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ふるさと納税で得するのはこんな人|年金生活者でも利用できる!

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】

CMやニュースで目にする機会の多い「ふるさと納税」。「気になるけれど始めていない」そんな人も多いでしょう。この記事では、ふるさと納税の仕組みやメリット、得する人を解説します。

目次

改めて確認!ふるさと納税とは

ふるさと納税とは、自分の好きな自治体に寄付する制度のこと。自治体からはお礼の品物がもらえ、寄付した金額は所得税や住民税から控除されます。

ふるさと納税の仕組み

ふるさと納税で寄付するお金は、本来、住民登録をしている自治体に納付するはずの税金です。

ふるさと納税では、住んでいる自治体に納付する税金を別の自治体に寄付することで、所得税や住民税が控除される仕組みになっています。控除される金額は、一律で「寄付金−2,000円」です。

例えば、年収400万円の夫婦が3万円のふるさと納税をした場合、控除される金額は「3万円−2,000円」=28,000円になります。
ふるさと納税の仕組み

ふるさと納税の利用者は右肩上がり

2008年に始まったふるさと納税の利用者は、年々増えています。総務省が発表した「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、2023年の利用者数は891.1万人。5年前の227.1万人に比べると約4倍の人が利用していることがわかります。

また、2022年に住民税から控除された総額は6,797億円。単純計算すると1人あたり7.6万円が住民税から控除されていることがわかります。(※1)

2017	1783.2	227.1 2018	2456.6	296.5 2019	3282	396.3 2020	3479.3	413.6 2021	4432.9	564.3 2022	5716.8	746.3 2023	6796.7	891.1

増え続ける主な理由は、手続きが簡単になったり、魅力的な返礼品が増えたりしたため。友人知人からふるさと納税を勧められ、始めた人も多いでしょう。ふるさと納税は、私たちの身近な制度になってきています。
※1:総務省|ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度実施)

ふるさと納税はいつでも申し込み可能

ふるさと納税に期限はありません。年間を通していつでも申し込み可能ですが、年間の区切りは12月31日です。申し込みから入金までが12月31日までに終わっていれば、申し込みした年の所得税と翌年の住民税が控除されます。

ここが魅力!ふるさと納税の3大メリット

ふるさと納税の3大メリット
利用者が右肩上がりのふるさと納税。どんなポイントが魅力なのでしょうか?ここでは、ふるさと納税のメリットを3つご紹介します。

寄付金額に応じて所得税や住民税が控除される

1つ目のメリットは、寄付金額に応じて所得税や住民税が控除されることです。控除される金額は、寄付金額から自己負担金2,000円を差し引いた金額になります。控除額の計算方法を確認してみましょう。

所得税から控除される金額の計算方法

所得税から控除される金額は以下の計算式で算出できます。

  • (寄付金額−2,000円)×所得税の税率


所得税の税率は所得によって異なります。(※2)
国税庁|No.2260 所得税の税率
※2:国税庁|No.2260 所得税の税率

また、ワンストップ制度を利用して控除申請を行った場合は、所得税からの控除はなく、全額が住民税から控除されます。

住民税から控除される金額の計算方法

住民税から控除される金額は、基本分と特例分の合算の金額になります。それぞれの計算式は以下の通りです。

  • 基本分:「(寄付金額−2000円)×10%」
  • 特例分A:「(寄付金額−2,000円)×(100%−10%− 所得税の税率)」


なお、上記の特例分で計算した金額が住民税所得割額の20%を超える場合は、以下の特例分Bの計算式で算出します。

  • 特例分B:「住民税所得割額×20%」


例として、先ほどと同じ、年収400万円の夫婦が3万円のふるさと納税をした場合の控除額を計算してみましょう。

  • 所得税から控除される金額は、「(30,000円−2,000円)×10%」=2,800円
  • 住民税の基本分は「(30,000円−2,000円)×10%」=2,800円
  • 住民税の特例分Aは「(30,000円−2,000円)×(100%−10%−10%)」=22,400円
  • 22,400円<「(住民税所得割額)×20%」のため、住民税から控除される金額は「2,800円+22,400円」=25,200円
  • 所得税と住民税の控除額を合計すると「2,800円+2,800円+22,400円」=28,000円
  • 寄付金額から自己負担額2,000円を差し引いた28,000円全額が控除されます。

所得税から控除される金額は、「(30,000円−2,000円)×10%」=2,800円 住民税の基本分は「(30,000円−2,000円)×10%」=2,800円 住民税の特例分Aは「(30,000円−2,000円)×(100%−10%−10%)」=22,400円 22,400円<「(住民税所得割額)×20%」のため、住民税から控除される金額は「2,800円+22,400円」=25,200円 所得税と住民税の控除額を合計すると「2,800円+2,800円+22,400円」=28,000円 寄付金額から自己負担額2,000円を差し引いた28,000円全額が控除されます。
なお、自己負担の2,000円は1回ごとにかかる訳ではないため、複数の自治体に寄付しても自己負担金は2,000円のままです。

全国各地の返礼品がもらえる!

2つ目のメリットは、全国各地の返礼品がもらえることです。ふるさと納税と聞いて、お米や海産物などの名産品がもらえるイメージを思い浮かべる人は多いのではないでしょうか?

実際に北は北海道から南は沖縄まで、各地の名産品が自宅に届くことを楽しみにして、ふるさと納税を始めた人は大勢いるでしょう。

ふるさと納税では、返礼品の金額は「寄付金の3割以内に相当するもの」という決まりがあります。つまり、3万円の寄付をした場合、9,000円相当の返礼品が受け取れます。

寄付金は自己負担額の2,000円以外は控除されるため、実質、2,000円で9,000円相当の返礼品が受け取れると解釈できるのです。

近年はふるさと納税人気に伴い、返礼品は実にさまざまです。ブランド米・ブランド牛・海鮮・野菜・果物・スイーツ・酒・電化製品などに加え、ホテル宿泊券やアクティビティの体験もあります。

ふるさと納税に興味のある人は、どんな返礼品があるのかだけでも調べてみるといいかもしれません。

寄付金で気になる自治体を応援できる

寄付金で気になる自治体を応援できる
3つ目のメリットは、寄付金で気になる自治体を応援できることです。ふるさと納税で寄付されたお金は、各自治体で抱えている問題の解決や地域の活性化などに利用されます。

福祉支援や子育て支援など、応援したい分野を指定することもできるため、自治体を応援したい気持ちが確実に届きます。

「故郷を活性化させたい」「災害にあった地域の復興を応援したい」そんな思いを形にして届けられるのも、ふるさと納税のメリットの1つです。

事前に把握しておくことが重要|ふるさと納税のデメリット

物事には良い面もあれば悪い面もあるもの。それはふるさと納税も同様です。ここでは、事前に把握しておくべき、ふるさと納税のデメリットをご紹介します。

節税効果はない

1つ目のデメリットは、節税効果がないことです。ふるさと納税は、本来支払うはずの税金から寄付した金額が控除される制度。つまり、税金を前払いしているような制度です。納める予定の税金が減っている訳ではないため、節税効果はありません。

控除申請の手続きが必要

2つ目のデメリットは、控除申請の手続きが必要なことです。ふるさと納税で控除を受けるためには、控除申請の手続きをしなければなりません。

手続きは、確定申告もしくはワンストップ制度のいずれかで行います。ふるさと納税の申し込みをしただけでは寄付金控除は受けられないため、手続きを忘れないように注意しましょう。

ワンストップ制度での手続き方法

ワンストップ制度とは、確定申告なしでふるさと納税の寄付金控除が受けられる制度。以下の条件を満たしている場合に利用可能です。

  • 確定申告の必要がない給与所得者
  • 1年間に寄付した自治体が5つ以内の場合


ただし、給与所得者でも医療費控除を申請する人や初めて住宅ローンを申請する人は、確定申告が必要なので、注意してください。

ワンストップ制度を利用する場合は、「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入して、寄付した自治体に郵送するだけで手続きは完了です。
ワンストップ制度の仕組み
寄付金税額控除に係る申告特例申請書は、総務省のホームページやふるさと納税のサイトからダウンロード可能です。(※3)ただし、自治体によって様式が異なる場合もあるため、指定の用紙がある場合はそちらを優先しましょう。

※3:総務省|寄付金税額控除に係る申告特例申請書

また、2022年から一部の自治体ではオンライン申請も可能になりました。オンライン申請をする場合は、マイナンバーカードが必要になります。

確定申告での手続き方法

ふるさと納税を行うと、寄付した自治体から寄付を証明する寄付金受領証明書が送られてきます。寄付金受領証明書は確定申告に必要なため、失くさないように保管しておきましょう。

自治体によっては、受領書や払込票の控えが寄付金受領証明書代わりになる場合もあるため、確定申告が終わるまでは寄付金に関わる書類は保管しておくことをおすすめします。なお、寄付金受領証明書は再発行できません。

書類をそろえたら、ふるさと納税を行った翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告を行います。

確定申告が必要な人を徹底解説!年金受給者は?ふるさと納税者は?

自己負担の2,000円は必ずかかる

3つ目のデメリットは、自己負担の2,000円は必ずかかることです。ふるさと納税の自己負担額は一律で2,000円です。寄付金が1万円の場合でも10万円の場合でも2,000円。寄付金額によって変わることはありません。

ふるさと納税で得する人とはどんな人?

ふるさと納税で得する人
さまざまなメリットがあるふるさと納税ですが、どんな人が得をするのでしょうか?得をするのは、所得税・住民税を納税している一定の年収がある人です。年金生活の人は200万円以上、それ以外の人は300万円以上が年収の目安になります。

なぜこの金額が目安になるのか?それは、ふるさと納税で寄付できる金額には上限があるためです。

年金生活者の場合は年収200万円が目安

65歳以上の年金生活者で年収200万円、独身の場合、寄付金の上限は13,000円です。
自己負担2,000円を差し引くと11,000円
返礼品は寄付金の3割相当のため、「13,000円×3割」=3,900円
自己負担の2,000円を差し引いても1,900円得することになります。
65歳以上の年金生活者で年収200万円、独身の場合、寄付金の上限は13,000円です。  自己負担2,000円を差し引くと11,000円。  返礼品は寄付金の3割相当のため、「13,000円×3割」=3,900円。  自己負担の2,000円を差し引いても1,900円得することになります。
ご紹介してきた通り、ふるさと納税で控除されるのは所得税と住民税です。そのため、年金生活でも所得税と住民税を納税している人にとってはメリットのある制度になります。

給与所得者や自営業者は年収300万円が目安

ふるさと納税で寄付できる金額の上限は、家族構成や年収によって異なります。まずは、以下の表で目安を確認してみましょう。なお、表に記載してある共働きや夫婦は、以下に該当する場合です。

  • 共働き:ふるさと納税を行う人が配偶者控除の適用を受けていない場合(配偶者の給与収入が201万円超の場合)
  • 夫婦:ふるさと納税を行う人の配偶者に収入がない場合
  • 中学生以下の子ども:控除額に影響がないため、計算に入れる必要はない

ふるさと納税で寄付できる金額の上限

夫婦2人、給与所得者の年収300万円、配偶者の収入がない場合、寄付金の上限は19,000円です。
自己負担2,000円を差し引くと17,000円
返礼品は寄付金の3割相当のため、「17,000円×3割」=5,100円
自己負担の2,000円を差し引いても3,100円得することになります。

また、控除限度額を超えて寄付することは可能ですが、超えた分は自己負担になるので注意しましょう。

今回ご紹介した表は、あくまでも目安です。正確な金額を知りたい場合は、総務省のホームページにあるシミュレーションを行うことをおすすめします。

年収500万の人の生活|手取り額や割合・住宅ローンやふるさと納税まで解説!

総務省|寄附金控除額の計算シミュレーション

ふるさと納税を利用する際の注意点

ふるさと納税を利用する際の注意点
ふるさと納税を利用する際にはいくつかの注意点があります。後から後悔することのないよう、事前に確認しておきましょう。

所得税・住民税がかからない人にはメリットがない

注意点1つ目は、所得税・住民税がかからない人にはメリットがないことです。ふるさと納税は、自分が納税する予定の税金から控除されます。

つまり、納税すべき税金が0円の場合は控除ができないため、メリットがなくなってしまうのです。ふるさと納税で控除される金額は、自分が納税すべき税金の範囲内であることを覚えておきましょう。

住民税が控除されるタイミングは翌年

注意点2つ目は、住民税が控除されるタイミングは翌年であることです。所得税は確定申告をした年の金額から控除(還付)されますが、住民税が控除されるのは翌年です。

実際に控除額が確認できるのは、翌年の6月頃。郵送されてくる住民税決定通知書で寄附金控除の金額が確認できます。ふるさと納税を行ってから控除が確認できるまで時間が空いてしまうことが多いため、控除されるタイミングを勘違いしないように気をつけましょう。

寄付した人と支払いをした人の名義が違うと控除されない

注意点3つ目は、寄付した人と支払いをした人の名義が違うと控除されないことです。例えば、妻が自分の名前でふるさと納税の申し込みをし、夫名義のクレジットカードで支払いをした場合、寄付金控除は適用されません。

自分の住んでいる地域に寄付した場合は返礼品が受け取れない

注意点4つ目は、自分の住んでいる地域に寄付した場合は、返礼品が受け取れないことです。制度上、寄付することは可能ですが、返礼品は受け取れません。

そもそも、ふるさと納税とは自分の住んでいる自治体に納税する代わりに、他の自治体に納税すること。一般的な方法で納税すれば、ふるさと納税を利用しなくても自分の住んでいる地域に納税できます。

ふるさと納税の始め方

ふるさと納税の始め方
最後に、ふるさと納税の始め方を確認しておきましょう。

  1. 寄付金の上限額を確認する
  2. 寄付したい自治体を選ぶ
  3. ふるさと納税の申し込みをする
  4. 返礼品を受け取る
  5. 寄付金控除の申請を行う


まずは、寄付金の上限額を確認しましょう。総務省のホームページや住んでいる地域の自治体などで確認できます。
総務省|寄附金控除額の計算シミュレーション

次に、寄付したい自治体を選びます。自治体に直接申し込むことも可能ですが、ふるさと納税サイトを使う人が多いです。ふるさと納税サイトでは、各自治体ごとの返礼品が掲載されています。

寄付したい自治体が決まっていない場合は、返礼品を見比べて寄付先を決めるのもいいかもしれません。

寄付したい自治体が決まったら、申し込みをします。申し込みは自治体のホームページやふるさと納税サイトから可能です。一般的な申し込み方法はWEBですが、電話や郵送での手続きが可能な自治体もあります。

無事に申し込みが終わると、返礼品が届きます。ワンストップ制度を利用する人は、忘れないよう早めに控除申請手続きを行いましょう。確定申告を利用する人は、手続きが終わるまで寄付金受領証明書を失くさないよう気をつけてください。

すべての手続きが終われば、所得税の還付や翌年の住民税が控除されます。

まとめ:今年こそ楽しくてお得なふるさと納税を始めよう

ふるさと納税は、住民税や所得税を納税している一定の所得がある人なら得をする制度です。地域に貢献できるうえ、自身の税金も控除されます。また、返礼品が届くのを心待ちにする、ちょっとした楽しみも生まれるでしょう。

今年こそふるさと納税デビューして、お得に返礼品を受け取ってみてはいかがでしょうか?

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参考資料


この記事の監修者

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】

2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。

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