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固定資産税と都市計画税とは

新名範久 【税理士・社会保険労務士】

土地建物を相続すると毎年納税しなければならない固定資産税や都市計画税。2つの税金の基本情報、計算方法、税率、課税標準額と評価額の違い、評価替え、減税の特例措置などを解説します。

目次

固定資産税とは土地・家屋・償却資産に課される税金

固定資産税とは、土地や家屋などのほか、償却資産の所有者に“毎年”課される税金のことです。

不動産を購入、もしくは相続をした人、償却資産を所有する、もしくは相続で事業継承をした事業者などが、固定資産税を支払います。
また、所有する土地や家屋が市街化区域内にある場合は、固定資産税とともに都市計画税を支払う義務も発生します。

固定資産税と「相続」の関係 - 遺産分割前の固定資産税は誰が払う?

上記の記事でもお伝えしたように、2020(令和2)年度の時点で土地に4千138万人、家屋に4千214万人、償却資産に472万人の人が、固定資産税を納税しています(※1)。
一方の都市計画税は、土地に2千220万人、家屋に2千768万人が納税をしています(※2)。

つまり、土地や家屋の固定資産税を支払っている人のおよそ半分が、都市計画税も納税しているのです。

なお、固定資産税と都市計画税は、地方税の中の「市町村税」に分類されるため、土地や家屋が所在する市町村に納税します(東京23区にある場合の納付先は、東京都)。

 固定資産税や都市計画税は、固定資産が所在する市町村(東京23区の場合は都)に納税する

固定資産の所有者には、毎年納税通知書が届きますので、提示された金額と納税期限のとおりに市町村に納めましょう。

※1:総務省|地方税制度|固定資産「納税義務者(税を納めなければならない人)」より
※2:総務省|地方税制度|都市計画税「納税義務者(税を納めなければならない人)」より

都市計画税とは市街化区域の土地建物に課される税金

所有する土地や家屋などが、市街化区域(すでに市街地を形成している区域や、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域)にある場合、所有者は固定資産税とともに「都市計画税」を支払わなければなりません。
前述しましたが、固定資産税を支払っている人のおよそ半数が都市計画税も支払っています。

なお、固定資産のうち、償却資産には都市計画税は課されません。

都市計画税の課税は、それぞれの地域における都市計画事業などに応じて、市町村が判断しています。
都市計画税を納める先は固定資産税と同じく市町村か、東京23区にある土地や家屋の場合は東京都に納めます。

都市計画税の税率や課税額の計算方法については、のちほど詳しくご説明します。

固定資産となる財産とは

 固定資産となる財産の例
固定資産税の対象となる固定資産には、下記のようなものがあります。

  • 土地:田畑、住宅地、池沼、山林、鉱泉地(温泉など)、牧場、原野などの土地
  • 家屋:住宅、店舗、工場(発電所や変電所を含む)、倉庫などの建物
  • 償却資産:会社等(事業者)が所有する構築物(広告塔やフェンスなど)、飛行機、船、車両や運搬具(鉄道やトロッコなど)、備品(パソコンや工具など)など。法人税法または所得税法上、減価償却の対象となるべき資産。ただし、自動車税種別割、軽自動車税種別割の課税対象となるものは除く。


償却資産の車両には、通常の車両と同じように自動車税(都道府県に納める地方税)や軽自動車税(市区町村に納める地方税)が課せられ、固定資産税も課されると二重課税になるため、固定資産税の対象にはなりません。

固定資産税と都市計画税の税率と計算方法

固定資産税や都市計画税は、納税者自身が計算をする必要はなく、あらかじめ市町村が算出した税額をもとに支払いますが、どのように計算されるのか、気になる人も多いでしょう。
そこで、固定資産税や都市計画税の算出方法を紹介します。

固定資産税の計算式

固定資産税課税標準額×税率1.4%(市町村によって異なる場合もある)=固定資産税額

都市計画税の計算式

固定資産税課税標準額×税率0.3%以下(市町村によって異なる場合もある)=都市計画税額

固定資産税の税率は基本的に1.4%ですが、市町村の条例によって異なる税率が定められていることがあります。
都市計画税についても税率が異なる場合もありますが、市町村は0.3%を超える税率にすることはできません。

住んでいる地域の税率を詳しく知りたい場合は、固定資産が所在する各市町村(東京23区は都)に問い合わせなどをして確認してください。

また、詳しい内容は後述しますが、家屋などが建つ敷地には「住宅用地の特例」が適用されるため、上記で算出された金額よりも減額されます。

固定資産税・都市計画税の計算に使用される「固定資産税課税標準額」とは

固定資産税と都市計画税を算出する際の基準となる「固定資産税課税標準額」についてご説明します。

課税標準額とは、固定資産税だけでなく、ほかの税金を算出する際にも基礎となる金額を表します。

また、「固定資産税課税標準額」と混同しやすい用語として、「固定資産税評価額」(単に「評価額」ということもある)があります。
固定資産税課税標準額と固定資産税評価額は、住宅用地以外の土地や家屋の場合、同じ金額となるため、間違いやすいようです。

固定資産税“評価額”とは

固定資産税評価額とは、総務大臣が定めた「固定資産評価基準」に基づいて固定資産を評価し、各自治体が決めた金額のことです。

土地の評価額は、地価公示価格(国土交通省が公表している土地価格)の7割を目安に決められることがほとんどですが、その土地が所在する場所や面積、形状(整形地、不整形地など)、道路との近さなどによっても変わってきます。
市街地にある土地は、接する道路の価格によって評価する「路線価方式」、それ以外の土地は、近くの土地と比べて評価する「標準宅地比準方式」を採用することが一般的です。

家屋の評価額は、建築工事金額の5割から7割くらいを目安とし、通常は築年数が経つにつれて下がっていきます。
ただし、古くなって人が住めない状態になっても、評価額が下がりきる(0円になる)ことはなく、最低でも2割は残ります。これは、家屋の経年劣化による減価をあらわす「経年減点補正率」の最低限度が0.2とされているためです。

農地や山林などの土地や、家屋の固定資産税評価額は、固定資産税課税標準額とイコールになりますが、住宅用地については、税負担が減額される特例措置や負担調整率などが設定されるため、課税標準額は評価額よりも低くなることが多いでしょう。

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特例措置については、後述します。

固定資産税評価額は3年に1度「評価替え」が行われる

固定資産税評価額は3年に1度、見直されます。この見直しを「評価替え」といいます。

土地の評価額は、地価の変動などを反映し、家屋の評価額は、建築に必要な物資の価格変動や、建物の経年劣化を考慮した見直しが行われます。

なお、評価額の変動にともなう税負担の激変を緩和する「負担調整措置」が、2023(令和5)年度まで継続される予定です。
次回の評価替えは2024(令和6)年度ですので、負担調整措置が引き続き適用されるのか、要注目です。

通常、評価替えは3年に1度ですが、下記の場合は評価替え以外の年度であっても固定資産税評価額は変更されます。

  • 土地登記簿上で1つだった土地(1筆の土地)を分割する「分筆」や、数筆の土地を1つに統合する「合筆」、土地の主な用途である「地目の変更」などを行った
  • 著しい地価の下落があった


参考資料
総務省|地方税制度|固定資産税の令和3年度評価替えへの対応

固定資産税と都市計画税が減税される特例措置

前述したように、家屋の敷地として利用されている住宅用地には、課税標準額が減額される特例が存在します。特例の詳しい内容を確認していきましょう。

住宅用地の特例措置1:小規模住宅用地

住宅やアパートなどの敷地で、200平方メートル以下の部分については、小規模住宅用地といいます。
所有する土地が小規模住宅用地に該当する場合は、固定資産税の課税標準額は6分の1に、都市計画税の課税標準額は3分の1に減額されます。
計算式にすると、下記のように表せます。

<小規模住宅用地の固定資産税と都市計画税の計算方法>

  • 課税標準額×1/6(小規模住宅用地の特例)×税率1.4%(※)=固定資産税(年額)
  • 課税標準額×1/3(小規模住宅用地の特例)×税率0.3%(※)=都市計画税(年額)


※自治体ごとに異なる場合もあります。

たとえば課税標準額が3,000万円の小規模住宅用地だった場合の固定資産税と都市計画税を、シミュレーションしてみましょう。

<小規模住宅用地の課税標準額が3,000万円だった場合>

  • 固定資産税:3,000万円×1/6×1.4%=7万円(年額)
  • 都市計画税:3,000万円×1/3×0.3%=3万円(年額)


住宅用地の特例措置2:一般住宅用地(その他の住宅用地)

住宅用地の面積が200平方メートルを超える場合は、その200平方メートルを超える部分(ただし、住宅等の床面積の10倍を限度とする)は、「一般住宅用地」もしくは「その他の住宅用地」といい、固定資産税の課税標準額は3分の1に、都市計画税の課税標準額は3分の2に減額されます。

<一般住宅用地の固定資産税と都市計画税の計算方法>

  • 課税標準額×1/3(一般住宅用地の特例)×税率1.4%(※)=固定資産税(年額)
  • 課税標準額×2/3(一般住宅用地の特例)×税率0.3%(※)=都市計画税(年額)


先ほどと同じように、課税標準額が3,000万円で、かつ面積が200平方メートルを超える住宅用地だった場合の固定資産税と都市計画税の値をシミュレーションしてみましょう。

<住宅用地の課税標準額が3,000万円で、面積が300平方メートルだった場合>

  • 固定資産税:(3,000万円 × 200/300 × 1/6×1.4%)+(3,000万円 × 100/300×1/3×1.4%)=9万3,300円(年額)
  • 都市計画税:(3,000万円 × 200/300 × 1/3×0.3%)+(3,000万円 × 100/300×2/3×0.3%)=3万9,900円(年額)


このように、課税標準額が同額の土地だったとしても、面積によって固定資産税と都市計画税が異なることがあるのです。

なお、住宅用地に建つ住宅を撤去して更地の状態にすると、住宅用地の軽減措置の適用がなくなりますので、注意が必要です。

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家屋の固定資産税の減額措置

自治体によって異なるものの、新築住宅の家屋に適用される減税制度もあります。

東京都の場合、新築住宅のうち、定められた要件を満たすと、固定資産税が2分の1に減額されます。
一般の住宅ですと新築後3年度分、3階以上の中高層耐火住宅ですと新築後5年度分に減額制度が適用されます。

詳細は下記のページをご確認ください。
固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 税金の種類 | 東京都主税局(「【家屋】5 新築住宅の減額は」の項目)

そのほかに、認定長期優良住宅や、耐震改修工事を行った住宅の固定資産税も減額されます。
なお、都市計画税は減額措置の適用外です。

ただし、注意したいことが一点あります。家屋の固定資産税の減額措置は、住宅用地の特例措置と違って、有効期限の決まっているものがほとんどです。
東京都の新築住宅の場合、減額措置の有効期限は2005(平成17)年1月2日から2024(令和6)年3月31日までとなっています。

これらの措置が延長される可能性もありますが、有効期限に気をつけてください。

参考資料
住宅を新築したときの不動産取得税・固定資産税等の軽減制度 | 軽減制度| 東京都主税局

そのほかの減免の要件

ここまで紹介した各種の特例措置や減免制度のほかに、固定資産税や都市計画税が減免される例もあります。

<固定資産税・都市計画税の主な減免の要件>

  • 生活保護を受けている人、または所定の等級に該当する障害者が所有する固定資産
  • 公益のための固定資産
  • 災害などで著しく価値が減じてしまった固定資産
  • その他、特別な事由があると認められた固定資産(例:新型コロナウイルス感染症の防止措置などにより事業収入減となった中小事業者など)


上記の要件に該当する人は、固定資産税や都市計画税の納税期限までに各自治体で申請を行いましょう。

参考資料
新型コロナウイルス感染症の影響により事業収入が減少している中小事業者等に対する令和3年度分の固定資産税・都市計画税の軽減措置について(令和3年2月1日〆切) | 東京都主税局

固定資産税がゼロになる例外もある

固定資産税の減免についてお伝えしましたが、ほかにもごく限られた場合に非課税となることがあります。
固定資産税が非課税になる例の図解
 たとえば、固定資産の持ち主が国・都道府県・市町村などの場合、持ち主が宗教法人・学校法人・社会福祉法人などの場合、公共用のもの、文化財などの由緒あるもの、保有林、墓地などが非課税となります。

また、課税標準額が30万円未満の土地と、課税標準額が20万円未満の建物も、課税の対象からは外れます(ただし同一市区町村に複数の土地または建物を所有している場合は、その金額を合算して判断します)。

一般の人の固定資産に関係がありそうなのは、ご先祖様の墓地や、課税標準額の低い山林、物置小屋などでしょう。

なお、課税標準額が低い非課税の不動産であっても、相続登記は必要になりますので、遺言書作成などで財産目録を作る際には、忘れずに記載してください。
また、お墓の相続(祭祀の承継)にもさまざまな手続きがありますので、お墓を受け継ぐ人についても遺言書に記載しておくことをおすすめします。

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固定資産税・都市計画税の納付期限は全期・1期・2期・3期・4期に分かれている

固定資産税と都市計画税は年4回の分割払いが基本ですが、最初の納付期限である第1期に全期分として1年分の総額を支払うことも可能です。

固定資産税と「相続」の関係 - 遺産分割前の固定資産税は誰が払う?

上記の記事でもお伝えしたように、多くの市町村では納期を、毎年4月、7月、12月、翌年2月に定めており、東京23区は、6月、9月、12月、翌年2月に定めています。

固定資産税を全期分一括払いすると割引されるか?

国民年金などは現金による前納をすると、いくらかが割引になり、お得です(※)。

固定資産税はというと、前納に対して割引制度を採用している自治体はほとんどありません。
かつて「固定資産税の前納報奨金制度」というものがありましたが、東京都をはじめ、多くの市町村では、この制度をすでに廃止してしまいましたので、固定資産税の一括払いにはあまりメリットがありません。

ただし、支払いが遅れると延滞金がついてしまいますので、年4回の納期限を覚えておくのが面倒であれば、口座から自動引き落としをしてもらう口座振替手続きをするか、生活上で支障がなければ、早めの一括払いをおすすめします。

国民年金前納割引制度(現金払い 前納)|日本年金機構

まとめ:固定資産税を納税する各自治体HPで税率や特例を確認しよう

固定資産税や都市計画税には、それぞれ決まった税率が定められていますが、都や市町村などで異なることもあります。
また、住宅用地の特例措置など、共通の減税措置も存在するものの、自治体によって特例の期限や種類が異なることもあります。
詳しい内容については、固定資産がある各市町村や都の公式サイトなどで確認してください。

相続したばかりで、自分が支払う固定資産税額が適切かどうかわからない場合や、不当に高い税額を支払っていないか不安な場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

この記事の監修者

新名範久 【税理士・社会保険労務士】

「新名範久税理士・社会保険労務士事務所」所長。 建設、不動産、理美容、小売、飲食店、塾経営といった幅広い業種の法人や個人の税務・会計業務を行う。社会保険労務士として、法人の社会保険業務も担当。1人でも多くの人に、税金に対する理解を深めてもらいたいと考え、業務を行っている。 税理士、社会保険労務士、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、測量士補、CFP、FP技能検定1級、年金アドバイザー2級、証券外務員1種などの資格を保有。

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