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高齢者の7割が非正規、4割が賃金に不満…転職すべきなのか?

松澤裕介 【キャリアアドバイザー】

60代以降のシニアの7割は非正規雇用であること、シニアの4割は賃金に不満があるそうです。 シニアの非正規雇用、そして転職について、考えてみましょう。

目次

シニアと非正規雇用

60代以降もいきいきと働くシニアが増えてきました。
2013年に施行された高年齢者雇用安定法が2021年6月に改正され、希望者の就業機会を70歳まで確保することが企業の努力義務となったことで、今後ますます増えていくことでしょう。
一方で、シニアの7割は非正規雇用であること、シニアの4割は賃金に不満があること。
こんな調査結果も出ています。

  • 賃金に不満があってもこのままでいいのか?
  • 非正規雇用になると何が変わるのか?
  • 転職すべきなのか?


上記に悩んでいる方は、ぜひこの記事を見て参考にしてください。

シニアの7割が非正規雇用

7割が非正規雇用だというシニア。
そこで、シニアの雇用形態の現状について、概況をチェックしてみることにします。

役員以外だと非正規雇用が7割以上

増え続けるシニアワーカーですが、その雇用形態はどうなっているのでしょうか。
内閣府の資料によると、正規の職員・従業員99万人に対し、非正規職員・従業員は301万人。
役員などを除外した65歳以上のワーカーにおける非正規雇用の割合は、75.3%で、約7割以上が非正規雇用となっています。

参考:内閣府 高齢者の就業

男女別では

男女別ではどうでしょうか。
平成29年(2017年)の総務省「労働力調査」を見てみましょう。

「労働力調査」によると、
男性の非正規雇用は、60~64歳で52.3%、65~69歳で70.5%。
女性の非正規雇用は、60~64歳で76.7%、65~69歳で80.8%。

これが55~59歳の場合、男性12.2%、女性60.8%ですので、非正規雇用の比率が60代にはいると急上昇することがわかります。

参考:総務省 労働力調査

継続雇用制度

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高年齢者雇用安定法の改正により、65歳までの定年の引上げ・65歳までの継続雇用制度の導入・定年の廃止のいずれかが企業に求められるようになりました。
働くシニアが増加している大きな理由のひとつです。
このうち、65歳までの継続雇用制度ですが、継続雇用制度には再雇用制度と勤務延長制度の2種類があります。
この再雇用制度こそが、60代以降に非正規雇用が多い理由です。

再雇用制度

再雇用制度とは、定年を迎えた労働者を退職という扱いにした後、新たに雇用する制度です。
退職金は定年時の退時に支給されます。
新たに雇用するので、非正規雇用での契約も可能となります。
多くはこちらの適用となることから、今後も60代以降の労働者に非正規雇用が増加することが予想されます。

勤務延長制度

勤務延長制度は、定年を迎えても労働者を退職させず雇用を継続する制度のこと。
雇用を継続するので、雇用形態は変わりません。
退職金は勤務延長後の退職時に支給されます。
主に高いスキルを持った専門職に適用されます。

60歳代でも働いていたい人が多数

2019年3月に55~79歳の男女2000人を対象に実施されたNRI社会情報システムの調査によると、
55~59歳の正社員は、平均69.6歳まで働きたいと回答。
60~64歳の正社員も、平均70.3歳まで働きたいと答えています。

しかし、70歳まで働くことのできる制度が整っている会社に勤めているという回答は40.9%。
高年齢者雇用安定法改定により今後は状況が変わってきますが、雇用形態の変化は想定しておくべきでしょう。

60代以降もいきいきと働くためには、転職の可能性も視野に入れた転職エージェントの活用も有効な手段だと考えられます。

参考:NRI社会情報システム 現役のシニア世代に聞く、何歳まで働きたいですか?

非正規雇用とは

再雇用制度による雇用形態の変更などにより、60代になると急増する非正規雇用。
今後も60代以降に増加が予想される非正規雇用について、まとめました。

非正規雇用の種類

非正規雇用は、基本的に労働契約に期限のある雇用や時間あたりの労働を指します。
具体的には、契約社員、嘱託社員、パートタイム、派遣社員などのこと。

それらのうち、会社が直に雇用しているのが直接雇用で、契約社員・嘱託社員・パートタイムがこれに当たります。
再雇用制度では、直接雇用の雇用形態のうちのいずれかがほとんどとなります。

一方、派遣会社と契約し派遣先で働くのが間接雇用で、派遣社員がこれにあたります。
間接雇用の場合、給与・労働条件などは契約している派遣元との間で取り決めます。

非正規雇用のデメリット

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シニアワーカーにとっての、非正規雇用の主なデメリットをあげてみましょう。

まず、せっかく雇用されても期限があり、不安定であること。
現役に比べてどうしても賃金が低くなりがちであることもデメリットです。
退職金制度が無いことも、金銭的な不満になるでしょう。

パートタイムでは、雇用保険・健康保険・厚生年金の適用範囲に限りがあります。
これらのデメリットをいかに小さくしていくかは、シニアワーカーにとっての大きな課題といえます。
転職エージェントへ相談することで、良い対策がとれるでしょう。

非正規雇用のメリット

とはいえ、非正規雇用にももちろんメリットがあります。
非正規雇用は、業務の範囲が定められており、仕事内容が安定していることが魅力。

スキルを活かして働くなど、目的にあった働き方がしやすいメリットがあります。
転勤が無いのも、生活基盤をすでに築きあげているシニアにとっては安心です。

比較的、勤務日や時間に融通がきく点も、無理のない勤務形態を望むシニアには大きなメリットとなるでしょう。

デメリットとメリットを相談

60代以降も働くにあたり、賃金と老後の人生とのライフワークバランスをよく考え、より良い選択をしなくてはなりません。
現在の職場と比較してどちらがメリットが大きいか、転職エージェントに相談してみることをおすすめします。

60歳代以降の賃金

非正規雇用が増える60歳代以降。
その賃金はそれまでと比較してどう変化するのでしょうか。

最低賃金の可能性も

高年齢者雇用安定法の改正により、企業に対して継続雇用制度が求められるようになりましたが、
前述の通り、いったん退職扱いになってからの再雇用となります。
そのため、退職前と同じ賃金や雇用形態が保証されるものではありません。
つまり定年後に再雇用される場合の賃金は、最低賃金を上回る限りは下がってしまったとしても原則的には問題ないわけです。

目安は正社員時代の5~7割

しかし、再雇用された労働者の果たす役割と給与のバランスを考え、余りに低い賃金であれば違法と判断される可能性もあります。
嘱託社員として再雇用された場合、その賃金のおおよその目安は、正社員時代の5~7割程度が一般的だと見られています。

減額の可能性が大きい

つまり、多くのシニアワーカーにとっては減額の可能性が大きいわけです。
もしもこの点に不安がある場合、転職エージェントにシニアにしかない長年のキャリアやスキルを活かす方法をアドバイスしてもらうのも良いでしょう。
大幅な減額を避けられるかもしれません。

1カ月の平均賃金は18万9千円

日本労働組合総連合会が2019年12月に行った「高齢者雇用に関する調査」の結果によると、働いている60代全体の1カ月の平均賃金は18万9千円。
雇用形態別でみると、正規雇用は平均33万1千円、非正規雇用は平均13万円となっています。
正規と非正規では二倍以上の差があるという結果になりました。

1カ月の賃金30万円は1割

全体の平均を見てみると、1カ月の賃金20万円以上25万円未満が最も多く、次点が5万円以上10万円未満となっています。
30万円以上は1割強。
正規雇用でも、退職前と同じ水準の収入の維持は難しいことがわかります。

参考:日本労働組合総連合会の高齢者雇用に関する調査

賃金に不満

60代以上のシニアワーカーの就労目的は健康維持、人との交流・充実感ややりがいなど金銭以外の目的の割合が高くなっています。
前出の「高齢者雇用に関する調査」では、働き方・労働時間・労働日数・仕事内容に対して7割以上のシニアワーカーが満足と回答。
それに対して、賃金については、4割しか満足していません。
ほとんどのシニアワーカーにとって収入の水準維持は難しく、半数以上は賃金に不満を持っているのが現状です。

転職するべきかせざるべきか

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高年齢者雇用安定法の改正で、活躍の場が広がるシニアワーカー。
しかし賃金に不満を持っているケースが多いことがわかりました。

高齢者の求人は増えている

こうした現状を背景に、転職を考えるシニアもいるでしょう。
若年層の求人倍率が上昇していることから、特に中小企業においては中高年の力を必要とする傾向にあります。
そういった企業では、豊富な実務経験、人生経験を持った即戦力となる人材が求められています。
つまり、高齢者であることが強みとなるのですが、転職エージェントを利用することで、その強みを最大限に活かした転職活動ができます。

転職の目的を明らかに

しかし、いくら求人があるとはいえ、高齢での転職は不安があるかもしれません。
転職を迷っているなら、転職の目的を明らかにしてみることをおすすめします。
シニアならではの目的としては、不満の多い賃金の改善が考えられます。
あるいは、多くのシニアの就労目的でもある生きがい・やりがい。
または、老後を見据えて近所で無理なく働くといった、環境か。
これらを整理した上で、リスク、メリットについて転職エージェントで話を聞いてみると、自分ではわからなかった転職の可能性が見えてくるでしょう。

まとめ:シニアの働き方を考えるなら、転職エージェント

転職エージェントはプロフェッショナルです。
雇用条件の確認や交渉もできるので、シニアワーカーの多くが不満に思っている賃金についても相談できます。
また、高齢だからこそ求められる経験を活かした転職活動ができるのは、転職エージェント利用ならでは。
キャリアカウンセリングで、あなたのキャリアについて話し合う中で、自分では気がつけなかった老後の働き方の可能性が見つかるかもしれません。
シニアワーカーの皆様には、転職エージェントで働き方を見直してみることをおすすめいたします。

この記事の監修者

松澤裕介 【キャリアアドバイザー】

キャリアアドバイザーとして、転職相談3,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間1,000名以上の履歴書、職務経歴書を作成。主に医療・介護業界の人材紹介を担当。「シニア人材の転職市場・転職の注意点」などのテーマで記事やコラムを監修。

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