ですが、公的年金の被保険者種別や企業年金の加入などによって、12,000円~68,000円のあいだで掛金の上限が決まっています(※)。
iDeCoのコストは下記の4つがあります。
- 加入手数料(初回1回のみ)2,829円
- 口座管理手数料(毎月)金融機関によって異なる
- 信託報酬(年率)金融機関によって異なる
- 給付事務手数料(年金・一時金として受け取るつど)440円
このほかに、国民年金保険料の未納などがあったときの還付手数料や、企業型確定拠出年金から乗り換える場合の移管手数料がかかります。
ただし、節税効果に目を向けると、課税所得金額が330~695万円の場合、最低掛け金であっても年12,000円程度お得になる計算です。
※参考資料:iDeCo(イデコ)をはじめるまでの5つのステップ|iDeCoをはじめよう|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
つみたてNISAとiDeCoはどういう人に合っている?
積立投資で運用したお金を60歳になる前に使いたい場合や、使える可能性を残しておきたい場合は、つみたてNISAがおすすめです。
iDeCoよりも手続きが簡単で、少額で始められるため、まずは投資経験を積みたいという人にも適しています。
ただし、運用商品は、投資信託もしくはETF(上場投資信託)に限られるため、元本保証がない点に注意してください。
老後に使うお金を積立投資で準備したい場合は、iDeCoがおすすめです。60歳以降にならないと引き出せないので注意してください。
なお、2022年5月からは国民年金に任意加入している人や会社員などが、65歳になるまで加入できるようになりました。
まとめ
つみたてNISAとiDeCoはどちらも通常の株式や投資信託の運用と比較して、かなり優遇された制度になっていることがわかります。
40代以降の働き盛りの中高年から投資初心者のシニアまで、幅広く利用できるでしょう。どっちが良いかというよりも、どちらも併用する形で資産運用するのがおすすめです。
この記事の監修者
谷口芳子 【社会保険労務士】
NPO法人や税理士法人を経て現職。社会保険労務士として、社会保険・雇用保険の各種届出、年末調整、労務相談、公正証書作成などの業務を担当。行政書士資格保有。