シフト制とは?自由・固定・完全シフト制の違いや有給の有無まで徹底解説
自由・固定・完全シフト制の違い! 有給や法定休日はどうなる?
シフト制とは、従業員が時間交代制で働く勤務形態のことです。この記事では、自由・固定・完全シフト制の働き方やメリットデメリット、注意点や変形労働時間制との違いについて解説します。
- 目次
シフト制とはどんな働き方?
シフト制とは、従業員が時間交代制で働く勤務形態のことです。従業員は企業が定めた勤務パターンに合わせて勤務します。土日祝日や深夜早朝も稼働している企業で多く導入されています。
シフト制を導入している主な業種や職業
- スーパー・コンビニなどの小売業
- 居酒屋・レストランなどの飲食業
- 病院・介護・保育施設などの医療介護業
- 工場・倉庫などの製造業
- 配達などの運送業
- カスタマーセンター
- システム運用 など
一方、固定勤務制とは、同じ職場で働く人が同じ時間・同じ曜日に働く勤務形態のことです。
雇用形態にもよりますが、シフト制は固定勤務制より柔軟な働き方ができる一面があります。
そのため、平日に休みを取得したい人や出退勤のピーク時間をずらしたい人、学業とアルバイトを両立したい学生や家事とパートを両立したい主婦(夫)でも勤務できる働き方です。
※1:厚生労働省|『シフト制』労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項
シフト制の主な種類
シフト制は従業員が時間交代制で働く勤務形態。シフトの決め方にはいくつかの種類があります。
ここでは、「自由シフト制・固定シフト制・完全シフト制」の働き方やメリットデメリットを確認していきましょう。
自由シフト制
自由シフト制は、従業員が希望勤務日を申告した後に勤務先がシフト調整し、勤務日が決まる働き方です。
勤務時間や曜日は固定されていなく、希望勤務日を申告した翌週もしくは翌々週に勤務日が決定することが一般的。「希望シフト制」と呼ばれる場合もあります。
適している仕事
自由シフト制が適している仕事は、以下のような小売業や飲食業です。
自由シフト制が適している仕事
- 小売業:スーパー・コンビニ・ドラッグストア
- 飲食業:居酒屋・レストラン
- サービス業:宿泊施設・引越し業・コールセンター など
自由シフト制は、パートやアルバイトを多く雇用している業種で導入されていることが多いです。
メリット・デメリット
自由シフト制のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
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自由シフト制は自分の希望勤務日を申告できるため、プライベートな時間もしっかり確保できることがメリットです。
また、深夜や早朝の時間帯に働けば深夜手当や早朝手当がプラスされる上、稼ぎたい月にはシフト希望を多くすることで収入アップを目指せます。
一方で、希望通りのシフトに入れないことや、勤務日が確定するまでの間は予定が立てづらいことがデメリットです。
固定シフト制
固定シフト制は、勤務時間や曜日が固定されている働き方です。たとえば、「月・水・金・土の9:00〜15:00」でシフトが決定した場合、基本的には毎週同じ時間帯に勤務します。
固定されたシフトは、半年や1年などの一定期間ごとに見直しを行う企業も多く、「時間固定シフト制」や「曜日固定シフト制」と呼ばれる場合もあります。
適している仕事
固定シフト制が適しているのは主に以下のような仕事です。
固定シフト制が適している仕事
- コールセンター
- 工場
- 塾講師 など
固定シフト制は、長時間の顧客対応が必要な業種で多く導入されています。
メリット・デメリット
固定シフト制のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
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固定シフト制は勤務時間や曜日が決まっているため、プライベートの予定を立てやすいメリットがあります。自由シフト制のように希望した勤務日に働けないこともないため、収入も安定するでしょう。
一方で、シフトが入っている日は休みを取りづらいデメリットがあります。出勤日に予定が入ってしまった場合は、事前に相談しなくてはなりません。
また、「火・木・土・日」のように1日おきのシフトで固定されている場合、連休を取りづらいデメリットもあります。
完全シフト制
完全シフト制は、「早番・遅番」や「日勤・夜勤」などのあらかじめ決まっている複数の勤務パターンに合わせて働く制度です。
適している仕事
完全シフト制に適しているのは以下のような仕事です。
完全シフト制に適している仕事
- 病院
- 介護施設
- 空港
- 工場 など
完全シフト制は、24時間365日稼働している施設で多く導入されています。
メリット・デメリット
完全シフト制のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
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完全シフト制では、早朝や深夜の時間帯に勤務する可能性が高くなります。早朝や深夜の時間帯は手当がプラスされるため、収入アップが期待できます。また、複数の時間帯に勤務することで担当する業務が多岐にわたり、さまざまな業務を経験できます。
一方で、生活が不規則になりがちなため、体調を崩しやすいデメリットもあります。特に、日勤と夜勤の切り替え時には注意が必要です。また、土日祝日や夜間に働くことが多くなるため、家族や友人とスケジュールが合わせづらくなることもデメリットです。
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シフト制で働く場合の注意点
では、シフト制で働く場合はどのようなことに注意すべきなのでしょうか?ここでは、シフト制で働く際の注意点を解説します。
法定労働時間を把握する
1つ目は、法定労働時間を把握することです。法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間の上限のこと。労働基準法では、原則として「1日8時間・週40時間」という法定労働時間が定められています。
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
※出典:「労働基準法第三十二条|e-Gov法令検索」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049
特に自由シフト制の場合は労働時間の上限を把握し、法定労働時間の範囲内で働く希望勤務日を申告する必要があります。
勤務時間ごとの休憩時間を確認する
2つ目は、勤務時間ごとの休憩時間を確認することです。労働基準法では、勤務時間ごとに最低限とらなければならない休憩時間が定められています。
勤務時間ごとの休憩時間
- 1日の勤務時間が6時間超:45分以上
- 1日の勤務時間が8時間超:60分以上
使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
※出典:「労働基準法第三十四条|e-Gov法令検索」https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049
休憩時間があることを理解した上で、希望勤務日を申告するようにしましょう。
有給休暇の有無を確認する
3つ目は、有給休暇の有無を確認することです。有給休暇は一定の条件を満たすことで取得できます。
有給休暇取得の条件
- 雇い入れ日から起算して6カ月継続勤務していること
- 全労働日のうち8割以上を出勤していること
雇い入れ日には試用期間も含まれます。
なお、有給休暇の日数は、継続勤務年数と週または年間所定労働日数により異なります。
■通常の労働者の場合
継続勤務年数 | 有給休暇の日数 |
---|---|
0.5年 | 10日 |
1.5年 | 11日 |
2.5年 | 12日 |
3.5年 | 14日 |
4.5年 | 16日 |
5.5年 | 18日 |
6.5年以上 | 20日 |
■週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の場合
継続 | 週所定労働 | 週所定労働 | 週所定労働 | 週所定労働 |
---|---|---|---|---|
0.5年 | 7日 | 5日 | 3日 | 1日 |
1.5年 | 8日 | 6日 | 4日 | 2日 |
2.5年 | 9日 | 6日 | 4日 | 2日 |
3.5年 | 10日 | 8日 | 5日 | 2日 |
4.5年 | 12日 | 9日 | 6日 | 3日 |
5.5年 | 13日 | 10日 | 6日 | 3日 |
6.5年以上 | 15日 | 11日 | 7日 | 3日 |
固定勤務制の場合は、1週間の労働日数によって有給休暇の日数が決まります。シフト制の場合は1週間の労働日数が不規則な場合が多いため、以下の方法で年間所定労働時間を計算します。
シフト制における年間所定労働日数の計算方法
- 直近6ヶ月の労働日数×2
- 1ヶ月あたりの月平均労働日数×12
年間所定労働日数がわかったら、上記の表で有給休暇の日数を確認してください。
有給休暇は条件を満たしていれば、パートやアルバイトでも取得できます。なお、シフト勤務の場合は、シフトに入っている日に有給休暇を使うことが可能です。
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※2:厚生労働省|年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
法定休日を把握する
4つ目は、法定休日を把握することです。原則的にシフト制の場合の法定休日は、月の初日を起算日として、4週間のうちに4日の法定休日が定められています。
希望勤務日を申告する際は、法定休日を把握した上で申告する必要があります。
シフトの決め方や決定されるタイミングを確認する
5つ目は、シフトの決め方や決定されるタイミングを確認することです。シフト制で働く場合、スケジュール管理はとても重要なポイント。仕事だけでなくプライベートも充実させるために、以下のポイントは働く前に確認しておきましょう。
シフト制で働く際に確認するポイント
- 希望勤務日の申告日
- シフト決定のサイクル(週・隔週・月)
- 勤務日が決定するタイミング
- シフト決定後の勤務日の変更方法
- 勤務時間や日数の目安 など
シフト決定のサイクルなどは企業によって異なります。あらかじめ把握しておかないと、希望勤務日を考えづらかったり先の予定が立てづらかったりするため、働く前に確認することが重要です。
シフト制と変形労働時間制の違いとは?
変形労働時間制度とは、一定期間の平均労働時間が法定労働時間の範囲内ならば、法定労働時間を超える日があっても時間外労働にならない制度のことです。
労働基準法では「1日8時間・1週間40時間」を超える労働をした場合、時間外労働になります。つまり、労働時間の上限を「日」や「週」単位で設定していますが、変形労働時間制では労働時間の上限を「週」「月」「年」単位で定められます。
例えば、1週間で40時間以内の労働時間に収まらない場合でも、1ヶ月の合計労働時間を1日単位で平均した場合、8時間以内に収まっていれば時間外労働になりません。
変形労働制を導入するためには、企業と労働者の代表間で労使協定を締結する必要があります。
一方、シフト制は従業員が時間交代制で働く勤務形態のこと。従業員は、企業が定めた勤務パターンに合わせて勤務します。原則として「1日8時間・1週間40時間」の法定労働時間を超えて働く場合は、時間外労働になります。
なお、企業が労働者に時間外労働をさせる場合は、事前に36協定を締結していなければなりません。
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基本給から残業代を計算する方法!固定残業代を含む場合や未払いがあった場合は?
これらの内容を踏まえて、シフト制と変形労働時間制の主な違いを確認しておきましょう。
■シフト制と変形労働制の主な違い
シフト制 | 変形労働時間制 | |
---|---|---|
労働時間の上限 | 「日」「週」単位で | 「週」「月」「年」単位で |
労使協定 | 不要 | 必要 |
特徴 | 企業が定めたシフト | 企業が繁忙期や閑散期に |
企業が従業員に時間外労働をさせる場合は、シフト制・変形労働時間制ともに労使協定(36協定)が必要になります。
【シフト制はやめとけ】といわれる理由は?
「シフト制はやめとけ」そんな話を聞いたことはありませんか?なぜそのようなことを言われてしまうのでしょうか?考えられる原因は以下の内容です。
シフト制はやめとけと言われてしまう原因
- 体調管理が難しい
- 職場の人間関係が薄くなりがち
- 連休が取りづらい など
毎日同じ時間帯に働く固定勤務制に比べ、シフト制は働く時間が不規則です。そのため、睡眠不足や疲労が蓄積しやすく、慣れるまでは体調管理が難しいでしょう。特に、日勤と夜勤の切り替えタイミングでは体調不良を起こしがちです。
また、固定勤務制のように毎日同じ人と顔を合わせる訳ではないため、職場での人間関係が薄くなりがち。週末に連休が取りづらいため、家族や友人との予定が合わず、プライベートが充実していないと感じてしまう人もいるかもしれません。
ただし、これらの原因はシフト制のデメリットでご紹介した内容とほぼ同じ。逆に考えれば、シフト制だけにしかないメリットも存在します。
シフトに慣れれば体調管理も問題なくできるようになる人も大勢います。また、毎日会わないからこそ密に連絡を取り合い、同僚との仲が深まる可能性もあります。週末の混雑を避けて、平日に人気のスポットに行けるのもシフト制の良い部分です。
メリットデメリットはどのような働き方にも存在します。それをどう捉えるかは個人によって異なるため、「シフト制はやめとけ」と思う人は全員ではありません。
まとめ・シフト制で働く際は労働条件の確認が大切
シフト制とは、従業員が時間交代制で働く勤務形態のこと。従業員が希望勤務日を申告した後に勤務日が決まる自由シフト制、勤務時間や曜日が固定されている固定シフト制、あらかじめ決まっている複数の勤務パターンに合わせて働く完全シフト制などがあります。
シフト制は長時間稼働する企業で導入されることの多い働き方ですが、固定勤務制と同様に法定労働時間は守る必要があります。また、条件を満たした場合は雇用形態に関係なく有給休暇も取得可能です。
ただし、労働時間があらかじめ決まっていない自由シフト制の場合、有給はないと言われるケースもあるようです。
シフト制勤務は固定勤務制に比べ、労働条件を把握しづらい面もあります。しかし、損をしないためにも、企業任せにせずに自分でも労働条件を確認することが大切です。
参考資料
厚生労働省|『シフト制』労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項
厚生労働省|年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
この記事の監修者
松澤裕介 【キャリアアドバイザー】
キャリアアドバイザーとして、転職相談3,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間1,000名以上の履歴書、職務経歴書を作成。主に医療・介護業界の人材紹介を担当。「シニア人材の転職市場・転職の注意点」などのテーマで記事やコラムを監修。