中高年の短期・単発アルバイトには、どんなお仕事がある?
近年の労働市場では、定年を迎えて第一線を退いた高齢者が、再就職や再雇用で働くケースが増えてきました。その一方でフルタイムではなく短期や単発のアルバイトで働く高齢者も増えています。
- 目次
- なぜ中高年・高齢者の間で短期・単発のアルバイトが注目されているのか
- 高齢者の労働意欲は年々高まっている
- 再雇用や再就職で働き続けるのは、社会参加や健康維持の目的もある
- 雇用形態にとらわれずに社会へ出るために働きたいと考える中高年・高齢者が急増
- 実際に募集されいてる中高年向け短期・単発アルバイト
- 倉庫スタッフ
- 店舗のオープニングスタッフ
- 交通誘導スタッフ
- コールセンター
- 介護職
- 短期バイトのメリット
- 再就職と比べて採用されやすい
- 複雑・高度な仕事レベルが要求されない
- 自分のペースやスケジュールで働くことができる
- 多種多様な仕事も経験できる
- デメリット
- 自分の希望している職種や仕事が見つからないことも少なくない
- 長期採用に移行することが難しい
- 中高年の短期バイトの探し方
- ネット求人で探す
- 人材紹介会社に登録して探す
- 短期・単発アルバイトから始めてみよう!
この記事では、中高年や高齢者の短期・単発アルバイトにはどのような仕事があるのか、どのような仕事が向いているのかを、キャリアアドバイザーが解説します。
ただ、その前に、なぜ中高年やシニアが短期・単発アルバイトを探すことが増えたのかについても軽く触れておきましょう。
なぜ中高年・高齢者の間で短期・単発のアルバイトが注目されているのか
最近、シニアジョブエージェントでも、中高年や高齢者の方々が「短期アルバイト」「単発アルバイト」というキーワードで検索してたどり着くケースが増えています。
その背景には、以下のような要因が考えられます。
高齢者の労働意欲は年々高まっている
内閣府が公開した「平成29年版高齢社会白書」の中にある「高齢者の就業」に関する項目(※1)によると、労働力人口全体のうち高齢者が占める割合は年々上昇を続けており、2016(平成28)年時点の65歳以上の割合は11.8%にも上ることがわかりました。
就業している60歳以上の男女に対し、「あなたは何歳ごろまで仕事をしたいですか」と質問したところ、「働けるうちはいつまでも」「70歳くらいまで、もしくはそれ以上」と回答した人が非常に多く、この2つの回答を合計すると約8割を占めます。
以上のことから、現代の高齢者には高い労働意欲が見られるということがわかりました。
再雇用や再就職で働き続けるのは、社会参加や健康維持の目的もある
同じ白書の「高齢者の経済状況」に関する項目(※2)によると、「経済的な暮らし向きに心配はない」と感じる60歳以上の高齢者の割合は64.6%となり、80歳以上になると71.5%になることがわかっています。家計を助けるために再雇用や再就職などをして働き続けることを選ぶ高齢者は少なくないものの、経済的な理由ではなく、どんな形でもとにかく働きたいと考えている人も多いということです。
同じ白書の「高齢者の社会参加活動」に関する項目(※3)を見ると、自主的なグループ活動(健康・スポーツ・趣味・地域行事など)への参加率も年々上昇しており、シニアの健康維持への意識や、社会参加が活性化していることもわかります。
雇用形態にとらわれずに社会へ出るために働きたいと考える中高年・高齢者が急増
経済的な心配はないがとにかく働きたい、社会参加がしたい、健康を維持したい、という高齢者の数が増えてきていることを背景に、中高年や高齢者の間で、短期や単発のアルバイトに注目が集まっていると考えられます。
- (※1)4 高齢者の就業|平成29年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府
- (※2)2 高齢者の経済状況|平成29年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府
- (※3)5 高齢者の社会参加活動|平成29年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府
関連記事→50代女性の仕事探しのコツ「シニア歓迎」と「長く続けられるか」を重視しよう
なお、2022年10月に年金制度の改正により、パートタイムでも社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入できる可能性が高まります。
詳しくは下記の記事をご確認ください。
パート・アルバイトでも社会保険に加入できる?2022年10月の社会保険改正ポイントを社労士が解説
実際に募集されいてる中高年向け短期・単発アルバイト
中高年を対象にした短期的なアルバイトは、どのような職種で募集されていることが多いのでしょうか。
ここでは、実際に募集されている案件をいくつか挙げてみました。
倉庫スタッフ
短期や単発のアルバイト求人で多い職種は、「倉庫スタッフ」です。
短期的な梱包スタッフの募集として、時給1,000円程度(東京都の場合)で募集されています。
具体的な仕事内容としては、倉庫内で梱包や、荷物の振り分け、ピッキング作業などを行います。
ていねいでスピーディーな作業が求められ、対象年齢は幅広く10代~60代となっていることが多いようです。
勤務体系も週2〜3日からOKということが多く、1日3時間程度の勤務でも可能なケースがあります。
特に最近では通販ショップの物流倉庫で、商品梱包から仕分け作業などの出荷管理を募集している案件がよく目につきます。
慢性的な人材不足のためか、短期アルバイトから正社員へ登用されることも少なくありません。
店舗のオープニングスタッフ
短期・単発アルバイトの中には、オープニングスタッフというものもあります。
仕事内容は、新規店舗オープン前の準備や、開店直後の運営スタッフとして雇われる形です。
決まった流れで行う仕事なので、未経験でも働くことができ、平均して時給1,200円~1,300円(東京都の場合)で、夜勤ですと1,500円程度になるケースもあります。
交通誘導スタッフ
交通誘導スタッフは、主に工事現場での仕事となります。
交通誘導の仕事は、資格が無くても従事できますが、有資格者はさらに収入が高くなります。
1日最大で1万円以上稼ぐことができ、週3日以上でシフトで組めるケースもあります。
コールセンター
多くの企業に設置されているコールセンターは、年末年始や引っ越しシーズン、ゴールデンウィーク、お盆期間などの繁忙期になると、短期や単発のアルバイトを大量に採用することがあります。
中高年の女性であれば、自分の生活に身近な化粧品や生活雑貨などの商品注文の受付に向いているかもしれません。とくに夏のお中元や冬のお歳暮、クリスマス、お年賀などのシーズンに商品注文受付の単発アルバイトが増える傾向にあります。
商品注文以外にも、サービスに関する問い合わせへの対応や、配送業者の電話窓口、引越しに伴うガス・電気などの問い合わせ対応など、多数の電話対応があります。
また、かかってきた電話に応対するインバウンド業務のほかに、テレアポやインサイドセールスなどの電話をかけるアウトバウンド業務といったものもコールセンターでは取り扱っています。
インバウンドとアウトバウンド、いずれの業務でもパソコンを使用したデータ入力の仕事をともなうことが多いため、パソコンの操作やタッチタイピングに慣れていたほうがいいかもしれません。
電話がかかってくるのを待つインバウンドよりも、電話をかけるアウトバウンドのほうが一般的に高時給です。
なお、コールセンターではシフト制を採用しているため、週2~3日からOKという案件が多く、在宅OKのケースもあります。
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介護職
中高年の再就職・転職として人気の高い介護職でも、短期バイトが募集されることがかなりあります。
時給は1,100円~1,500円レベルで、仕事としては施設に入居している高齢者や利用者のお世話をすることではなく、コミュニケーション主体の仕事と言ってもいいでしょう。
食事や移動などの日常生活をサポートすることが中心になるのですが、特別なスキルや知識がなくてもできる仕事です。
このように短期バイトの一例を紹介しましたが、この他にも多くの職種が募集されています。
短期バイトのメリット
ビジネス業界では転職や再就職の機会が増えているものの、30代・40代世代と比べてみると中高年の採用機会はやはり少ない傾向にあります。
しかし、前項で挙げたように、短期バイトの募集案件はかなり多いのが実情です。
中高年の方々の立場から見ても、短期バイトには次のようなメリットがあります。
再就職と比べて採用されやすい
再就職や長期のアルバイトの場合は、継続的な視点で働いてもらうことが前提となっています。
そのために、就職や採用の面接では、その人の人物性や適性などが細かく審査されて見極めた上で採用・不採用が決まってきます。
そのために不採用となるケースも少なくないのですが、短期バイトの場合は雇用期間が短いために、業務上必要最低限の指示事項で仕事ができればいいことから、採用されやすい傾向があります。
複雑・高度な仕事レベルが要求されない
短期バイトは「期間限定」で働くことになります。
このことから、仕事を覚えるまでにかなりの時間が必要な複雑な仕事や高度な判断やノウハウが求められる仕事が任されることはほとんどありません。
短期バイトの仕事としてよくあるものとしては、メーカーの繁忙期の工場やアパレル倉庫でもサポート業務やデータ入力、新規開店した店舗でも接客業務などがあります。
自分のペースやスケジュールで働くことができる
短期バイトは若い方であれば、夏季休暇などの長期休みの1か月間だけ働きたいという問いに最適の仕事です。
中高年の方々でも比較的に自由に自分の時間も持てる世代ですが、自分の健康面やペースを考えながら、働くことができる点も短期メリットの1つと言えます。
多種多様な仕事も経験できる
短期・単発アルバイトの職種はさまざまなジャンルの仕事が募集されています。
業務内容を見ると、専門性の高い仕事はあまり多くはなく期間限定のものが多いので、特別な資格や経験が無くても従事することができます。
そのために、色々な仕事を体験することができ豊富な経験を積むことも可能です。
デメリット
短期・単発アルバイトは、期間限定の仕事という性格が強いために高い専門性が問われることがあまりなく、前述のように比較的に誰でも採用されやすいなどのメリットがありました。
しかし、以下のようなデメリットもあります。
自分の希望している職種や仕事が見つからないことも少なくない
中高年の人々は、収入のことよりも、社会に貢献していることや社会活動に参画しているという考えから、お仕事を探されているケースが多いようです。
それゆえに短期・単発のアルバイトを始めようと思っても、自分の希望する職種が見つからないというケースも少なくありません。
特に条件の良い短期バイトは幅広い年代を対象に募集するケースが多いために、すぐに募集を締め切ってしまうことも珍しくはありません。
そのために、ますます希望する職種を探すことが困難になってしまうこともあるのです。
短期バイトでも自分の希望にマッチした仕事に就くためには、こまめに求人情報をチェックしておく必要があります。
長期採用に移行することが難しい
短期バイトの中には、「工場派遣社員」として繁忙期に合わせて募集している企業もかなりあります。
毎年同じ時期に募集があるのですが、基本的に雇用期間の延長するようなケースがほとんどないことが大半です。
企業側からすると、閑散期は正社員のマンパワーで十分に仕事が回るので、短期バイトの人を雇うと、人件費がかさんでしまうので自然な考え方です。
そのために、せっかく自分に合っている仕事だとしても、その短期バイトが終わった後は、新たな別の仕事を探す必要が出てきます。
このように短期バイトは期間限定のために、特別なスキルやノウハウが無くても従事することができますが、安定的な収入を確保するためには、1つのバイトが終了したなら、次の仕事を探す必要が出てきます。
中高年の短期バイトの探し方
では、中高年の方々が短期バイトで働くためには、どのような方法でさがせばいいでしょうか?
ネット求人で探す
短期バイトは様々な方法で探すことができますが、インターネットから捜す方法がポピュラーです。
いわゆる「ネット求人」と呼ばれる方法ですが、多種多様な職種は数多く掲載されているので、すぐに短期バイトを捜したい場合に便利です。
人材紹介会社に登録して探す
短期バイト求人を専門に扱っている人材派遣・人材紹介会社もあります。
人材紹介会社に登録しておくと、自分の要望にマッチした短期・単発アルバイトを紹介してくれる可能性が高くなります。
短期・単発アルバイトから始めてみよう!
再雇用や再就職の機会と比較すると、短期・単発アルバイトの求人数は職種を問わず多く募集されています。高い専門性を求められることが少なく、誰でも雇用されやすいでしょう。
ただ、短期・単発アルバイトは原則的に期間限定の色合いが強く、長期バイトや正社員に登用されることはあまり多くありません。
一方で、色々なことを体験できるメリットもありますので、さまざまな形で社会貢献をしたいと考えてる高齢者の方であれば、短期アルバイトが理想的な雇用形態かもしれません。
これから短期・単発のお仕事を探したい人は、求人サイトや人材紹介会社を利用するのも1つの方法です。
40代から50代の中高年女性に向いている仕事の探し方については、下記の記事を参考にしてください。
中高年女性の仕事探し!求人の種類・有望な職種・平均年収を解説
この記事の監修者
松澤裕介 【キャリアアドバイザー】
キャリアアドバイザーとして、転職相談3,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間1,000名以上の履歴書、職務経歴書を作成。主に医療・介護業界の人材紹介を担当。「シニア人材の転職市場・転職の注意点」などのテーマで記事やコラムを監修。