遺言書とは?3つの種類と特徴・違い・書き方を解説
スムーズな相続には遺言書が欠かせませんが、実際に遺言書を残す人はごくわずかです。今回は3種類ある遺言書の違いと特徴、新たに始まった自筆証書遺言書保管制度について解説します。
- 目次
- 遺言書とは?
- 遺言書と遺書、エンディングノート、口頭の遺言との違い
- 遺言書の種類
- 遺言書の種類1:自筆証書遺言とは
- 自筆証書遺言の書き方
- 遺言書の方式を守っても「遺留分」を侵害していると遺言書どおりにはならないこともある
- 自筆証書遺言には証人が不要
- 自筆証書遺言書保管制度とは
- 自筆証書遺言書保管制度のメリット
- 自筆証書遺言と秘密証書遺言に必要な「検認」とは
- 遺言書の種類2:公正証書遺言とは
- 公正証書遺言の作成手順と「証人」の条件
- 公正証書遺言書の作成費用について
- 公正証書遺言書を相続人が閲覧する方法
- 遺言書の種類3:秘密証書遺言とは
- 秘密証書遺言の書き方と手順
- 秘密証書遺言にはデメリットが多い
- 遺言執行者とは
- 遺言書を作成している人が少ないのはなぜ?
- ほとんどの人は遺言書を作成していない
- 相続登記がされていない「所有者不明土地」が国土の20%を占めている
- 自筆証書遺言書保管制度の利用のすすめ
- 遺留分などの心配がある場合は、専門家に相談しよう
遺言書とは?
遺言書(ゆいごんしょ)とは、相続に関する事柄をまとめた、法的な効力がある書類です。
当事者(被相続人、遺言書を残した遺言者)が亡くなったあとに、相続人同士のもめごとや混乱が起こらないようにするため、生前のうちから準備をします。
遺言書には、残した財産を誰に対し、どのように分けるのかを記載します。
たとえば下記のような項目です。
- どんな財産があるのか
- どの財産を、どういう割合で、誰に渡すのか
- 不動産は現金化するのか、そのまま残すのか
- 婚姻外の関係で認知した子供などの相続人がいるか
- 遺言執行者は誰にするのか、委任先などの指定(必須項目ではない)
遺言書と遺書、エンディングノート、口頭の遺言との違い
遺言書は、民法上で方式、効力、執行、取消などの規定が定められています。この要件を満たした書類だけが「遺言書」と呼ばれ、法的な効力を発揮します。
遺言書として定められた方式を守っていない相続人へのメッセージや書類などは、「遺書(いしょ)」や「エンディングノート」などに分類されます。
単に口頭で財産相続に言及した場合、それは遺言(ゆいごん)であり、遺言書として決まった形式でまとめられた書類がないと、口約束でしかありません。
自分の持っている財産を、自分の意思にそって相続人に分け、相続人同士の揉め事や混乱を防ぐには、正式な「遺言書」を作成する必要があるのです。
なお、エンディングノートには、遺言書と違って法的な効力はありませんが、相続手続きの手がかりとなる家系図(親族図)などを書いておくと、相続人は調査の手間が省けて助かります。
ですので、遺言書と合わせてエンディングノートも作成しておくことをおすすめします。
そのほかに、介護や終末医療、お墓、葬儀についての希望、家族へのメッセージなど、相続に関係しないこともエンディングノートには書いて残せます。
エンディングノートの作り方や書き方については、下記の記事を参考にしてください。
自分の安心につながる「エンディングノート」の作り方・書き方【FP監修】
遺言書の種類
遺言書には、3つの種類があります。
- 自筆証書遺言:本人が作成・捺印して遺言書を書くこと
- 公正証書遺言:公証人に作成してもらい、本人、公証人、2名以上の証人が署名・捺印して遺言書を書くこと
- 秘密証書遺:本人が作成・捺印し、封書に公証人と2名以上の証人が署名・捺印して遺言書を書くこと
続いては、3種類の遺言書の詳細について、解説します。
遺言書の種類1:自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は、作成するのに費用や手間がほとんどかからない遺言書の形式です。
紙とペン、封筒、そして印鑑があれば、すぐにでも作成することができます。
鉛筆で書かれていても、遺言書としては認められますが、改ざんされるのを防ぐためにも、ペンを使ったほうが無難です。
自筆証書遺言の書き方
自筆証書遺言書は、遺言者(遺言書を残す人)自身が、遺言書の全文、日付、相続の内容を自分で書き、署名押印をします。
ただし、2019(平成31)年1月13日以降に作成した自筆証書遺言の「財産目録」については、パソコンで作成して印刷したものや、預金通帳のコピーなども認められるようになりました(※)。
財産目録の各ページには、必ず捺印(署名と押印)をしなければなりません。
※法務省:自筆証書遺言に関するルールが変わります。より
自筆証書遺言を書くには、民法で定められた方式を守る必要があります。
日付が書かれていない、署名がない、押印がない、内容がわかりにくいなど、要件を満たしていないことが原因で、遺言書が無効になってしまう恐れもありますので、十分に注意してください。
遺言書の様式(書式)については、法務省による下記のページが参考になります。
03 遺言書の様式等についての注意事項 | 自筆証書遺言書保管制度
遺言書の方式を守っても「遺留分」を侵害していると遺言書どおりにはならないこともある
自筆証書遺言書の方式や様式(書式)が民法の定めどおりだったとしても、遺言書の内容が遺留分(相続人に保証された最低限の取り分)を侵害している場合は、遺留分の権利者(遺留分を侵害された相続人)が、ほかの相続人や遺贈(法定相続人以外に遺産を譲ること)を受けた人に侵害額を請求することもあります。
たとえば遺言者が、「子供の1人にだけ全財産を相続させ、妻やほかの子供たちには何も相続させない」といった遺言書を残したとします。この場合、遺留分の権利者である妻やほかの子供たちは、全財産を相続した子供に対し、侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができるのです(※)。
※遺留分侵害額の請求調停 | 裁判所
自筆証書遺言には証人が不要
公正証書遺言と秘密証書遺言で遺言書を作成する場合、2人以上の証人が必要ですが、自筆証書遺言に証人は必要ありません。
証人の条件については、公正証書遺言の項目で、詳しく説明します。
自筆証書遺言書保管制度とは
これまで自筆証書遺言書は、自宅で保存することが一般的でしたが、2020(令和2)年7月10日から、法務局で保管をする制度が始まりました。
自宅で遺言書を保管をしていると、相続人に発見されなかったり、不注意で紛失してしまったり、自然災害などで流出や破損をしてしまったり、盗難に遭ったり、あるいは改ざんされてしまったり、などの恐れがあります。
そこで導入されたのが、自筆証書遺言書保管制度です。
法務局の遺言書保管所では、自筆証書遺言書の原本だけでなく、画像データとしても保管します。原本は、遺言者(遺言書を残す人)の死後50年間、画像データは150年間保管されます。
遺言書の保管申請時には、民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて、遺言書保管官のチェックが受けられます。
また、自筆証書遺言書保管制度を利用した場合、相続人は家庭裁判所で「検認」の手続きを行う必要がありません。
検認については、のちほどご説明します。
遺言者(被相続人)が亡くなり、相続が開始されたら、相続人は遺言書保管所で遺言書の原本を閲覧したり、遺言書情報証明書(遺言者の氏名、住所などの情報と、目録を含む遺言書の画像情報が表示された書類)を交付してもらったり、といったことが可能になります。
なお、相続人の誰か1人が遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付を受けた際には、法務局の遺言書保管所に遺言書が保管されている旨の通知が、そのほかの相続人全員に対して届くようになっています。
また、遺言者が「死亡時通知」を希望すると、法務局側で死亡を確認できたときに、遺言者が選んだ1人だけに対し、遺言書を法務局で保管している旨の通知を届けることができます。
参考資料
自筆証書遺言書を紛失や改ざんから守る自筆証書遺言書保管制度がスタート! | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
自筆証書遺言書保管制度のメリット
自筆証書遺言書保管制度を使うと、下記のようなメリットが得られます。
- 遺言書を自宅で保管する必要がない
- 遺言書の紛失・破損・改ざん・偽造などのリスクを避けられる
- 民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかチェックしてもらえる(無効になってしまうリスクが低くなる)
- 保管申請手数料として3,900円(※)がかかるが、公正証書遺言や秘密証書遺言の手数料よりも安い
- 遠方に住む相続人は、近くの遺言書保管所で遺言書の画像データを閲覧できる、もしくは遺言書情報証明書の交付手続きをすれば、遺言書の内容を地元で確認できる
- 家庭裁判所での検認が不要
※2022年8月現在(自筆証書遺言書保管制度のご案内 - 法務局 - 法務省より)
自筆証書遺言と秘密証書遺言に必要な「検認」とは
自筆証書遺言と、のちほど解説する秘密証書遺言には、「検認」という手続きが必要です(自筆証書遺言書保管制度を利用している場合を除く)。
自筆証書遺言書や秘密証書遺言書の保管者や発見者は、遺言書を勝手に開封してはならず、家庭裁判所に遺言書を提出して、検認という手続きをとらなければならないのです。
検認とは、簡単に言うと、家庭裁判所で遺言書の開封を行い、内容を保全(安全であるように保つ)することです。
検認は、相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の状態や内容を明確にして、改ざんや偽造などを防止するためのものです。
遺言書を預かっていた人や、発見をした申立人が、家庭裁判所に遺言書を提出し、相続人などの立ち会いのもと、裁判官が確認を行い、検認調書を作成します。
なお、検認は遺言書の効力を証明するものではなく、遺言書の形式が整っているかどうかを確認するためのものです。
遺言書の種類2:公正証書遺言とは
公正証書遺言は、公証人が作成する公正証書によって遺言書を残すことです。
作成方法について、詳しく見ていきましょう。
公正証書遺言の作成手順と「証人」の条件
公正証書遺言を作成するには、まず遺言者本人が、公証人に対して遺言の内容を伝えて、“遺言の案”を作成してもらいます。
公正証書遺言の相談は、公証役場に予約して出向くほか、電話やメールでも受け付けています。
相談する内容のメモや所有する不動産の情報など、必要な書類がありますので、相談の予約をする際に、公証役場にどういう書類を用意すべきか聞いておくとよいでしょう。
公証人が作った案を遺言者が確認して、内容を直してほしいときは修正してもらい、遺言の案が確定したら、公正証書の作成日時を決めます。
公正証書遺言を作成する当日は、遺言者本人と公証人のほか、2人以上の証人に立ち会ってもらう必要があります。
証人の人数は法律上では2人以上とされていますが、2人のことがほとんどです。
なお、証人には、未成年の人や、相続人、相続人の関係者(相続人の妻や子供など)、公証人の関係者などはなれません。
つまり証人は、利害関係のない第三者に頼む必要があるのです。
知人などに頼むのが難しい場合は、行政書士や司法書士、弁護士などの専門家のほか、公証役場で紹介してもらった証人などに依頼する方法が一般的です。
遺言者本人が公証役場に出向くことが難しいときは、公証人と証人が、自宅や病院、施設などに出張して公正証書を作成することもできます(出張にかかる費用は別途加算されます)。
公正証書遺言には、本人確認をどの方法で行ったかが記載されます。実印と印鑑証明を持参するのが一般的ですが、運転免許証などでも大丈夫です。
本人確認の方法は前もって聞かれますので、作成当日は本人確認書類などを忘れないように持参しましょう。
作成された公正証書遺言書は、原本と電子データの形で公証役場に保管されます。遺言者本人には正本と謄本が渡されますが、正本のほうを遺言執行者(別の段落で詳しく説明します)が保管することが多いようです。
正本と謄本は、どちらも原本の写しですが、法的効力は正本のほうが強いとされていて、同じ写しでも正本は1通のみ発行され、謄本は何通でも発行してもらえます。
たとえば遺言者が亡くなったあと、金融機関で口座の解約手続きをするときなど、謄本では認められず、正本の提出を求められることがあります。
遺言執行者が正本を預かることが多いのは、そのためです。
公正証書遺言書の作成費用について
公正証書遺言書を作成するには、2人の証人に支払う証人手数料のほか、財産の価額(金融資産と不動産評価額を合算した金額)に対応した手数料を公証役場で払わなければなりません。
たとえば価額が100万円以下の場合の手数料は5,000円で、100万円超え200万円以下では7,000円、200万円超え500万円以下では11,000円となり、財産の価額によって上がっていきます。
この金額に加えて、全体の財産が1億円以下のときに11,000円が加算される「遺言加算」と、用紙代などがかかります。
手数料の総額は、遺言の案が確定した段階で確定します。
詳しい金額については、下記の日本公証人連合会の手数料に関するページをご確認ください。
Q7.公正証書遺言を作成する場合の手数料は、どれくらい掛かるのですか。 | 日本公証人連合会
公正証書遺言書を相続人が閲覧する方法
公正証書遺言は、自筆証書遺言書や秘密証書遺言書などのように、家庭裁判所での検認手続きはしません。
相続が開始されると、「遺言執行者」から相続人に対し、遺言の内容が通知されます。
遺言執行者については、のちほど詳しく説明します。
また、相続人が公証役場へ行き、遺言者(被相続人)が公正証書遺言書を残していないかを確認し、遺言書の内容を知ることもできます。
なお、遺言者の生前に相続人が公証役場に行っても、公正証書遺言書の内容を確認することはできません。
遺言書の種類3:秘密証書遺言とは
秘密証書遺言とは、自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴を合わせたような遺言の形式です。
遺言書の内容を秘密にしたまま、公証人と2人の証人が立ち会って遺言書の存在を保証するため、遺言書が発見されない事態を防ぐことができます。
遺言書の内容を秘密にできる一方で、デメリットが多数あるため、自筆証書遺言や公正証書遺言ほどは利用されていません。
それではまず、作成の手順を見ていきましょう。
秘密証書遺言の書き方と手順
まずは遺言書を、自筆、もしくはパソコン、代理人による執筆などで作成し、書面に署名押印をして封筒に入れ、封の上から遺言書に使用したものと同じ印章で押印します。
封書をたずさえて公証役場へ出向き、公証人と2人の証人の前で遺言書を提出し、氏名と住所などを伝えて、自分の遺言書であることを申し述べます。
公証人が封紙上に、提出日と遺言者が申し述べた内容を記入し、遺言者と2人の証人が封紙に捺印をすれば、秘密証書遺言書の完成です。
なお、遺言書は公証役場には保管されず、持ち帰って管理をする必要があります。
秘密証書遺言にはデメリットが多い
秘密証書遺言の作成には、ある程度のお金がかかります。
公正証書遺言と同様に、利害関係のない第三者が証人を務めることになりますので、証人手数料を支払う必要があるでしょう。
公正証書遺言の作成時よりは安いものの、公証役場でも手数料がかかります。
遺言書の内容に不備があると、遺言が無効になってしまう可能性もありますので、弁護士や司法書士などの専門家に作成を依頼したほうが無難です。
そうすると、当然のように作成費用がかかります。
また、遺言書の保管は公証役場ではなく、自分や代理人などがしなければなりません。
ですので、紛失や盗難、流出などをしないように、厳重な管理をする必要があります。
さらに、開封の際には、家庭裁判所で検認の手続きもしないといけません。
以上のように、秘密証書遺言は自筆証書遺言よりも費用がかかり、公正証書遺言よりも手間がかかるため、実際にはあまり利用されていないようです。
遺言執行者とは
遺言書には、遺言執行者(遺言執行人)を指定することができます。
遺言執行者とは、遺言者に代わって遺言の内容を執行する役割を担う人のことです。
遺言者の財産や相続人を把握し、預貯金の解約、不動産の相続登記、株式の名義変更、相続税の申告など、相続のための手続きを代表して行います。
相続人の中から執行者を選ぶ場合、一般的に家を継ぐ長子(最初に生まれた子)を選任することが多いようです。
また、執行者を相続人の中から選ばずに、弁護士や司法書士、税理士などの専門家や、信託銀行などの法人を指定することもできます。
なお、相続人同士で揉める可能性が少ないのであれば、遺言執行者の指定をしなくても問題ありませんが、指定できるなら決めておいたほうが無難でしょう。
反対に、遺言書に遺言執行人の指定がない場合、相続人や利害関係者は、家庭裁判所で申し立てを行い、遺言執行人を選任することもできます。
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一般家庭でもできる相続税の節税対策【税理士監修】
遺言書を作成している人が少ないのはなぜ?
ここで昨今の遺言書の実情についてお伝えします。
まず、死亡者の人数と、遺言書の件数を確認してみましょう。
ほとんどの人は遺言書を作成していない
ここ数年の年間死亡者数は、厚生労働省の人口動態統計によると約130〜140万人にのぼります。
一方、日本公証人連合会が公開している公正証書遺言(遺言公正証書)の作成件数は、年間で約10万件です。
裁判所の司法統計で、自筆証書遺言や秘密証書遺言の検認数を確認すると、年間で2万件弱となります。
つまり、毎年亡くなっている130〜140万人の中で、公正証書遺言を残しているのは約10万人、自筆証書遺言や秘密証書遺言を残しているのは約2万人しかおらず、残りの118〜128万人という大多数の人は遺言書を残していないのです。
グラフ出典:
死者数:厚生労働省人口動態統計より2020年の死者数を抜粋
遺言公正証書の作成件数:日本公証人連合会の公開データ(令和2年の遺言公正証書作成件数について | 日本公証人連合会)より令和2年の件数を抜粋
遺言書の検認数:令和2年度 第2表 家事審判・調停事件の事件別新受件数―全家庭裁判所より、遺言書の検認数を抜粋
2020年の年間死者数、遺言公正証書の作成件数、遺言書の検認数の割合をグラフで見てみましょう。
亡くなった137万人5,589人のうち、遺言公正証書を作成した人の率は7.12%、検認数は1.33%と、両方合わせても1割にも満たず、91.54%もの人が遺言書を残さないまま亡くなっていることがわかります。
遺言書を書きたくない人の心情としては、「面倒くさい」「縁起でもない」という思いがあるかもしれません。
また、「資産家ではないし、相続するほどの財産はないから書く必要がない」と感じている人も多いでしょう。
ところが、相続関連の面倒事は頻繁に起こっています。とくに多いのは、権利関係が複雑な不動産に関するものです。
相続登記がされていない「所有者不明土地」が国土の20%を占めている
国土交通省の調査によれば、国土の20%以上は「所有者不明土地」なのだそうです。
これは、多くの人が不動産を相続したときに、登記申請や住所変更などを行わず、土地の登記名義人があいまいになってしまっているせいです。
所有者不明土地の増加は、土地取引や土地活用の停滞を招き、周辺地域にも悪影響をおよぼす社会問題です。
なお、このような「所有者不明土地」を解消するため、2024年4月1日から相続登記の申請義務化が施行される予定です。
不動産という財産は、資産家だけでなく、大勢の人が持っている可能性が高いものです。
ですから、相続問題は他人事ではありません。
相続人がわずらわしい思いをしないためにも、そして所有者不明土地が増えて国土が荒廃しないためにも、生前のうちに相続関連の物事を整理し、遺言書を作成しておきましょう。
参考資料
所有者不明土地を取り巻く 状況と課題について - 国土交通省
生前整理に関連した記事
生前整理の「やることリスト」
自筆証書遺言書保管制度の利用のすすめ
相続人の負担を少しでも減らすためには、遺言書を残さなくてはなりません。
しかし、作成にかかる手間や費用、わずらわしさもあってか、ごく一部の人しか遺言書を残していないことが、司法統計などの情報からわかりました。
そこで活用したいのが、本編でもご紹介した「自筆証書遺言書保管制度」です。
遺言書が民法が定める方式に則っているかを、遺言書保管官にチェックをしてもらえますので、遺言書の効力が無効になってしまうリスクを防ぐことができます。
自筆証書遺言書保管制度では、遺言書を法務局が保管しますので、保管の手間が省けるうえに、改ざんや紛失の恐れもありません。
作成や保管にかかる手数料も、公正証書遺言や秘密証書遺言よりも大変割安で、証人の依頼も不要です。
自筆証書遺言書保管制度はまだ始まったばかりの制度ですので、あまり活用をされていません。この機会にぜひ知っておいてください。
なお、自分で遺言を書くよりも、ある程度の費用をかけてもいいから専門家に頼みたいという人は、公正証書遺言にするのがいいでしょう。
参考リンク
自筆証書遺言書保管制度(法務局)
遺留分などの心配がある場合は、専門家に相談しよう
遺言書に遺留分(相続人に保証されている最低限の相続分)を侵害する内容が記されていると、相続人同士で争うことがあるかもしれません。
遺留分を侵害する正当な理由が遺言書に書かれていないと、相続人は遺留分の侵害額を、贈与や遺贈を受けた人に請求する可能性があります。
そうなると、遺言書の内容どおりにはならず、相続人の間に溝ができてしまうかもしれません。
遺留分などの心配がある場合は、行政書士や司法書士、弁護士や税理士など、それぞれの専門家に、遺言書作成の相談をすることをおすすめします。
※今回の記事は、社会保険労務士で行政書士資格を持ち、公正証書作成などの業務経験もある谷口芳子さんに監修してもらいました。
こちらの記事もご参考ください。
おひとりさま終活でやるべき13のこと!身寄りなしでも安心な最後を
この記事の監修者
谷口芳子 【社会保険労務士】
NPO法人や税理士法人を経て現職。社会保険労務士として、社会保険・雇用保険の各種届出、年末調整、労務相談、公正証書作成などの業務を担当。行政書士資格保有。