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歯科衛生士の平均年収を完全解説!職場別・地域別ランキングをご紹介

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】

お金

歯科衛生士の平均年収はいくら?
他の職種より高い?低い?

歯医者では欠かせない存在の「歯科衛生士」。歯科衛生士の年収は高いのか、それとも低いのか気になる人も多いのではないでしょうか? 歯科衛生士全体の平均年収は約405万円ですが、男女差や勤続年数、勤務先や地域により年収は大きく変化します。 この記事では、歯科衛生士の年収について 「平均・男女別・勤続年数別・勤務先別・地域別」 などをデータで徹底解説します。 さらに、歯科衛生士が収入を上げるための方法についてもご紹介します。歯科衛生士を目指す人や転職・キャリアアップを考えている人はぜひ参考にしてください。

目次

歯科衛生士の平均年収はいくら?

歯科衛生士のイメージ

歯科衛生士は、患者さんが虫歯や歯周病にならないための「予防」を中心に、指導やサポートを行う専門職です。主な業務は以下の3つです。

歯科衛生士の主な仕事
  • 歯科保健指導:患者さんに適した口腔ケアの仕方を指導し、予防意識を高める
  • 歯科予防処置:むし歯や歯周病を防ぐため、薬を歯に塗布したり歯石を除去したりする
  • 歯科診療補助:歯科医師の診療をサポートし、スムーズな治療を実現する

近年は高齢化や予防歯科の重要性が増しており、歯科衛生士の需要は安定的に伸びています。早速、気になる年収事情を詳しく見ていきましょう。

歯科衛生士全体の平均年収は約405.5万円

歯科衛生士の年収:4,055,600円  手取り額の目安:304〜324万円

歯科衛生士全体の平均年収は4,055,600円全職種平均である約526万円と比較すると、やや低めの水準であることがわかります。

基本給の平均額
  • 男性:332,500円
  • 女性:297,400円
  • 全体:297,600円
賞与の平均額
  • 男性:507,600円
  • 女性:484,300円
  • 全体:484,400円

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男性歯科衛生士の平均年収は約449.7万円・女性歯科衛生士の平均年収は約405.3万円

歯科衛生士の平均年収を男女別に見ると、男性は4,497,600円、女性は4,053,100円と、男性の方が約44万円高いことがわかります。

基本給
(円)

賞与
(円)

年収
(円)

男性

332,500

507,600

4,497,600

女性

297,400

484,300

4,053,100

歯科衛生士は女性の割合が圧倒的に多い職種ですが、近年は男性歯科衛生士も増えており、勤務先やキャリアによって収入差が生じていることが現状です。

短時間勤務の歯科衛生士の平均時給は1,970円

パートや派遣社員などの短時間勤務の歯科衛生士の平均時給は1,970円。これは、労働者全体の平均時給である1,476円を大きく上回る数字です。

歯科衛生士は、パートや非常勤勤務を選ぶ場合でも比較的高めの時給で働けることが特徴。子育て世代の人でもライフスタイルに合わせて柔軟な働き方ができることも魅力です。

※1:厚生労働省|令和6年賃金構造基本統計調査

ケース別の歯科衛生士の平均年収をチェック!

歯科衛生士のイメージ

歯科衛生士の平均年収は、勤続年数や年齢、所属施設や地域によっても異なります。ここでは、歯科衛生士のさまざまなケースの平均年収を確認してみましょう。

【初任給・5年目・10年目・15年以上】勤続年数別の平均年収は?

歯科衛生士の年収は、経験年数を重ねることで徐々に上がっていきます。初任給は比較的低めですが、スキルやキャリアを積むにつれて安定した収入になっていきます。

■勤続年数別の平均年収

初任給:309.8円  1〜4年:381.4円  5〜9年:393.4円  10〜14年:404.6円  15年以上:415.8円

※1:厚生労働省|令和6年賃金構造基本統計調査を基に作成

勤続年数別の平均年収
  • 初任給:3,098,500円
  • 1〜4年:3,814,700円
  • 5〜9年:3,934,400円
  • 10〜14年:4,046,800円
  • 15年以上:4,158,800円

初任給は300万円前後と全体の平均より低めですが、数年勤務することで一気に70万円以上の年収アップが期待できます。

5年目以降は年収が安定し、経験を積むことで平均年収は400万円を超えます。15年を超えて管理職やリーダー的役割を担うと、さらに年収アップの可能性が広がる傾向にあります。

【20代・30代・40代・50代・60代】年代別の平均年収・賞与額は?

歯科衛生士の年収は、年齢とともに少しずつ変動します。若手のうちは基本給が伸び、30代以降は賞与の額によって年収に差が生じる傾向にあります。

■年代別の歯科衛生士の平均年収

20〜24歳:378.7万円  25〜29歳:402.6万円  30〜34歳:434.8万円  35〜39歳:402.9万円  40〜44歳:407.5万円  45〜49歳:461.4万円  50〜54歳:410.3万円  55〜59歳:416.6万円  60〜64歳:311.5万円  65〜69歳:397.8万円

■年代別の歯科衛生士の賞与額

20〜24歳:39.8万円  25〜29歳:39.2万円  30〜34歳:44.4万円  35〜39歳:48.6万円  40〜44歳:59.8万円  45〜49歳:80.3万円  50〜54歳:59.3万円  55〜59歳:56.2万円  60〜64歳:25.3万円  65〜69歳:53.4万円

年齢

基本給
(円)

賞与
(円)

年収
(円)

20〜24

282,400

398,900

3,787,700

25〜29

302,900

392,000

4,026,800

30〜34

325,400

444,100

4,348,900

35〜39

295,300

486,200

4,029,800

40〜44

289,800

598,200

4,075,800

45〜49

317,600

803,400

4,614,600

50〜54

292,500

593,300

4,103,300

55〜59

300,300

562,700

4,166,300

60〜64

238,500

253,600

3,115,600

65〜69

287,000

534,300

3,978,300

※1:厚生労働省|令和6年賃金構造基本統計調査を基に作成

20代前半は経験が浅いため基本給は低めですが、順調にキャリアを積むと25〜29歳で年収は400万円を超えます。

30代では基本給・賞与ともに安定し、平均年収は4,348,900円とピークに近づきますが、40代では賞与が増える一方で基本給が横ばい傾向。それでも、40代後半には年収のピークを迎えます。

しかし、50代以降は体力面で夜勤や長時間勤務が難しくなることが影響しているためか、徐々に年収が下がることがわかります。

【大学病院・企業・研究機関】所属施設別の平均年収は?

歯科衛生士の年収は、勤務する施設によって大きく異なります。診療所や介護施設は低めの傾向にありますが、大学病院や企業、研究機関に所属することで高収入を得られる可能性があります。

■所属施設別の平均年収の割合(%)

年収

診療所

病院
大学病院

行政

企業
(歯科診療業務)

介護保険
施設

研究機関

130万円以上
300万円未満

24.3

16.6

27.8

6.9

41.7

9.1

300万円以上
400万円未満

41.1

32.9

16.9

20.7

37.9

18.2

400万円以上
500万円未満

19.1

21.5

15.2

24.1

16.5

18.2

500万円以上
600万円未満

6.8

14.5

11

17.2

9.1

600万円以上
700万円未満

6.5

12.2

27.6

18.2

700万円以上
800万円未満

7.6

18.2

900万円以上
1000万円未満

9.1

最も一般的な勤務先である診療所(クリニック)勤務の場合、年収300~400万円未満が中心で、全体の約65%を占めています。安定感はあるものの、高収入は期待しにくいことが現状です。

一方、病院や大学病院は診療所よりも年収帯が高く、500万円以上の割合が増えています。福利厚生も手厚いため、安定した働き方を希望する人に人気です。

地方自治体や公的機関などの行政での勤務は、300万~500万円が中心。ただし一部では600万円台に達するケースもあります。

企業の歯科診療業務を行う歯科衛生士の年収は高収入の割合が多く600万円以上に達する人が35%以上。キャリアアップを目指す歯科衛生士にとって狙い目の勤務先でしょう。

歯科衛生士としてもっとも高い年収を狙える職場が研究機関年収500万円以上の割合は54%と全体の半分以上を占め、900万円以上の割合も9.1%存在することがわかります。年収が高い分、専門性が求められますが、将来的に大幅な年収アップを狙える可能性がある職場です。

※2:公益社団法人日本歯科衛生士会|歯科衛生士の勤務実態調査報告書(令和7年)

勤務地域別の平均年収ランキング

歯科衛生士の年収は、勤務地域によって大きな差があります。都市部だから必ずしも高いという訳ではなく、地方でも全国平均を上回る県もあります。

■歯科衛生士の勤務地域別の平均年収ランキング

順位

都道府県

年収

1

和歌山県

6,368,800

2

大分県

5,417,100

3

滋賀県

5,203,000

4

岩手県

4,883,100

5

新潟県

4,697,200

6

東京都

4,620,600

7

宮城県

4,609,200

8

神奈川県

4,518,800

9

山口県

4,414,100

10

広島県

4,412,000

11

福島県

4,332,100

12

岐阜県

4,330,600

13

北海道

4,319,000

14

千葉県

4,219,100

15

熊本県

4,209,500

16

長崎県

4,151,600

17

京都府

4,150,000

18

福井県

4,136,200

19

大阪府

4,111,400

20

愛知県

3,991,700

21

埼玉県

3,960,100

22

茨城県

3,936,000

23

兵庫県

3,895,400

24

山梨県

3,866,200

25

富山県

3,840,000

26

長野県

3,767,300

27

奈良県

3,765,300

28

静岡県

3,757,900

29

高知県

3,738,300

30

鹿児島県

3,686,800

31

石川県

3,630,400

32

山形県

3,556,700

33

三重県

3,486,000

34

群馬県

3,385,000

35

愛媛県

3,383,000

36

島根県

3,341,900

37

徳島県

3,341,400

38

秋田県

3,302,300

39

栃木県

3,280,200

40

宮崎県

3,088,800

41

佐賀県

3,208,800

42

沖縄県

3,145,600

43

青森県

2,995,600

44

福岡県

2,964,200

データなし

鳥取県

データなし

データなし

香川県

データなし

データなし

岡山県

データなし

1位は和歌山県の約636万円。全国平均より200万円以上高い水準でした。次いで、大分県・滋賀県も500万円を超える高水準となっており、地方でも高年収を期待できることがわかります。

東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏も上位に位置していますが、九州・東北の一部地域は低めの水準。年収が300万円前後にとどまる地域もあり、地域格差が大きいことがわかります。

就職や転職を考える際は、勤務地域も重視することが重要であることがわかるでしょう。

※1:厚生労働省|令和6年賃金構造基本統計調査

歯科衛生士の平均年収は他の職種と比較して高い?低い?

歯科衛生士の平均年収は他の職種と比較して高い?低い?

歯科衛生士の平均年収は約405.5万円。これは全労働者の平均である約526.9万円と比べるとやや低めの水準であることがわかります。

労働者全体
(円)

歯科衛生士
(円)

全体

5,269,900

4,055,600

男性

5,908,100

4,497,600

女性

4,194,400

4,053,100

特に、男性は140万円程度の差が生じており、医療職としては控えめな年収といえるでしょう。

一方、女性歯科衛生士の年収は約405.3万円。女性労働者の平均年収は約419.4万円と両者の差は少なく、女性が多く活躍する職種の中では、一定の安定感があることがわかります。

※1:厚生労働省|令和6年賃金構造基本統計調査

【年収1,000万円は目指せる?】歯科衛生士が年収を上げるための方法

歯科衛生士が年収を上げるための方法

歯科衛生士の平均年収は約405万円と、全職種平均よりやや低めです。しかし、工夫次第では大幅な収入アップを目指すことも可能です。ここでは、歯科衛生士が年収を上げるための方法をご紹介します。

昇格を目指す

1つ目は、昇格を目指すことです。

勤務先で昇格すると役職手当が支給され、基本給+αで安定した昇給が見込めるため、年収アップが期待できます。

特に大規模クリニックや大学病院勤務では昇格制度がしっかりしており、主任やマネージャーといった役職が設けられていることが多いため、長期的に働くことで昇格のチャンスが広がるはずです。

資格を取得する

2つ目は、資格を取得することです。

専門資格を取得すると資格手当が支給されたり、専門分野を活かして働くことが可能になったりするため、結果として年収アップが期待できます。

歯科衛生士におすすめの資格
  • 歯科衛生士(日本歯周病学会認定)
  • 矯正歯科衛生士(日本成人矯正歯科学会認定)
  • インプラント専門歯科衛生士(日本口腔インプラント学会認定)
  • 認定歯科衛生士(日本歯科衛生士会認定)
  • 小児歯科衛生士(日本小児歯科学会認定)
  • 障害者歯科衛生士(日本障害者歯科学会認定)
  • ホワイトニングコーディネーター(日本歯科審美学会認定)

上記の資格を取得することで、審美歯科・矯正歯科・インプラントなどの専門性の高い分野で活躍でき、収入アップにつながります。

転職する

3つ目は、転職することです。

歯科衛生士の給与は勤務先によって大きく異なるため、評価制度や昇給制度が整った職場に転職することで、収入アップが期待できます。

例えば、企業内診療所勤務の歯科衛生士の年収は600〜700万円未満が全体の27.6%ともっとも高い割合を占めており研究機関と並んで高収入の勤務先になっています。

また、クリニックより規模の大きい病院や大学病院の方が全体的に年収水準は高めです。さらに、企業内診療所や大学病院は福利厚生の面でもメリットが大きいため、長い目で見ると年収に影響することになります。

これらを考慮すると、今より高い年収を得られる職場に転職することも年収アップの1つの方法といえるでしょう。

フリーランスとして働く

4つ目は、フリーランスとして働くことです。

フリーランス歯科衛生士は、歯科医院と業務委託契約を結び、曜日や時間を指定する働き方のこと。技術や専門性に応じて高額報酬を得られることがメリットです。

正社員のような安定性はありませんが、実力次第で高収入が目指せます。

独立開業する

5つ目は、独立開業することです。

実は、歯科衛生士でも治療行為以外で独立開業の道はあります。

歯科衛生士の独立開業の主な選択肢
  • デンタルエステ:ホワイトニング・歯茎ケア・口臭改善などを提供するサロン
  • ホワイトニングサロン:歯のホワイトニングを専門としたサロン

デンタルエステもホワイトニングサロンも美容需要が高く集客次第で大きな収入を見込めます。独立し、歯科医師を雇用する経営者になれば、年収1,000万円以上も現実的に狙えるでしょう。

まとめ・歯科衛生士の平均年収は約405万円|全職種平均よりやや低い

歯科衛生士の平均年収は約405万円と、全職種平均よりやや低めですが、年代・勤続年数・勤務先・地域によって大きく変動します。

さらに、昇格・資格取得・転職・フリーランス・独立開業といったキャリア戦略を組み合わせることで、年収アップの可能性は十分に広がります。

歯科衛生士としてのキャリアを長く続けたい人は、収入面だけでなく専門性や働きやすさ、ライフスタイルとの両立を重視し、自分に合った働き方を選ぶことが重要です。

参考資料

厚生労働省|令和6年賃金構造基本統計調査
公益社団法人日本歯科衛生士会|歯科衛生士の勤務実態調査報告書(令和7年)

この記事の監修者

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】

2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。

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