生前整理の「やることリスト」
快適で安心な老後生活を送るためには、元気なうちに身の回りの家財や財産を整理する「生前整理」への取り組みがおすすめです。今回は、生前整理でやることをリストにしてご紹介します。
- 目次
生前整理とは、人生を振り返り「やり残したこと」を確認する作業でもある
生前整理とは、元気なうちに自分の家財道具や財産の要・不要を見極めておき、不要なものは早めに処分などをして、不安の少ない老後生活を送るために備えることです。
自分が亡くなったあとに、遺品整理や相続などで残された遺族が困らないようにするために、終活の一つとして取り組んでいる人もいます。
生前整理には「残された配偶者や家族のため」という役割もありますが、整理をしながら自分の人生を振り返り、やり残したことがないかを確認することにも役立ちます。
最近では、余分なものを生活から削ぎ落とす「断捨離」の一つとして生前整理に取り組む、20代から40代の若い世代のミニマリスト(最小限の家財で過ごす人)も多いようです。
生前整理は、主に物品の「いる・いらない」を判断して処分したり、配分したり、大事にとっておいたりすることを指す場合もありますが、広義の生前整理には、エンディングノートや遺言書、財産目録を書くなど、相続に関連する事柄を含むこともあります。
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生前整理を業者に依頼した場合の相場感
家財や部屋の整理整頓であれば、ハウスクリーニングや一般廃棄物収集運搬業などの業者に依頼することが可能です。
費用の相場としては、1K・1Rのお部屋なら3万円〜8万円、1DKでは5万円〜12万円、1LDKでは7万円〜20万円程度と考えられています。
なお、引越し業者などが、生前整理や遺品整理を兼ねていることも多くあります。
引っ越しシーズンで繁忙期でもある2月〜4月に依頼をすると割高になる可能性があるため、専門の業者に依頼する場合も、事前に複数の業者に見積もりを取り、あとから高額請求をされる、などということがないよう、名目と内容、金額を確認しておくことをおすすめします。
生前整理の進め方・やり方
生前整理の進め方として、まずは整理をする範囲を決めましょう。
身の回りの物品だけを整理するのか、デジタルデータを含めるのか、あるいは不動産関係などを含めた財産まで整理するのかを決めておくのです。
業者によっては、処分するだけで買い取りは対象外だったり、デジタル遺品の整理が不可能だったりすることもありますので、別途相談にするか、一括で相談できる業者を探すなどしましょう。
続いては、自分自身で整理する方法をご紹介します。
身の回りの物・部屋の整理
まずは身の回りにある物から片付けていきましょう。
もっともポピュラーな整理方法は、「いる」「いらない」「保留」の3つの箱を用意しておくことです。判断に迷うものは、一旦「保留」の箱に入れておきます。
書類の分類方法
郵便物、書類、パンフレットなどの紙類であれば、納付書や領収書などの重要書類は「いる」へ、読まなくなったパンフレットは「いらない」へ、住所や宛名などの個人情報が記載された封筒や紙などは「保留」の箱に入れ、シュレッダーなどで処理をしましょう。
洋服の分類方法
洋服なども同様に「いる」「いらない」「保留」に仕分けます。
流行りではない、穴があいている、シミがついているなどの服は迷わず「いらない」へ、サイズが合わないものの、流行の服や高級品は、買い取りや譲渡用として「保留」の箱へ入れておきます。
長く着ていない服のうち、この先も着る気配がない服は「いらない」へ、コーディネート次第で着そうな服は「保留」に入れ、後でよく検討しましょう。
家電・家具の分類方法
使わなくなった家電のうち、購入から間もないものや高級家電などは買い取り業者に引き取ってもらうことも可能ですが、目立った傷や色あせなどがない美品であっても、購入から年数が経ったものは、値段がつかないことがほとんどです。
買い取ってもらえなかった不要な家電は、燃えないゴミや粗大ごみなど、各自治体のゴミ捨てのルールに従って処分をしてください。
家具の場合も、高級品や美品は買い取ってもらえる可能性がありますので、生前整理業者やリサイクルショップなどに見積もりを取って、買い取り金額を比較してみましょう。
自治体によっては無料で引き取って必要な人に無料で譲渡するサービスなども実施していますので、市区町村の公式ホームページなどで確認してみてください。
思い出の写真や記念品の整理
かさばって場所を取ってしまいがちなアルバム(フォトブック)。重くて何年も開いていない、という人も多いのではないでしょうか。
そこで、写真はスキャナーやデジカメなどでデジタルデータ化することをおすすめします。
必要なときには写真にプリントすることも可能ですし、タブレット端末やデジタルフォトフレームなどで好きな写真を飾っておくこともできます。
賞状やトロフィー、大切な人からもらった手紙、子供が小さい頃に描いたイラストなども、増えてくると場所を取りますし、管理するのも一苦労です。
すべての記念品を手放す必要はありませんが、どうしても取っておきたい重要なものと、そうでないものを区別し、重要度の低いものは写真などのデジタルデータにして、断捨離をしましょう。
利用していないカード・会員権・サブスクリプションなどの解約
年会費を支払っているクレジットカードや、ゴルフなどの会員権、毎月定額を支払っているサブスクリプションサービスのうち、利用頻度が少ないものは、早めに契約解除することをおすすめします。
クレジットカードを複数枚持っている場合はなるべく一本化を、利用回数と会費が見合っていないゴルフ会員権などは解約を検討してください。
今現在利用しているサブスクリプションサービスのうち、長期間使用していないサービスがあれば、解約か継続かを判断しましょう。
動画配信サービスのネットフリックス(Netflix)のように、一度解約をしても簡単に再開できるサブスクリプションもあります。
再開可能なサービスは、思い切って一度解約してみてもいいかもしれません。
パソコンやスマホのデジタルデータ整理
パソコンやスマホの中にあるデータのうち、身内に見られたくないものは、あらかじめ削除をしておくか、パスワードをかけるなどの処理をしましょう。
各種のファイルをまとめたフォルダや、ワードや写真などの各ファイルには、パスワードが設定できます。
「フォルダにパスワードをかける」「ファイル パスワード」などの語句でネット検索すると、設定方法を案内したWebページが出てきますので、参考にしてください。
亡くなったあとに自分のSNSアカウントの運用を誰かに頼む場合は、IDとパスワード、運用の内容(死亡報告、葬儀の告知、アカウント削除など)を、後述のエンディングノートに記載しておくか、信頼のおける人に、手紙やメール、LINEのメッセージなどで伝えておきましょう。
エンディングノートを作成する
エンディングノートとは、不慮の事故や急病、急逝などといった「万が一のとき」に備えて、自分の情報や財産、葬儀やお墓などの死後の対応方法、家族や親族へのメッセージなどを記しておくノートのことです。
エンディングノートは遺言書と違って法的な効力はありませんが、介護や終末治療の方針、認知症になったときの後見人について、葬儀・埋葬方法、遺族へのメッセージなど、終活に関わることを記しておくのに適しています。
エンディングノートの作り方・書き方については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
- 自分の安心につながる「エンディングノート」の作り方・書き方【FP監修】
- 葬儀費用の平均金額は減少傾向!?費用を抑えるコツやQ&Aもご紹介
- 喪主がやることを葬儀前後の時系列で解説|初めての喪主でも安心!
- おひとりさま終活でやるべき13のこと!身寄りなしでも安心な最後を
また、後見人や後見制度については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
成年後見制度とは?法定後見と任意後見の違いについて解説(行政書士資格を持つ社労士監修)
遺言書を書く
財産相続に関する指示をしたい場合や、財産に不動産がある場合は、法的な効力を持つ遺言書や財産目録を残しておきましょう。
遺言書というと、相続税を支払うような富裕層が残すものというイメージがあるかもしれませんが、一般の人にとっても決して無縁のものではありません。
2021(令和3)年版の裁判所の司法統計年報によると、相続で揉めるケースは、遺産5,000万円未満の場合が76.6%を占めています。
参考資料
2 令和3年 司法統計年報(家事編)「第 52 表 遺産分割事件のうち認容・ を除く)―遺産の内容別」より(裁判所ホームページ)
また、自分が相続対象となっている不動産の存在を知らない人は案外多く、日本中で所有者不明土地(相続登記がされていない土地)の増加が問題視されています。
日本の国土のうち、およそ20%が所有者不明土地なのだそうです。
参考資料
所有者不明土地を取り巻く 状況と課題について(国土交通省)
なお、2020年のデータによると、亡くなった人のうち、91.54%の人は遺言書を作成していません。つまり、ほとんどの人は遺言書を残さずに亡くなっているということです。
グラフ出典:
死者数:厚生労働省人口動態統計より2020年の死者数を抜粋
遺言公正証書の作成件数:日本公証人連合会の公開データ(令和2年の遺言公正証書作成件数について | 日本公証人連合会)より令和2年の件数を抜粋
遺言書の検認数:令和2年度 第2表 家事審判・調停事件の事件別新受件数―全家庭裁判所より、遺言書の検認数を抜粋
先祖から受け継いだ大切な土地が、所有者不明土地になってしまわないためにも、遺言書を作成して、相続登記を滞りなく行えるように準備しておきましょう。
なお、遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、下記の解説記事を参考にしてください。
遺言書とは?3つの種類と特徴・違い・書き方を解説(行政書士資格を持つ社労士監修)
また、相続税については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
一般家庭でもできる相続税の節税対策【税理士監修】
死亡保険金に相続税がかかるケースは?重要なのは非課税枠と基礎控除
思い出が詰まった家財や財産を整理すると、これまでの人生でやり残したことや、心残りだったこと、これからやりたいことが発見できるかもしれません。
生前整理をすると、昔の思い出が鮮やかによみがえることがあります。
たとえば写真を整理すると、「あの人と、またこの場所へ行こうと約束したなあ」と昔の約束を思い出すこともあるでしょう。
かつて熱中した趣味の道具を見て、「あの頃のように、またやってみよう!」とチャレンジ精神が湧き上がってくるかもしれません。
生前整理をしながら、やり残したことがないかどうか、これまでの人生を振り返ってみてください。
生前整理の「やることリスト」
それでは最後に、生前整理でやることのチェックリストを記載します。
今回の記事を参考に、生前整理を進めてみましょう!
- 身の回りの書類・紙類・洋服・家電・家具・日用品の整理
- 思い出の写真・絵・記念品などの整理
- 年会費や月会費を支払っているサービスの整理
- デジタルデータの整理
- エンディングノートの執筆
- 遺言書の執筆
- 人生を振り返り、やり残したこと、これからやりたいことを発掘する
この記事の監修者
高橋正美 【ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)】
日本FP協会所属。日本FP協会2019年「くらしとお金の相談室」相談員。某保険会社のお客様窓口で、保全業務のほか、資産活用、相続対策の相談などを16年間行い独立。相続開始後の手続き支援なども行う。 健康管理士として、お客様のお金に関する相談以外に、健康に関するアドバイスも実施。