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少ない年金で暮らすには?年金生活の節約術と老後の貯金を減らさない方法

新名範久 【税理士・社会保険労務士】

再雇用制度の普及で、年金をもらう年齢になっても働く人が増えましたが、年収の減少という実態は軽視できません。 年金生活の節約術とともに、老後の貯金を減らさない方法を見ていきましょう。

目次

再雇用後の高齢者の年収はどうなるのか

高年齢者雇用安定法が2021年に改正され、継続雇用制度が確立されたことにより、定年退職後も働く意思がある人には雇用が確保されることとなりました。
しかし、定年前と同様の年収が保証されるものではありません。

継続雇用制度のうち、主に代わりとなる人材が得難い専門職に適用されることの多い「勤務延長制度」は、勤務を延長するという形を取るため、業務内容や年収が激しく変化することはありません。
一方で、広く適用される再雇用制度は、いったん退職となった後に再雇用という形となり、業務内容や責任とともに給与も軽減される傾向があります。
雇用形態も、契約社員や嘱託社員、パートタイムなど非正規雇用に切り替えられることが多くなります。
再雇用後の年収は、現役時の2割~5割減となってしまうことが一般的です。

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現役時の賃金水準との比較

独立行政法人労働政策研究・研修機構による「高年齢者の雇用に関する調査」(2020年3月発表)で60歳以降の給与の実態を見てみましょう。
60歳直前の賃金水準を100とした場合、61歳時点の賃金水準の平均値を調査したところ、最も高い水準の人では89.6、標準的な人では78.7、最も低い水準の人では70.8という数値になりました。
つまり定年後は10%以上も賃金が下がるということです。

年収減少後の収入と支出の関係

再雇用後の収入と支出の関係
定年となる60歳になると、収入が10%から30%ほど減ることがわかりました。
一方、支出のほうはどうなるのでしょう。
そして65歳以後の、年金受給期間の注意点を確認していきましょう。

再雇用後の収入は3割減となるが支出は1割しか減らない

老後の支出はどれくらいになるのか、総務省統計局の「家計調査結果からセカンドライフを生活設計~統計は私たちの暮らしの「羅針盤」~」(2014年時点のデータ)という調査資料を参考にしてみましょう。
1世帯当たり1か月平均の実収入は、下記のようになります。

<1か月の世帯収入平均額>

  • 定年前:56万8,000円
  • 定年後(再雇用期間):39万3,000円


世帯収入は定年前の7割程度に減り、17万4千円ほど減少します。所得税や社会保険料などの非消費支出を差し引いた可処分所得(手取り収入)も、45万4,000円から32万2,000円に減少します。

一方、定年前と再雇用期間の消費支出の平均額は、下記のようになります。

<1か月の世帯支出平均額>

  • 定年前:35万6,000円
  • 定年後(再雇用期間):32万2,000円


定年後の消費支出は可処分所得と同額の32万2,000円でした。赤字にはならないものの、これだと貯金ができない暮らしになります。収入の減少に合わせて消費支出を同じくらい減らすことは簡単ではありません。

減少した支出3万4000円の内訳

支出の減少分は3万4000円です。
そのうちもっとも大きな割合を占めるのは子供の教育関係費2万4,000円です。
そのほかの減少分は、被服、小遣い、通信費、自動車関係などですが、それぞれ数千円とごくわずかです。
子供の年齢や進学状況によっては、支出が減らないこともあるでしょう。

老齢基礎年金の受給は65歳から

保険料を納めた期間(保険料納付済期間)と保険料免除期間などを合わせて10年以上の受給資格期間があれば、65歳から老齢基礎年金を受け取ることができます。
令和4年4月分から受け取れる年金は、満額の場合ですと、1年で77万7,800円です。1か月あたり64,816円の支給額となります。
なお、満額を受け取るためには、原則として20歳~60歳になるまで40年間全ての納付期間中に保険料を納付する必要があります。

参考:日本年金機構

65歳から年金の支給が始まっても赤字になる

せっかく年金をもらえるようになっても油断はできません。
総務省「家計調査報告」(2021年)によれば、年金の受給が始まる65歳以降の無職世帯の1世帯1カ月あたりの年金等の平均収入は、23万6,576円で、60歳から64歳の再雇用期間の平均収入と比べると、約6割となってしまいます。
一方の支出は、再雇用期間の約8割となる25万5,100円が平均金額です。
つまり、23万6,576円−25万5,100円=−18,525円となり、65歳以降何もしなければ、毎月2万円近くの赤字になってしまうのです。

退職金・貯金は65歳まで温存するよう心がけを

赤字になってしまう65歳以降に備えて、退職金や貯金は65歳まで手をつけないでおくのが理想です。
あるいは、支出を減らし、収入を増やしていく工夫が必要となるでしょう。

支出を減らす年金生活の節約術

支出を減らす年金生活の節約術
まずは高齢者世帯ができる節約ポイントをチェックしていきましょう。

年金生活の節約術1:公営住宅で家賃減免制度を利用する

支出の大半を占めるのは、家賃などの住居費です。持ち家ですと支出を大幅に抑えることができますが、賃貸の場合でも節約することは可能です。

県営住宅、市営住宅などの公営住宅に住む場合、収入がある人の転出や、定年退職などにより世帯収入が減少した際は、家賃の減免申請ができます。
居住する供給公社によって、減免の対象となる収入額や提出期限、期間など、条件が異なりますので、各公社に問い合わせてみてください。

月7万円となる国民年金、厚生年金、夫の遺族年金をもとに、一人で公営住宅に暮らす70代女性が話題になっていますが、その女性も家賃減免制度を活用しているそうです。
年金7万円生活でも食卓はいつも9品以上、74歳の女性牧師の充実した「豊かな暮らし」(週刊女性PRIME) - Yahoo!ニュース

年金生活の節約術2:コンパクトカーや軽自動車、カーシェアに乗り換え

高齢者世帯の場合、近所の病院やスーパーマーケットへ買い物に行くことは多くても、遠くへドライブする機会は少なくなるのではないでしょうか。遠出をしない場合、小回りのきく軽自動車が意外に便利だったりするものです。

そこで、普通自動車から、コンパクトカーや軽自動車に乗り換えることをおすすめします。コンパクトカーや軽自動車にすれば、ガソリン代、保険料、自動車税、車検代、整備費用などを大幅に節約することができるからです。
SBI損保の軽自動車と普通自動車の維持費比較調査(都内平均と全国平均)によると、下記のようになります。

<軽自動車と普通自動車の年間維持費・都内平均>

  • 軽自動車:619,402円
  • 普通自動車(5ナンバー):710,924円
  • 普通自動車(3ナンバー):810,910円~876,910円


<軽自動車と普通自動車の年間維持費・全国平均>

  • 軽自動車:337,414円
  • 普通自動車(5ナンバー):428,936円
  • 普通自動車(3ナンバー):528,922円~594,922円


都内でも全国でも、3ナンバーの普通自動車から5ナンバーの普通自動車に乗り換えた場合ですと、年間16万円から10万円の節約になり、さらに軽自動車に乗り換えると、年間9万円ほどの節約になります。

また、自家用車からカーシェアへ切り替えれば、さらに節約ができます。
都心ですと駐車場代が高くつきますので、カーシェアサービスが普及している首都圏在住の年金生活者にはとくにおすすめです。

年金生活の節約術3:保険の見直し

現役時代に加入した保険を老後になっても見直さず、なんとなく同じ保険料を支払い続けていませんか?
高齢者世帯に必要な保障内容を見直すことで、家計への負担軽減ができるかもしれません。
また、死亡保障よりも医療に重点を置くことで、保険料は同じでも、もしもの際の支出を抑えることができます。

年金生活の節約術4:シニア向けのクーポンや割引を有効活用

シニア世代向けのクーポンや割引を活用するのもおすすめです。
交通やレジャー施設のクーポン・割引が知られていますが、実はスーパーマーケットなど日常的に使えるお店にも、多くのシニア世代向けサービスがあります。
毎日通うスーパーであれば、5%の割引は大きなメリットです。

<節約に役立つ太陽光発電の外部参考サイト>
生活費の節約や老後資金の貯金なら太陽光発電もおすすめ、太陽光・蓄電池シミュレーション「エネがえる」

収入を増やして貯金をする方法

老後の年金生活では、いかに節約できるかが重要ですが、収入を増やして少しでも貯金ができると、ゆとりのある生活が送れるでしょう。
貯金を増やす方法としてもっとも確実なのは、労働を続けることです。そこで、シニア求人を探す際の注意点をご紹介します。

健康や体力を考慮して求人を探す

高齢者が働く場合、もっとも注意したいのは健康や体力面です。
無理な労働を続けて体を壊してしまい、医療費がかさむようなケースは避けなくてはなりません。
求人を探す際は、無理なく働くことができるか、条件をよく確認しましょう。

パートタイム・アルバイト探しは転職エージェントに相談

パートタイムやアルバイトの勤務であれば、短時間の勤務で日時が選べるため、無理なく働き続けることが可能です。
特に、高齢者を積極的に採用したいと考えている求人が集まる「シニアジョブエージェント」でしたら、安心して応募できます。
シニアジョブエージェントでは無料でカウンセリングを実施していますので、細かい条件について、じっくり相談できます。失敗のないアルバイト選びをするなら、シニア専門人材エージェントに相談するのがおすすめです。

在宅ワークを探す

高齢でパソコン操作が楽にできる人なら、自宅でできる在宅ワークがおすすめです。
介護や家事の合間にも働くことができるため、忙しい主婦にもぴったりです。
個人事業主として仕事を請け負うケースがほとんどのため、高齢者としては気がかりな定年制度がないのもメリットです。
在宅ワークの内容は、データ入力のような作業や、これまでの職務経験や専門知識を活用したライティングなどの仕事もあります。

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シニア専門の転職エージェントを活用して収入・貯金額の増加を目指す

シニア専門の転職エージェント活用で収入・貯金額の増加を目指す
節約とともにパートタイムやアルバイト勤務でやりくりし、65歳まで退職金や貯金を温存すると、老後の生活の見通しが立つでしょう。
老後の収入を確保し、社会参加を続ける、もっとも良い方法として、シニア専門の転職エージェントの利用をおすすめします。

再雇用と転職を比較

再雇用の場合、これまでとさほど変わらない業務内容であったとしても、新規事業の立ち上げなど責任がある立場でバリバリというわけにはいかないのが実情です。
ですが、シニア世代向け転職エージェントへ求人を出す企業は、高齢者の活躍を期待し、あえて採用したいという企業です。
やりがいを持って仕事を続けることのできる求人に特化しているのが、シニア専門転職エージェントなのです。

やりがいだけではない

シニア専門の転職エージェントが応援するのは、シニアのやりがいだけではありません。
必要な年収と、高齢者が働き続けることのできる勤務条件も相談ができます。
シニア専門の転職エージェントが紹介する求人は、どれも経験・知識・人間性が豊かな高齢者を雇用したい企業ばかりですので、条件も整っているのが特徴です。
転職で現在抱えている不安・不満が解決することも可能です。
シニア専門の転職エージェントでは、無料で相談を受け付けています。今後のライフワークバランスについてのカウンセリングを受けてみましょう。

高齢者の仕事とお金のことならシニア世代向け転職エージェントへ

再雇用後のシニアが安心して生活するために必要な年収と、人生100年時代の生きがいを得るための仕事のために、転職も考えてみることをおすすめいたします。
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この記事の監修者

新名範久 【税理士・社会保険労務士】

「新名範久税理士・社会保険労務士事務所」所長。 建設、不動産、理美容、小売、飲食店、塾経営といった幅広い業種の法人や個人の税務・会計業務を行う。社会保険労務士として、法人の社会保険業務も担当。1人でも多くの人に、税金に対する理解を深めてもらいたいと考え、業務を行っている。 税理士、社会保険労務士、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、測量士補、CFP、FP技能検定1級、年金アドバイザー2級、証券外務員1種などの資格を保有。

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