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定年後も長く働ける施工管理の資格を徹底解説!最新の資格情報もご紹介

松澤裕介 【キャリアアドバイザー】

シニア世代で活躍している人が多い施工管理にはどのような資格があるか、令和3年4月に新たに資格として発行された「技士補」についても解説します。

目次

人生100年時代となり、リタイア後の老後資金は2000~3000万円ほど必要とされている中で、シニア人材の活用はかなり注目されています。
今回は定年退職した後でも長く働きやすい施工管理についてご紹介します。

平均年収などについては下記の記事を参考にしてください。
施工管理の年収はいくら?土木施工管理や建築施工管理の平均年収

施工管理ってどんな仕事?

施工管理とは、工事に関わる全ての工程を管理する立場の仕事です。スケジュール通りに工事が進んでいるかを確認する「工程管理」や、万が一にも不慮の事故が発生しないようにする「安全管理」は、一般的にイメージされる施工管理の姿かと思います。

実は施工管理には先ほど紹介した業務以外にもあり、人件費や材料費の原価を計算し、予算内で工事を完了させるための「原価管理」、建物の耐震性の確認や、部品・工具が基準に満たしているかチェックする「品質管理」も施工管理の仕事です。この「工程管理」「安全管理」「原価管理」「品質管理」を行うのが施工管理の業務です。

施工管理の仕事はいわゆる「現場監督」と共通する部分もありますが、この記事の下部で説明している「監理技術者」や「主任技術者」など法律で定められた管理監督を行う立場として、施工管理を担当する施工管理技士がいます。 

施工管理技士の資格

施工管理の仕事を担当するために必ずしも資格は必要ではありません。この記事の下部で説明している、指定建設業(※1)においての「監理技術者」や「主任技術者」になるには国家資格などの保有が必要です。

また、資格を取得してすぐに「監理技術者」や「主任技術者」になれるわけではなく、直接的かつ恒常的な雇用の関係が一定期間が必要です。

そして、施工管理技士の資格は「建築」、「土木」、「管工事」、「電気工事」、「電気通信」、「造園」、「建設機械」と7種類あります。それぞれ1級と2級に分かれており、試験の難易度も異なります。また各種2級の1次試験のみは、17歳以上であれば受験することが可能です。

しかし、2級の2次試験、1級においては1次試験の時点で最大15年の実務経験が受験資格となるため、資格取得を目指したい方はいち早く実務経験を積むことをおすすめします。

(※1:指定建設業とは、土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業の7業種)

建築施工管理技士


マンション、ビル、戸建て、学校、警視庁などの全建設工事における管理・監督者です。1級を所持している場合はすべての建設工事に関わることが可能ですが、2級の場合は建築、躯体、仕上げに資格が別れており、できる業務が限られます。1級と2級では担当できる工事の規模が異なります。

土木施工管理技士


河川、道路、橋梁、港湾、鉄道、上下水道などの土木工事における管理・監督者です。近年は地震や台風などの災害が多く、年々仕事が増えています。こちらの資格も、1級と2級では担当できる工事の規模が異なります。

管工事施工管理技士


空調、給排水、冷暖房、ガスに関する設備や、管を使用して水やガス、油、水蒸気などを送る設備を設置するなど、管工事における管理・監督者です。こちらの資格も、1級と2級では担当できる工事の規模が異なります。

電気工事施工管理技士


発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備を設置するなど、強電・弱電電気工事における管理・監督者です。こちらの資格も、1級と2級では担当できる工事の規模が異なります。

電気通信施工管理技士


携帯電話基地局や、インターネット回線、防災無線など、電気を情報伝達のために使ったり電力を制御したりする工事における管理・監督者です。この資格は2019年から新設された、比較的新しい施工管理技士です。こちらの資格も、1級と2級では任される工事の規模が異なります。

造園施工管理技士


整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地などの苑地を築造する工事における管理・監督者です。こちらの資格も、1級と2級では任される工事の規模が異なります。

建設機械施工管理技士


各種建設機械を用いた土木工事、建設工事における管理・監督者です。建設機械は多くの工事現場で使われているため、常に需要がある仕事です。こちらの資格も、1級と2級では担当できる工事の規模が異なります。

主な活躍できる場所


では、それぞれの資格保有者はどのような場所で活躍しているのでしょうか。具体的な工事現場を挙げてご紹介いたします。

建築施工管理技士


建築の工事は学校やマンション、ビル、戸建てなどの公共や民間の普段の生活でよく目にするほとんどの建物が該当し、幅広い分野で活躍できます。工事にもさまざまな種類があり、新築工事、改修工事、解体工事、内装工事(リフォーム工事)、大規模修繕工事などがあります。戸建住宅など住宅関連では新築工事、内装工事(リフォーム工事)は1棟ではなく複数棟の現場を同時に管理することがあります。

土木施工管理技士


河川や道路、橋梁、港湾、鉄道、外構(エクステリア)といった生活に大きく関わりのある工事です。
資格の説明でも述べたように、近年は地震や台風などの災害が多く、復旧工事などが増えてきています。
そのため、日本全国に長期の出張や単身赴任が発生するケースもあるなど、土木工事の活躍の場はさらに拡大しています。

管工事施工管理技士


冷暖房や給排水、給湯設備は必ずといっていいほどほとんどの建物に存在します。そのため商業施設から個人宅など建築物関連で幅広く活躍の場があります。また、管工事業は個人を相手にすることも多いので、独立開業しやすい仕事といわれています。

電気工事施工管理技士


電気は生活に欠かせないものであるため、住宅、商業施設、学校、空港、トンネルなど活躍の場は多岐にわたります。
そのため、夜間・休日でも停電などといった、緊急時に呼び出される場合もあります。
電気工事の他に電気設備の保守や点検にも携わることもあります。

電気通信施工管理技士


インターネットの普及により、電気通信工事は非常に需要が高まっています。
1日に1件から数件の現場を訪問するケースが多く、防災無線や5Gに関わる設備設置のニーズが高まっているため、電気通信工事は多くの場面で活躍しています。

造園施工管理技士


個人宅の庭やマンション、寺社仏閣や公園の緑地整備などさまざまな場所で活躍しています。最近では地球温暖化の防止の取り組みの一環で、ビルの屋上やマンションなどの緑地化を進めている場所も増え、活躍の場がさらに増加しています。

建設機械施工管理技士


建設機械を使用する土木工事、建設工事の現場での監督業務がメインとなり、あらゆる工事現場で活躍しています。
さまざまな場面で活躍できるため、建設機械施工管理技士は需要が高いです。

施工管理に関わる資格

施工管理技士以外にも、施工管理に関わる資格がいくつかあるので、ご紹介します。

建築士


施工管理技士と並び建設業界で重宝される資格の1つです。施工管理技士は、工事(施工)工程における管理・監督者であるのに対し、建築士は設計のスペシャリストですが、建築士もマンション、ビル、戸建て、解体などの工事の施工管理の仕事を担当できます。また、近年CADの使用が必須になっており、JWCAD、AUTOCADなどが使用されています。

技術士


科学技術に関する技術的専門知識と、高度な専門的応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備え、当該業務における指導をするのが技術士です。機械、金属、繊維、農業、情報工学とさまざまな分野がありますが、建設部門、上下水道部門、総合技術監理部門などの資格保有者であれば、以下の監理技術者の代わりになることができます。

監理技術者


法律上、合計4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上の工事を、発注者から元請けとして工事を請け負った際に、現場ごとに監理・監督者として配置しなければならばいのが監理技術者です。監理技術者証は、資格がなくとも一定以上の実務経験があれば取得できますが、基本的には1級の施工管理技士の有資格者が監理技術者証を取得できます。

主任技術者


元請け、下請け、金額に関係なく、工事現場ごとに監理・監督者として法律上、配置しなければならばいのが主任技術者です。ただし工事の金額によっては、主任技術者ではなく、監理技術者を配置します。主任技術者となるには、資格がなくとも一定以上の実務経験があることで認められますが、基本的には2級以上の施工管理技士の資格が必要です。

技士補


令和3年4月1日に、建設業界の人材の不足を補うために法律が改正されました。
1次試験合格者に対して新たに施工管理技士の補佐の役割にあたる「技士補」が資格として発行されるようになりました。
今までは施工管理技士の資格は2次試験合格者のみに与えられ、その合格者が監理技術者講習を受講し監理技術者となっていました。

「技士補」が発行されるようになった結果、専任で配置していた技術者の代わりに技士補を専任の技術者として置くことが可能となり、監理技術者が2つまで工事現場を兼任できるようになりました。
工事現場を兼任できることにより、人材の不足の解消・軽減になると考えられます。

まとめ


建設業は若者が敬遠しがちであるため、施工管理の資格があれば年齢は問わないという求人が多く見受けられます。
そのため60代、70代でも現役で施工管理として活躍されている方は多くいます。
また、ベテランの施工管理経験者を求めている建設会社も非常に多く、そういった点でも年齢を問わない求人がある理由のひとつです。

この仕事は夏の炎天下でも日陰のない屋外などの現場に出かけ、立ちっぱなしであることも多いでしょう。
また、人間関係のトラブルを仲裁するなど決して楽ではありませんが、長く第一線で働き方にはおすすめの職業です。

この記事を読んで、ぜひご自身の転職活動に生かしていただければと思います。

<転職に成功した施工管理技士の方のインタビュー記事>

この記事の監修者

松澤裕介 【キャリアアドバイザー】

キャリアアドバイザーとして、転職相談3,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間1,000名以上の履歴書、職務経歴書を作成。主に医療・介護業界の人材紹介を担当。「シニア人材の転職市場・転職の注意点」などのテーマで記事やコラムを監修。

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