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年金証書とはどんなもの?

谷口芳子 【社会保険労務士】

さまざま情報をITシステムで管理する時代になっても、年金証書は大切な書類のひとつです。年金を受給している人にはなじみのある年金証書について、見方のポイントなどを解説します。

目次

年金証書と年金手帳の違い

年金手帳は、年金に加入した記録であり、年金証書は、年金を受け取る権利の証明です。
年金手帳は年金保険料を納めている期間に持っているもので、年金証書は、年金を受け取るようになってから持つものと考えるとよいでしょう。
年金手帳

年金証書はいつ届く?

年金を受け取るためには、年金の請求手続きが必要です。
老齢年金を受給する年齢になった人には、誕生日の約3か月前に、年金請求の案内が届きます。案内は3か月前に届きますが、年金の受給権が発生するのは、誕生日の前日です。

年金請求の手続きをすると、日本年金機構で支給の決定をします。支給決定は、年金請求書を提出した1か月半後から2か月後です。
年金の支給が決定したあとに、お住まいの住所あてに年金証書が郵送されます。
登録した口座に年金が振り込まれるのは、それから更に約1か月から2か月後です。

遺族年金の場合も、年金請求書を提出してから年金証書が届く間隔を、老齢年金と同様に考えておくと良いでしょう。

障害年金は、障害を認定する手続きがありますので、年金請求書を提出してから年金証書が届くまでに、3か月から4か月かかることが多いようです。

年金証書の見方のポイント

年金証書の左側には「年金の種類」が記載されています。ここに載っているのは、「老齢」「障害」「遺族」のうち、いずれかです。
基礎年金番号は、基本的に1人につき1つの番号で、年金手帳に載っている番号と同じものです。
受給権を取得した月の翌月分から年金を受け取ることができ、通常は偶数月の15日に前月分と前々月分、2か月分の年金が振り込まれます。

基礎年金番号に関連した記事
基礎年金番号通知書とは?今ある年金手帳はどうすればいいかを社労士が解説

年金コードとは

年金証書には、基礎年金番号の右側に数字4桁の「年金コード」が表示されています。
年金コードが何かをまったく知らなくても支障はありませんが、年金証書に必ず記載されているものですので、参考までにご説明します。

※参考資料
年金コード(日本年金機構)

年金コード表を見ると左右に分かれていますが、これから年金をもらう人に当てはまるのは、表の右側の「制度」が「新法」の欄です。
 それぞれの年金の種類のあとに(第1号厚年)というふうに、1号から4号までの数字があります。これは厚生年金の被保険者の区分によって違います。

<年金コード表のカッコ書きの区分>

  • 第1号厚年:会社勤めの人
  • 第2号厚年:国家公務員
  • 第3号厚年:地方公務員
  • 第4号厚年:私立学校の教職員


年金コードとは別に、国民年金にも第1号から第3号の被保険者区分があり、それぞれの区分をおおまかにご説明しますと以下のようになります。

<国民年金の被保険者区分>

  • 第1号被保険者:日本に住んでいる20歳~60歳の自営業や農業などの人
  • 第2号被保険者:厚生年金の被保険者(会社などに勤めている人)
  • 第3号被保険者:20歳~60歳で第2号に扶養されている配偶者


たとえば会社勤めの人が在職しているあいだは、国民年金の「第2号被保険者」ですが、退職して老齢年金を受けるようになると、受け取る年金の種類のカッコ書きは(第1号厚年)となり、年金のコードは「1150」となります。

ちょっとややこしいですが、年金コードを知らなくても支障がないことと同様に、自分が第何号被保険者かを知らなくても、年金の受給には支障ありませんので、ご安心ください。

自分が第何号被保険者かを知る機会があるのは、離婚時に厚生年金の分割をするときかもしれません。上記の国民年金の被保険者区分で、年金記録を分割される側の配偶者が扶養されていた時期は、第3号被保険者となります。
扶養されていなかった時期は第1号被保険者か第2号被保険者です。配偶者の被保険者区分によって年金分割の方法も変わります。

離婚時の年金分割についての詳細は下記の記事で解説していますので、参考にしてください。
【図解つき】離婚時に年金分割をするとどうなる?年金分割制度と手続き方法

年金証書と合わせて記載されている年金決定通知書とは

参考資料
年金決定通知書・支給額変更通知書|日本年金機構

青い枠で表示されている「年金証書」の下には、厚生年金と国民年金の決定通知書があります(年金証書と年金決定通知書は一体化しています)。
年金証書の右側に「受給権を取得した年月」が記載されており、年金決定通知書の左上にある「支払開始年月」には、その翌月となる月が記載されています。

年金額についての表示

年金決定通知書は厚生年金のほうを例にご説明します。

「支払開始年月」の次に「基本となる年金額」が記載され、その次に「加給年金額または加算額」が記載されています。
加給年金と加算は、扶養する配偶者や子がいた場合に上乗せして支給されるものです。

「支給停止額」は、会社などに在職しながら年金を受給する場合に、報酬額によって支給停止となっている場合などで、年金の全額が支給停止の場合は、加給年金などの上乗せ支給もされません。

加給年金については、下記記事の「加給年金と振替加算とは?」という項目で詳しく解説していますので、参考にしてください。
年金の加入状況や見込額がわかる!「ねんきん定期便」のポイント解説
年金の振替加算とは?金額・もらえる人の条件・手続き方法を徹底解説

加入期間の内訳と平均標準報酬額等の内容

年金額の内訳の下には、「加入期間の内訳」などの項目があります。

「加入期間の内訳」には、戦時中や沖縄が本土復帰した前後の特別措置の期間も設けられています。多くの人は「厚生年金保険の加入期間」の欄に、加入した月数が記載されているでしょう。

「平均標準報酬等の内容」は、加入期間が2003(平成15)年3月までの期間と4月以降の期間に大別できます。
この年の3月までは、毎月の給料から厚生年金の保険料を納めていましたが、4月からは給料だけでなく賞与からも保険料を納めるようになったため、期間が2つに分かれています。

「昭和61年3月までの坑内員または船員であった期間」などは、当時、鉱山や炭鉱で働く人や船舶で働く人が激務であったために設けられた特別措置の期間です。

年金証書を紛失した場合の再交付申請

年金証書を紛失したら、お近くの年金事務所か街角の年金センターに備え付けてある再交付申請書を提出してください。

また、ねんきんダイヤルに問い合わせて再交付申請書を自宅住所に送ってもらうこともできます。
再交付された年金証書は、本人の住所あてに郵送されます。

ねんきんダイヤル

年金受給者が亡くなったときの手続き

年金を受給している人のうち、日本年金機構にマイナンバーを登録している人が死亡した場合、「受給権者死亡届」の提出は不要です。
マイナンバーが未登録の年金受給者がなくなったときは、「受給権者死亡届」を提出する必要があります。
提出先は、市区町村の窓口か、年金事務所または街角の年金センターです。

「受給権者死亡届」を提出してもしなくても、どちらの場合も未支給年金の請求は必要です。
未支給年金とは、亡くなった人が受け取らなかった年金のことで、その人の遺族(生計を同じくする3親等内の親族)が受け取ることができます。
年金は、その月の1日に亡くなっても末日に亡くなっても同じ扱いで、亡くなった月は、1か月分が支給されます。

年金の死亡届と未支給年金の請求は同時に届出をし、その際に添付書類として年金証書を提出します。
年金証書のほかにも添付する書類がありますので、届出をする際は案内に従って手続きをしましょう。

参考資料


未支給年金は相続財産ではない

未支給年金は、通常は相続財産には含まれず、相続税の課税対象にはなりません。
未支給年金は遺族の権利とされ、年金を受け取った遺族の一時所得となります。

相続に関連した記事


まとめ:年金証書は大切な書類

年金手帳と同様に年金証書も本人確認書類として使うことがあり、いろいろな届出をするときに年金証書の提出を求められることがあります。

年金証書を無くしたとしても年金は受け取れますが、本人にとって大切な書類であることに変わりはありません。
年金証書は、紛失したり汚したりしないように大切に扱いましょう。

この記事の監修者

谷口芳子 【社会保険労務士】

シニア社労士事務所所長。NPO法人や税理士法人を経て現職。社会保険・雇用保険の各種届出、年末調整、労務相談、公正証書作成などの業務を担当。行政書士資格保有。

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