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67歳で建築から不動産への異業種転職に成功した建築施工管理技士の方へのインタビュー

シニアタイムズ編集部 【編集部メンバー】

異業種に転職し若手と一緒に資格取得を目指す建築施工管理技士の佐々木さんと、採用したリッチロード代表取締役の德田さんにインタビューしました。

目次

シニアの方の転職・再就職では「即戦力」であることが求められるので、これまでの経験・スキルを活かした、同じ業界・同じ職種での転職・再就職が中心となります。
 
しかし、今回、ご紹介する株式会社リッチロードの佐々木隆さん(取材当時67歳)は、異業種への転職に成功されました。

それまでは長年、建設業界でマンションやテナントビル建築現場の建築施工管理技士として活躍してきた佐々木さん。現在働いている株式会社リッチロードはこれまで未経験の不動産投資の会社で、佐々木さんは買取再販の事業で仕入れたマンションやアパートなどの現場調査を行い、見積作成や必要があれば修繕を行うといった仕事をしています。
 
シニアでは特に難しい異業種転職に、佐々木さんはどのようにして成功したのでしょうか?

今回はシニアの異業種転職の成功例を通じて、シニアが求められる会社やその場面をご紹介したいと思います。

お話を聞いた方1・佐々木隆さん


取材当時67歳。株式会社リッチロードで仕入れたマンションなど不動産物件の現場調査や修繕を担当する建築施工管理技士の方。ずっと建築業界で就業してきたものの67歳にして不動産業界に転職し、若手に混ざって宅地建物取引士の受験勉強に努める前向きな努力家です。

お話を聞いた方2・德田里枝さん


株式会社リッチロード 代表取締役。2000年に不動産投資会社であるリッチロードを創業。創業当初よりインターネットでの集客に主軸を置いた戦略を展開し、投資用不動産の販売、売買仲介、賃貸管理として入居者管理、建物管理、入居者募集、海外からの投資家の呼び込み、外国人向け賃貸住宅の斡旋などを展開されています。2021年はアプリ開発など不動産ITも強化。

建築業界とは大きく違う不動産業界に67歳で転職


「建築業界と不動産業界、かなり違うなぁという印象でした」
 
佐々木さんからはこんな言葉がありました。
 
違いを悪く感じているのではなく、佐々木さんは不動産業界への異業種転職に、満足している様子。建築業界では、現場中心で朝から晩まで現場で段取りに追われていたのに対し、不動産業界ではシビアに時間に追われることなく、現場だけでなくデスクワークもあり、若い社員が多くて刺激を受け、毎日成長していると語る佐々木さんは、にこやかな表情を浮かべました。
 
佐々木さんはこれまで60歳以降もずっと、建築施工管理技士として建築業界に身を置き続けてきた、建築の専門技術を持った技術者です。当然、これまでの経験とスキル、そして資格を活かした仕事に就こうとした場合、同じ建築の仕事以外、考えられる状況ではありませんでした。
 
一方で、株式会社リッチロードは不動産投資を専門とする会社。投資用不動産の販売や売買仲介がメインの事業で、建築業界の人たちからは、施工管理技士の活躍の場があるようには思われていませんでした。
 
しかし、現在、リッチロードのように、物件の修繕や改修を自社で行う不動産会社は多く、そうした会社では建築施工管理技士の方が活躍しています。リッチロード以外にも、シニアジョブからシニア建築施工管理技士をご紹介した不動産会社は少なくありません。
 
佐々木さんも当初から不動産会社を視野に入れていたわけではなかったようですが、「自宅から近いところという以外のこだわりはなかった」という佐々木さんは、リッチロードと出会い、異業種へとチャレンジすることを決めました。

仕事をせず社会とのつながりがなくなるとしぼんでしまう




佐々木さんは60歳を過ぎてからの転職に、少しゆっくりしようという気もないわけではなかったと語りますが、それでも、仕事を探す背景には、「社会との接点がほしい」との思いがありました。
 

「一時、何ヶ月か家でプラプラしていたんですけども、やっぱり社会との接点が無くなると、自分がしぼんでしまうような感じがしてました。それが嫌なので、仕事をしたほうがいいかなと思っています」
 
このように語る佐々木さんは、今回、直前の会社を退職する際、「すぐ仕事をしようとまでは思っていなかった」のだそうです。しかし、実際には退職前からいくつかの紹介会社に登録して仕事探しを始めていた佐々木さん。その中で、シニアジョブからご紹介したリッチロードに応募し、再就職に成功しました。
 
シニアジョブは、インターネットでシニアも可能な施工管理のお仕事を調べていたところ見つけたそうで、「他の紹介会社はメールだけで電話がなかったが、シニアジョブの電話対応は素晴らしかった」とも佐々木さんは語ってくれました。
 
これまでの建築業界とは異なる不動産業界に67歳にして飛び込んだ佐々木さんが、一番大きな違いだと感じたのは、若い社員の存在。
 
「建築業界はかなり年齢層が高くて若い人が少ないので、経験を積まないとあまり認められず、若い人をあまり評価しない雰囲気があります。若い人の多いリッチロードに入社してからは、 “若い人ってなかなかやるじゃないか”と思っています」
 
佐々木さんはこのように語り、不動産業界の若い社員が持つ、仕事に対する気持ちや情熱を感じて、若い社員の存在が自分自身への刺激になっているとも言います。
 
マンションやアパートの現場調査、そして見積作成、修繕といった不動産業界の仕事には、建築業界の仕事と共通する部分だけでなく、社員層を含めた違いがあり、新しく覚えなければならない・慣れなければならないこともありそうです。
 
しかし、建築施工管理技士の資格と経験を十分に活かせ、しかも、朝から晩まで現場というわけではなくデスクワークもある不動産業界の仕事は、シニアの建築施工管理技士にはおすすめのお仕事と言えるかもしれません。

 

頭が柔らかく向上心があれば、年齢は問題ない




佐々木さんの採用を決めた、代表取締役の德田さんは、佐々木さんにどんなことを期待し、どんな点を評価しているのでしょうか。
 
「うちも基本的に今までは、増員は新卒でやってきました。しかし、コロナで増員一辺倒ではいかなくなる中、経験値のある方の採用の重要性が増し、中途採用と新卒採用を両輪で回していく必要があると感じています」
 
こう、德田さんが語ったように、佐々木さんもこれまでの経験に評価や期待をされ、採用に至っています。確かに35年にも及ぶ佐々木さんの建築施工管理の経験を、若い社員に一から取得してもらうのでは、時間がかかりすぎます。
 
若い社員が多いというリッチロードですが、実はこれまでにもシニアが活躍する企業でした。今後、延長も検討しているという定年は、現在60歳に設定。しかし、定年後も最長で68歳くらいまで嘱託として務め続けた社員がいるそうです。
 
インタビューに同席されていた専務取締役の田中義夫さんも、今年76歳。田中さんも「年齢がいっても、健康で、頭が柔らかく向上心のある方とは一緒に働きたい、年齢は問題ない」と語っていました。
 
これまでは、どうしても不動産業界経験者の中には様々なタイプの人材がいることから、業界に染まっていない人材がほしいとの思いで新卒採用にこだわりを持ってきたそうです。しかし、今年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会確保が目指される時勢の中で、今後は新卒採用だけなく、中途採用も、その中でも経験と知見を持ったシニアの活用を検討していく必要があると、德田さんは語っていました。
今回の佐々木さんの採用にあたっては、特に建築分野というこれまでのリッチロードの社内には蓄積されていなかった専門的な経験と知見が求められるポジションだったことで、社内で一から育てるのではなく、豊富な経験を持つシニアが求められ、経験・知見に人柄も加味して採用されたとのことでした。
 
取材の段階では、佐々木さんと同じような建築関連の経験・スキルを持つシニアのさらなる採用も検討していらっしゃいました。

若い人に混ざって新しい資格取得の勉強中


コロナ禍という環境の変化もあって、新卒のみの採用戦略から、新卒と中途、両輪での採用戦略へと大きく舵を切ったリッチロード。実は今年から不動産ITのサービスの準備も始めており、ますます専門人材の確保が重要になりそうです。
 
これまでも、不動産投資業界の中では早期から、電話営業ではなくインターネットでの集客を中心とした戦略を採ってきたリッチロードでは、常に新しい知識の習得とチャレンジが行われる社風がありました。
 
若い社員が多いチャレンジングな社風の会社の中で、67歳で中途採用された佐々木さんに、つらさはないのでしょうか。
 
「自分も若い感じで若い人に接しています。というよりも、年を取った・若い頃から変化したという感覚はないので、若い時と同じように若い人に接しています」
 
「逆に若い人から刺激を受けて、毎日自分も成長しています」
 
このように朗らかに語る佐々木さんからは、若い社風で苦労している様子は感じられませんでした。若い人から刺激を受けていると言う佐々木さんに、代表取締役の德田さんは「若い人たちにとっても佐々木さんは良い刺激になっている」と伝えました。

リッチロードは投資用不動産の販売や売買仲介がメインの会社ですが、これまでは新卒採用が主体で、有資格者や経験者を中途採用することがなかったことから、社内に先生を呼ぶなどして勉強の機会を提供し、宅地建物取引士(宅建)の資格取得を支援していました。2020年以降は新型コロナウイルスの影響で勉強会はできなくなってしまいましたが、それでも教材を提供して資格取得の勉強を支援しているそうです。
 
そしてなんと、佐々木さんも67歳にして会社の教材で若い人に混ざって勉強し、宅建の資格にチャレンジするそうなのです。
 
「受かる受からないは別にして勉強は必要」と、佐々木さんは前向きな笑顔を見せてくれました。

年配社員でも活躍できる場所は必ずある!


前述のとおり、リッチロードでは“生え抜き”の人材を重視し、創業からの20年、ずっと新卒採用を主とした戦略を取ってきました。上記の宅建の勉強会も、そうした企業文化の一端です。
 
しかし、環境の変化に対応し、今後はシニアを含めた中途採用も強め、新卒採用と両輪で回す必要を代表取締役の德田さんも、専務取締役の田中さんも語っています。
 
若い社員が切磋琢磨し、勉強と成長を続ける社風にシニアが中途で参加するのは簡単なことではないと思いますが、佐々木さんは若い人に混ざって率先して勉強し、「説教臭くならず、チャレンジ精神があり、良いお手本になっている」「佐々木さんのおかげで仕事がスピードアップしている」と德田さんが評価するように、むしろプラスとなる「風」を社内に吹かせているようです。
 
環境の変化のひとつには、今年4月に施行され、70歳までの就業機会確保を企業の努力義務とする開成高年齢者雇用安定法もありますが、德田さんはこれを「シニアの働く場をつくっていくことは大事なこと」と捉えていらっしゃいます。
 
しかし、企業をめぐる環境の変化の速さを強く感じている德田さんは、「経験を活かしてもらう場だけでなく、変化を促す場面も含めて、企業は受け皿を準備していかなくてはならない」と語っていました。
 
一方、佐々木さんも70歳までシニアが活躍していく法改正が行われたことを「いい流れ」だと評していました。人口減少の中で、シニアも税金を収め、社会を支える一員であり続けることを前向きに捉えているようでした。
 
そんな佐々木さんに、これから転職や再就職を考えるシニアの方へのアドバイスを聞いてみました。
 
「前の職場では仕事に追われて自分を見つめる機会がありませんでした。新しく再就職する方は、仕事を辞める前から、仕事とは何かといったことや自分を見つめる機会を持ってよく考え、自分にマッチする仕事を見つけることが大切かなと思います」
 
佐々木さんはこのような言葉を語ってくれました。
 
德田さんには企業側の立場で、シニアを採用・活用する企業へのアドバイスを聞いてみたところ、德田さんに代わって田中さんが答えてくださいました。

 「年齢がある程度いっても適材適所、ピンポイントで活躍できる場は提供できますし、年配社員でなければできないこともあります。そうした年配社員を活かす場はどの企業にもあると思うので、そこに思い切って年配社員を採用してみるというのは、ありだと思いますね」

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