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就業促進定着手当とは?計算方法・もらえる人の条件・必要書類を解説!

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】

お金

就業促進定着手当を徹底解説!
条件は?いくらもらえる?

再就職先が決定して一安心!ところが前職よりも給与が少ない…、そんなときは就業促進定着手当が受け取れるかもしれません。この記事では就業促進定着手当の計算方法や条件について解説します。

目次

就業促進定着手当とは

就業促進定着手当とは

まずは、就業促進定着手当がどのようなものなのか、概要を確認していきましょう。

就業促進定着手当とは早期の再就職と職場定着を目的とした就職促進給付

就業促進定着手当とは、早期の再就職と職場定着を目的とした就職促進給付です。

一般的に「失業保険」と呼ばれる「雇用保険の基本手当」を受給していた人が再就職をした結果、前職より給与が下がった場合に受け取れます。

転職前後の給与の差は前職の勤続年数が長いほど大きくなりやすい傾向にあります。就業促進定着手当は、転職前後の賃金の差を埋めることで、再就職先での職場定着を目的とした手当なのです。

就職促進給付には就業促進定着手当の他に「再就職手当」や「就業手当」などがあります。再就職手当は就業促進定着手当を理解するために必要なため、概要を確認しておきましょう。

再就職手当との違い

再就職手当とは、雇用保険の基本手当の受給者が、早期に再就職した場合に受け取れる手当のことです。

以下の条件を全て満たしている場合に受け取れます。

再就職手当の受給要件
  1. 7日間の待機期間経過後に再就職した
  2. 再就職した時点で、失業保険の支給残日数が所定給付日数の1/3以上ある
  3. 前職とは違う会社に再就職した
  4. 失業保険の受給前に内定を受けていない
  5. ハローワークや厚生労働大臣が許可した職業紹介事業者の紹介で再就職した
  6. 再就職先は1年を超えて安定的に雇用される見込みがある
  7. 再就職先で雇用保険に加入している
  8. 過去3年以内の就職で再就職手当を受け取っていない
  9. 再就職手当の支給日が決まる前に退職していない

再就職手当の金額は「基本手当日額 ×支給残日数 × 給付率」で計算します。

給付率は、所定給付日数に対し残日数が「1/3以上」残っているか「2/3以上」残っているかにより決まります。

再就職手当の給付率
  • 支給残日数が所定給付日数の2/3以上:基本手当日額×残日数×70%
  • 支給残日数が所定給付日数の1/3以上:基本手当日額×残日数×60%

なお、以下の記事では、再就職手当ついて詳しく解説しています。再就職手当を計算する際に必要になる基本手当日額の計算方法も詳しく解説しているので、ぜひご参考ください。

再就職手当の受給条件!パートやハローワーク以外で見つけた場合は?

就業促進定着手当をもらえる条件とは

就業促進定着手当をもらえる条件とは

では、就業促進定着手当はどのような人が受け取れるのでしょうか?

就業促進定着手当を受け取れる人の条件
  1. 再就職手当を受け取っている
  2. 再就職先に6ヶ月以上勤務している
  3. 再就職先で雇用保険に6ヶ月以上加入している
  4. 再就職先で6か月の間に支払われた賃金の1日分の額が、前職の賃金日額に比べて低下している

上記の条件を全て満たしている人が受け取れます。

注意してほしい点は「6ヶ月」の数え方です。給与の締め日は会社によって異なります。

再就職した日が給与の締め日の翌日の場合は「再就職した日から6ヶ月」、給与の締め日の翌日を過ぎている場合は「再就職した日以降の最初の締め日の翌日から6ヶ月」が就業促進定着手当を確認する上での数え方になります。

月末が締め日の会社に4月1日に入社した場合は、入社した日が起算日になるため、9/30が6ヶ月経過日 4/10に入社した場合は4/月30日が最初の締め日になり、その翌日の5月1日が起算日となるため、10月31日が6ヶ月経過日

例えば、月末が締め日の会社に4月1日に入社した場合は、入社した日が起算日になるため、9/30が6ヶ月経過日になります。しかし、4/10に入社した場合は4/月30日が最初の締め日になり、その翌日の5月1日が起算日となるため、10月31日が6ヶ月経過日となります。

就業促進定着手当の計算方法

就業促進定着手当は「(離職前の賃金日額−再就職後6ヶ月間の賃金の1日分の金額)×再就職後6ヶ月間の賃金の支払基礎となった日数」

就業促進定着手当は「(離職前の賃金日額−再就職後6ヶ月間の賃金の1日分の金額)×再就職後6ヶ月間の賃金の支払基礎となった日数」で計算します。

ただし、就業促進定着手当には上限額が定められており、上限額を超えた場合は上限額が就業促進定着手当になるため、注意しましょう。

就業促進定着手当の上限額
  • 再就職手当の給付率が60%の場合:基本手当日額×支給残日数×40%
  • 再就職手当の給付率が70%の場合:基本手当日額×支給残日数×30%

それぞれの項目の計算方法を確認していきましょう。

※1:厚生労働省|再就職後の賃金が、離職前の賃金より低い場合には、「就業促進定着手当」が受けられます
※2:厚生労働省|就職促進給付

離職前の賃金日額の計算方法

離職前の賃金日額は、原則として雇用保険の受給資格者証の1面14欄の金額になります。

雇用保険受給者証イメージ

出典:ハローワークインターネットサービス雇用保険受給資格者証 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/info_1_e5_02.pdf

ただし、賃金日額には上限額と下限額があり、上限額を超える場合は上限額、下限額より低い場合は下限額になるため、注意しましょう。

上限額(2024年6月現在)
  • 離職前の年齢が30歳未満:13,890円
  • 離職前の年齢が30歳以上45歳未満:15,430円
  • 離職前の年齢が45歳以上60歳未満:16,980円
  • 離職前の年齢が60歳以上65歳未満:16,210円

下限額(2024年6月現在)
  • 全年齢:2,746円

なお、上限額と下限額は毎年8月1日に改定されるため、年度によって若干の差があります。

再就職後6ヶ月間の賃金の1日分の金額の計算方法

再就職後6ヶ月間の賃金の1日分の金額は、以下の方法で計算します。

月給制の計算方法
  • 再就職後6ヶ月間の賃金の合計額÷180

日給制・時給制の計算方法(以下のいずれか金額の高い方)
  • ①再就職後6ヶ月の賃金の合計÷180
  • ②(再就職後6ヶ月の賃金の合計÷賃金の支払いの基礎となった日数)×70%

なお、この場合の賃金は税金や社会保険料が控除される前の総支給額です。残業手当や通勤手当は含まれますが、賞与のような3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれません

再就職後6ヶ月間の賃金の支払基礎となった日数の確認方法

再就職後6ヶ月間の賃金の支払基礎となった日数は、以下の方法で確認します。

確認方法
  • 月給制の場合:暦日数
  • 日給制・時給制の場合:労働日数

就業促進定着手当の計算例

では、実例で就業促進定着手当を計算してみましょう。

条件

離職時の年齢:30歳
離職時の賃金日額:13,000円
基本手当日額:6,290円
支給残日数:62日
再就職手当の給付率:70%
転職日:4月1日
転職後の給与:32万円
転職先企業の締め日:月末

転職後6ヶ月間の賃金の1日分の金額は、「32万円×6ヶ月÷180」=10,666円
再就職後6ヶ月間の賃金の支払基礎となった日数は、4月1日〜9月30日までの183日
就業促進定着手当は、「(13,000円−10,666円)×183日」=427,122円。

就業促進定着手当の上限額は、「6,290円×62日×30%」=116,994円

「427,122円>116,994円」と、計算した就業促進定着手当の金額が上限額を超えているため、この場合の就業促進定着手当は116,994円になります。

就業促進定着手当の申請方法・申請書の書き方・必要書類

就業促進定着手当の申請方法・申請書の書き方・必要書類

就業促進定着手当は自分から申請する必要があります。ここでは、就業促進定着手当の申請方法や必要書類を解説します。

申請期間は再就職した日から6ヶ月経過した日の翌日から2ヶ月間

就業促進定着手当の申請期間は、再就職した日から6ヶ月経過した日の翌日から2ヶ月間になります。なお、この場合の6ヶ月は「就業促進定着手当をもらえる条件」と同じ考え方です。

再就職した日が給与の締め日の翌日の場合は「再就職した日から6ヶ月」、給与の締め日の翌日を過ぎている場合は「再就職した日以降の最初の締め日の翌日から6ヶ月」が就業促進定着手当を確認する上での数え方になります。

意外と短い期間のため、気がつかないうちに過ぎてしまわないように注意しましょう。

申請先は、再就職手当の申請をしたハローワークになります。

必要書類

就業促進定着手当の申請に必要な書類は以下の4点です。

就業促進定着手当の申請に必要な書類
  • 就業促進定着手当支給申請書
  • 雇用保険受給資格者証
  • 再就職した日から6ヶ月間の出勤簿の写し
  • 再就職した日から6ヶ月間の給与明細もしくは賃金台帳の写し

就業促進定着手当支給申請書は、再就職手当の支給決定通知に同封されて送られてきます。

申請書には再就職先の会社に記入してもらう欄もあるため、早めに会社に依頼しておきましょう。

「再就職した日から6ヶ月間の出勤簿」と「再就職した日から6ヶ月間の給与明細もしくは賃金台帳」は写しで問題ありませんが、会社による原本証明が必要です。

原本証明には事業所の名称や代表者名、代表者の印などが必要になるため、申請書と合わせて早めに依頼することをおすすめします。

就業促進定着手当申請書の書き方

就業促進定着手当申請書は、「6〜10」の部分と「16」の署名部分を申請者が記入します。

就業促進定着手当申請書イメージ
就業促進定着手当申請書の記入箇所
  • 「6」の苗字
  • 「7」の名前
  • 「8」の郵便番号
  • 「9」の電話番号
  • 「10」の住所
  • 「16」の署名
就業促進定着手当申請書イメージ

中央部分は事業所の証明欄になるため、会社の人に記入してもらいましょう。

就業促進定着手当に関するQ&A

就業促進定着手当に関するQ&A

最後に、就業促進定着手当に関するQ&Aをご紹介します。

Q:就業促進定着手当をもらった後に退職した場合はどうなる?

A:就業促進定着手当をもらった後に退職して失業状態になった場合は、基本手当の残日数から再就職手当と就業促進定着手当を差し引いた金額を受給できる場合があります。

ただし、12ヶ月以上働いた会社を退職して失業状態になった場合は、再度、雇用保険の基本手当の受給資格が発生するため、新たに基本手当が受給できるようになります。

Q:申請期限を過ぎてしまったら?

A:就業促進定着手当の申請期間は、再就職した日から6ヶ月経過した日の翌日から2ヶ月間ですが、申請期間が過ぎてしまっても時効の期間内であれば申請は可能です。

時効は、再就職した日から6ヶ月経過した日の翌日から2年になります。時効を過ぎてしまうと申請できなくなってしまうため、注意しましょう。

Q:パートだと就業促進定着手当が支給されない?

A:就業促進定着手当はパートで働く人も対象になります。そのため、条件を満たせばパート勤務の場合でも就業促進定着手当が受け取れます

まとめ・就業促進定着手当は前職より給与が下がった場合に受け取れる!

就業促進定着手当は、「雇用保険の基本手当」を受給していた人が再就職をした結果、前職より給与が下がった場合に受け取れる手当です。転職前後の賃金の差を埋めることで、再就職先での職場定着を目的としています。

ただし、該当者に自動的に給付される訳ではありません。就業促進定着手当を受け取るためには、自分で書類をそろえてハローワークへ申請する必要があります。

申請可能期間は再就職した日から6ヶ月経過した日の翌日から2ヶ月間と短いため、該当する場合はあらかじめ書類を用意し、スムーズに申請できるように準備しておきましょう。

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参考資料

厚生労働省|再就職後の賃金が、離職前の賃金より低い場合には、「就業促進定着手当」が受けられます
厚生労働省|就職促進給付

この記事の監修者

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】

2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。

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