【離活】熟年離婚で後悔しないために準備しておきたい5つの段取り
熟年離婚を考える人は増えていますが、準備がないまま見切り発車で離婚すると後悔するかもしれません。離婚後の生活を安定させるためには、どのような準備が必要なのかを解説します。
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近年、熟年離婚を考えている人が増えてきています。
熟年離婚にはさまざまな理由がありますが、準備をせずに勢いで離婚してしまうと、悲惨な結果を招くかもしれません。
この記事では、熟年離婚で後悔しないため、安全に離婚活動を行う方法をご紹介します。
熟年離婚を考え中の女性は、下記の記事も参考にしてください。
離婚後の単身50代女性に関連する平均収入、支出、住居費、財産分与額、生活保護制度、寡婦控除、ひとり親控除、老後の保険料、年金分割制度などについて解説しています。
離婚を考える50代女性のための生活設計を解説【FP監修】
ひとり親控除と寡婦控除については、下記の記事でより詳しく解説していますので、参考にしてください。
ひとり親控除と寡婦控除の違いとは?【税理士監修】
熟年離婚が増加した理由
国内の離婚件数は、2002(平成14)年の28万9,836組がピークで、2020(令和2)年は19万3,251組となり、年々微減している状態です。婚姻件数にも微減の傾向が見られるため、比例して離婚件数も減っています。
なお、同居期間が20年以上になる、いわゆる熟年夫婦の離婚数は、1985(昭和60)年は2万434組、2005年は4万395組でした。2005年以降の離婚件数は4万組前後に定着しており、2019年は4万396組、2020(令和2)年は3万8,980組が離婚に至っています。
ここ15年ほど、熟年離婚の件数に増減はほとんどありませんが、1985年から2005年の20年間で2倍近くに増えたことがわかります。
参考資料:厚生労働省|令和2年人口動態統計月報年計(概数)の概況
1985年を境に熟年離婚が増加した原因としては、男女雇用機会均等法が成立して女性の社会進出が当たり前になったことや、地域コミュニティが衰退して隣近所などの世間体を気にする必要がなくなったことなどが考えられます。
子育てが一段落して再び社会に出て働く女性が、一人の稼ぎでも十分に生活ができるようになると、パートナーの存在に疑問を抱く、といった状況が増えたのかもしれません。
参考資料:1 都市部、地方部における地域コミュニティの衰退(国土交通省)
医療技術の発達で平均寿命が伸び、子育てを終えたあとの時間が長くなったぶん、自分の時間が増え、何にも縛られずに自由に生きていきたいと考える人が増えたことも関係しているでしょう。
熟年離婚が起こる原因は?
熟年離婚の原因で多いものは何なのでしょうか。
結婚相談所のエン婚活エージェント株式会社が2020年に公開した、離婚に関する調査の資料によると、離婚原因のランキングは下記のようになったそうです。
第1位:性格が合わない(55.6%)
第2位:異性関係(17.0%)
第3位:DV・モラハラ(16.2%)
第4位:金銭トラブル(14.0%)
第5位:性的不調和(13.5%)
第5位:家事や子育てに非協力的(13.5%)
第7位:親族との不仲(10.1%)
第8位:飲酒トラブル(9.9%)
参考資料:【2020年の離婚に関する調査】半数以上が「性格が合わない」ことを理由に離婚している!?コロナ禍がその原因となった方も…|エン婚活エージェント株式会社のプレスリリース
それではもう少し細かく原因を分析してみましょう。
価値観の違い
先ほど紹介したランキングのうち、性格が合わない、異性関係、金銭トラブル、性的不調和、家事や子育て、親族との不仲、なども「価値観の違い」などにまとめられそうです。
価値観とは、個人がそれぞれ感じる、ものの見方や考え方のことで、すべての価値観が合致する夫婦はいないはずです。
金銭感覚や、子育ての方針、子育てへの不参加、貞操観念、食べ物の好みなども「価値観の違い」に入るでしょう。
夫婦生活が長ければ長くなるほど、お互いへの思いやりは薄れ、価値観の違いが溝となって、心が離れやすくなってしまうのかもしれません。
子供が自立し、自分の時間ができるようになったから
子供の進学や独立をきっかけに、熟年離婚を考え始める人も多くいます。
子供が家からいなくなると、夫婦にとっては自由な時間がたくさん生まれます。子育て中はお互いに不満があっても、子供のためならと我慢してきたことがたくさんあったはずです。
夫婦二人きりの暮らしになった瞬間、会話が続かなくなってしまった夫婦も多いようです。
かすがいだった子供が自立すると、ふたをしていた本当の気持ちを我慢する必要がなくなるため、離婚に踏み切るのかもしれません。
定年退職後、一緒にいる時間が増えてストレスになる
女性側が熟年離婚を考えるきっかけとして多いのが、夫の定年退職です。
これまで仕事で家にいなかった夫が一日中家におり、自分一人だけの時間がなくなってしまうと、妻は大きなストレスを感じるようになるそうです。
二人きりの時間が長くなると、顔を合わせるだけで夫婦げんかになってしまうケースもあります。
なお、夫と二人で過ごす時間が増えたことにより、妻の心身に不調が出る状態を、最近では「夫源病(ふげんびょう)」などと呼び、有名人の離婚や別居などの話題にも、この単語が出てくるようになりました。
<夫婦のお悩み解決や浮気調査などに役立つ外部参考サイト>
PaMarry | 夫婦の悩みを解決するメディア
熟年離婚に向けてする準備
いざ熟年離婚をすると決めたら、どのようにして準備をすすめたらよいでしょうか。
熟年離婚の準備1:財産分与額の把握と、老後資金の運用を考える
離婚をする前に、夫婦でどのくらいの財産を保持し、どのくらいの財産分与(※)ができるかを、必ず確認しましょう。
財産分与の対象になるのは、婚姻期間中に夫婦で協力して作り上げた財産です。
家や土地などの不動産、投資、退職金、預貯金、年金など、それぞれの金額を前もって把握しておきます。
※結婚している間に夫婦で協力して貯めてきた財産を離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配すること
財産分与は、基本的に夫1:妻1の割合で配分します。
財産分与をしたあとに、それらの財産をもとに自分が老後一人で生活していけるのか、細かく検証することが重要です。
財産分与の金額や、年金の分割金額、老後の資金などを自分で計算するのが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーなどに相談するのも一つの方法です。
また、今住んでいる家や土地を処分するのか、どちらが住み続けて、どちらが家を出ていくのか、なども検討する必要があります。
配偶者に対し、離婚や財産分与、不動産処分などの交渉を一人でするのは難しいと感じたら、法律の専門家である弁護士などに相談してみましょう。
なお、離婚時の年金分割制度については、図解つきで下記記事にて詳しく解説しています。
年金受給がどのくらい増える・減るのか、などについても紹介していますので、参考にしてください。
【図解つき】離婚時に年金分割をするとどうなる?年金分割制度と手続き方法
熟年離婚の準備2:子供には事前に相談するか、離婚の了承を得ておく
子供のいる夫婦が熟年離婚をする場合は、子供に事前相談をするか、了承を得ておいたほうが無難です。
子供に知らせないまま熟年離婚を決め、一人では生活できないとわかった段階で、子供に生活の面倒を見てもらおうと頼るのはおすすめできません。
親の身勝手な離婚のせいで、子供自身の人生プランが崩れてしまうと、親子関係にひびが入る恐れがあるからです。
なお、病気になったり、緊急事態が起きたりした場合の連絡先については、子供に知らせておきましょう。
熟年離婚の準備3:目標を立て、達成に向かって生きていく
熟年離婚のタイミングとしては、子供が自立したり、親の介護が終わったりなど、人生の節目に決断することがほとんどです。
離婚してすぐのころは、一人の生活が気兼ねなく、楽しくてしかたがないと感じるものですが、次第に孤独を感じる人もいます。
個人の気質にもよりますが、孤独を感じると何もする気がなくなってしまい、生きる気力をなくしてしまう人もいます。
そのようなことにならないために、離婚後には何らかの目標を立てて、それに向かって生活を送ることをおすすめします。目標があると、生活にハリが出て、毎日を楽しく過ごせるはずです。
新たな伴侶を探す「婚活」に励むのもいい方法かもしれません。
婚活に関しては、下記の記事を参考にしてください。
熟年離婚の準備4:離婚後の収入のために仕事を見つけて働く
財産分与された資金や年金だけでは生活できない場合は、労働をする必要があるでしょう。
これまで専業主婦として生活を送ってきた人にとっては、初めての、もしくは久しぶりの労働となりますが、社会参加ができるチャンスでもあります。好意的にとらえて、働くことを楽しんでください。
働くことにブランクがある場合は、まずはアルバイトやパートタイムなどの仕事を探して少ない就業日数からスタートし、慣れてきたら日数を増やしていくことをおすすめします。
中高年やシニアに限らず、未経験の人の就職活動は決して簡単なものではありませんが、最近では就職や転職活動をアシストしてくれる人材エージェントサービスがたくさんあります。
離婚をする前に、就職に必要な資格を取得しておき、転職サイトに登録するなど、就職や転職の準備を進めておくといいでしょう。
中高年・シニアの仕事探しに関連する記事
熟年離婚の準備5:FPや弁護士などの相談先を確保しておく
いざ離婚を決めても、協議が滞りなく進むとは限りません。相手に離婚を拒まれたり、財産分与や慰謝料などで揉めたり、折り合いがつかないことも多いはずです。
少しでもスムーズに離婚が成立するように、財産分与や年金分割、慰謝料請求などについての知識を学んでおくと、心にも余裕が出てきます。
また、離婚後に生活が困難になる場合を想定し、生活保護制度の申請や受給についても勉強しておくと安心です。
また、財産などのお金のことはファイナンシャルプランナー、法律のことは弁護士など、信頼できそうな相談先を離婚前に確保しておくのもいい方法です。
<熟年離婚に強い弁護士探しについての外部参考記事>
熟年離婚に強い弁護士とは?弁護士の探し方や費用相場を解説|法ナビ離婚
この記事の監修者
高橋正美 【ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)】
日本FP協会所属。日本FP協会2019年「くらしとお金の相談室」相談員。某保険会社のお客様窓口で、保全業務のほか、資産活用、相続対策の相談などを16年間行い独立。相続開始後の手続き支援なども行う。 健康管理士として、お客様のお金に関する相談以外に、健康に関するアドバイスも実施。