なぜシニアの転職・再就職は難しいのか?転職が難しい6つの理由
シニアの転職・再就職が難しいというのは本当でしょうか?シニアの転職が難しい理由を6つ、整理してみました。
シニアの転職や再就職は、若者に比べると難しいイメージがあります。
しかし一方で、シニアを求めている企業もありますし、実際に活躍しているシニアもたくさんいらっしゃいます。シニアの転職の実態はどうなのでしょうか?
一つ確実に言えることは、シニアの転職市場はここ数年で大きく変化しているため、以前のイメージとは異なる実態になっているということです。シニアの方の状況も以前と現在では異なりますし、企業の状況も以前とは異なります。最新のシニア転職環境はどういった状況なのでしょう?
シニアの転職や再就職は、実のところまだまだ簡単ではありませんが、以前に比べるとだいぶ風向きが変わってきました。既に大企業なのでは定年が60歳から65歳へと高くなり、シニア世代で転職する方も増えてきています。シニアの方自身も転職という選択肢が可能だということに気づき始め、労働力としてのシニア人材の価値に気づき始めた企業も増えています。
今回は、シニアジョブがシニアの転職支援を行う中でまとめた「シニアの転職・再就職が難しい理由」と、その対策をご紹介します。
シニアの転職が難しい6つの理由
では、「シニアの転職・再就職が難しい理由」について見ていきましょう。これまで延べ2万名を超えるシニア求職者を支援してきたシニアジョブのデータから、シニアに理由がある場合、企業に理由がある場合を含め、全部で6つの「理由」をご紹介します。
- 即戦力を求める企業とのミスマッチ
- 働ける期間が限られている
- 偉そう・使いづらそうに思われる
- これまでの就業環境と転職先とのズレ
- 企業側の経験不足やシニアへの誤解
- シニア側の情報不足や自信のなさ
どちらかと言えば、シニア側で気をつける点が多いのですが、企業に原因があるものもありますね。
そんなことない、このように思われるなんて心外だ!と感じるシニアの方も多いかもしれません。しかし、実際にこうしたことを理由に、内定を得られないシニアの方がたくさんいらっしゃいます。ちょっとした注意で内定に近づくので、一つ一つ確認していきましょう。
最初の2つは、どちらが悪いわけではなく、シニアと企業、お互いの立場の違いが溝となっている理由です。
次の2つの理由は、もちろんシニアが悪いわけではないのですが、知らず知らず、企業が評価しない状態をシニアが作ってしまっているものです。
最後の1つ前の理由は企業側に起因するものですが、シニア側が気をつけることでも解決できるでしょう。最後の理由は、シニアの気持ちの部分になり、事前の準備で解決できます。
それでは、その対処法と併せて、一つ一つ見ていきましょう。
企業が求める人物像と合わない?
まず、「即戦力を求める企業とのミスマッチ」という理由から考えてみます。
若い人材ならば、入社後の成長、つまり伸びしろを計算に入れた評価をすることもあるでしょう。新卒であれば当然ビジネスの実績はないため、一般常識テストや人物を主眼に自社にふさわしいかを判断します。
しかし、シニアの場合、伸びしろへの期待などはありません。せいぜい職場に慣れる期間をどの程度見積もるかだけで、企業は即戦力しか求めません。
こうお伝えすると、「自分は十分即戦力として通用するのに、評価されなかった」というシニアの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その場合は、企業が求める戦力と、シニアの方が提供できる戦力が合致していなかった、あるいは、シニアの方が戦力であることを企業が判断できなかったのです。
例えば、シニアの方が高いマネジメント力を持っていたとしても、企業が欲しい戦力は現場の技術力である、といったことはよく起こります。そこでミスマッチが起きていると、内定には至りません。この場合、シニアの方は自分が提供できる戦力を求めている企業を探すか、企業が求めている戦力を正確に見極めて、自分が若干不得意であったとしてもそのアピールをする必要があります。
また、シニアの方が戦力になることを企業が判断できない場合も多くあります。技術職などは技術の内容がハッキリしているので判断しやすいのですが、マネジメント職や営業職の場合、マネジメント力や営業力は企業によって基準が異なり、別の企業で成果を出した人物でも判断できないことが多いのです。この場合は、できる限り客観的な内容で、自分の能力を伝える必要があります。
次に「働ける期間が限られている」という理由も、シニアの方にどうしてもつきまとう、厄介な理由です。
即戦力を求められることとイコールで、30歳の方が70歳までずっと勤めたなら40年ありますが、60歳の方は70歳まで10年しかありません。人件費だけでなく採用にもコストはかかるため、企業はできれば長く勤めてほしいと思っています。勤務期間がどうしても長く見積もれないシニアは、それだけで不利と言えます。
この対策は、「働き続けたい年齢を言う」というものになります。
もし、60歳の方がいるとして、企業の目から見ると70歳まで働き続けたいのか、65歳まで働き続けたいのかわかりません。70歳ならば10年ありますが、65歳では5年間しかありません。その人がいつまで働きたいかは市販の履歴書にも記入欄などはなく、企業は非常に気にしています。ウソを言う必要はありませんが、70歳まで、あるいは元気なうちはいつまでも働きたい方は、そのことを採用担当に伝えると、採用率が上がります。
シニアは偉そうに思われてしまう?
次に「偉そう・使いづらそうに思われる」という理由も、若い上司からシニアの方を見た時の避けられない印象です。これを回避するには、シニアの方自身が考えるよりもさらに謙虚な姿勢を心がけるほかありません。
理不尽と思われるかもしれませんが、ちょっとしたマネジメント経験の話や大企業にいた話なども自慢と受け取られる可能性があるため、必要以上に経歴で強調するべきではないでしょう。
そのことと似ているのですが、「これまでの就業環境と転職先とのズレ」も、マイナス評価を呼びやすい要因です。早い話、一つの企業に長く勤めるとその企業文化に染まり、柔軟性が損なわれてしまいます。
ウソのような話ですが、自身でも何人もの方を面接してきたシニアの方が、ご自身の転職の面接で脚を組んで座ってしまったなどという話もあります。長く面接官として強い態度で臨んでいたために、そのクセが出てしまったのです。
シニアの方にとっては長く勤めた会社の中が、自分にとっての当たり前の日常だったと思いますが、転職は非日常であり、まったく違う常識と出会う場でもあります。これまでの日常に区切りをつけて、新しい場所だという意識で準備する必要があるでしょう。
企業もシニアもまだまだ不慣れ
シニアの方の注意とは無関係な理由もあります。「企業側の経験不足やシニアへの誤解」がそうです。
ほとんどの企業は、シニアを積極的に中途採用した経験がありません。そのために、体力がない、コミュニケーションが取れない、病気になりやすい、ITに弱い、などといった誤解や固定観念でシニアを見ているケースもあります。
この場合、最初からシニア採用に消極的であることがあるかもしれません。その時はなるべく感情的にならず、ひとつひとつ淡々と簡潔に説明やアピールをしましょう。企業のトップや担当も特に根拠があってシニアに懐疑的なのではなく、採用後にシニア積極採用派に転ずる企業も多いので、丁寧に受け答えをすればあまり問題ありません。
最後に「シニア側の情報不足や自信のなさ」というものは、シニア自身が遠慮や萎縮してしまうケースです。
これまでシニアの転職はあまり一般的ではなく、シニア自身もずっと一筋に勤めてきたため、「自分はこの年齢で転職できるのだろうか?」「自分は必要とされるのだろうか?」と不安に思うことが多いのです。実際に転職されたシニアの方でも、転職できるとは思っていなかったという方が多く、就職活動も簡単に諦めてしまう方もいらっしゃいます。
確かに若い方に比べて難しさもあるシニアの転職ですが、今は以前に比べて転職するシニアの方も数多くおり、為すすべがないわけではありません。動かずに諦めてしまっては、得られる内定も得られなくなるので、自信を失わず積極的にチャレンジすることが重要です。
このように今回は、シニアの転職・再就職が難しい「理由」を6つまとめてみました。しかし、最後の「理由」にもあるように、難しいからといって諦めてしまっては転職・再就職できません。今回の6つのことに注意しながら、諦めずに転職・再就職を目指してください。
この記事の監修者
松澤裕介 【キャリアアドバイザー】
キャリアアドバイザーとして、転職相談3,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間1,000名以上の履歴書、職務経歴書を作成。主に医療・介護業界の人材紹介を担当。「シニア人材の転職市場・転職の注意点」などのテーマで記事やコラムを監修。