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60歳年収300万円からの転職はあり?なし?年金や定年退職後のプランを徹底解説!

松澤裕介 【キャリアアドバイザー】

定年後の60歳以降になると年収はどれくらいになるのかを、キャリアアドバイザーが解説。60歳の定年を期に転職を考えている人は参考にしてください。

目次

60歳で年収300万円は平均以上?以下?


国税庁の調査資料「令和2年民間給与実態統計調査」によると、60代前半(60歳以上64歳以下)世代の男性の年収は521万円で、女性は257万円となりました。
定年世代となる60歳から65歳の給与は、直前の現役世代と比べると、男性では22%減、女性では17%減となるそうです。

ここ数年間、60代前半のシニア世代の平均年収は350万〜400万円前後の範囲内で横ばいに推移しています。
60歳で年収300万円というのは、平均よりも50万〜100万円ほど少ないものの、平均的な年収といえるでしょう。
 

60歳の時点で年収300万円なら再雇用ではなく転職するべきか?

少子高齢化が進んでいる現在では、貴重な労働力の確保という観点から、定年退職の年齢引き上げや継続雇用制度の導入など、シニア世代の活躍を後押しする法律が整備されつつあります。 
2021年に公開された内閣府の高齢社会白書では、高齢者の労働人口比率が過去最高を記録したことを明かしています。

令和2年 労働力人口比率の推移(%)
「労働人口比率の推移」という表によると、65~69歳では51.0%(前年49.5%)、70~74歳では33.1%(前年32.5%)となっており、2005(平成17)年以降から上昇傾向にあります。また75歳以上の労働人口比率は10.5%(前年10.3%)となり、2015(平成27)年以降から上昇し続けています。

参考:令和3年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府

2012年の「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(通称、高齢者雇用安定法)の改正(2013年施行)では、定年が60歳から65歳に引き上げられ、現在は経過措置期間とされ、2025年4月にはすべての企業で65歳定年制が義務化されます。
さらに2021年4月の改正では、70歳までの就業確保措置を、努力義務としました。
今のところ、努力義務を果たさなくても罰則はありませんが、行政指導が入る可能性もあるため、定年70歳時代は近いと言えるでしょう。

そうはいっても、シニア世代の雇用条件は50代以下の条件と比べると厳しいのも確かです。
仮に年収300万円という条件はそのままで、5年あるいはそれ以上の継続雇用が約束される場合は、今の職場から無理に転職することはないでしょう。

なぜなら、60歳以上のシニアの場合、今以上の雇用条件に当てはまる転職先を探すのは非常に困難だからです。
経験を活かして企業幹部として再就職するなどの恵まれた条件の転職は、ごく限られたケースなのです。
 

60歳で継続雇用を選択するか転職するか


再雇用の場合は、雇用条件が引き下げられてしまうこともあり得ますが、今の会社に残りたい方は、会社側に希望を申し出て条件交渉してみましょう。
条件面が折り合わないといった理由から、60歳の時点で退職せざるを得ない場合は、早めに転職活動を開始するのがおすすめです。
なぜなら、ブランク後の再就職は、希望条件に合った転職先を見つけるのが難しくなるからです。 
定年退職して少し休んでから転職、という方法は現実的には厳しいのです。
 

60歳定年後の再就職先は?

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60歳の時点で定年退職した場合、再就職先の候補としてどのようなものがあるのでしょうか。 
 

国家資格や専門的な民間資格がある人は再就職に有利


土木・建築、電気工事・設備施工、薬剤師、介護福祉士などの国家資格や専門的な資格・技術がある60歳以上のシニア世代を、積極的に採用している企業は少なくありません。
これまでの資格や経験を活かせる再就職先がすぐに見つかる可能性は高いでしょう。

資格に関連した記事
中高年の転職に有利な資格ってなに?業種・業界別に一覧でご紹介!
 
最近では、専門的な技術や経験が豊富な再就職希望者と、企業との出会いをマッチングする「シニア応援型の転職エージェント」も増えています。
資格や経験を活かして、やり甲斐を感じられる職場に転職したい人は、シニア世代向けの転職サービスを利用するのがおすすめです。

資格がない場合の再就職は厳しい

国家資格や専門的な民間資格、経験がない人ですと、60歳以降の転職は条件が厳しくなる傾向にあります。見つけられたとしても、 パート・アルバイトや契約社員などの待遇が多いため、60歳時点の年収300万円を維持するのは難しくなります。
ですので、定年前に国家資格の勉強を始め、定年時に取得ができていると、老後の収入が確保できるかもしれません。
 
職種を選ばなければ、60歳以上の求人募集もたくさんありますが、求人数が多い仕事は体力的にきついものがメインです。 
ただし、資格や経験がない人でも、週1回からの就業がOKなどの「シニアの働き方」を優先してくれるエージェントもあります。
転職サービスを利用して、一度希望に合う求人があるかどうか、気軽に相談してみてください。
 

年金受給額の平均は基礎年金のみで5万6千円、厚生年金ありでは14万6千円

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厚生労働省が2021年3月に公開した、年金に関する最新の調査資料「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」(PDF10、14、15、22ページ目)によると、65歳以上の人の平均年金受給額(月額)は、以下のようになりました。

  • 老齢基礎年金のみ:5万6,358円
  • 老齢基礎年金+老齢厚生年金:14万6,145円
  • 老齢基礎年金+老齢厚生年金の男性:月額17万391円
  • 老齢基礎年金+老齢厚生年金の女性:月額10万9,205円

 
国民年金だけに加入していた自営業や主婦の人ですと、月額5万6,358円の受給になります。
なお、女性の場合は結婚、出産、子育てなど、就労から外れる機会が多く、総収入が男性よりも少なくなりがちなことが、年金の受給額にも反映されています。

こういった月々の年金受給額と収入、さらに預貯金などを考え、定年する前に老後の資金プランを立てていきましょう。
 

老後に必要な預貯金額は2,000万円が目安


シニアタイムズ内の記事「少ない年金で暮らすには?年金生活の節約術と老後の貯金を減らさない方法」でもお伝えしたように、シニアとなる定年後再雇用期間(60歳から65歳)の世帯収入と消費支出の平均額は、ともに月額32万2000円で、プラスマイナスゼロであることがわかっています。
65歳で年金の受給が始まり、まだ再雇用されていたとしても、65歳以降の世帯では収入と支出の差額が毎月−47,000円の赤字になることが予想されています。
人生100年時代となり、夫婦がともに100歳まで生きると仮定すると、残りの35年の間に約2,000万円(47,000円×12か月×35年=1,974万円)の赤字が出る計算になりますので、60歳までに2,000万円の預貯金をしておく必要があるでしょう。

参考資料


100歳に関連した記事
100歳まで生きる人の特徴に学ぶ、健康長寿の秘訣 

定年退職後のプランは?


国民年金と厚生年金が両方とも満額で受給できる人は、男性では月額17万391円、女性では月額10万9,205円ですので、月の赤字は約3万2,000円となります。
一方、国民年金のみの夫婦の場合ですと、毎月20万円ほどの赤字になってしまいますので、この差額をどこから捻出するかが課題です。
資産運用などで収入を見込める人もいるかもしれませんが、60歳になったら継続雇用を選択するか、あるいは転職をしていかに働き続けるかが重要だと言えるでしょう。
 

まとめ:転職をするなら早めの準備が大切

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60歳で年収300万円の場合、60歳以降もそのままの条件で働き続けることができるなら、決して悪い条件ではありません。
今の職場で継続雇用や再雇用してもらうという選択も可能です。
ただし、再雇用の場合ですと、勤務時間や給与額などを引き下げられてしまうケースもあるので、注意が必要です。
 
なお、60歳の定年時に転職をする場合ですと、退職の手続きや再就職の準備に何かと時間がかかります。
シニア世代の転職を積極的にサポートしてくれるシニア専門人材エージェントに登録して、転職活動を早めにスタートしておくと安心です。

なお、定年退職時の手続きに関しては下記の記事を参考にしてください。
定年退職の前後にやっておくべきこと特集 - 退職金・年金・健康保険・失業保険の手続き

再雇用制度に関しては、下記の記事を参考にしてください。
60歳から65歳までの再雇用後の給与相場は?年金と給付金についても解説

この記事の監修者

松澤裕介 【キャリアアドバイザー】

キャリアアドバイザーとして、転職相談3,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間1,000名以上の履歴書、職務経歴書を作成。主に医療・介護業界の人材紹介を担当。「シニア人材の転職市場・転職の注意点」などのテーマで記事やコラムを監修。

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